【動画&メモ】事業用融資における第三者保証の制限

投稿者: | 2020年7月18日

このページの目次

【動画&メモ】
事業用融資における第三者保証の制限を学ぼう

Ⅰ 改正の趣旨

 事業貸金等債務を主債務とする保証契約等においては、保証債務の額が多額になりがちであり、保証人の生活が破綻する例も相当数存在するといわれている。

 しかし、保証契約は個人的情義等に基づいて締結されることが多いことや、保証契約の締結の際には保証人が現実に履行を求められることになるかどうかが不確定であることもあって、保証人の中には、そのリスクを十分に自覚しないまま安易に保証契約を締結してしまった者が少なくないと指摘されている。

 そこで、個人が保証契約を締結するリスクを十分に自覚せず安易に保証人になることを防止するため、公的機関である公証人が保証予定者と直接面接し、保証予定者が保証契約を締結するリスクを十分に理解した上で保証債務を履行する意思を有していることを確認することとし、この意思確認の手続きを経ていない保証契約を無効とすることとしたものである。

 

Ⅱ 制度の概要

1 対象となる契約

 事業貸金等債務を主債務とする保証契約等

 (1)事業貸金等債務を主債務とする特定債務保証契約

 (2)主債務の範囲に事業貸付金等債務が含まれる根保証契約

 (3)(1)及び(2)の保証契約の保証人の主債務者に対する求償債権に係る債務を主債務とする特定債務保証契約

 (4)主債務の範囲に事業か資金等債務保証に係る求償債務が含まれる根保証契約

 

2 適用除外(465の9)

 (1)保証人が法人である保証契約

 (2)保証人が次の者である保証契約

   ア 主債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者

   イ 主債務者が法人である場合の次に挙げる者

   (ア)主債務者の総株主の議決権の過半数を有する者

   (イ)主債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

   (ウ)主債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

   (エ)株式会社以外の法人が主債務者である場合における(ア)ないし(ウ)に掲げる者に準ずる者

   ウ 主債務者と共同して事業を行う者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者

 

3 確認事項

 (1)保証予定者が述べる事項(465の6②)

   ア 主債務の債権者及び債務者

      氏名・住所・職業・生年月日・名称・本店所在地・代表者など

   イ 主債務の元本

      上限「金円以内で貸し付ける金員・・・」、確定していない事情

   ウ 主債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容

   エ 主債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行することを有していること

    ※根保証契約の場合はイウに換えて「主債務の範囲」「極度額」「元本確定期日の定めの有無及びその内容」エの債務の全額に換えて「極度額の範囲で」

 (2)公証人が確認する事項

   ア 主債務者の財産状況等の情報提供の有無及びその内容

   イ 保証意思の有無に関連する事情

     ①借入金の使途

     ②債務の弁済期及び弁済方法

     ③保証契約締結予定日

     ④主債務者と保証予定者の関係  

   ウ 保証債務は主債務の関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる者の全てを包含することの理解

   エ 保証債務のリスクを十分に理解した上で、相当な考慮をして保証契約を締結しようとしているか否か

    ・連帯保証の場合は、催告の抗弁、検索の抗弁、分別の利益がないことの理解 

    ・保証債務不履行の場合に差押えのリスクがあることの理解

   オ 保証予定者が保証契約を締結するに至った経緯

 

Ⅲ Q&A

主債務の事業貸金等債務の「事業性」はいつどのように判断される?

 主債務の事業性の判断は、主債務者がその債務を負担した時を基準とし、その契約が締結されたときの事情に基づいて判断される。

 事業目的で貸付を受ける場合には、その後実際には事業に使わなかったとしても、事業貸金にあたります。逆に、事業目的ではないとして貸付を受けた場合には、その後事業のために使用したとしても、事業貸金にはあたらないことになる。

 事業性は反復継続することを目的とした事業に用いるために負担したか否かで判断される。原材料の購入や店舗の建築を目的とする場合には事業貸金等債務にあたり、居住用不動産の購入など個人のためにする借入は事業貸金等債務にあたる。ただし、事業目的と非事業目的(個人)のために1つの貸付を受けた場合には、事業貸金にあたることになる。

 

「事業のために負担した貸金等債務」に該当するか否か

①使用目的が限定されていないフリーローン

 事業のために使われる可能性が排除されていないことから該当(部会資料78A20、実務解説改正債権法239、改正債権法と保証実務109)

②アパートローン
 該当

③居住用不動産用のローンだが売電用の太陽光発電の資金が含まれている

 該当すると思われる。「事業に用いる割合が居住に用いる割合と比較して小さくても、一部でも事業目的があれば貸金等債務は全体として事業のために負担したというしかない」(改正債権法と保証実務99)

④個人に対しての貸し付けが当該個人の事業に使われた場合

 「事業のために負担した貸金等債務」に該当するか否かは、借主が貸金等債務を負担した時点を基準時として、貸主と借主との間でその貸し付け等の基礎とされた事情に基づいて客観的に定まる。

 したがって、貸主借主が事業資金の認識で貸し付けた場合は実際には士業資金に使われなくても該当し、事業資金以外の使途で貸し付けたが借主は事業資金に用いること意図しており、現に事業資金使われたとしても該当しない(改正債権法と保証実務100)

⑤他人の事業に対する投資のための借り入れ

「事業のために負担した貸金等債務」に該当するか否かは、借主が「自らの事業」に用いるために負担した貸金等債務を意味する。したがって、投資や融資が事業として行われるものでない限り、該当しない。

 

事業貸金等債務には準消費貸借契約が含まれるか

 「貸金等債務」(金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務)という概念は平成16年改正時に根保証に関する規定を申請した際に設けられた概念である・・・これを前提として検討していくことになる。

原則・・・準消費貸借契約にもとづく返還債務は「貸金等債務」に含まれない。

例外・・・事業のために負担した貸金等債務を目的として準消費貸借が成立した場合は旧債務との間に同一性が認められ、「事業のために負担した貸金等債務」と同じ扱いとなる(改正債権法と保証実務102)。

 したがって、企業の売掛債権について準消費貸借が締結される場合は本条の適用はないが、従来の貸付金に対して準消費貸借が締結される場合は本条の適用がある。

 

保証契約締結後に主債務の契約が変更になった場合には、新たに保証意思宣明公正証書を作成する必要がある?

 必要になる可能性がある。

 保証人にとって不利益となる変更(債権額、利息等の増加、弁済期日の短縮等)の場合には、改めて保証意思宣明公正証書を作成する必要がある。一方で、保証人にとって有利となる変更(債権額、利息等の減少、弁済期日の延長等)の場合には、作成する必要はない。また、保証人の口述内容でないもの(根保証の場合の利息等)の変更の場合も必要ない。

 

保証契約を変更する場合、どのようなときに保証意思宣明公正証書を作成しなければならないか

 保証人の責任を加重する場合で、変更の対象が保証意思宣明公正証書の法定の口授事項(465の6第2項)であれば保証意思宣明公正証書をあらためて作成しなければならない(改正債権法と保証実務166)。

 根保証契約の更新、延長の場合も保証意思宣明公正証書を作成する必要がある。

様態例

・元本確定期日を変更して延長する場合

・債権者と債務者の基本契約の期間が合意により延長され、債権者と保証人との合意により延長された基本契約を基礎として生ずる債権も主債務の範囲に含めるとするなど

 これらは保証意思宣明公正証書の法定口授事項に該当すると考えられるので、あらためて保証意思宣明公正証書を作成する必要がある。

 

新法施行日前に、事業のために負担した貸金等債務を保証する保証契約が締結されていた場合に、新法施行後に保証意思宣明公正証書を作成しなければならない場合

 施行日後に主債務の内容を変更し、その効力を保証人にも及ぼすためには保証人の同意が必要。その場合に、変更の対象が保証意思宣明公正証書の法定の口授事項であれば保証意思宣明公正証書の作成を要する。

 保証契約の内容を変更する場合も、変更の対象が保証意思宣明公正証書の法定の口授事項であれば保証意思宣明公正証書の作成を要する。

 

裁判所における和解の場において保証契約を締結する場合も保証意思宣明公正証書の作成が必要か

 和解契約にもとづく和解金支払債務が事業のために負担される場合であっても、当該債務を保証する保証契約の締結に際して保証意思宣明公正証書は不要だが、和解契約の内容が事業のために負担した貸金等債務を含んでいる場合には保証意思宣明公正証書が作成されない限り、保証は無効である。

 これは、裁判上の和解の場合も同様である。

 

「公証人による意思確認手続」は実際にはどうする?

A1①保証予定者は主債務者から財産状況等の情報提供を受ける。

   a)主債務者の財産及び収支の状況

   b)主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

   c)主たる債務の担保治して谷提供し、又は提供しようとする者があるときは、その旨及びその内容

  ②公証役場に連絡し、保証意思宣明公正証書作成日(保証契約締結日から前1ヶ月以内)を決める。

  ③必要書類を公証役場に送る。

   a)本人確認資料(印鑑証明書・運転免許証等)

   b)保証意思宣明書

   c)主債務の契約書、保証契約書

   d) 主債務者から提供を受けた財産状況等の情報の書面

  ④保証意思宣明公正証書作成日に公証役場に出頭する。

    代理人は不可

    第三者の立会は不可

    ただし、介助者を除く(債権者・主債務者は不可)

  ⑤保証予定者が述べる事項を口述

  ➅公証人の確認

  ⑦保証意思宣明公正証書の作成

  ⑧保証意思宣明公正証書の交付(正本1通、謄本1通)

 

保証予定者の口述は契約書等を見ながら述べても良い?

 契約書等を参考にすることは可能。

 ただし、保証予定者が、漫然と文字を読み上げるだけでは足りず、その内容や意味・リスクを理解していることが必要。

 もっとも「契約書のとおり」と述べるにとどまる場合は、「保証予定者の口述」とはみなされず、公正証書を作成することはできない。

 なお、保証予定者が契約書等を参考にして口述した場合は公証人の確認は慎重になると思われる。

 

保証意思宣明公正証書の作成後、主債務の契約内容が変更されて、保証契約を締結した場合には保証契約は無効?

 無効。

 変更後の内容が保証人にとって有利不利となるかに係わらず無効となる。内容が変更になった場合には、保証契約締結前に当該保証契約の内容に沿った保証意思宣明公正証書の作成が必要となる。

 

費用はどのくらいかかる?

 保証意思宣明公正証書作成1件あたり1万1000円。

 交付される正本謄本の用紙1枚につき250円が必要。

 

公証人による意思確認手続きが適用除外される主債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者の「準ずる者」とは?

 持分会社の業務執行社員や宗教法人の責任役員など。

 法人の重要な業務執行を決定する機関又はその構成員の地位にあるものとされている。一時取締役や代行者は該当しない。また、登記上取締役となっていても実質取締役としての役目を果たしていない者も該当しない。

 

保証意思宣明公正証書の作成が不要となる主債務者が個人である場合の主債務者と「共同して事業を行う」者とは

「共同して事業を行う」とは、組合契約など事業を共同で行う契約などが存在し、それぞれが事業の遂行に関与する権利を有するとともに、その事業によって生じた利益の分配がされるなど事業の成功・失敗に直接的な利害関係を有する場合を指す(一問一答他)。

例 友人や知人が共同でカフェ等の飲食店を経営する場合

  複数の弁護士、税理士等が共同で事務所等を経営する場合

 アパート経営を行っている者の法定相続人は、具体的な事実関係にもよるが、通常はこのような共同経営者に当たらず、「共同して事業を行う者」には該当しないと考えられる(改正債権法と保証実務)。

 

Ⅳ まとめ

 公証人による意思確認手続が必要であるにもかかわらず、保証意思宣明公正証書を作成していないと、保証契約は無効となる。根保証の際の主債務の債権の範囲には注意をする必要がある。債権の範囲に「貸金取引」「手形貸付取引」等が含まれる場合には、その保証人は公証人による意思確認手続が必要となるので注意が必要。

 また、適用除外に該当するとして、保証意思宣明公正証書を作成していなかったが、実際には適用除外に該当せず、保証契約が無効ということもあり得る。適用除外に該当するか否かも注意すべき点となる。もっとも、保証意思宣明公正証書の作成が不要な場合でも、保証意思宣明公正証書の作成を公証人に嘱託することはできるので、作っておくのも良いかもしれない。作成する際に公証人による保証予定者の理解の確認や説明がなさるので、後々のトラブルの予防になると思われる。

 保証を付ける際や保証人のいる契約の変更更新に時には契約書はしっかり読む必要がある。契約書を確認することで、公証人による意思確認手続が必要か否かのアドバイスが可能となる。

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カテゴリー: 会社法務 民法を学ぼう
古橋 清二

古橋 清二 について

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立

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