事業承継

事業承継税制が抜本的に拡充されました

 中小企業経営者の年齢分布のピークが60歳台半ばとなり、高齢化が急速に進展する中で、日本経済の基盤である中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上は喫緊の課題となっています。そのため、事業承継税制について、10年間の特例措置として、各種要件の緩和を含む抜本的な拡充が行われました。

特例事業税制のあらましについては国税庁のホームページからダウンロードすることができます
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201804/01.pdf

贈与税・相続税の納税猶予の特例を創設!

 非上場中小企業の先代経営者が次世代経営者に株式を贈与した場合又は先代経営者から次世代経営者が株式を相続した場合の贈与税又は相続税について、納税を猶予する特例が設けられました。
 平成30年度税制改正において、中小企業の事業承継を促進するために、10年間の期限付きで要件緩和等が行われた非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例が創設されました。
 この特例により、後継者が承継会社の代表権を有していた者から、贈与又は相続もしくは遺贈により承継会社の非上場株式を取得した場合には、その取得した全ての非上場株式に係る課税価格に対応する贈与税又は相続税の全額について、その後継者の死亡の日等までその納税が猶予されます(一定の要件をクリアした場合に限られます)。

適用条件が緩和されました!

(1)対象株式数要件
 本特例では対象株式数の上限がなくなりました。

(2)納税猶予額
 本特例では、対象株式に係る課税価格の100%に対応する相続税が猶予されます。

(3)雇用確保要件
 従前は、5年間平均で贈与等の開始時の雇用の8割以上を維持することが必要でしたが、本特例では、雇用確保要件を満たさない場合でも雇用確保要件を満たせない理由について認定経営革新等支援機関の意見が記載された書類を提出することにより特例を受けることが可能となります。

(4)贈与者等要件
 従前は、対象株式の贈与者等は、先代経営者1名のみでしたが、本特例では、後継者が先代経営者以外の者から贈与等により取得する対象株式についても対象となりました。

(5)後継者要件
 従前は、対象株式の贈与等を受ける者は、代表権を有する後継者1名のみでしたが、本特例では、代表権を有する複数人(最大3名)の後継者で議決権総数の上位3位までの者(同族関係者と併せて議決権総数の過半数を有する者で議決権の10%以上を有する者)への承継についても対象となりました。

(6)相続時精算課税の適用対象者
 後継者が贈与者の推定相続人や孫以外の者であっても相続時精算課税制度の適用を受けることができることとなりました。

(7)会社の要件
 本特例では、経営承継円滑化法の認定を受けた会社であることに加え、平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に都道府県に特例承継計画を提出した会社が対象となりました。

(8)譲渡、合併、解散時等の納税猶予額の減免
 本特例では、株式の売却額や廃業時の株式評価額を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税猶予額との差額が減免されます。

時間的制限があります!

 本特例は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用されます。しかし、特例制度を適用するには、特例承継計画を平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に都道府県に提出する必要があります。

事業承継に向けた5つのステップ

ステップ1 事業承継に向けた準備の必要性の認識

 事業承継に向けた早期・計画的な準備着⼿を促すため、「事業承継診断」や、⽀援機関と経営者の間の事業承継に関する対話の促進等に取り組むことが重要です。

ステップ2 経営状況・経営課題等の把握(見える化)

事業のみえる化
 事業の将来性の分析や会社の経営体質の確認を行い、会社の強み・弱みを再認識します。これにより取り組むべき課題を洗い出します。

資産の見える化
 経営者の個⼈資産について会社との貸借関係などを確認します。後継者に残せる経営資源を明確にできれば、後継者の不安も解消されます。

財務の見える化
 適切な会計処理を通じて、客観的な財務状況を明らかにします。これにより銀⾏や取引先からの信用度も上がり、資金調達・取引の円滑化にもつながります。

ステップ3 事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)

 現経営者が将来の事業承継を⾒据え、本業の競争⼒強化等の経営改善を⾏うことで、後継者が後を継ぎたくなるような経営状態への引き上げを図ります。

ステップ4 事業承継計画策定(親族内・従業員承継)・マッチング実施(社外への引継ぎ)

具体的な計画を策定する
 自分を取り巻く状況を踏まえて、事業承継を着実に進めていくために、具体的な「事業承継計画」を策定します。事業承継計画は、経営者が⼀⼈だけで考えるものではなく、後継者や親族などと⼀緒に、取引先や従業員、⾦融機関等との関係などを考慮しながら、策定することが必要です。

中⻑期的な経営⽅針や目標を設定する
 事業承継計画では、自分の中⻑期的な経営⽅針、⽅向性、⽬標などを設定しながら、その中に事業承継の行動計画を盛り込みます。
 事業承継後に事業
運営を担うのは後継者であるため、後継者抜きの計画策定はありえません。後継者が実行できる取組まで事業承継後の目標として織り込むことができれば、経営者交代があっても、切れ目のない⼀貫した事業展開が期待できます。

ステップ5 事業承継・M&A等の実行

 株式・事業⽤資産や経営権の承継を実⾏します。

 中小企業庁は、今こそ中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継を図ることが肝要であるとの認識に立ち、平成28年に「事業承継ガイドライン」を策定しました。そこで、上記のように、「事業承継ガイドライン」に沿って5つのステップを解説しています。

課題の抽出

後継者の選び方・教育方法
・いつまでに決めるか
・選ぶ際の注意点は
・教育の⽅法は

M&Aによる事業承継
・どのような⼿法があるか
・⼿順や流れは
・価格の算定⽅法は
・個⼈事業主の場合は

株式の分散防止
・後継者に経営権を集中させる⼿法
・遺⾔書を書く場合の注意点
・遺留分とは何か
・種類株式で何ができるのか

税負担への対策
・⽣前贈与にはどんな課税があるか
・相続税や贈与税はいくらするのか
・事業承継税制とはなにか

第三者への事業承継の手法

M&A
 Mergers&Acquisitionsの略で「合併と買収」という意味ですが、広い意味では、企業の経営権を他社から取得する、または譲渡するという意味で使われています。

株式譲渡
 買い手が売り手企業の発行済み株式を譲り受けることで会社の経営権を譲り受ける方法です。 中小企業のM&Aでは、全株式(100%)を譲渡する形が一般的となっています。社名や取引先、賃貸人、従業員等との契約関係が従前どおり引き継がれるため事業価値が毀損せずに引き継がれ、手続きも簡単なので最も多く用いられる方法です。なお、株式の譲渡益に対し、20%(所得税15%、地方税5%)の譲渡所得税がかかります。
 
事業譲渡
 会社の全部あるいは事業の一部の部門や資産などを他の会社に譲渡する方法です。法人を残しておきたい場合や株式譲渡が難しい場合、事業の一部の譲渡を行なうときなどには良く用いられる方法です。譲渡の対価は株主ではなく会社が取得するため、譲渡益に対しては法人税が約40%がかかりますので、時期や税金対策についても考えておく必要になります。
 事業譲渡は、取引先との契約や、従業員との雇用契約、賃貸借契約等も個別に締結しなおす必要がありますので十分な検討をしておく必要があります。

当事務所の強み

 当事務所は、会社法を最大源活用して事業承継を計画している企業の支援を行っています。具体的には次のような支援計画を立案し、実行のサポートを行っています。

株主対策

 分散してしまった株式を再度集約する方法として、会社又は後継者が株主から株式の買取りを行うのが通常です。その場合は、株主と交渉の上、任意に買取りを行うことになりますが、価格が折り合わなかったり、そもそも買い取りを拒絶される可能性もあります。このような場合の対応策として、次の二つの方法が考えられます。

以下、工事中

相続人等に対する売渡請求(会社法第174 条)
 あらかじめ定款に定めておくことにより、相続等で株式が移転した場合、会社が当該株式の相続人に対し、会社へ売り渡すよう請求することができる制度である(法人である株主の合併により株主が変更する場合等を含む)。
この制度を利用するにあたっては、主に以下の点に留意すべきである。
・請求期限
相続等があったことを知った日から1 年以内に、株主総会の特別決議を
経て請求する必要がある。
・売買価格
株式の売買価格は当事者間の協議によるが、協議が調わない場合、裁判
所に売買価格決定の申立てをすることができる(申立ては売渡請求の日か
ら20 日以内に行わなければならない。)。
・財源規制
会社の純資産から資本及び法定準備金等を控除した額(分配可能額)の
範囲内でのみ株式の買取りを行うことができる(会社法第461 条)。
・後継者に対する買取請求の可能性
現経営者について相続が発生し、株式を後継者が取得した場合、非支
配株主が主導して会社から買取請求が行われる可能性がある。このとき、
買取請求を行うか否かを決する株主総会において、当該後継者は利害関
係株主として議決権を行使することができないため、請求するか否かは
後継者以外の株主による議決に委ねられる。結果として、後継者が取得
した株式について買取請求が行われ、支配権を失ってしまうおそれがあ
る(当然、財源規制による制限はある。)。

イ)特別支配株主による株式等売渡請求(会社法第179 条)
想定される利用者 会社
株式会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主は、他の株主の全員に
対し、その保有するその会社の株式の全部を自己に売り渡すことを請求する
ことができる。
手続きの大まかな流れは以下のとおりである。

② 経営者保証に関するガイドラインに即した対応
想定される利用者 会社
従来、金融機関は、経営への規律付けや信用補完の観点から、経営者に連帯
保証を求めることが多く、その際には、当然経営者の経営能力に対する評価が
前提とされている。事業承継においては、一般に経験やノウハウに乏しい後継
者が事業を承継するため、事業承継時の保証の解除に対しては消極的であった。
前述の通り、保証・担保の承継は事業承継時の大きな課題のひとつであるが、
経営者保証の課題・弊害を解消するため、日本商工会議所と一般社団法人全国
銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」により、
平成25 年12 月に「経営者保証に関するガイドライン」(以下、「経営者保証ガ
イドライン」という。)が策定された。
中小企業の経営者保証に関する契約時及び履行時等における中小企業、経営
者及び金融機関それぞれの対応についての中小企業団体及び金融機関団体共通
の自主的・自立的な準則である経営者保証ガイドラインには、保証契約締結時この方法を採るためには経営者が単独で90%以上の株式(議決権)を保有し
ている必要があるものの、この要件を満たす場合には、経営の安定化の観点か
ら有用な手法であると言える。
④ 名義株の整理
平成2 年の商法改正前においては、株式会社を設立するためには最低7 人の
発起人が必要であり、各発起人は1 株以上の株式を引き受けねばならなかった。
そのため、当時設立された株式会社にあっては、設立当時から株主が7 人以上
存在し、株式の分散が進んでいることが一般的であった。
上記の商法の規定等に起因して、他人の承諾を得て、他人名義を用いて株式
の引き受け・取得がなされることがあり、名義上の株主と実質的な株主が異な
る、いわゆる名義株が多く発生した。
このような状況を放置しておくと、まったく見ず知らずの“自称”株主から、
突然株主の権利が主張され、実質的な株主との間で紛争となることがある。ま
た、将来的にM&A 等を行おうとした場合、名義株主が真の株主であることを主張して譲渡を拒否する、あるいは対価を要求する等、様々な問題が生じ得る。
そのため、事業承継に先立ち、株主名簿の整理を行って株主を確定し、名義
株が存在する場合には、名義上の株主との間で合意を結ぶなど、権利関係を明
確にしておくべきである。
なお、名義株の株主については判例上、「名義人すなわち名義貸与者ではなく、
実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となるものと解するのが相当」
として、形式的な名義ではなく、実質的な株主を基準に判断するものとしてい
る(最判昭和42 年11 月17 日民集21 巻9 号2448 頁)。

⑤ 所在不明株主の整理
想定される利用者 会社
上記④のような過程で株式が分散し、さらに相続が発生するなどして人間関
係が希薄化したため、株主名簿上の株主の所在が不明となってしまう事例が頻
発している。
所在不明株主が存在する場合、突然株主権が主張される事態が想定される他、
株式譲渡の方法で会社を売却しようとする場合に、全株式を譲渡することがで
きないため、買い手にとっては全株を取得できず、いつ株主権を主張されるか
わからない、というリスクを負うことになる。その結果、会社を売却すること
ができないという事態も想定される。
また、全株主の同意が必要な行為をする場合や、株主総会の招集通知等の手
続きを行うためにも、株主の所在を把握しておく必要があることは当然である。
そのため、現時点での株主を確定し、その所在地や連絡手段を確保しておく
必要がある。
なお、5 年以上継続して会社からの通知が到達しない株主が所有する株式は、
一定の手続きを経て会社が処分(競売・売却・自社株買い)することができる
(会社法第197 条)。この手段をとるには公告・通知といった会社法上の手続き
を行わなければならないため、速やかに弁護士等の専門家に相談すべきである。

(4)債務・保証・担保の承継
① 対応の必要性
中小企業経営者においては、事業承継を行うにあたり、債務・保証・担保等
の円滑な承継にも留意が必要である。会社が負っている債務は事業承継にかか
わらず会社が負い続けるものの、経営者個人が借入れを行って会社に貸付けて
いる場合や、会社の借入れについて現経営者が個人(連帯)保証を提供してい
る場合、自己所有の不動産等を担保に提供している場合等には、これらの処理
を検討しなければならない。
対応を行わない場合、事業承継後も現経営者がそれらの負担を追い続けるこ
ととなり、相続が発生した場合には債務を相続人間でどのように負担するのか
という困難な問題が生ずることとなる。例えば、現経営者が個人で事業用資金
を借り入れており、当該借入債務を相続する際に後継者が単独で引き受けよう
としても、これには金融機関等の債権者の同意が必要となる。従って、将来の
相続時のリスクを回避するため、事業承継時に現経営者から後継者へ、事業用資金の借入債務や担保に供している事業用資産も併せて承継しておく必要があ
る。
債務・保証・担保については、その処理を確実に行わなければ、円滑な事業
承継の実現が困難となるばかりか、かかる負担が重荷となり、後継者が承継を
断念するおそれすらある。
事業承継に向けて、経営改善等を通じた資金繰りの改善により債務の圧縮を
図りながら、金融機関との信頼関係を構築することが重要となる。
② 経営者保証に関するガイドラインに即した対応
想定される利用者 会社
従来、金融機関は、経営への規律付けや信用補完の観点から、経営者に連帯
保証を求めることが多く、その際には、当然経営者の経営能力に対する評価が
前提とされている。事業承継においては、一般に経験やノウハウに乏しい後継
者が事業を承継するため、事業承継時の保証の解除に対しては消極的であった。
前述の通り、保証・担保の承継は事業承継時の大きな課題のひとつであるが、
経営者保証の課題・弊害を解消するため、日本商工会議所と一般社団法人全国
銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」により、
平成25 年12 月に「経営者保証に関するガイドライン」(以下、「経営者保証ガ
イドライン」という。)が策定された。中小企業の経営者保証に関する契約時及び履行時等における中小企業、経営
者及び金融機関それぞれの対応についての中小企業団体及び金融機関団体共通
の自主的・自立的な準則である経営者保証ガイドラインには、保証契約締結時
の主たる債務者、保証人及び債権者の対応と並んで既存の保証契約の適切な見
直しについて記載され、その中で、事業承継時における経営者の個人保証(経
営者保証)の取扱いについて記載している。そこでは、事業承継に際し、中小
企業による情報開示や金融機関(債権者)による保証契約の必要性等に関する
検討など、同ガイドラインに沿った対応が求められている。
経営者保証ガイドラインの策定後、独立行政法人中小企業基盤整備機構の実
施したアンケートによれば、経営者保証を解除したいと考えている中小企業経
営者のうち、金融機関に対して、経営者保証の解除を申し出、又は相談を行っ
た経営者は、全体の2 割である(図表20)。そして、金融機関に対して経営者の
個人保証の解除の申し出・相談を行った中小企業経営者のうち、4 割の経営者が、
金融機関が保証解除に応じたと回答している(図表21)。
一般に、自ら経営者保証の解除を申し出る中小企業は、その申し出の際には経営者保証ガイドラインに即した対応(詳細は後述)を行っている、もしくは
その努力を行っている事業者であると考えられるが、申し出の結果、多くの経
営者が、経営者保証の解除や解除困難な理由の丁寧な説明など、一定の効果を
得られている。
このように、経営者保証ガイドラインは中小企業経営者の個人保証の問題に
関し、新しい動きを生み出しているものと言える。
【中小企業側に求められる対応について】
第一に、経営者保証(後継者含む)に依存しない資金調達を希望する中小企
業経営者には、以下の対応が求められる。これらの対応は、事業承継に向けた
準備段階の「見える化」(21 頁)、「磨き上げ」(24 頁)とも関連するものである。
例えば、会計要領を活用した経営状況の見える化や、本業の競争力強化(磨き
上げ)による財務基盤の強化等は、結果として経営者保証ガイドラインの求め
る対応につながるものと考えられる。
①法人と経営者との関係の明確な区分・分離
②財務基盤の強化
③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保第二に、事業承継時の対応として、現経営者及び後継者は、対象債権者から
の情報開示の要請に対して適時適切に対応する必要がある。特に、経営者の交
代により経営方針や事業計画等に変更が生じる場合には、その点についてより
誠実かつ丁寧に、対象債権者に対して説明を行うことが必要である。
【金融機関側に求められる対応について】
経営者保証ガイドラインでは、金融機関は前述の対応を図る中小企業経営者
に対して、中小企業側の経営状況、資金使途、回収可能性等を総合的に判断す
る中で経営者保証を求めない可能性、その他代替的な融資方法を活用する可能
性について、主たる債務者の意向も踏まえた上で、検討する必要がある。
また、上記の中小企業経営者に対して、経営者保証を求めることがやむを得
ないと判断されたとき等には、金融機関としては、債務者及び保証人に対する
丁寧な説明・適切な保証金額の設定を行うことが求められる。
さらに、事業承継時においては、現経営者との保証契約の解除や後継者との保証契約の締結に関し、実質的な支配権の所在や既存債権の保全状況、企業の
資産や収益力による借入金返済能力等を勘案し、必要な情報開示を得たうえで、
保証契約の必要性等について改めて検討することが求められる。

第四章 事業承継の円滑化に資する手法
1.種類株式の活用
想定される利用者 会社
(1)種類株式の概要
平成18 年に施行された現行会社法によって、種類株式活用の可能性が大きく
広がった。会社の個別的なニーズに対応して、様々な活用方法が考えられる。
近年、事業承継の円滑化を目的とした種類株式の活用が広がってきており、目
的に即した有効活用が望まれる。
種類株式とは、定款によってその種類ごとに異なる内容を定めた株式である
が、会社法では、以下の事項について異なる内容を定めることができるとされ
ている(会社法第108 条)。
上記の「株主ごとの異なる取扱い」については、近年、認知症等により現経
営者の判断能力が低下した場合への対応策としても注目されている。
具体的には、例えば株式の大半を後継者に生前贈与し、先代経営者は1株だ
け保有している状態において、先代経営者が株主である限りは議決権を100
個とする、としておき、さらに「(先代経営者)が医師の診断により認知症と診
断された場合においては、議決権は1個となる」旨を定めておけば、会社の意
思決定に空白期間が生ずることを防止することができるのである。
なお、「株主ごとの異なる取扱い」は種類株式と異なって登記されないため、
外部からその存在や内容を知られることがないというメリットもある。
(2)事業承継における種類株式の主な活用方法
① 議決権制限種類株式
先代経営者の相続財産の大部分を株式が占める場合、後継者に株式を集中さ
せると、他の相続人から遺留分の主張が行われる可能性がある。そのため、後
継者には普通株式を相続させ、他の相続人には無議決権株式を相続させること
で、遺留分減殺請求による株式(議決権)分散リスクの低減を図ることが考え
られる。
② 取得条項付種類株式
一般に、経営者以外の株主が死亡した場合、相続により株式が分散してしま
うことがある。そこで、「株主の死亡」を取得条項における条件としておくこと
で、株主が死亡した場合には会社がこれを買い取ることとし、株式の散逸を防
止することができるのである。
ただし、取得対価は分配可能額による財源規制を受けるため、注意が必要で
ある。
③ 譲渡制限株式
当該種類の株式の譲渡について会社の承認を必要とする種類の株式であり、
現在では多くの中小企業が、すべての株式を譲渡制限株式としている(そのよ
うな会社を「株式譲渡制限会社」という)。
これにより、例えば経営者以外の者がその保有する株式を、経営者にとって
は望ましくない第三者に売却しようとした場合、会社(株主総会や取締役会)
はこれを承認しない判断をすることにより、株式の分散を防止することができ
るのである。