任意整理

手続の概要


 任意整理とは、支払不能には至らない借金を、裁判手続きを使うことなく債権者と個別に交渉し、債権額を確定して弁済方法について和解する手続きです。

 任意整理にあっては、債務額を確定する前提として、過去に支払った金額について払いすぎた利息はなかったのかを精査し、法定の上限金利にもとづいて利息計算をやり直します。その結果、債務額が減る場合(例100万円の請求を受けていたが、計算の結果60万円になるような場合)、減少後の債務について、弁済しやすい方法で分割払いするなどの交渉をします。例えば、計算の結果60万円にまで減少した場合は、2万円を30回の分割払いで支払うような内容の交渉をします。

 この場合の支払額等の条件については、他の債務の状況等も踏まえ、依頼者の方々と充分に打ち合わせをしたうえで決めていくことになります。

 


任意整理のメリット


 任意整理は、次のようなメリットがあります。

① 取立てが止まる
 当事務所が債務整理を受任した旨を貸金業者やクレジット会社に通知すると、法律の規定により、債権者はご本人に取り立てをすることができません。したがって、支払いも止めて、収入の範囲で毎月いくらを支払うことができるのか、落ち着いて検討することができます。

② 和解書で差し押さえられることはない
 「債務名義」というのは、強制執行をすることができるために必要な文書のことを言います。任意整理においては債権者と和解契約を締結しますが、通常は裁判手続を使わずに直接交渉したうえで和解契約を結びます。この和解契約は「債務名義」にはなりませんので、万が一、和解契約の内容に記載されたとおりの返済ができなくなったとしても、いきなり強制執行を受けて給料や預金が差押えられることがありません。

③ 損害金のカット
 借り入れをした時に債権者と結んだ借入契約では、支払いが遅れたり債務整理をした場合には、年利20%程度の遅延損害金を支払うことになっていることがほとんどです。年利20%ということは、残金が100万円の場合には年間で20万円にもなります。
 しかし、任意整理の場合には、遅延損害金は全額免除してもらうことを目標として交渉を進めます。

④ 過払金の回収
 過去に支払った金額について払いすぎた利息があった場合、法定の上限金利にもとづいて利息計算をやり直すと、余分に支払った利息により既に残金を完済しているだけでなく、元金以上に払い過ぎになっていることがあります。これが「過払い」です。
 過払いが生じている場合には、まず、直接交渉で過払金の返還を求めますが、最近では貸金業者の経営が苦しくなっているため、ほとんどの場合、直接交渉では大幅に減額した返還額の提案しか受けることができません。
 そこで、過払いとなっている場合には訴訟を提起して回収することになります。

 


任意整理のデメリット


 任意整理によるデメリットはほとんどありません。強いてあげれば、信用情報機関に事故情報が登録されるため、今後の借り入れ、カード作成ができなくなる可能性があるということです。

 しかし、どのような債務整理をしても、原則として信用情報機関に登録されます。現在、支払いが困難な状況にあるのであれば、信用情報のことを気にするよりも債務整理を選択するのがよいと思われます。

 なお、残高が残っていても、調査の結果過払いが生じているのであれば、信用情報に事故情報が登録されることはありません。

 


任意整理の手順


任意整理は次のような手順で進めます。

① 委任契約の締結
 当事務所と、任意整理についての委任契約を締結していただきます。その際、負債の状況、生活状況等について詳しくお話をお聞きします。

② 債権者への通知
 当事務所が任意整理のご依頼を受けたことを債権者に通知します(一般的には「受任通知」と呼ばれています)。これにより、法律の規定により、債権者は取り立て行為をすることができなくなります。もちろん、弁済も止めていただきます。

③ 弁済予定額の積み立て
 現在の収入の中から、将来の弁済可能額を確認するために一定額の積み立てをしていただきます。この段階では既に弁済も止めていますので、月々安定的に支払うことができる金額を実体験として確認することができます。なお、積み立ては、依頼者ごとに開設した金融機関の口座に行っていただきます。

④ 債務額の確定
 債権者から取引履歴を取り寄せて、上限利息による再計算を行います。これにより、本当に支払う必要のある金額が判明します。

⑤ 返済計画案作成の打ち合わせ
 毎月返済金額の目処が立ち、債務額も確定したところで返済計画案作成の打ち合わせを行います。お子さんの進学などの予定も視野に入れながら、無理のない計画を立案します。

⑥ 和解交渉
 返済計画案に沿うように、債権者ごとに和解交渉を行います。合意に至った債権者との間で和解書を締結します。

⑦ 弁済
 和解書に定めた内容にしたがって、弁済を開始します。複数の債権者に弁済する場合は、当事務所で弁済を代行することができます(ほとんどの方は代行弁済しています)。代行弁済される場合は、個々の債権者に対しては当事務所から振込を行いますので、毎月、一定額(総額)を当事務所に送金していただければ結構です。