よくある質問

 当事務所では、会社の登記に関する「よくある質問」をこのホームページ上で解説しています。ご参考になればさいわいです。
 また、メールによる質問も承っていますのでご利用ください。

カテゴリー

会社法関係
株式会社設立
株式
株主総会
株主リスト
取締役
取締役会
監査役
会計監査人
資本金・計算関係
合併
登記
契約関係
公正証書
契約

 

 

▼▼株式会社設立に関する質問▼▼

  • 株式会社を設立するにはどんな項目を決めておけばいいですか

    株式会社設立の手順
     株式会社(株式の譲渡制限規定のある会社)の設立を お考えの方は、以下のスケジュール及び検討項目をご確認ください。
     当事務所においては、早ければ1日、通常は1週間程度で株式会社の設立登記を申請することができます。もちろん、電子定款を作成することにより印紙代4 万円を節約し、設立登記もオンライン申請を活用することにより、全国どこの地域にも設立申請が可能です。

    ▼▼費用
     当事務所において資本金500万円の株式会社を設立する場合の諸費用は概ね下記のとおりです。ただし、事案により異なる場合もあります。

    項  目
    報  酬
    実  費
    定款等書類作成
    21,000円
    定款認証代理
    22,000円
    51,500円
    登記申請
    30,000円
    147,000 円
    登記事項証明書1 通取得
    500円
    550円
    合  計
    73,500円
    199,050 円

    (注)報酬には別途消費税がかかります。


    ▼▼設立概要シート
     当事務所では、必要項目を効率的に記入できる株式会社設立概要シートを提供しています。ダウンロードしてお使いください。

    15 株式会社設立概要シート

    ▼▼検討事項
    (1)商号
     商号は会社の名前です。いわゆる社名です。商号には必ず「株式会社」の文字を入れなければなりませんが、位置は商号の頭(株式会社エービーシー)であっても末尾(エービーシー株式会社)であってもかまいません。
     理屈としては、商号の途中(エー株式会社ビーシー)であってもかまいませんが、そのような商号はあまり見かけません。

     商号は、日本語のほか、ローマ字(大文字及び小文字)、アラビア数字、一定の符号(「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コン マ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド、「・」(中点))を使用することができます。
     ただし、符号は,字句(日本文字を含む)を区切る際の符号として使用する場合に限って使用することができるため、商号の先頭又は末尾には使用することが できません。
     ただ、「.」(ピリオド)については,省略を表すものとして商号の末尾に使用することもできます。
     なお、「(空白)」(スペース)は使うことができません。

     もちろん、日本語とローマ字を組み合わせた商号も使用することができますので、「東京SOHO株式会社」という商号でも差し支えありません。
     以前は、同一の市区町村内に類似の事業目的で類似の名称の別の会社が存在する場合には新会社の設立はできませんでしたが、この規制は廃止されました。
     しかし、「株式会社ヤマハ浜松」など、他の企業等の著名な名称や商品名を商号に使用することは避けるべきです。使用する者にその意図がなくても、著名な企業名等を利用して不正な利益を得ているとして紛争になることもあります。

     一方、法律で商号として使用することが制限されている言葉として、病院、診療所、医院やこれに紛らわしい言葉、商工会という名称など多数ありますので注意が必要です。

    (2)本店
     
    本店所在地は会社の住所です。本店は、必ずしも会社の実際の事業所でな くてもかまいません。たとえば、事業所が賃貸物件で将来移転が考えられるような場合には、とりあえずご自宅等を本店としておけば、会社の引っ越しの都度本店移転登記をしなくてすみます。

    (3)事業目的
     会社の事業目的は、第三者が見た場合にどのような事業を営んでいる会社なのかある程度わかるような表現をしてください。
      事業目的を定める場合には、設立後すぐには行わない事業であっても、将来的に行う可能性のある事業は記載しておいた方がいいでしょう。なぜなら、もしも、 将来、事業目的に定めのない新しい事業を展開することになりますと、事業目的の変更登記をしなければならなくなり、手間とコストがかかってしまうからで す。

     また、建設業などの許認可を受ける事業を行いたい場合には、許認可を受ける官庁に、記載方法について相談してみるのもよいでしょう。さらに、許認可を必要とする事業の中には、一定の資格者の確保や経験年数などの要件を満たす必要がある場合もあります。これは事前に確認しておきたいものです。

     事業目的は、通常、末尾に「前各号に付帯する一切の事業」という記載を入れます。したがって、事業目的として記載していない業務が発生したとしても、許認可等を受ける必要のない限り、会社の事業として行うことは問題ありません。

    (4)株主
     株主とは、会社に対する資本の出資者のことを意味します。株主の人数には1人でも複数でも制限はありません。
     小規模な株式会社を設立するという前提で考えますと、おそらく、1名~3名程度の場合が多いものと思われます。

     もっとも、友人等に出資してもらって共同経営を始めたところ、後日、仲違いとなってしまったということはよくある話です。友人等に出資を依頼する際には、「失敗することもあるからそのつもりで出資して欲しい」というぐらいの気持ちを伝えるのもいいかもしれません。

     最低資本金制度が廃止されたため、出資する金額はいくらでもかまいませんが、株主総会の議決権を株式数に応じて定める関係上、発行する株式の1株あたりの発行金額(1株5万円など)をまず定め、何株の出資にするのかを決めるのがよいでしょう。実際には、最低でも、会社の運営に当面必要な資金を出資しても らうのがいいでしょう。

     したがって、パソコンと通信費、その他若干の経費しかかからず、すぐに売り上げが発生して運転資金は大丈夫ということであれば、当面は、それほど多くの出資金は必要ないのかもしれません。

     もっとも、設立後間もない会社は融資も受けにくいものです。当面の資金繰りを考えて資本金を決めてください。
     また、出資をする割合には注意を配る必要があります。経営の主導権を持つためには過半数の出資を引き受ける必要があります。

    (5)事業年度
     初年度の第1期は、会社設立の日から事業年度末日までとなります。事業年度は1年を超えることができませんが、設立後、すぐに事業年度末日が到来すると決算事務をすぐしなければならなくなってしまいます。
     したがって、事業年度は、会社設立日の前月末日などにしておく方がいいでしょう。

     また、事業年度末日後2カ月で決算の申告をすることになりますので、繁忙期のあるお仕事でしたら繁忙期を避けておくほうがいいでしょう。会社の経理を税理士に依頼する場合には、税理士にも相談しておく方がいいでしょう。

    (6)設立日
     登記を申請する日が会社設立日となります。したがって、法務局が登記の申請の受付を行わない 土曜日、日曜日、祝日を設立日とすることはできません。

     ここでいう設立日は、法律上の設立日です。対外的に会社設立を広報する日と異なっていることもよくあるようです。
     実際に開業するとなると、事業所の賃貸借契約、電話の敷設、印刷物の発注など様々な準備があります。
     しかも、賃貸借契約や電話の敷設などでは、会社の登記事項証明書などが求められることがあります。
     したがって、仮に対外的には4月1日から開業したいのであれば、3月上旬には設立登記をすませてしまう方が準備がスムーズです。

    (7)機関設計
     株式会社においては、株主総会と取締役は必ず置かなければなりませんが、取締役会、監査役、会計参与、会計監査人については設置は任意とされています。

     会計監査人は大規模な会社以外では通常置くことはありませんので、機関設計としては、取締役会、監査役、会計参与を置くかどうかという選択肢になりますが、それぞれの機関の特性を考慮して機関設計をする必要があります。
     一般的には、次のような考え方で決めればよいと考えられます。

     (A)取締役会非設置会社か、取締役会設置会社か
        (前提:大会社ではない非公開会社)
       考え方:所有と経営と一致している会社(家族経営のような場合)は
           取締役会非設置会社でよいが、他人の出資がある場合は株主
           総会の権限が限定的な取締役会設置会社の方が効率的である。

     (B)監査役を設置するかしないか
       考え方:一人株主や純粋な家族経営の会社でない場合は、業務監査権
           限(注)を有する監査役を設置する意味は大 きい。
           (注)非公開会社(会計監査人設置会社を除く)の監査役は、定款で監査範囲を会計
                 に関するものに限定することができる(法389①)。

     (C)会計参与を設置するかしないか
       考え方:計算書類の信頼性を高める必要性(融資の交渉等)がある場
           合には会計参与を設置する意味はある。

    (8)役員の任期について
     取締役、会計参与の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、監査役の任期は、原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなります。
     しかし、株式の譲渡制限のある会社は、これらを10年まで伸長することができます。

     実質的に役員の交代がなくても、任期毎に登記をし直す必要がありますので、コストの面だけを考えると、任期を長くしておく方がメリットがあります。
     しかし、将来、任期途中で役員を解任するような事態を想定すると、解任した役員から残存任期に対する損害賠償を請求されるおそれもありますので、任期が長いのが一概によいと言うこともできません。

    以上を踏まえ、任期を検討してください。

     

  • 株式会社の設立時代表取締役の選定方法はどのようなものがありますか

    ①定款に選定方法の定めがない場合
     A 非取締役会設置会社  発起人による選定
     B 取締役会設置会社   設立時取締役による互選
    ②定款に選定方法の定めがある場合
     以下のいずれかの方法を定款で定め、その方法により選定する。
     A 定款で直接選定
     B 発起人による選定
     C 創立総会による選定
     D 設立時取締役による互選
    ③上記の方法による選定がなされない場合
     設立時取締役全員が設立時代表取締役となる
    (旬刊商事法務1768号4~5頁,論点解説新・会社法千問の道標39~40頁(商事法務)参照)
    ※定款に選定方法の定めのない非取締役会設置会社の募集設立の場合、発起人による選定がされている場合であっても、設立時発行株式の募集に入ったときは、 発起人による選定の効力が失われるが、創立総会の決議により、選定方法を定款上定め、その選定方法(上記1.~3.のいずれか)により代表取締役を選定することができる。

  • 取締役会を設置しない会社の発起設立において発起人が設立時代表取締役を選定する場合、可決の要件を教えてください

    会社法第40条により、発起人の議決権の過半数の一致によるべきです。

  • 設立登記前に、事情の変更(死亡を含む)により定款で選定した代表取締役ではなく、別の取締役を代表取締役に選定したい場合、どのような手続が必要ですか

    登記申請においては,変更に係る事項を明らかにし,発起人が署名又は記名押印した書面に公証人の認証を受けたときは,変更後の定款による設立登記の 申請を受理して差し支えないとされています(18年3月31日民商第782号法務省民事局長通達4ページ)。

  • 発起設立の株式払込金の入金または振り込みは、定款作成後であれば定款認証前でも有効ですか

    出資の履行義務は定款作成後に発生するものと考えられます。したがって,その払込みは通常は定款認証後が原則と思われます。もっとも、定款作成後に払い込みがなされた場合は、認証前であっても認証に近接した時期であれば有効であると考えられます。

  • 発起設立の際の発起人の出資に係る払込は外国銀行の外国における支店の口座でもいいですか

    認められません。銀行とは、 銀行法第4条第1項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営む者とされています。外国銀行はこれに該当しますが(同法第47条第1項)、外国銀行の外国における支店は該当しません(同法第47条第2項)。このため、外国銀行の外国における支店の口座では会社法に定める払い込みとは言えません。

  • 発起人が1名の場合、発起設立の株式払込金は発起人本人名義の通帳に入金するだけでいいですか

    発起人自身の通帳に入金するだけでかまいません。あえて振込手続をする必要はありません。

  • 発起設立の株式払込金は、発起人が複数存在するときは通帳の名義人である発起人以外の発起人は振込の手続をとる必要がありますか

    発起人代表名義の通帳に入金するだけで結構です。振込でなくてもかまいません。また複数の発起人引受株式につき一括して入金したものでもかまいません。

  • 発起設立の株式払込金を超える入金または振込みがあったとしても、設立登記は受理されると考えますがいかがでしょうか

    引き受けた株式の出資に係る金銭の全額についての払込みがあったことを証する書面を添付すればよいとされています。したがって、払込金に相当する額が払込みされたことが確認できれば良く、株式払込金を超える入金または振込みがあったとしても登記は受理されます。

  • 株式払込金の全額が払い込まれたが、その後払込金の一部が引き出された場合、「全額の払込みがあったことの証明書」(商登47Ⅱ⑤)はどのように作成すればいいか

    「全額の払込みがあったことの証明書」で出資全額の履行がされたことがわかればいいので、払込金が引き出され、残高が払込金額に満たない通帳写しの添付がされたとしても、登記申請は受理されるものと考えます。

  • 払い込みがあったことを証する書面として、出資金以上の残高がある発起人の預金通帳の写しではだめですか

     株式会社(発起設立のみ)又は合同会社設立登記で、払い込みがあったことを証する書面に「発起人の預金通帳の写し」を使う場合について、発起人一人だけの場合でも、預金残高があるだけではだめで、必ず、定款作成時から代表者の証明書作成日の間に「出資金全額の入金が記帳された預金通帳の写し」でなければなりません(平成18年3月31日付民商第782号法務省民事局長通達第2部第2(3)オ)。
     また、合同会社についても単に残高があるだけではなく、払込があったことが分からなければなりません。なお、合同会社の払込は、会社法上金融機関に限定されていません。

  • 分割で払い込むことは可能ですか

    株式会社(発起設立のみ)又は合同会社設立登記で、払い込みがあったことを証する書面に「発起人の預金通帳の写し」を使う場合について、ATM等では限度額があるため出資金の全額を一括で振り込みないし入金することが不可能なことが考えられます。このような場合も含め、分割して払い込まれたものでも可能と考えます。

  • 設立の払込用の通帳は新規に作成しなければなりませんか

    株式会社(発起設立のみ)又は合同会社設立登記で、払い込みがあったことを証する書面に「発起人の預金通帳の写し」を使う場合について、発起人の既存の通帳に入金ないし振込みがなされれば結構です。設立用に新規に作成する必要はありません。

  • 預金通帳には、誰がいくら入金したかわかるようになっていなければいけませんか

    株式会社(発起設立のみ)又は合同会社設立登記で、払い込みがあったことを証する書面に「発起人の預金通帳の写し」を使う場合について、入金した通帳には、誰がいくら入金したか分かるようなっていなくてもかまいません。例えば発起人の代表者が全員の分を一括して預け入れた場合のように、払込金の全額が入金されていることが確認できれば、氏名は確認できなくても結構です。

▼▼株式に関する質問▼▼

  • 株式の名義書換の方法を教えてください

    「株式の名義書換」と一言で言いましても、株券発行会社における場合(これも、実際に株券を発行している場合と、実際には株券を発行していない場合に分かれる)と、株券不発行会社の場合とでは、まったくその方法が異なります。

     また、公開会社であるか、非公開会社であるかにもよって、譲渡承認手続きの要否が異なります。さらに言えば、公開会社であっても上場株式として保管振替機構の利用が強制される場合と、そうではない場合があります。

     このように、様々なケースが考えられますが、ここでは、近年最も多いと想像される、非公開の株券不発行会社について考えたいと思います。なお、非公開会社であるために、譲渡承認手続が必要となりますが、譲渡承認手続きについては解説の対象としていませんのでご了解ください。

     株式の名義の変動は、株主の意思により変動が生じる場合と、株主の意思にかかわらず変動が生じる場合とが考えられます。前者の典型的な例としては、売却や贈与があります。また、後者の典型的な例としては相続が考えられます。

     さらに、前者のケースであっても、旧株主が名義書換に協力的な場合と、そうではない場合があります。

     以上を整理すると、①株主の意思により変動が生じ、名義書換にも協力的な場合、②株主の意思により変動が生じたが名義書換に非協力な場合、③株主の意思に関係なく変動が生じる場合の3パターンということになります。

     株券不発行会社という前提ですから、株券はありません。したがって、株式の名義書換に応じるためには、①のケースは旧株主の意思確認が不可欠になります。
     通常は、名義書換請求書類に旧株主が会社に対して届出をしている印鑑を押印してもらう方法によればいいでしょうが、印鑑票を整備していない会社にあっては、旧株主の実印を押していただき、印鑑証明書の提出を求める必要があります。

    ②の場合には、旧株主が非協力ですから、新株主の申出だけにより名義書換をしなければなりません。したがって、旧株主の意思が擬制されていることが明らかな書面(具体例として確定した判決正本)を提出していただく必要があります。

    ③の場合は、旧株主の意思を確認する書類は不要ですが、変動の事実が生じたことを証明する書類を提出していただく必要があります。相続にともなう遺産分割により株式を承継した場合を例にすれば、相続人全員の実印が押印された遺産分割協議書と全員の印鑑証明書、当該相続人が被相続人の権利義務を承継した者全員であることを証明するための戸籍謄本等を提出していただくこととなります。

     実は、以上ご説明した書類は、不動産登記を申請する際に要求される添付書類とほぼ同じ考え方です。実際に名義書換請求があった場合には、以上の点を留意して取り扱ってください。

  • 所在不明株主を整理する方法があると聞きましたがどのような手続ですか

     しばしば、株主様の所在がわからず、また、これがために管理コストを支出しなくてはならないのでなんとかしたい、といったご相談をいただくことがあります。
     このような状況を解決する一例として、所在不明株主の株式売却制度があります。

     この制度は、①株式会社が当該株式の株主に対してする通知又は催告が5年以上継続して到達せず当該株主に対する通知又は催告を要しなくなったとき、かつ、②当該株式の株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったときは、株式会社は、当該株式を競売し、かつ、その代金を当該株式の株主に交付することができる、というものです。
     なお、いわゆる無配の株式会社であっても、この制度を利用できます。

     売却の方法は、原則として競売ですが、例外として、市場価格がある株式については、市場価格として法令で定められる額で、市場価格なき株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、当該株式を売却することができます。

     一方、所在不明株主の株式を売却するときは、当該所在不明株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨及び法令で定める事項を公告するとともに、当該所在不明株主及びその登録株式質権者に対し各別に催告しなければならない、とされていますので、スケジュールを十分に検討することも必要です。

     裁判所の許可を得て売却した際の売却代金は、買受会社等から株主に支払われなくてはなりませんが、受領しないことは明らかですので、法務局で供託してしまうとよいでしょう。供託しないと、買受会社等は当該株主が現れるまで代金を管理しなければならないことになってしまいます。

     一例として、非公開会社である取締役会設置会社が、所在不明株主の株式を売却する際のスケジュールを挙げておきます。

    取締役会の決議
    ※所在不明株主の売却手続承認
         ↓
    官報公告・個別催告※会社法198条1項2項4項
         ↓
    株式売却許可申立※会社法197条2項
         ↓
    (売却許可決定)
         ↓
    取締役会の決議
    ※譲渡承認
         ↓
    買受に伴う供託
    ※発行会社の最寄りの法務局

     さて、当該株主が後日現れた場合は、当該株主は供託所に還付請求をすることができます。また、供託者が供託不受諾を理由に取り戻しをして、当該株主に交付してもいいでしょう。

     なお、会社・法人代表者の資格や印鑑の簡易確認手続は、現在は次のようになっているので注意が必要です。
     ① 供託窓口で発行される「依頼書」の受け取り
     ② 証明書発行窓口に「依頼書」を提出
        印鑑カードが必要
     ③ 証明書等の受け取り
     ④ 証明書等を供託窓口に提出

  • 株券不発行会社へ移行する方法を教えてください

    1 はじめに
     株券の電子化に伴い、株券の紛失・盗難等のリスク回避及び株券管理の省力化のため、定款を変更して株券不発行としたいという相談を受けることがあります。

     株券不発行会社に移行することにより、今まで発行していた株券は無効となりますが、書面としての株券が無くなるのみで、株主各位の権利義務に何ら影響を与えるものではありません。
     従って、従来どおりの権利義務が維持されますので、株主総会での議決権、剰余金の配当等の権利や出資責任を失うことはありません。

     一方、書面による株券発行の手続費用等を省略でき、実務における効率化をはかることができます。

     しかしながら、株券不発行会社とするには定款変更が必須であるため、株主総会の決議を経て、現在発行中の株券が無効となる旨の公告及び各株主への通知を行う必要があります。

     少々手続が煩雑となりますので、皆様に、株券不発行会社とするための一連の流れを大まかでありますが、現に株券を発行している会社を例として説明致します。

    2 株主総会における定款変更決議
     前述のとおり、株券不発行会社とするには株主総会の特別決議を経て、定款変更する必要があります。
     特別決議の議決要件は、原則として、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。

     そこで、事前に株主の理解を得るため、株券不発行会社に変更しても、株主各位には、なんらリスクが生じないことの説明をしておくことが望ましいです。

    3 株券不発行会社となる旨の公告・通知
     株券不発行会社となることを、会社の定款に定められた公告方法によって行う必要があります。
     さらに、各株主への個別通知を行うことも必要です。
     これらの公告・通知は、株券不発行会社となる効力発生日の2週間前までに行う必要があります。

    4 登記申請手続
     株券不発行会社とする旨の定めの効力発生日から2週間以内に、登記申請手続きを行う必要があります。

     登記申請手続きに必要となる書類は、下記のとおりの3点となります。
     1 株主総会議事録
     2 公告したことを証する書面
     3 委任状

    5 終わりに
     今回説明させていただいた一連の流れは、現実に株券を発行している会社となります。
     株券発行会社であっても、現実に株券を発行していない会社の場合は、若干、流れが異なりますのでご承知おきください。

  • 株主の相続人等への売渡請求はどのようにすればいいですか

    ■相続人等に対する株式売渡しの請求の定め
     会社法第174条には、「株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。」と規定しています。
     この規定は、株主に相続が発生した場合に、その株主の相続人が複数いる場合、株主数が増加することにより株式が分散することにより、株主総会の決議がスムーズに行われなくなってしまうことを防止するために規定されました。
     また、株式売渡し請求の対象となる株主は、相続その他の一般承継により株式を取得した者であるため、合併により消滅会社の有していた株式を取得した承継会社も含まれます。そして、株式会社がこの売渡し請求を行うには定款の定めが必要となっています。

    ■定款変更を行うには株式会社が、この規定を定款に定めるには株主総会において、いわゆる特別決議の要件が必要となり、具体的には、原則として議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が可決要件となります。

    ■具体的な売渡し請求の方法
     実際に相続人等に売渡し請求を行っていく場合は、株主総会を開催し、売渡し請求を行う対象株式の種類及び数と、その株式を有する者の氏名を定めます。この承認決議の要件は、株主総会の特別決議を要し、売渡請求の対象となる株主は議決権を有しません。
     なお、この相続人等に対する売渡し請求は、買取請求を行う株式会社が相続等の一般承継が知った日から1年以内に行う必要があるため、注意が必要です。

    ■株式の売買価格の協議
     株式会社が株式の売渡し請求をした場合、請求を受けた株主はそれを拒むことはできませんが、売買価格については、株式会社と当該株主の協議によって決定することができます。協議によって価格が決定しない場合、株式会社又は請求を受けた株主が、株式会社が売渡し請求を行った日から20日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立を裁判所に申立てを行うことができます。この場合、裁判所が売買価格を決定することになります。

    ■定款に売渡し請求の定めを設ける際の注意点も
     この定めには株式分散のリスク防ぐことができる利点の裏返しとしての注意すべき点があります。
     例えば、株主数2人の株式会社で、一人が95%、もう一方が5%の株式の取得割合である場合に、95%の株式を有している株主に相続が発生した場合、売渡し請求の決定の有無の株主総会は、95%の株主には議決権がなく5%の少数株主のみで決議が行われるため、95%の大株主が株式を手放す必要が生じてしまいます。このため、実際に定款にこの定めを設けることを検討される場合は、会社の状態をよく確認され当事務所にご相談ください。

  • 株式数と資本金の関係

     たとえば、会社設立の場合、1株の発行価額5万円、20株発行、資本金100万円などと、発行価額×株数=資本金という式が成り立つケースが大半です。

     ところが、この公式はもろくも崩れます。たとえば、この会社がその後、新株式を発行する場合に、新たに株主となる人には1株5万円で買って貰いたいが資本金に入れるのはその半額、発行する新株式は10株とします。この募集株式発行が完了した暁には、発行済み30株、資本金125万円ということになり、30株に5万円を乗じても125万円にはならなくなります。

     つまり、発行済みの株式の数と資本金の額は何の関係性もないのです。したがって、資本金の増減と関係なく株式の数を変更することができますし(株式の併合、消却、分割)、株式の数とは関係なく資本金を増加したり減少したりすることができます。

     現在、株式は無額面ですが、以前はほとんどの会社で額面株式が採用されていたため、額面×株数=資本金という式が成り立たないと何か気持ち悪いと感じる人も多かったようです。そのため、最低資本金制度をクリアするために配当可能利益を資本金に組み入れる時など、そのタイミングとあわせて株式分割をして額面×株数=資本金という式を「意地でも維持する」というケースもありました。

     株式は、種類株式でなければ1個1個の権利内容に差がないわけですから、会社法務の世界では、実は、それがいくらで発行されたかということはあまり意味がありません。その株主が何%の割合を所有しているかが大事なのです。

  • 当社の株式は私が95%、友人が5%所有しています。この場合、その友人の所有する株式を強制的に買い取る方法があると聞きましたが、どのような方法でしょうか

     お尋ねのケースでは、株式の全部を売り渡すように株式等売渡請求制度を利用することができます。ただし、この制度の利用により感情的対立を生じることもありますので、まずは買い取りを直接打診してみてはいかがでしょうか。

    株式等売渡請求制度の概要

    株式等売渡請求制度とは、特別支配株主が他の全株主に対して株式の全部を売り渡すよう請求することができる制度で、「キャッシュアウト」などとも呼ばれています。
     株式等売渡請求を活用することにより会社の株主が一本化され、長期的視野に立った柔軟な経営の実現、株主総会に関する手続きの省略による意思決定の迅速化、株主管理コストの削減などのメリットが発生します。また、事業承継の前提として株主の一本化に利用することも考えられます。
     ここで、特別支配株主とは、その会社の議決権の九割以上を有している者をいいます。ただし、他者との合算はできないため、自己の有する株式だけで九割以上を有している必要があります。
     お尋ねのケースはこの要件を満たしていますが、仮に満たしていない場合には他者から株式の譲渡を受けるなどして要件を満たす必要があります。
     また、九割以上を有しているという要件は、①株式等売渡請求時、②取締役会での承認時、③取得日のそれぞれにおいて充足していなければなりません。
     対象となる会社には制約はなく、株式に譲渡制限の付いている非上場会社も対象です。

    売渡請求の手続

    売渡請求をするときは、特別支配株主は、対価の額やその算定方法、取得日などを決め、対象会社に対してその通知をする必要があります。
     対象会社は、取締役会でこれを承認するかどうかを判断しますが、取締役会は、売渡請求の条件が適正であるかどうか、対価が交付される見込み等について確認をする必要があります。
     対象会社が、取締役会で売渡請求を承認すると、特別支配株主にその旨通知するとともに、取得日の20日前までに売渡株主に一定の事項を通知します。これによって売渡請求の効果が発生します。
     そして取得日において、株式の移転の効果が発生します。
     売渡請求に不服のある株主は、価格決定の申立ができ、また、法令違反や著しく不当な対価等の場合には差し止め請求をすることもできます。

    感情面にも配慮を

    株式等売渡請求の制度は、大企業においては、対価が適正であれば合理性を持つ場合が多いものと思われます。なぜなら、そのような会社においては、株式を所有する意味は会社の資産を間接的に保有する意味合いが強く、株式等売渡請求制度はこれを換価するひとつの手段と考えられるからです。
     一方、中小企業においては、わずかな比率の株式を所有し続ける背景には、友人や親戚関係、共同して創業をした者として会社と関係を持ち続けていたいといった感情的な側面がある場合もあり得ます。
     お尋ねのケースでは、株式等売渡請求をすることによって新たな感情的な対立を生み出す可能性も考えられます。そこで、まずは、株式の買取りを直接交渉してみて、それでも買取りに同意されない場合には売渡請求手続きをしてみてはいかがでしょうか。

  • 当社は株主が五十名いますが、郵便物が届かない株主が五名おり、生存の有無もわかりません。こうした株主の管理も面倒ですのでこうした株主の株式を買い取ることはできないのでしょうか

    所在不明株主の株式売却制度の利用を検討しましょう

     「株主に連絡がとれない」こうしたご相談をいただくことがしばしばあります。こうした声に対してはいくつかの対処方法が考えられますが、一定の要件を満たしている場合には所在不明株主の株式を強制的に売却する制度を利用することも考えられます。

    制度の概要

     株主の管理コスト削減のため、会社が、株主名簿に記載された住所に宛てて差し出した通知等が五年以上継続して到達しなかったときは、会社は、当該株主についてそれ以降は通知をする必要はないとされています。
     例えば、株主総会の招集通知が五年以上継続して届かなかった場合には、それ以降は招集通知を送付しなくてもいいということになります。
     もっとも、その場合でもそのような株主についても株主としての管理を省くことはできません。
     しかし、当該株主の所在を特定できないことについて会社や他の株主には何らの責任がないにもかかわらず、その管理費用を他の通常の株主の負担において賄うのは不合理です。
     そこで、所在不明株主の株式について競売等による売却又は会社による買受けをすることを認める制度が設けられています。

    二つの要件を満たすことが必要

     所在不明株主の株式売却制度を利用するためには、①当該株式の株主に対する通知又は催告が五年以上継続して到達せず当該株主に対する通知又は催告を要しなくなったこと、 ②当該株式の株主が継続して五年間剰余金の配当を受領しなかったことの二つの要件を満たす必要があります。
     ①は、前記のように株主総会招集通知が五年以上継続して到達しなかったという場合が考えられます。②については、配当を行っていない事業年度があってもかまいません。

    売却の方法

     当該株式の売却は原則として競売によりますが、市場価格のない株式は、裁判所の許可を得て競売以外の方法により売却することができます。
     また、市場価格がある株式については市場価格で売却することができます。
     所在不明株主の株式を売却するときは、当該所在不明株主その他の利害関係人が所定の期間内に異議を述べることができる旨を公告するなど、一定の手続きが必要となります。
     売却代金は、買受会社等から株主に支払う必要がありますが、もともと所在不明で受領しないことは明らかですので、法務局に供託をすることができます。

    まずは株主名簿の適正な管理を

     所在不明株主の株式売却制度を利用する以前の問題として、株主名簿が備え置かれていなかったり、管理が十分ではない会社も多いようです。
     また、株主総会自体が開かれておらず。招集通知も発送していない会社も少なくないようです。
     そのような会社では、株主名簿の調製から行う必要がありますので、司法書士に指導を仰ぐとよいでしょう。

▼▼株主総会に関する質問▼▼

  • 当会社の100%子会社の臨時株主総会を開催するにあたり、議決権行使をすることができる株主を確定するために基準日を設定し、公告をすることが必要でしょうか。なお、子会社の定款には「当会社は、取締役の過半数の一致によりこれと異なる日現在の株主名簿に記載された株主が、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使すべき株主とすることを定めることができる。この場合には、その日の2週間前にこれを公告するものとする。」と定められています。

    ご質問のケースでは基準日を設定する必要はないものと考えます。

     株主総会に出席して議決権を行使することができる株主は、本来であれば議決権行使時点、すなわち株主総会当日の株主とするのが原則です。しかしながら、株主が大勢で日々変動する会社において株主総会当日の株主を確定するのが困難です。

     そこで、そのような会社では、前もって一定の日に株主名簿に記載又は記録された株主に対して議決権を与える基準日制度を採用して議決権を行使することができる株主を確定しているのが実情です。

     お尋ねのケースは、100%子会社ということですから、通常は株主に異動はなく、株主総会当日の株主は容易に確定できるものと考えられます。定款の規定も基準日を「定めることができる」と規定していることから、基準日を必ず定めなければならないということではありません。したがって、基準日を定める必要はないものと考えます。

     また、付け加えれば、招集手続を経ていない場合でも、株主全員が出席して総会を開催することに同意した場合には全員出席総会として、その決議は株主総会の決議としての効力を有します(最一判昭和46.6.24民集25巻4号596頁等)。したがって、この要件が整った場合には招集手続きを経ることなく有効に株主総会を開催することもできます。

  • 株主総会議事録、取締役会議事録には誰が記名押印すべきですか

     株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。

    会社法の規定
     まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。

     次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。

     なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。

     そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。

    「出席した取締役」とは誰か
     法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
     さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。

    3つのケースで考えてみましょう。
    ①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
    ②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
    ③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合

     これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。

     なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。

  • 株主総会議事録、取締役会議事録には誰が記名押印すべきですか

     株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。

    会社法の規定
     まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。

     次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。

     なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。

     そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。

    「出席した取締役」とは誰か
     法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
     さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。

    3つのケースで考えてみましょう。
    ①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
    ②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
    ③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合

     これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。

     なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。

  • 議事録上、株主総会の招集の手続が法令又は定款に違反していることが明らかな場合、どのように登記を申請したらいいでしょうか

     議事録の記載により、株主総会の招集の手続が法令又は定款に違反していることが明らかな場合があります。たとえば、招集期間が定款に違反して短期間であることが議事録の記載から明らかである場合です。

     このように、招集の手続が定款に違反している場合、株主等は決議取り消しの訴えを提起することができます。しかし、いつまでも不安定な状態にしておくことはできないため、訴えの提起は決議の日から三箇月以内にしなければならないとされています。

    (参考)会社法831条抜粋
     次の各号に掲げる場合には、株主等は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。
    一  株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

     そこで、決議の日から三箇月以内に上記の議事録を添付して登記の申請がなされた場合は、「登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき」として、却下することとされています(商業登記法24条10号)。

     しかし、決議の日から三箇月以内に訴えが提起されなければ取り消されることはありませんので、その場合には、訴え提起のないことの証明を裁判所で発行してもらい、それを添付して登記申請することになります。なお、この訴えは本店を管轄する地方裁判所の専属管轄であるので、当該裁判所で証明書を発行してもらうことになります。

    (参考)(提訴期間経過後の登記)
    商業登記法第25条  登記すべき事項につき訴えをもつてのみ主張することができる無効又は取消しの原因がある場合において、その訴えがその提起期間内に提起されなかつたときは、前条第十号の規定は、適用しない。
    2 前項の場合の登記の申請書には、同項の訴えがその提起期間内に提起されなかつたことを証する書面及び登記すべき事項の存在を証する書面を添附しなければならない。この場合には、第十八条の書面を除き、他の書面の添附を要しない。
    3 会社は、その本店の所在地を管轄する地方裁判所に、第一項の訴えがその提起期間内に提起されなかつたことを証する書面の交付を請求することができる。

  • 株主総会の決議事項にはどんなものがありますか

     会社法295条1項では、「株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議することができる。」と定めていますが、同条2項で、取締役会設置会社においては、「株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。」と定めています。つまり、1項が適用されるのは取締役会非設置会社です。

     会社法の定める取締役会設置会社における株主総会の決議事項としては、以下のようなものがあります。
    ・定款の変更(法466条)
    ・合併·会社分割·株式交換·株式移転(法783条1項,795条1項,804条1項)
    ・事業譲渡·譲受、子会社株式の譲渡(法467条1項)
    ・資本·準備金の減少(法447条1項,448条1項)
    ・解散(法471条3号)
    ・会社継続(法473条)
    ・組織変更(法776条1項)
    ・取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選任·解任(法329条1項,339条1項)
    ・報酬等の決定(法361条. 379条,387条)
    ・責任の免除(法425条1項)
    ・株式の併合(法180条2項)
    ・剰余金の配当(法453条)
    ・自己株式の取得(法156条)
    ・全部取得条項付株式の取得(法171条1項)
    ・募集株式·新株予約権の有利募集(法199条3項, 201条1項,238条3項, 240条1項)
    ・計算書類の承認(法438条2項)など

     また、会社法以外の法令が定める株主総会の決議事項としては、以下のようなものがあります。
    ・解散後の株式会社による会社更生手続開始の申立て(会社更生法19条)
    ・保険会社の合併等(保険業法165条の3,165条の10)など

  • 法律等に定めのない総会決議の効力は?

     取締役会設置会社では、法律または定款に定めていない事項について決議をしても無効です。
     近年では、買収防衛策の導入を決議する例がありますが、法的には効力はありません。もっとも、株主の意思を表明しているという意味では意義のあることです。

  • 当社の定款では、取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度にかかる定時株主総会終結の時までと定めており、今月の定時総会で任期満了となります。しかしながら、取締役は家族のみの同族会社ですので、任期を10年の伸ばしたいと思います。経費節減のため、今回の登記をせずに現任の取締役の任期を伸ばすことはできますか。

    できます。今回の定時総会で、取締役の任期を10年とする定款変更決議をしてください。現任の取締役の任期は今回の定時総会の終結の時までですが、その任期が到来する直前に任期を伸長する決議がなされることにより、総会終了時に任期満了とはならず、あと8年、任期が続くこととなります。
     なお、定款変更が現任の取締役にも適用されることを明確にするために、定款変更議案を上程する際にその旨を説明しておく方が誤解もなく、わかりやすいかと思います。

  • 3月31日が事業年度末日で、定款で事業年度末日から3カ月以内に定時株主総会を開催することになっています。ところが、経理処理の問題で決算がまとまらず、ようやく10月に株主総会を開催することができることとなりました。この場合、招集通知には定時株主総会、臨時株主総会のいずれを表示すべきでしょうか。

     いくつかの考え方があるようですが、私見では、総会を開催する会社が定時か臨時かを定めればよいと考えます。仮に、6月に開催されるべきであった定時株主総会で役員の任期が満了すべきであった場合には、当該役員の任期は6月末日で任期満了となり、10月の総会で後任役員が選任されて就任するまでの間は取締役としての権利義務を承継することとなります。
     この場合、後任役員が就任するまでは任期満了の登記はできず、また、登記をすべき法定期間の初日は後任役員が就任した日となります。

  • このたび退任する取締役に対し、退職慰労金とてして不動産を給付することは可能ですか? また、可能である場合、不動産の名義変更の登記原因はどのようになるでしょうか。

     退職慰労金として不動産を給付することは可能です。退職慰労金の決定は、株主総会で決議をする必要がありますが、必ずしも金銭の支給ではなく、会社が所有する不動産を与えることも可能です(会社法361条1項3号)。この場合の不動産の所有権移転登記を申請をするときの登記原因は、「年月日退職慰労金の給付」とするのが相当であるとの質疑応答が出されています(登研790号)。
     おそらく、会社法施行以前は、退職慰労金として金銭を支給する旨の決議しておいて、その代物弁済として不動産を与え、不動産の名義変更も「年月日代物弁済」と登記原因として登記を申請していたことが多いと思われます。会社法で金銭以外の報酬が認容されたことにより、上記の質疑応答が出されたものと思われます。

  • 取締役会設置会社の利益相反取引の承認は株主総会決議で代替できますか?

    登記研究755号に次のような質疑応答があります。

    問 取締役会設置会社であるA株式会社の代表取締役甲が同じく取締役会設置会社であるB株式会社の取締役でもある場合に、甲がA株式会社名義でB株式会社に不動産を現物出資してB株式会社の発行する募集株式を引き受ける行為は、A株式会社と甲の利益が相反する行為であるから、当該不動産の所有権の移転の登記の添付情報として、当該取引を承認したA株式会社の取締役会議事録を提供することを要すると考えますが、いかがでしょうか。
     また、B株式会社については、当該現物出資を受け入れるに当たり、既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ないことから、B株式会社の取締役会議事録の提供を要しないと考えますが、いかがでしょうか。

    答 前段、後段とも、御意見のとおりと考えます。

     このケースは、A株式会社にとっては取締役甲のためにA株式会社の株式を現物出資するわけだから、甲とA株式会社の利益が相反することになります。したがって、問の前段についてはそのとおりだと思われます。
     また、B株式会社にとっても、取締役である甲に対し募集株式を割り当てることになるから利益相反になると考えられます。しかし、「既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ない」との考えは疑問が残ります。

     取締役会設置会社における利益相反の承認は、取締役会で承認することを要します(会社法365条1項)。「株主総会の承認を得ている」ということですが、当該決議は利益相反承認の決議ではなく、募集株式発行の決議であると考えられます(B株式会社が非公開会社であれば、株主総会で募集株式の発行を決議する必要がある(会社法199条))。そもそも取締役会設置会社であるわけですから株主総会の決議事項は法定されています。なんでも決議することができるわけではなく、利益相反取引の承認は取締役会で行うべきです。そもそも、株主総会における募集株式発行の決議と取締役会における利益相反決議とは決議要件が全く異りますので、株主総会決議をもって利益相反決議があったものとみなすのは無理があるのではないでしょうか。それとも、この質疑応答について私の読み方が間違っているのでしょうか。

▼▼登記申請書に添付する株主リストに関する質問▼▼

  • 「株主リスト」とはどのようなものですか

     商業登記申請の際に、登記すべき事項につき、①株主又は種類株主全員の同意を要する場合、 ②株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合に、申請書に添付すべき以下の事項を証明する書面である。

    ①株主又は種類株主全員の同意を要する場合
     a.株主全員の同意を要する場合
     証明書に記載すべき事項は「株主全員の氏名又は名称」「住所」「各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。)」「議決権の数」である。
     b.種類株主全員の同意を要する場合
     当該種類株主全員について、上記a.と同様の内容が証明書に記載すべき事項である。

    ②株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合
     証明書に記載すべき株主は、株主全員である必要はなく、登記すべき事項について決議をした株主総会においての総株主(種類株主総会の決議を要する場合には、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議において行使することができるものに限る。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であって、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数でよい。
     a.10名
     b.その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が3分の2に達するまでの人数

     なお、会社法第319条第1項(同法第325条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があったものとみなされる場合も同様である。証明書に記載すべき事項は、株主の「氏名又は名称」「住所」「当該株主のそれぞれが有する株式数及び議決権数」「当該株主それぞれが有する議決権に係る当該割合」である。

  • 平成28年10月1日以前に決議された場合でも、「株主リスト」の添付は必要となりますか

     施行日以降になされた登記申請については、一律に同一の添付書面に基づき登記されることが相当であるとされ、経過措置は置かれていない。

     この点は、商業登記規則等の一部を改正する省令附則2 (平成28年4月20日付官報第6760号3頁)において「この省令の施行前にした登記の申請については、この省令による改正後の商業登記規則第61条第2項又は第3項(これらの規定を他の省令において準用する場合を含む.)の規定にかかわらず、なお従前の例による」と記載されていることからも読み取ることができる。

     そのため、例えば数年前に株主総会において決議がなされていたものの、登記を申請することを失念していた場合においても、株主リストの添付は必要となる。

  • 「株主名簿」と「株主リスト」は違うものですか

     今回改正の商業登記規則第61条2項及び3項における、いわゆる「株主リスト」とは、会社法第121条の「株主名簿」とは同一ではなく.「株主名簿」のうち主要な株主に関する情報が記載されたものであり、登記申請の添付書類として提出されるものである。

     また、改正後の商業登記規則第61条第3項では「株主リスト」という文言が記載されているわけではない。

     因みに、会社法第121条の「株主名簿」においては「株主の氏名又は名称及び住所」「保有する株式の数」「株式取得日」が記載事項であり、 さらに株券発行会社の場合には「株券番号」も記載事項とされている。一方、株主リストには、 「議決権の数」「議決決権割合」も記載事項とされており、その記載内容が異なる。

  • 議決権数の割合で上位10名を記載するとのことですが、議決権の第10位の者が複数名いる場合はどのように記載するのですか

     議決権数第10位の株主全員の記載が必要となる。

     保有議決権数が同数の株主が複数いる場合は、同順位株主全員を記載すべきであり、上位となる10名の株主が11名以上となる場合は、その11名以上の数の株主を記載することになる。

  • 「株主リスト」は、株式会社の上場・非上場を問わず、すべての株式会社に義務づけられるのですか

     上場・非上場を問わず、全ての会社に「株主リスト」が義務付けられている。なお 一定の要件を満たす場合は、有価証券報告書の大株主の状況欄や法人税の確定申告の際に作成する同族会社等の判定の明細書を添付した「株主リスト」作成することができる。

  • 「株主リスト」に記載する株主は、いつの時点の株主ですか

     株主総会において議決権を行使することが出来る株主を記載すべきであり、基準日を定めた場合は基準日における株主を記載することになる。

     基準日を定めなかった場合には株主総会当日の株主となる。

  • 株主の情報が把握できていないことがあった場合 「株主リスト」はどうすればよいですか

     「株主リスト」は、株主名簿の記載等により会社が把握している情報をもとに作成される。

     法務省は、適法に株主総会が開催され、その旨の議事録が作成されていながら、 「株主リスト」のみ作成できないという事態は想定し難いと考えているようであり、例えば、登記申請を懈怠していた事案において、株主総会時の株主が判明しないなどと記載した上申書を添付することによる救済措置は検討していないようである。

     そのため、株主リストの作成ができない場合には、登記申請は却下されるものと考えられる。

     したがって、現在の株主の氏名等をもとに、過去の株主総会までに行われた株式の譲渡や相続の状況を確認の上、株主総会時の株主の情報の把握に努める必要がある。なお、株主の情報の把握に当たっては、税務署において、確定申告書の閲覧をし、その別表2を確認することも有益と考えられる。

  • 株主総会議事録等の内容として「株主リスト」の必要的記載事項が記載されている場合、当該記載を援用することができますか

     援用することができると考えられる。100%子会社や株主が特定少数である中小企業の実務としては、株主総会議事録の定番の記載内容として「株主リスト」の必要的記載事項を網羅しておくとよいであろう。

     逆に、閲覧申請者の利害関係による閲覧可能部分(商業登記規則第21条第2項第3号)が株主総会議事録にのみ及び、「株主リスト」には及ばないこともあり得るので、株主総会議事録とは別に書類を作成する方がよいとも言える。

  • 株主に相続が発生している場合に、「株主リスト」にはどのように記載しますか

     「株主リスト」にどのように記載すべきかは、対象となる株主総会の開催に当たり、当該会社が誰を株主として取り扱ったのかに従い記載することとなる。

     株主に相続が発生し、遺産分割協議が未了である場合、当該株主が所有していた株式は、共同相続人の共有となるから、株主の氏名及び住所としては、当該共同相続人全員の氏名及び住所を列挙することになる。

  • 基準日前に株主に相続が発生し、株式会社もそれを承知していましたが、当該基準日までに遺産分割が未了であった場合、「株主リスト」にはどのように記載しますか。基準日までに遺産分割を了していたとしても、株式会社が株式の承継人が誰であるかを知らなかったときはどうでしょうか。

     基準日前に株主に相続が発生し、当該基準日までに遺産分割が未了であったときは、株式は共同相続人の共有である。よって、権利行使者の指定の通知の有無を問わず、「株主リスト」には、共同相続人全員を記載する。

     基準日までに遺産分割を了していたとしても、株式会社が株式の承継人が誰であるかを知らなかったときは、同様である。

  • 基準日前に株主に相続が発生し、当該基準日までに共同相続人が遺産分割を了しており、株式会社も株式の承継人は誰であるかを承知していたが、株主名簿の名義書換えが未了であった場合「株主リスト」にはどのように記載しますか

     株主総会の招集手続の時点までに株式の名義書換えを了していれば、株式会社は、当該株式の承継人を、議決権を行使することができる株主として取り扱うことになるので「株主リスト」には、当該承継人を記載する。

     株主総会の招集の時点までに株式の名義書換えが未了であった場合には、株式会社が名義書換未了の承継人を株主として取り扱ったときは、当該承継人を記載し、そうでないときは、被相続人の氏名等を記載する。

  • 基準日前に株主に相続が発生していたが、株式会社がそれを知らないまま当該基準日を経過している場合、「株主リスト」にはどのように記載しますか

    株式会社は、当該株式会社が基準日現在において認識していた情報を記載すればよいので、被相続人の氏名等を記載する。

  • 基準日後に相続が発生したときは、「株主リスト」にはどのように記載しますか

    基準日後に株主に異動が生じたとしても、株式会社は、当該株式会社が基準日現在において認識していた情報を記載すればよいので 被相続人の氏名等を記載する。

  • 株主の現在住所が不明(株式会社が株主に対してする通知又は催告が長期にわたって継続して到達しない)である場合には、住所はどのように記載しますか。株式会社から「株主リスト」の作成のために株主の住所の調査依頼があった場合、職務上請求用紙を使用することができますか。

     株主の現在住所が不明であったとしても、株式会社が情報として把握している住所(株主名簿に記載されている住所)を記載すればよい。株式会社は、株主リストの作成のために敢えて調査する必要はない。依頼者である株式会社において、戸籍法等の第三者請求の要件を満たさないと考えられるので、職務上請求用紙の使用は、不適切な事案である。

  • 「株主リスト」の作成者(記名押印をすべき者)は誰か。登記所届出印の押印は必要ですか

     「株主リスト」の作成者(記名押印をすべき者)は、登記申請を行う株式会社の代表者であり、登記所届出印の押印を要する(平成23年6月23日付法務省民商第99号民事局商事課長依命通知)。数年前の株主総会議事録を添付する場合であっても、 「株主リスト」の作成者(記名押印をすべき者)は登記申請を行う現在の代表取締役である。

  • 複数の株主総会により、複数の登記事項が発生し、これらを一括して登記申請する場合、それぞれの株主総会議事録ごとに株主リストが必要ですか

     「株主リスト」に記載すべき株主は、当該株主総会において議決権を行使することができるものをいうから、複数の株主総会により、複数の登記事項が発生し、これらを一括して登記申請する場合には、登記すべき事項ごとに当該株主総会において議決権を行使することができる「株主リスト」を添付しなければならない。ただし、一の株主総会において、複数の登記すべき事項について決議された場合において、各事項に関して株主リストに記載すべき事項が同一である場合には、その旨注記して、一の株主リストを添付すれば足りるとされている。

  • 「株主リスト」に関する商業登記規則の規定は、持分会社その他法人への準用はありますか

     「株主リスト」の提出を要するのは、株式会社(特例有限会社を含む。.)、投資法人、特定目的会社である。持分会社、その他法人については、 「株主リスト」の提出を要しない。

  • 名義株主については、どのように記載すればよいですか

    株主名簿に記載されているとおりの氏名住所等を記載する。

  • 自己株式がある場合は、株主リストはどのように記載するのですか

     商業登記規則第61条第3項に基づく株主リストには、 自己株式の記載は要求されていない。また、 自己株式等の議決権を有しない株式の株主について株主リストに記載したとしても、当該株主についての記載は、株主リストに記載すべき人数に関するものとは認められない上、議決権割合の分母にも算入されないことになるので注意を要する。

     なお、商業登記規則第61条第2項に基づく株主リストには、 自己株式の記載が要求される。株式会社がその自己株式を有する場合には株式会社自身は、その株式会社の株主である(相澤哲ほか著『論点解説新・会社法』151頁、 2006年商事法務) とされているためである。

  • 申請書の添付書面として株主リストはどのように記載すればよいですか

     法務省のホームページでは、 「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) 」という記載例が示されている。

  • 従業員持株会はどのように記載すればよいですか

     原則通り、株主名簿に記載されているとおりの名称と住所を記載する。

     従業員持株会が民法上の組合や権利能力なき社団の場合、株主名簿には組合の名称や社団の名称とその住所を記載することができる。また、任意的に代表者名を併記することも認められている。

  • 合併や組織変更があった際の作成者(記名押印をすべき者)は誰ですか

    ①吸収合併の場合における吸収合併消滅会社の株主リスト
    ②新設合併の場合における新設合併消滅会社の株主リスト
    ③株式会社が組織変更をする場合における組織変更をする株式会社の株主リスト
    ④吸収分割の場合における吸収分割会社の株主リスト
    ⑤新設分割の場合における新設分割会社の株主リスト
    ⑥株式交換の場合における株式交換完全子会社の株主リスト
    ⑦株式移転の場合における株式移転完全子会社の株主リスト

     ①については吸収合併存続会社、②については新設合併設立会社、③については組織変更後の持分会社の代表者である。
     ④については吸収分割会社、 ⑤については新設分割会社、⑥については株式交換完全子会社、 ⑦については株式移転完全子会社の代表者である。

     いずれの場合も各株式会社の代表者の登記所届出印を押印しなければならないが法令の規定等により印鑑証明書を添付しなければならない場合を除き、各株式会社の印鑑証明書は添付を要しない。

     株主リストについては平成28年6月23日付け民商第99号商事課長依命通知において、登記所届出印を押印すべきものとされているところ、これは、登記官において株主リストの作成の真正を確認できるようにする趣旨である。

     そのため、合併、組織変更については、消滅会社等の権利義務の全てを承継し、登記の申請人となる吸収合併存続会社、新設合併設立会社又は組織変更後の持分会社の代表者が作成し、登記所届出印を押印すべきものである。

     なお、債権者保護手続に関する上申書等については、登記所届出印を押印すべき旨の規定等がないので、従来の実務のような取扱いがされているものである。今回の商業登記規則の改正による株主リストと、債権者保護手続に関する上申書等に関する従来の実務とは、同様に考えることはできないものと考えられているので、留意されたい。

  • 株主が外国人(又は外国の法人)で、その氏名及び住所等について、外国文字のみ把握している場合には、株主リストにどのように記載すればよいでしょうか

     株主名簿上、外国人株主を外国文字の表記で把握している場合には、株主リストにも外国文字で記載すれば足りる。

  • 有限会社について、登記すべき事項につき株主総会決議を要する場合にも「株主リスト」の添付が必要ですか

     有限会社については「株主リスト」を添付書面とすることを直接定めた法律の規定はありませんが、有限会社は、会社法の規定による株式会社として存続しているため(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条)、有限会社も登記すべき事項につき株主総会決議を要する場合には「株主リスト」の添付が必要です。

  • 登記すべき事項につき株主全員の同意を要する場合は、株主リストにはどのような事項を記載すべきですか

     株主全員について、次の事項を記載し、代表者が証明することが必要です。
    (1)株主の氏名又は名称
    (2)住所
    (3)株式数
    (4)議決権数

  • 登記すべき事項につき種類株主全員の同意を要する場合は株主リストにはどのような事項を記載すべきですか

     種類株主全員について、次の事項を記載し、代表者が証明することが必要です。
    (1)株主の氏名又は名称
    (2)住所
    (3)種類株式の種類及び数
    (4)当該種類株式の議決権数

  • 記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合は、株主リストにはどのような事項を記載すべきですか

     ①議決権数上位10名の株主(自己株式等の議決権を行使することができない株式を除き、株主総会に欠席し又は議決権を行使しなかった株主を含む)、または、②議決権割合の多い株主から加算して3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主について、次の事項を記載し、代表者が証明することが必要です。
    (1)株主の氏名又は名称
    (2)住所
    (3)株式数
    (4)議決権数
    (5)議決権数割合

  • 登記すべき事項につき種類株主総会の決議を要する場合は、株主リストにはどのような事項を記載すべきですか

     ①議決権数上位10名の株主(自己株式等の議決権を行使することができない株式を除き、株主総会に欠席し又は議決権を行使しなかった株主を含む)、または、②議決権割合の多い株主から加算して3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主について、次の事項を記載し、代表者が証明することが必要です。
    (1)株主の氏名又は名称
    (2)住所
    (3)種類株式の種類及び数
    (4)当該種類株式の議決権数
    (5)当該種類株式の議決権数割合

  • 株主リストに記載する株主は、いつの時点の株主ですか

     当該株主総会または株主の同意について議決権を行使できる株主です。したがって、基準日を定めた場合には、基準日現在の株主を記載することになります。

  • 外国の機関投資家について、株主名簿上は住所が正確には判明していない場合がありますが、どのように記載したらいいでしょうか

     株主の住所は,株主名簿の記載等により会社が把握している住所を記載していただければいいと思われます。

  • 株主リストに記載する議決権割合について,分母,分子はどのような数値を使えばいいですか

     分母は総株主の議決権(ただし,当該株主総会決議において行使できるものに限ります。)の数となり,分子はある株主が有する議決権(ただし,当該株主総会決議において行使できるものに限ります。)の数です。

  • 登記すべき事項につき株主全員の同意を要する場合に、株主全員の同意があったことを証する書面中に株主全員の氏名等が記載されていれば株主リストの添付は不要になるでしょうか

     株主全員の同意があった書面に、株主全員について、株主の氏名又は名称、住所、株式数、議決権数が記載されていれば その同意書を株主リストとして援用することも可能であると考えられます。

  • 設立時の1株の払込金額を金50銭とすることは可能ですか

    可能です。ただし、各株式引受人は1円以上で円単位の振込をする必要があります。

  • 株式会社設立時の出資金の払い込みは、発起人の口座ではなく、設立時代表取締役の通帳への払込でも認められますか

    発起人が設立時代表取締役に払込金の受領権限を委任した旨の証明書を添付することにより、設立時代表取締役の口座への払込みも認められます。

▼▼取締役に関する質問▼▼

  • 1名の退任取締役の後任として複数の補欠取締役を選任することができますか

     一口に補欠取締役と言っても、会社法329条2項に規定する補欠取締役の制度と、任期途中で死亡などの理由で退任した取締役の補充として後任の取締役を選任する場合の補欠取締役とがあります。このうち、会社法329条2項に規定する補欠取締役は、予め補欠取締役を選任する制度であり、事例としては多くありません。実務的には後者の補欠取締役を指すことが圧倒的に多いと思われます。
     ちなみに、会社法329条2項の規定は次のとおりです。
    (選任)
    第329条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
     2 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。

     ところで、A取締役が辞任等の理由により退任し、B及びCの2名が補欠取締役として選任された場合、両名とも「補欠」でよいのか、という問題があります。これに対して明確な先例はありませんが、補欠であるかどうかは選任機関に意思により決定しますので、1名の役員の補欠として2名を選任するという総会の意思であれば、両名とも補欠という扱いで構わないと思われます。野球やサッカーの補欠とはちょっと異なるようですね。

  • 一部の取締役についてのみ定款及び選任時の株主総会決議で任期を定めることはできますか

     有限会社の取締役について、株主から選任された取締役については任期の定めを設けず、従業員の中から選任した取締役について任期を定めることは合理的理由もあり、許されるものと考えられるとされています(登記研究772 33頁)。

     この場合の定款の定め方は、「株主総会は、取締役の選任に際し、当該取締役について、任期を定めることができる。この場合の取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」というような定めが考えられると記載されています。

     そうすると、株式会社も同様の定めをすることができると考えられます。たとえば、取締役の任期は10年である場合に、特定の取締役については株主総会の決議により任期を短縮することが考えられます。

    参照条文
    (取締役の任期)
    会社法第332条  取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
    2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(委員会設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

  • 取締役の任期を短縮する場合の議事録の記載方法と登記の方法を教えてください

     取締役の任期を短縮する場合、どのように議案を上程し、また、どのように登記を申請するか、考えてみましょう。

     例えば、任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」から「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」に変更するとします。

     まず、総会の議案の順序としては、定款変更議案を審議し、現任取締役が選任後2年以上経過しているのであれば、その次に取締役選任議案を審議することになるでしょう。なお、現任取締役が選任後1年しか経過していない場合は、定款変更決議が承認されたとしても総会時点では取締役の任期は到来していませんから、取締役選任議案を上程する必要はありません。

     一方、現任取締役が選任後2年以上経過している場合は、定款変更によって現任取締役の任期が到来することになりますから、取締役選任議案を上程する必要があります。

     さて、現任取締役選任後2年が経過している場合は、その前の議案で変更された任期が現任取締役に適用されることになりますから、現任取締役の任期は、本総会終結の時をもって満了します。
     一方、現任取締役選任後2年超、例えば5年が経過している場合は、その前の議案で変更された任期が現任取締役に適用されてしまうと、定款変更議案が可決された瞬間に任期満了になってしまいます。
     そのため、厳密に考えると、前者の場合は「重任」、後者の場合は「退任+就任」で登記する必要があるとも言えます。

     もっとも、そこまで厳格に考える必要があるかは疑問です。それは、後者の場合であっても、株主総会の意思としては「重任」として選任するのが通常であると考えられるからです。

     このような解釈の相違を避けるためには、変更定款に付則をもうけて現任取締役の任期については本総会終結の時までとするというような定めを設ける方法が考えられます。

  • 当社の定款では、取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度にかかる定時株主総会終結の時までと定めており、今月の定時総会で任期満了となります。しかしながら、取締役は家族のみの同族会社ですので、任期を10年の伸ばしたいと思います。経費節減のため、今回の登記をせずに現任の取締役の任期を伸ばすことはできますか。

    できます。今回の定時総会で、取締役の任期を10年とする定款変更決議をしてください。現任の取締役の任期は今回の定時総会の終結の時までですが、その任期が到来する直前に任期を伸長する決議がなされることにより、総会終了時に任期満了とはならず、あと8年、任期が続くこととなります。
     なお、定款変更が現任の取締役にも適用されることを明確にするために、定款変更議案を上程する際にその旨を説明しておく方が誤解もなく、わかりやすいかと思います。

▼▼取締役会に関する質問▼▼

  • 新任代表取締役の選定を書面決議で行った場合の取締役会議事録の作成方法について

     取締役会を書面決議で行った場合には、次の事項を内容とする取締役会議事録を作成する必要があります(会社法施行規則101条4項)。
    1.会社法第370条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
     イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
     ロ イの事項の提案をした取締役の氏名
     ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日
     ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
    2.会社法第372条第1項(同条第3項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
     イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
     ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日
     ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

     一方、代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、取締役会の決議によって代表取締役を選定した場合には、出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならないとされています。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りではありません(商業登記規則61条6項)。

     このため、新任代表取締役の選定を書面決議で行った場合の取締役会議事録の作成方法及び登記の添付書類は次の点に注意して作成する必要があります。

    1.旧代表取締役が取締役も退任した場合
     取締役会議事録に取締役全員が記名押印(実印)するか、各取締役の書面決議の同意書に記名押印(実印)し、全員の市町村長の作成した印鑑証明書を準備する。
    2.旧代表取締役が取締役として在任している場合
     前記1の方法による。ただし、次の方法でもよい。
     取締役会議事録に、少なくとも、議事録作成取締役及び旧代表取締役が記名押印し、旧代表取締役の押印は登記所に届出ていた印鑑を押印する。又は、各取締役の書面決議の同意書に記名押印(旧代表取締役の押印は登記所に届出ていた印鑑を押印)する。

     なお、いずれの場合も、新任代表取締役の就任承諾を証する書面には新任代表取締役が記名押印(実印)し、市町村長の作成した印鑑証明書を準備する必要があります(商業登記規則61条4項)。

  • 通信機器で行った取締役会の議事録作成方法を教えてください

    最近、「web会議システムを利用して開催した取締役会議事録はどのように作成すればいいか」というご質問を受けることがあります。
    この問題に対しては、もう10年以上前に電話会議システムについて法務省から通達が出されています。

    平14.12.18民商第3045号民事局商事課長通知
     電話会議システムにより出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり,出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることが確認できるような電話会議の方法による取締役会議事録は,適式な取締役会議事録と認められる。

     電話会議システムによる取締役会が適法とされるのは取締役間の協議と意見交換が自由にできる状況であることが前提ですので、単に会議の場にいない取締役と電話で通話し、その意見を伝達して決議をしたにすぎない場合は通達の要件を満たしていないものと考えられます。

     テレビ会議システムについては、取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよくわかるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みになっていれば、取締役会として開催することができると考えられています。
     したがって、web会議システムもテレビ会議システムと同様に考えればよいと考えられます。

     以上のように、通信機器を用いて開催された取締役会の議事録を作成する場合には、以上の通達等の要件を満たしていることを明らかにする必要があります。

     たとえば、「定刻、代表取締役〇〇〇〇は議長席に着き、本日の取締役会は、web会議システムを利用し行う旨を述べ、出席者が一堂に会するのと同等に適時・的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認した。」「以上、本日のweb会議システムを用いた取締役会は、終始異状なく議題の審議を終了したので、議長は午前○時○○分閉会を宣した。」などと記載することが考えられます。

  • 株主総会議事録、取締役会議事録には誰が記名押印すべきですか

     株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。

    会社法の規定
     まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。

     次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。

     なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。

     そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。

    「出席した取締役」とは誰か
     法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
     さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。

    3つのケースで考えてみましょう。
    ①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
    ②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
    ③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合

     これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。

     なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。

  • 取締役会設置会社の利益相反取引の承認は株主総会決議で代替できますか?

    登記研究755号に次のような質疑応答があります。

    問 取締役会設置会社であるA株式会社の代表取締役甲が同じく取締役会設置会社であるB株式会社の取締役でもある場合に、甲がA株式会社名義でB株式会社に不動産を現物出資してB株式会社の発行する募集株式を引き受ける行為は、A株式会社と甲の利益が相反する行為であるから、当該不動産の所有権の移転の登記の添付情報として、当該取引を承認したA株式会社の取締役会議事録を提供することを要すると考えますが、いかがでしょうか。
     また、B株式会社については、当該現物出資を受け入れるに当たり、既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ないことから、B株式会社の取締役会議事録の提供を要しないと考えますが、いかがでしょうか。

    答 前段、後段とも、御意見のとおりと考えます。

     このケースは、A株式会社にとっては取締役甲のためにA株式会社の株式を現物出資するわけだから、甲とA株式会社の利益が相反することになります。したがって、問の前段についてはそのとおりだと思われます。
     また、B株式会社にとっても、取締役である甲に対し募集株式を割り当てることになるから利益相反になると考えられます。しかし、「既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ない」との考えは疑問が残ります。

     取締役会設置会社における利益相反の承認は、取締役会で承認することを要します(会社法365条1項)。「株主総会の承認を得ている」ということですが、当該決議は利益相反承認の決議ではなく、募集株式発行の決議であると考えられます(B株式会社が非公開会社であれば、株主総会で募集株式の発行を決議する必要がある(会社法199条))。そもそも取締役会設置会社であるわけですから株主総会の決議事項は法定されています。なんでも決議することができるわけではなく、利益相反取引の承認は取締役会で行うべきです。そもそも、株主総会における募集株式発行の決議と取締役会における利益相反決議とは決議要件が全く異りますので、株主総会決議をもって利益相反決議があったものとみなすのは無理があるのではないでしょうか。それとも、この質疑応答について私の読み方が間違っているのでしょうか。

▼▼監査役に関する質問▼▼

  • 平成27年5月1日から、監査役の監査の範囲を権限を登記しなければならなくなったと聞きましたが、どのような会社が対象ですか

     平成26年改正会社法が平成27年5月1日に施行されましたが、実務的に影響が大きいもののひとつに、会計監査に限定した監査役を置いている会社は、その旨の登記をしなければならない、ということがあります。
     そこで、平成27年5月1日より前から存在している株式会社について、現時点で考えられる実務的な対応を検討しておきたいと思います。

    対象となる会社
    ①監査役が置かれている株式会社で、②定款で株式の譲渡について制限を設けており、なおかつ、③監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社が対象です。

    ①の「監査役が置かれている株式会社」かどうかは会社の登記事項証明書を見ていただければわかります。

    ②の「定款で株式の譲渡について制限を設けている株式会社」とは、会社の登記事項証明書に「株式の譲渡制限に関する規定」という欄があり、その内容として、「当会社の株式の譲渡については取締役会の承認を得なければならない」等と記載されている会社です。もしも、その記載がなければ、本件の改正による影響はありません。

    次に、③「監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社」かどうかですが、次の3つのケースがありますので注意深く検討する必要があります。

    a 平成18年5月1日より前に設立された株式会社で、当時、資本金が1億円以下または負債総額が200億円未満であった会社・・・これに該当する会社は、平成18年5月1日以降は監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがあるものとみなされています(その後、定款を変更して監査役の監査の範囲を限定しないこととした会社は除きます)。

    b 平成18年5月1日以降に設立した株式会社で、監査役の監査の範囲を会計に限定する定めのある会社・・・「監査役の監査の範囲を会計に限定する定めのある会社」かどうかは定款に記載されていますので確認してみてください。

    c 平成18年5月1日以降に定款変更をして、監査役の監査の範囲を会計に限定することとした会社・・・平成18年5月1日以降の株主総会議事録を確認していただく必要があります。

    会計監査限定の定めの登記
     前記の対象となる会社は、会計監査限定の定めの登記をすることが義務づけられました。ただし、上記a、bまたはcにより平成27年5月1日より前から監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社は、平成27年5月1日以降にはじめて就任または退任する監査役の登記とあわせて行えばよいとされています。また、このように役員の変更登記と併せて登記をする場合には、役員変更分の登録免許税だけを納付すれば足ります。

    登記の添付書類
     登記の添付書類は、会計監査限定の定めが設定されていることがわかる定款、又は、会計監査限定の定めの設定を決議した株主総会議事録です。

     なお、前記aに該当する会社は会計監査限定の定めを設定することを決議していませんので、その決議をした株主総会の議事録を添付することができません。その場合は会計監査限定の定めが設定されていることがわかる定款を添付することになりますが、その定款をも添付できないときは、上記の添付書面を添付することができないことを確認することができる書面を添付しなければならないこととされています。

     具体的には,代表者の作成に係る証明書(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第53条の規定により,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるとみなされた株式会社であり、かつ、定款又は株主総会の議事録のいずれも添付することができないことを記載したもの)等がこれに該当するとされています。
     しかし、このような場合には、現在の実態に合致するように定款を整備して、その定款を提出するのがよろしいかと思います。

  • 当社は平成10年設立の株式会社です。監査役の監査の範囲を会計に限定していますが、この登記をしなければならないと聞きました。実務的にどのような書類を準備すればいいでしょうか

     会社法の改正により、監査役の権限を会計に限定している株式会社は、平成27年5月1日以降に監査役の登記を申請するときまでに、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨を登記しなければならないものとされました。
     貴社は平成10年設立とのことですが、平成18年5月1日より前に設立された株式会社で、当時、資本金が1億円以下または負債総額が200億円未満であった会社は、平成18年5月1日以降は監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがあるものとみなされています。
     そこで、平成27年5月1日以降に監査役の登記を申請するときまでに、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨を登記しなければなりませんが、この登記をするためには、法務局に定款等を提出して監査役の権限を会計に限定していることを証明する必要があります。そこで、今回の改正に対する実務的な対応について提案いたします。

    提案1 平成18年5月1日以降に作成した定款を探す
     現在の会社法施行日(平成18年5月1日)以降に作成された定款には、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する」旨の規定がされていると思われます。この定款があれば、スムーズに登記をすることができます。・・・・・・コスト約7,700円※

    提案2 平成18年5月1日以降に定款を作成したことがないので新たに定款を作成する
     平成18年5月1日に会社法が施行されたため、定款に使用する文言が大幅に変わっています。今回の改正を機に、現在の法律に合致した定款を作成します。なお、定款変更は株主総会の決議事項ですので株主総会議事録に定款変更議案も記載することになります。・・・・・・コスト約35,000円

    提案3 監査役の権限についてのみ定款変更をして明記する
     現在、定款はあるが、監査役の権限を会計に関するものに限定する規定が抜けている場合、当該規定を追加することができます。なお、定款の一部変更は株主総会の決議事項ですので株主総会議事録に定款変更議案も記載することになります。・・・・・・コスト約15,000円

    提案4 定款の作成や一部変更をせずにすませる
     会社法施行日(平成18年5月1日)以降に定款を作成したことはないが、監査役の権限を会計に関するものに限定していることは間違いない場合には、その旨の上申書を提出することにより対応することができます。・・・・・・コスト約15,000円

     なお、「コスト」とは、当事務所にご依頼いただいて議事録等作成・登記を行った場合の費用であり、表示金額は「監査役の権限の登記」のみの金額(報酬等を含む)です。これとは別に、監査役の重任等の登記費用(約37,000円)が必要となります。

  • 「限定監査役」とはどのような意味ですか

     株式会社の監査役は、原則として、会計に関する監査権限と取締役の業務執行に関する監査権限とを有しています。しかし、非公開会社の場合、定款で、監査役の権限を会計に関する権限に限定することができます。このような監査役を俗に「限定監査役」と呼んでいます。
     現在は、監査役の権限が会計に関する監査権限に限定されている場合はその旨を登記することとされていますが、限定監査役であるかを判断する一助として、次の知識を有しておくとよいでしょう。
     平成18年の会社法施行時の整備法では、資本金1億円以下の旧小会社の監査役の権限については「旧株式会社がこの法律の施行の際現に旧商法特例法第一条の二第二項に規定する小会社(以下「旧小会社」という。)である場合又は第六十六条第一項後段に規定する株式会社が旧商法特例法の適用があるとするならば旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、会社法第三百八十九条第一項の規定による定めがあるものとみなす」旨の経過規定が設けられています。
     したがって、会社法施行時に資本金1億円以下の会社の監査役は、原則として限定監査役となりました。しかし、会社法389①の規定による定めは公開会社でない株式会社においてのみ置くことのできるものであることから、旧小会社のうち公開会社に相当する会社についてはこの経過規定は適用されず、会社法施行によって通常の権限の監査役を置く会社とみなされました。
     ちなみに、公開会社である旧小会社は、法施行と同時に監査役の権限が職務執行監査権限に拡大するため、既存の監査役の任期は会社法の施行と同時に満了することとなり、実際にそのような処理をしました。

     もっとも、会社法施行後に定款を変更していることもありますので、まずは定款の規定を確認してみましょう。

▼▼会計監査人に関する質問▼▼

  • 事業年度を変更した場合の会計監査人の任期について教えてください

     会社計算規則59条2項の解釈により。事業年度を変更する場合、変更後の最初の事業年度は1年6か月まで延長することができると考えられます。

    (各事業年度に係る計算書類)
    会社計算規則第59条 法第四百三十五条第二項 に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定に従い作成される株主資本等変動計算書及び個別注記表とする。
    2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
    3 法第四百三十五条第二項 の規定により作成すべき各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書は、当該事業年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければならない。

     ところで、会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされ、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなすとされています。

    会社法第338条 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
    2 会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。

     そうすると、定時総会で事業年度の変更の決議(定款変更決議)をした場合の会計監査人の任期が問題となります。

     例えば、27年3月末が事業年度の会社が27年6月の定時総会で定款変更決議をして、事業年度末日を9月末に変更するため、変更後の最初の事業年度を平成27年4月1日から平成28年9月末日にしたとします。そうすると、次の定時株主総会は平成28年12月頃ということになりますから、「選任後一年以内に終了する事業年度」が存在しないことになります。

     これについて、東京法務局の取扱は次のようにしているとのことです。

    ①事業年度を変更した後に会計監査人を選任してときは、当該会計監査人に当初からその事業年度の終了までを任せていると考えられるから、変更後の事業年度が1年以内に終了しないときでも当該事業年度に関する定時株主総会の終結の時に退任する。

    ②会計監査人を選任した後に事業年度を変更した場合には、選任時からその事業年度の終了までを任せていないことになるから、変更後の事業年度が選任後1年以内に終了しないときには、当該事業年度の変更の効力が発生した時点で退任する(上の例では24年6月の総会で任期が終わる)。

     そのため、②のケースは、みなし選任ではなく、実際に選任決議をする必要があるという取扱をしているとのことです(登記研究770号参照)。

  • 当社は会計監査人設置会社です。会計監査人は、毎年定時株主総会で自動的に再任されますが、今年の総会後に重任登記をしようとしたところ、半年前に会計監査人の法人名が変更されるいることに気がつきました。この法人名変更の登記をしていませんが、遅ればせながら変更登記をすべきでしょうか。

    会計監査人の法人自体に変更がなく単に法人名が変更されているだけであれば、変更登記をせずに、現在の法人名で重任登記をすることは可能です。もっとも、変更登記と重任登記をいっしょに申請することも可能です。どちらにするかは会社の判断で決めていただけれは結構です。
    これに対し、単なる名称変更ではなく、会計監査人である法人が他の監査法人に吸収合併されて他の名称となった場合には、変更登記を省略することはできません。


▼▼資本金・計算関係に関する質問▼▼
  • 株式数と資本金の関係

     たとえば、会社設立の場合、1株の発行価額5万円、20株発行、資本金100万円などと、発行価額×株数=資本金という式が成り立つケースが大半です。

     ところが、この公式はもろくも崩れます。たとえば、この会社がその後、新株式を発行する場合に、新たに株主となる人には1株5万円で買って貰いたいが資本金に入れるのはその半額、発行する新株式は10株とします。この募集株式発行が完了した暁には、発行済み30株、資本金125万円ということになり、30株に5万円を乗じても125万円にはならなくなります。

     つまり、発行済みの株式の数と資本金の額は何の関係性もないのです。したがって、資本金の増減と関係なく株式の数を変更することができますし(株式の併合、消却、分割)、株式の数とは関係なく資本金を増加したり減少したりすることができます。

     現在、株式は無額面ですが、以前はほとんどの会社で額面株式が採用されていたため、額面×株数=資本金という式が成り立たないと何か気持ち悪いと感じる人も多かったようです。そのため、最低資本金制度をクリアするために配当可能利益を資本金に組み入れる時など、そのタイミングとあわせて株式分割をして額面×株数=資本金という式を「意地でも維持する」というケースもありました。

     株式は、種類株式でなければ1個1個の権利内容に差がないわけですから、会社法務の世界では、実は、それがいくらで発行されたかということはあまり意味がありません。その株主が何%の割合を所有しているかが大事なのです。

  • 催告書に記載すべき計算書類に関する事項とは何のことですか

     会社の合併等の場合に債権者異議申述手続きを行いますが、原則として、官報に掲載するほか、知れている債権者には個別に催告書を送付する必要があります。その場合、催告書に記載すべき事項は法定されています。

    会社法の条文は次のとおりです。
    (債権者の異議)
    第799条
     1 略
     2 前項の規定により存続株式会社等の債権者が異議を述べることができる場合には、存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
      一 吸収合併等をする旨
      二 消滅会社等の商号及び住所
      三 存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
      四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

     この3号で、「存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの」を記載しなければなりませんが、「法務省令で定めるもの」とは会社法施行規則199条のことです。

     また、会社法施行規則199条7号は「前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容」と規定しています。立案を担当した方の解説書「千問の道標」によりますと、この規定は決算公告を怠っている場合をも想定した規定であるというです。
     そうすると、合併公告よりも前に催告書を発送するのであれば、催告書に貸借対照表の要旨を掲載すればいいということになります。

     なお、会社法施行規則199条の条文は次のとおりです。
    (計算書類に関する事項)
    第199条 法第七百九十九条第二項第三号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
     一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第七百九十九条第二項第三号の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項又は第二項の規定により公告をしている場合 次に掲げるもの
      イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁
      ロ 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で公告をしているときは、当該日刊新聞紙の名称、日付及び当該公告が掲載されている頁
      ハ 電子公告により公告をしているときは、法第九百十一条第三項第二十九号 イに掲げる事項
     二 最終事業年度に係る貸借対照表につき公告対象会社が法第四百四十条第三項に規定する措置を執っている場合 法第九百十一条第三項第二十七号に掲げる事項
     三 公告対象会社が法第四百四十条第四項に規定する株式会社である場合において、当該株式会社が金融商品取引法第二十四条第一項の規定により最終事業年度に係る有価証券報告書を提出しているとき その旨
     四 公告対象会社が会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第二十八条の規定により法第四百四十条の規定が適用されないものである場合 その旨
     五 公告対象会社につき最終事業年度がない場合 その旨
     六 公告対象会社が清算株式会社である場合 その旨
     七 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容

▼▼合併等組織再編に関する質問▼▼

  • 催告書に記載すべき計算書類に関する事項とは何のことですか

     会社の合併等の場合に債権者異議申述手続きを行いますが、原則として、官報に掲載するほか、知れている債権者には個別に催告書を送付する必要があります。その場合、催告書に記載すべき事項は法定されています。

    会社法の条文は次のとおりです。
    (債権者の異議)
    第799条
     1 略
     2 前項の規定により存続株式会社等の債権者が異議を述べることができる場合には、存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
      一 吸収合併等をする旨
      二 消滅会社等の商号及び住所
      三 存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
      四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

     この3号で、「存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの」を記載しなければなりませんが、「法務省令で定めるもの」とは会社法施行規則199条のことです。

     また、会社法施行規則199条7号は「前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容」と規定しています。立案を担当した方の解説書「千問の道標」によりますと、この規定は決算公告を怠っている場合をも想定した規定であるというです。
     そうすると、合併公告よりも前に催告書を発送するのであれば、催告書に貸借対照表の要旨を掲載すればいいということになります。

     なお、会社法施行規則199条の条文は次のとおりです。
    (計算書類に関する事項)
    第199条 法第七百九十九条第二項第三号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
     一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第七百九十九条第二項第三号の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項又は第二項の規定により公告をしている場合 次に掲げるもの
      イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁
      ロ 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で公告をしているときは、当該日刊新聞紙の名称、日付及び当該公告が掲載されている頁
      ハ 電子公告により公告をしているときは、法第九百十一条第三項第二十九号 イに掲げる事項
     二 最終事業年度に係る貸借対照表につき公告対象会社が法第四百四十条第三項に規定する措置を執っている場合 法第九百十一条第三項第二十七号に掲げる事項
     三 公告対象会社が法第四百四十条第四項に規定する株式会社である場合において、当該株式会社が金融商品取引法第二十四条第一項の規定により最終事業年度に係る有価証券報告書を提出しているとき その旨
     四 公告対象会社が会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第二十八条の規定により法第四百四十条の規定が適用されないものである場合 その旨
     五 公告対象会社につき最終事業年度がない場合 その旨
     六 公告対象会社が清算株式会社である場合 その旨
     七 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容

▼▼登記に関する質問▼▼

  • 新任代表取締役の選定を書面決議で行った場合の取締役会議事録の作成方法について

     取締役会を書面決議で行った場合には、次の事項を内容とする取締役会議事録を作成する必要があります(会社法施行規則101条4項)。
    1.会社法第370条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
     イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
     ロ イの事項の提案をした取締役の氏名
     ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日
     ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
    2.会社法第372条第1項(同条第3項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
     イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
     ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日
     ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

     一方、代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、取締役会の決議によって代表取締役を選定した場合には、出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならないとされています。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りではありません(商業登記規則61条6項)。

     このため、新任代表取締役の選定を書面決議で行った場合の取締役会議事録の作成方法及び登記の添付書類は次の点に注意して作成する必要があります。

    1.旧代表取締役が取締役も退任した場合
     取締役会議事録に取締役全員が記名押印(実印)するか、各取締役の書面決議の同意書に記名押印(実印)し、全員の市町村長の作成した印鑑証明書を準備する。
    2.旧代表取締役が取締役として在任している場合
     前記1の方法による。ただし、次の方法でもよい。
     取締役会議事録に、少なくとも、議事録作成取締役及び旧代表取締役が記名押印し、旧代表取締役の押印は登記所に届出ていた印鑑を押印する。又は、各取締役の書面決議の同意書に記名押印(旧代表取締役の押印は登記所に届出ていた印鑑を押印)する。

     なお、いずれの場合も、新任代表取締役の就任承諾を証する書面には新任代表取締役が記名押印(実印)し、市町村長の作成した印鑑証明書を準備する必要があります(商業登記規則61条4項)。

  • 株主総会議事録、取締役会議事録には誰が記名押印すべきですか

     株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。

    会社法の規定
     まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。

     次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。

     なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。

     そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。

    「出席した取締役」とは誰か
     法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
     さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。

    3つのケースで考えてみましょう。
    ①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
    ②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
    ③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合

     これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。

     なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。

  • 商業登記申請に許可書・認可書を添付するのはどのような場合ですか

     官庁の許可を要する事項の登記を申請する場合には、申請書に官庁の許可書又はその認証がある謄本を添付しなければならないとされています(商業登記法19条)。

     ただし、この場合の「官庁の許可を要する事項」とは、許可又は認可が登記すべき事項の効力要件である場合を言うとされています。したがって、営業認可のように当該許可又は認可が登記事項の効力発生要件ではない場合にはその添付を要しないとされています。

    登記先例は次のとおりです。
     非訟事件手続法第150条ノ2(商業登記法第19条)により登記申請書に添付すべき許可又は認可を証する書面は、当該許可又は認可が登記すべき事項の効力要件である場合に限り添付することを要する。(大正5.4.19、民第440号回答を変更)
    (昭26.8.21、民事甲第1,717号民事局長通達・先例集下2415頁、登研45号25頁)

    では、効力発生要件である許可又は認可にはどのようなものがあるのでしょうか。登記先例を見てみましょう。

    ●銀行が、その営業の全部譲渡及びこれを条件とする解散の決議をした場合には、当該銀行については、大蔵大臣の認可を受けてその営業の全部を譲渡したときから銀行法の適用がなくなり、当該解散の決議は、大蔵大臣の認可を受けなくても、営業の全部を譲渡したときに効力を生じることとなるので、この場合の解散の登記の申請書に、営業の全部譲渡についての大蔵大臣の認可書又はその認証がある謄本及び営業の全部譲渡をした旨の公告をしたことを証する書面が添付されているときは、これを受理することができる。
    (平10.6.2、民四第1055号民事局第四課長通知)

     この先例は、営業の全部譲渡については認可が効力要件だが、これを条件とする解散自体は、既に銀行法の適用がなくなっているので認可は不要ということを確認したものでしょう。

     また、学校教育法は次のように定めています。
    学校教育法
    第四条 次の各号に掲げる学校の設置廃止、設置者の変更その他政令で定める事項(次条において「設置廃止等」という。)は、それぞれ当該各号に定める者の認可を受けなければならない。

     なるほど、この条文を読むと、学校の設置は認可を必要とするため、いかに構造改革特区で株式会社が学校の経営を行う場合であっても、認可がなければ学校の経営を目的とした株式会社を設立することはできないということになります。営業許可ではないわけです。(平16.6.18民商第1765号)

    銀行法とそれに関する通達を見てみましょう。
    銀行法
    (営業の免許)
    第四条 銀行業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない。

    ●銀行業を営むことを目的とする株式会社の設立登記の申請には、主務大臣の免許を証する書面の添付を要しない。
    (昭31.11.15、民事甲第2,633号)

    免許は銀行設立の効力要件ではなく、営業開始の要件のようですね。

    債権管理回収業に関する特別措置法
    (営業の許可)
    第三条 債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない。

    これも営業開始の要件のように読めます。したがって、許可を受けなくても「債権管理回収業」を目的に定めることができるのでしょうか?

  • 議事録上、株主総会の招集の手続が法令又は定款に違反していることが明らかな場合、どのように登記を申請したらいいでしょうか

     議事録の記載により、株主総会の招集の手続が法令又は定款に違反していることが明らかな場合があります。たとえば、招集期間が定款に違反して短期間であることが議事録の記載から明らかである場合です。

     このように、招集の手続が定款に違反している場合、株主等は決議取り消しの訴えを提起することができます。しかし、いつまでも不安定な状態にしておくことはできないため、訴えの提起は決議の日から三箇月以内にしなければならないとされています。

    (参考)会社法831条抜粋
     次の各号に掲げる場合には、株主等は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。
    一  株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

     そこで、決議の日から三箇月以内に上記の議事録を添付して登記の申請がなされた場合は、「登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき」として、却下することとされています(商業登記法24条10号)。

     しかし、決議の日から三箇月以内に訴えが提起されなければ取り消されることはありませんので、その場合には、訴え提起のないことの証明を裁判所で発行してもらい、それを添付して登記申請することになります。なお、この訴えは本店を管轄する地方裁判所の専属管轄であるので、当該裁判所で証明書を発行してもらうことになります。

    (参考)(提訴期間経過後の登記)
    商業登記法第25条  登記すべき事項につき訴えをもつてのみ主張することができる無効又は取消しの原因がある場合において、その訴えがその提起期間内に提起されなかつたときは、前条第十号の規定は、適用しない。
    2 前項の場合の登記の申請書には、同項の訴えがその提起期間内に提起されなかつたことを証する書面及び登記すべき事項の存在を証する書面を添附しなければならない。この場合には、第十八条の書面を除き、他の書面の添附を要しない。
    3 会社は、その本店の所在地を管轄する地方裁判所に、第一項の訴えがその提起期間内に提起されなかつたことを証する書面の交付を請求することができる。

  • 事業年度を変更した場合の会計監査人の任期について教えてください

     会社計算規則59条2項の解釈により。事業年度を変更する場合、変更後の最初の事業年度は1年6か月まで延長することができると考えられます。

    (各事業年度に係る計算書類)
    会社計算規則第59条 法第四百三十五条第二項 に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定に従い作成される株主資本等変動計算書及び個別注記表とする。
    2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
    3 法第四百三十五条第二項 の規定により作成すべき各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書は、当該事業年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければならない。

     ところで、会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされ、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなすとされています。

    会社法第338条 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
    2 会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。

     そうすると、定時総会で事業年度の変更の決議(定款変更決議)をした場合の会計監査人の任期が問題となります。

     例えば、27年3月末が事業年度の会社が27年6月の定時総会で定款変更決議をして、事業年度末日を9月末に変更するため、変更後の最初の事業年度を平成27年4月1日から平成28年9月末日にしたとします。そうすると、次の定時株主総会は平成28年12月頃ということになりますから、「選任後一年以内に終了する事業年度」が存在しないことになります。

     これについて、東京法務局の取扱は次のようにしているとのことです。

    ①事業年度を変更した後に会計監査人を選任してときは、当該会計監査人に当初からその事業年度の終了までを任せていると考えられるから、変更後の事業年度が1年以内に終了しないときでも当該事業年度に関する定時株主総会の終結の時に退任する。

    ②会計監査人を選任した後に事業年度を変更した場合には、選任時からその事業年度の終了までを任せていないことになるから、変更後の事業年度が選任後1年以内に終了しないときには、当該事業年度の変更の効力が発生した時点で退任する(上の例では24年6月の総会で任期が終わる)。

     そのため、②のケースは、みなし選任ではなく、実際に選任決議をする必要があるという取扱をしているとのことです(登記研究770号参照)。

  • 当社は会計監査人設置会社です。会計監査人は、毎年定時株主総会で自動的に再任されますが、今年の総会後に重任登記をしようとしたところ、半年前に会計監査人の法人名が変更されるいることに気がつきました。この法人名変更の登記をしていませんが、遅ればせながら変更登記をすべきでしょうか。

    会計監査人の法人自体に変更がなく単に法人名が変更されているだけであれば、変更登記をせずに、現在の法人名で重任登記をすることは可能です。もっとも、変更登記と重任登記をいっしょに申請することも可能です。どちらにするかは会社の判断で決めていただけれは結構です。
    これに対し、単なる名称変更ではなく、会計監査人である法人が他の監査法人に吸収合併されて他の名称となった場合には、変更登記を省略することはできません。

  • 管轄外本店移転登記申請手続には、旧管轄における登記事項証明書を添付されはいいと聞いたことがありますが、どういう意味でしょうか

    会社の本店移転の登記手続について、次のような通達が出されています。

     本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記の申請において、当該登記申請書に記載すべき登記すべき事項(商業登記法第17条第4号)については、商業登記法第53条に規定する事項(ただし、「会社の成立年月日」を除く。)を除き、「別添登記事項証明書記載のとおり」と記載し、当該登記事項証明書と申請書とを契印する取扱いとすることとして差し支えない。また、この場合、登記事項証明書の記載内容を引用する方法によるほか、登記情報提供サービスの提供結果の内容を引用する方法によることとしても差し支えない。(平19.11.12、民商第2,451号民事局商事課長通知・登研719号154頁、月報62巻12号132頁)

     どういうことかと言いますと、会社の登記には管轄があり、本店所在地を管轄する法務局にその会社の登記情報が記録されています。今では全国から登記情報を瞬時に調査することができますが、その登記の記録は本店所在地を管轄する法務局にあるのです。

     ですから、会社が、それまでと異なる法務局の管轄の地に本店移転した場合には、登記の申請人は、新本店を管轄する法務局に旧法務局で登記されていた情報を提出する必要があるのです。この通達は、その際に、旧本店所在地で取得した登記事項証明書を添付するだけでもいいよ、ということを言っているのです。

     なお、平成29年7月6日付法務省民商第110号では次の取扱い認めています。
    「新所在地における登記の申請は, 旧所在地を管轄する登記所を経由してしな
    ければならず(商業登記法第51条第1項), 申請人の会社法人等番号は,新所在地を管轄する登記所の登記官においても明らかであるところ,同法第1 9条の3
    の趣旨に鑑みると,新所在地における登記の申請書には,登記すべき事項とし
    て,同法第53条に規定する事項(ただし,「会社の成立年月日」を除く)の記載があれば足り,その他の事項の記載を省略しても差し支えない」

     登記情報がオンラインを経由して日本全国どこからでも取得できる時代ですから、もう、管轄という概念を取り払ってもいいかもしれませんね。

  • 登記所の窓口に備え付ける商号調査端末って何ですか

    「各登記所において、(商業登記)法第27条の規定により登記することができない商号の調査のため、登記簿に記録されている事項のうち、商号、本店の所在地、目的に係る情報を提供することができ、この情報の提供は、登記所の窓口に備え付ける商号調査端末を使用して行う。」

     これは、平20.2.22民商第674号民事局長通達の一部です(登研726号127頁、月報63巻4号151頁)。

     商業登記法27条とは、同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止を規定したもので、「商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない」と規定されています。

     会社法が施行された際、それまでの類似商号制度が廃止され、同一本店同一商号だけが禁止されるようになりました。その後も、商号見出帳(だったかな?)という帳簿が法務局に備え付けられていましたが、この通達により、端末で情報提供することになったのでしょうね。

     しかし、今では、登記のオンラインシステムで事務所にいながら全国の商号検索をすることができますので、「登記所の窓口に備え付ける商号調査端末」は使ったことがありません。

     それにしても、時代はどんどん変わっていくものですね。

  • 本店を引っ越しましたが、本店移転決議は引っ越しの一ヶ月後に行いました。この場合、引っ越しの日を本店移転日として登記することができるでしょうか

     結論から言うと、できません。
     定款変更を伴わない本店移転について(つまり、定款には本店の最小行政区画が定められており、その行政区画内で本店移転したために定款変更の必要はなく、取締役の決定か取締役会決議により新本店を定めるケースという意味)、「移転後、取締役会の承認決議があつたときは、決議の日に移転したものとみなされる」という通達があります(昭35.12.6、民事甲第3,060号民事局長電報回答)。

     ですから、お尋ねの場合では、本院移転決議の日を本店移転日として登記することになります。

  • このたび退任する取締役に対し、退職慰労金とてして不動産を給付することは可能ですか? また、可能である場合、不動産の名義変更の登記原因はどのようになるでしょうか。

     退職慰労金として不動産を給付することは可能です。退職慰労金の決定は、株主総会で決議をする必要がありますが、必ずしも金銭の支給ではなく、会社が所有する不動産を与えることも可能です(会社法361条1項3号)。この場合の不動産の所有権移転登記を申請をするときの登記原因は、「年月日退職慰労金の給付」とするのが相当であるとの質疑応答が出されています(登研790号)。
     おそらく、会社法施行以前は、退職慰労金として金銭を支給する旨の決議しておいて、その代物弁済として不動産を与え、不動産の名義変更も「年月日代物弁済」と登記原因として登記を申請していたことが多いと思われます。会社法で金銭以外の報酬が認容されたことにより、上記の質疑応答が出されたものと思われます。

  • 建設関係の会社を設立する際に、事業目的の定め方で注意する点はありますか

     会社の事業目的は、第三者が見た場合にどのような事業を営んでいる会社なのかある程度わかるような表現をしましょう。
     事業目的を定める場合には、設立後すぐには行わない事業であっても、将来的に行う可能性のある事業は記載しておいた方がいいでしょう。なぜなら、もしも、 将来、事業目的に定めのない新しい事業を展開することになりますと、事業目的の変更登記をしなければならなくなり、手間とコストがかかってしまうからです。

     事業目的は、通常、末尾に「前各号に付帯する一切の事業」という記載を入れます。したがって、事業目的として記載していない業務が発生したとしても、許認可等を受ける必要のない限り、会社の事業として行うことは問題ありません。

     建設業などの許認可を受ける事業を行いたい場合には、許認可を受ける官庁に、記載方法について相談してみるのもよいでしょう。さらに、許認可を必要とする事業の中には、一定の資格者の確保や経験年数などの要件を満たす必要がある場合もあります。これは事前に確認しておきたいものです。

     ちなみに、建設工事の完成を請け負うことを営業するには、その工事が公共工事であるか民間工事であるかを問わず、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受けなければなりません。ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいこととされています。

     なお、「軽微な建設工事」とは、次の工事をいいます、
    ①建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
    ② 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事

     さて、許認可を受ける建設工事の種類は、次のとおり、2種類の一式工事と26種類の専門工事に分かれています。もしも、すぐには建設業の許可を受けないにしても、将来許認可を受けることも視野に入れて、次の種類から選択して事業目的に記載することをお奨めいたします。

    •土木一式工事業
    •建築一式工事業
    •大工工事業
    •左官工事業
    •とび・土工工事業
    •石工事業
    •屋根工事業
    •電気工事業
    •管工事業
    •タイル・レンガ工事業
    •鋼構造物工事業
    •鉄筋工事業
    •舗装工事業
    •しゅんせつ工事業
    •板金工事業
    •ガラス工事業
    •塗装工事業
    •防水工事業
    •内装仕上工事業
    •機械器具設置工事業
    •熱絶縁工事業
    •電気通信工事業
    •造園工事業
    •さく井工事業
    •建具工事業
    •水道施設工事業
    •消防施設工事業
    •清掃施設工事業

     さらに、建設業を行う場合には「産業廃棄物の収集及び運搬」を事業目的に入れるかどうかも検討する必要があります。「産業廃棄物の収集及び運搬」は、他人の出した産業廃棄物を産業廃棄物処理業者に運搬する業務で、許可が必要となります。自分の排出した産業廃棄物のみを運搬する場合には、産業廃棄物収集運搬業の許可は必要ありません。

     ちなみに、収集運搬の基準は次のとおり厳格に定められています。
    1.産業廃棄物が飛散し、流出しないようにすること
    2.悪臭、騒音又は振動によって、生活環境の保全上、支障が生じないように必要な措置を講じること
    3.収集運搬のための施設を設置する場合には、生活環境の保全上、支障を生じないように必要な措置を講じること
    4.運搬車、運搬容器及び運搬用パイプラインは、産業廃棄物が飛散、流出し、悪臭が漏れる恐れのないこと
    5.運搬車の車体の外側に、産業廃棄物の収集運搬車である旨を表示すること
    6.運搬車に、「産業廃棄物収集運搬業」許可証の写しの他、所定の書類を備えおくこと

  • 株式会社の役員の就任登記には本人確認書類が必要と聞きましたが、どのような場合にどのような書類が必要でしょうか

     株式会社、有限会社、一般(公益)社団・一般(公益)財団法人、投資法人、特定目的会社の設立の登記、取締役、監査役等の「就任」(再任を除く)による変更の登記の申請書には、就任する取締役等の印鑑証明書を添付する場合を除き、就任承諾書に記載された取締役等の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載された公的証明書(本人確認証明書)の添付が必要です。

    「本人確認証明書」の例としては次のようなものがあります。

    1 住民票記載事項証明書(住民票の写し) 個人番号が記載されていないもの
    2 戸籍の附票
    3 住基カード(住所が記載されているもの)のコピー(裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して記名押印する)
    4運転免許証のコピー(裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して記名押印する)

  • 株式会社の役員の就任登記には本人確認書類が必要と聞きましたが、就任する取締役等が外国在住の外国人である場合は本人確認証明書としてどのようなものを準備したらいいでしょうか

     外国在住の外国人については、本国官憲が発行したサイン証明書(住所の記載のあるものに限る。)のほか、身分証明書等の写しを添付することが考えられます。また、住所を記載して発行されたパスポートがあれば、その写しを添付することでもかまいません。

  • 株式会社の役員の就任登記には本人確認書類が必要ですが、再任の場合は不要と聞きました。このたび、当社の取締役が退任し、同時に監査役に就任するのですが、これは「再任」にあたりますか?

     「再任」にあたるかどうかについて、登記研究806号65頁に考え方が示されています。まず、重任は「再任」にあたるということで問題ありません。

     権利義務承継役員(任期は満了しているが香仁の役員が選任されていないため役員としての権利義務を引き継いでいる者)が再選された場合も「再任」にあたるとしています。また、任期調整などのために辞任等で退任した役員について辞任登記未了の間に再度同じ役員に再選された場合も「再任」にあたるとしています。

     一方、退任登記はなされているが、その退任された役員の名前が履歴事項証明書に搭載されている間に再選された場合や、監査役を辞任し即取締役に就任した事案において、議事録の記載から、同一人ということが確認できる場合については見解は示されていません。このような場合は、実務的には本人確認書類を添付していることが多いと思われます。

     したがって、ご質問の場合にも本人確認書類をご用意いただきたいと思います。

▼▼公正証書に関する質問▼▼

  • 相手の代表取締役が入院中の病院で重要な契約を締結することになりました。脳に後遺症があるとのことですが、後日契約の効力を争われないために公証人に依頼する方法があるとお聞きしましたが

     判断能力について主治医からの意見聴取などを行っておくとともに、契約締結の状況を保全しておくために公証人に立ち会ってもらう方法も考えられます。

    判断能力の確認

     ご心配されているのは、相手先の代表取締役の判断能力かと思われます。契約当時、判断能力が欠けていたということになると、契約の効力自体が否定される可能性があります。したがって、相手方に依頼して診断書を提出してもらうか、主治医の意見を直接聞いてみてはいかがでしょうか。  また、契約締結の状況を保全するために公証人に立ち会ってもらい、事実実験公正証書を作成してもらう方法もあります。

    事実実験公正証書とは

     事実実験公正証書とは事実に係る公正証書であり、公証人が自ら事実実験した事実を録取し、かつ、その実験の方法を記載して、写真撮影・録音・ビデオ撮影等も活用して記録に残す公正証書です。  また、公証人が依頼者等の行う行為や状況を確認して、これを事実実験の実施状況として公正証書に記録することもできます。  民事訴訟手続において、公正証書は真正に成立した公文書と推定され、高い証拠能力が付与されています。したがって、事実実験公正証書は証拠保全の方法として活用することができます。

    活用例

     事実実験公正証書はお尋ねのようなケースだけではなく、次のような様々な活用方法があります。 ①書類(発明に関する資料、,アイデア集、技術計算書類等)の封入保全 ②開発中のシステム、ソフトウェア等の封入保全 ③ホームページにおける意匠等の無断使用の状況の証拠保全 ④契約締結状況の証拠保全 ⑤違法状態の確認 ⑥携帯電話のメールの交信記録 ⑦街宣車の宣伝活動の状況 ⑧不法行為を承認する供述(会社内の横領行為等) ⑨放置自動車の状況 ⑩死亡した建物賃借人の室内残置物の状況確認 ⑪土地の境界の状況の証拠保全 ⑫貸金庫の開扉 ⑬尊厳死宣言 

    宣誓認証も活用を

     公証人の活用方法としては、事実実験公正証書の他に宣誓認証も知っておくとおいでしょう。宣誓認証は、私署証書や供述書の作成者が公証人の面前で証書に記載された内容が真実であることを宣誓し、公証人が認証したものです。したがって、宣誓認証を作成した当時にその内容を公証人の面前で供述したという証拠保全機能があります。

    公証制度のさらなる活用を

     我が国の公証制度は、関係者間に紛争が起きないように、あらかじめ法律関係や事実関係を整序し、証拠を保全して予防司法の役割を担っています。  それに加え、公証制度を利用しておけば、仮に紛争が生じてしまった場合でも、証拠として的確に活用することができます。公証制度を上手に活用していきたいものですね。

▼▼契約に関する質問▼▼
Please add some FAQ to display here