個人再生

手続の概要


 個人向の民事再生手続(以下、「個人再生」という)は、継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、債権総額が5000万円以下の方が利用することができます。なお、住宅ローンの返済計画の見直し(以下、住宅ローン特則といいます)を利用する場合には、5000万円には住宅ローンを含みません。

 個人再生は、債務者本人が、負債のうち一定額(債権総額の5分の1以上など、一定のルールがあります)について原則3年(特別な事情があれば5年まで延長可)で支払う再生計画案を作成し、裁判所に対し認可を求めることになります。

 また、住宅ローン特則を利用することにより、住宅ローンについては返済計画を見直したうえで全額を支払う計画を立てることにより、住宅を所有しながら再生を図ることが可能となります。


住宅ローンについて


 個人再生手続きで住宅ローンの特則の適用となる住宅ローンは、住宅資金貸付債権とは、個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物の建設、購入、改良に必要な資金の貸付に係る分割払いの定めのある再生債権であって、当該債権または当該債権に係る債務の保証人の求償権を担保するための抵当権が当該住宅に設定されているものをいいます。

 再生債権のうちにこのような住宅ローンを含む再生計画においては、原則として、住宅ローンの全部または一部を変更する再生計画の条項(住宅資金特別条項)を定めることができます。この場合、住宅ローンの保証会社が保証債務を履行した場合には、当該履行をした日から6カ月を経過する日までの間に再生手続開始の申立がされた場合に限り、当該保証債務は初めから履行されなかったものとみなすことができ(巻戻し)、巻戻しされた債権について住宅資金特別条項を定めることができます。

 このように、住宅ローンを含め、多くの債務を抱えた債務者は、個人再生手続きを利用して、住宅ローンの支払いは継続し、他の債務については相当程度免除を受けることにより、住宅を保持しながら債務整理を進めることができます。

 


個人再生の手順


個人再生手続きは次の手順で行います。

① 委任契約の締結
 当事務所と、個人再生申立書類の作成についての委任契約を締結していただきます。その際、負債の状況、生活状況等について詳しくお話をお聞きします。

② 債権者への通知
 当事務所が個人再生申立書類の作成についてご依頼を受けたことを債権者に通知します(一般的には「受任通知」と呼ばれています)。これにより、弁済も止めていただきます。

③ 弁済予定額の積み立て
 現在の収入の中から、将来の弁済可能額を確認するために想定される再生計画案にしたがった一定額の積み立てをしていただきます。この段階では既に弁済も止めていますので、月々安定的に支払うことができる金額を実体験として確認することができます。なお、積み立ては、依頼者ごとに開設した金融機関の口座に行っていただきます。

④ 債務額の確定
 債権者から取引履歴を取り寄せて、上限利息による再計算を行います。これにより、個人再生手続を正確にシミュレーションすることができるようになります。

⑤ 住宅ローン債権者と打ち合わせ
 住宅ローンがある場合には、住宅ローン債権者と、今後の手続き等について打ち合わせを行い、意思疎通をはかります。

⑥ 再生手続開始の申立
 裁判所に再生手続開始の申立てをします。これにより、いよいよ個人再生手続が始まります。

⑦ 再生手続開始決定
 裁判所は、申立書等を検討し、個人再生手続を開始することが相当であるときは、再生手続開始の決定をします。なお、再生手続開始に先だって、個人再生委員が選任されることもあり、その場合には、申立人と個人再生委員とが面談して内容を吟味し、そのうえで再生手続開始決定がなされます。

⑧ 債権届出
 債権届出期間が定められ、再生債権者は債権届出をします。こうして、再生手続の基礎となる個々の債権者の再生債権額が確定していきます。

⑨ 再生計画案の提出
 再生計画案を裁判所に提出します。

⑩ 再生計画案の決議又は意見照会
 提出された再生計画案について、小規模個人再生の場合は債権者の決議が行われます。給与所得者等再生の場合は債権者に意見陳述の機会が与えられます。

⑪ 再生計画案の認可
 再生計画案に不認可事由がなければ、裁判所は、再生計画案を認可します。この認可決定が確定すれば、裁判所における再生手続は終了します。

⑫ 再生計画の履行
 再生計画に定めた内容にしたがって、弁済を開始します。弁済は個々の債権者に対し当事務所で代行して行いますので、毎月、一定額(総額)を当事務所に送金していただければ結構です。