当事務所では、会社の登記に関する「よくある質問」をこのホームページ上で解説しています。ご参考になればさいわいです。
また、メールによる質問も承っていますのでご利用ください。
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▼▼株式会社設立に関する質問▼▼ 株式会社設立の手順 ▼▼費用 (注)報酬には別途消費税がかかります。
▼▼設立概要シート ▼▼検討事項 商号は、日本語のほか、ローマ字(大文字及び小文字)、アラビア数字、一定の符号(「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コン マ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド、「・」(中点))を使用することができます。 もちろん、日本語とローマ字を組み合わせた商号も使用することができますので、「東京SOHO株式会社」という商号でも差し支えありません。 一方、法律で商号として使用することが制限されている言葉として、病院、診療所、医院やこれに紛らわしい言葉、商工会という名称など多数ありますので注意が必要です。 (2)本店 (3)事業目的 また、建設業などの許認可を受ける事業を行いたい場合には、許認可を受ける官庁に、記載方法について相談してみるのもよいでしょう。さらに、許認可を必要とする事業の中には、一定の資格者の確保や経験年数などの要件を満たす必要がある場合もあります。これは事前に確認しておきたいものです。 事業目的は、通常、末尾に「前各号に付帯する一切の事業」という記載を入れます。したがって、事業目的として記載していない業務が発生したとしても、許認可等を受ける必要のない限り、会社の事業として行うことは問題ありません。 (4)株主 もっとも、友人等に出資してもらって共同経営を始めたところ、後日、仲違いとなってしまったということはよくある話です。友人等に出資を依頼する際には、「失敗することもあるからそのつもりで出資して欲しい」というぐらいの気持ちを伝えるのもいいかもしれません。 最低資本金制度が廃止されたため、出資する金額はいくらでもかまいませんが、株主総会の議決権を株式数に応じて定める関係上、発行する株式の1株あたりの発行金額(1株5万円など)をまず定め、何株の出資にするのかを決めるのがよいでしょう。実際には、最低でも、会社の運営に当面必要な資金を出資しても らうのがいいでしょう。 したがって、パソコンと通信費、その他若干の経費しかかからず、すぐに売り上げが発生して運転資金は大丈夫ということであれば、当面は、それほど多くの出資金は必要ないのかもしれません。 もっとも、設立後間もない会社は融資も受けにくいものです。当面の資金繰りを考えて資本金を決めてください。 また、事業年度末日後2カ月で決算の申告をすることになりますので、繁忙期のあるお仕事でしたら繁忙期を避けておくほうがいいでしょう。会社の経理を税理士に依頼する場合には、税理士にも相談しておく方がいいでしょう。 ここでいう設立日は、法律上の設立日です。対外的に会社設立を広報する日と異なっていることもよくあるようです。 (7)機関設計 会計監査人は大規模な会社以外では通常置くことはありませんので、機関設計としては、取締役会、監査役、会計参与を置くかどうかという選択肢になりますが、それぞれの機関の特性を考慮して機関設計をする必要があります。 (A)取締役会非設置会社か、取締役会設置会社か (B)監査役を設置するかしないか (C)会計参与を設置するかしないか 実質的に役員の交代がなくても、任期毎に登記をし直す必要がありますので、コストの面だけを考えると、任期を長くしておく方がメリットがあります。 以上を踏まえ、任期を検討してください。 ①定款に選定方法の定めがない場合 会社法第40条により、発起人の議決権の過半数の一致によるべきです。 登記申請においては,変更に係る事項を明らかにし,発起人が署名又は記名押印した書面に公証人の認証を受けたときは,変更後の定款による設立登記の 申請を受理して差し支えないとされています(18年3月31日民商第782号法務省民事局長通達4ページ)。 出資の履行義務は定款作成後に発生するものと考えられます。したがって,その払込みは通常は定款認証後が原則と思われます。もっとも、定款作成後に払い込みがなされた場合は、認証前であっても認証に近接した時期であれば有効であると考えられます。 認められません。銀行とは、 銀行法第4条第1項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営む者とされています。外国銀行はこれに該当しますが(同法第47条第1項)、外国銀行の外国における支店は該当しません(同法第47条第2項)。このため、外国銀行の外国における支店の口座では会社法に定める払い込みとは言えません。 発起人自身の通帳に入金するだけでかまいません。あえて振込手続をする必要はありません。 発起人代表名義の通帳に入金するだけで結構です。振込でなくてもかまいません。また複数の発起人引受株式につき一括して入金したものでもかまいません。 引き受けた株式の出資に係る金銭の全額についての払込みがあったことを証する書面を添付すればよいとされています。したがって、払込金に相当する額が払込みされたことが確認できれば良く、株式払込金を超える入金または振込みがあったとしても登記は受理されます。 「全額の払込みがあったことの証明書」で出資全額の履行がされたことがわかればいいので、払込金が引き出され、残高が払込金額に満たない通帳写しの添付がされたとしても、登記申請は受理されるものと考えます。 株式会社(発起設立のみ)又は合同会社設立登記で、払い込みがあったことを証する書面に「発起人の預金通帳の写し」を使う場合について、発起人一人だけの場合でも、預金残高があるだけではだめで、必ず、定款作成時から代表者の証明書作成日の間に「出資金全額の入金が記帳された預金通帳の写し」でなければなりません(平成18年3月31日付民商第782号法務省民事局長通達第2部第2(3)オ)。 株式会社(発起設立のみ)又は合同会社設立登記で、払い込みがあったことを証する書面に「発起人の預金通帳の写し」を使う場合について、ATM等では限度額があるため出資金の全額を一括で振り込みないし入金することが不可能なことが考えられます。このような場合も含め、分割して払い込まれたものでも可能と考えます。 株式会社(発起設立のみ)又は合同会社設立登記で、払い込みがあったことを証する書面に「発起人の預金通帳の写し」を使う場合について、発起人の既存の通帳に入金ないし振込みがなされれば結構です。設立用に新規に作成する必要はありません。 株式会社(発起設立のみ)又は合同会社設立登記で、払い込みがあったことを証する書面に「発起人の預金通帳の写し」を使う場合について、入金した通帳には、誰がいくら入金したか分かるようなっていなくてもかまいません。例えば発起人の代表者が全員の分を一括して預け入れた場合のように、払込金の全額が入金されていることが確認できれば、氏名は確認できなくても結構です。 「株式の名義書換」と一言で言いましても、株券発行会社における場合(これも、実際に株券を発行している場合と、実際には株券を発行していない場合に分かれる)と、株券不発行会社の場合とでは、まったくその方法が異なります。 また、公開会社であるか、非公開会社であるかにもよって、譲渡承認手続きの要否が異なります。さらに言えば、公開会社であっても上場株式として保管振替機構の利用が強制される場合と、そうではない場合があります。 このように、様々なケースが考えられますが、ここでは、近年最も多いと想像される、非公開の株券不発行会社について考えたいと思います。なお、非公開会社であるために、譲渡承認手続が必要となりますが、譲渡承認手続きについては解説の対象としていませんのでご了解ください。 株式の名義の変動は、株主の意思により変動が生じる場合と、株主の意思にかかわらず変動が生じる場合とが考えられます。前者の典型的な例としては、売却や贈与があります。また、後者の典型的な例としては相続が考えられます。 さらに、前者のケースであっても、旧株主が名義書換に協力的な場合と、そうではない場合があります。 以上を整理すると、①株主の意思により変動が生じ、名義書換にも協力的な場合、②株主の意思により変動が生じたが名義書換に非協力な場合、③株主の意思に関係なく変動が生じる場合の3パターンということになります。 株券不発行会社という前提ですから、株券はありません。したがって、株式の名義書換に応じるためには、①のケースは旧株主の意思確認が不可欠になります。 ②の場合には、旧株主が非協力ですから、新株主の申出だけにより名義書換をしなければなりません。したがって、旧株主の意思が擬制されていることが明らかな書面(具体例として確定した判決正本)を提出していただく必要があります。 ③の場合は、旧株主の意思を確認する書類は不要ですが、変動の事実が生じたことを証明する書類を提出していただく必要があります。相続にともなう遺産分割により株式を承継した場合を例にすれば、相続人全員の実印が押印された遺産分割協議書と全員の印鑑証明書、当該相続人が被相続人の権利義務を承継した者全員であることを証明するための戸籍謄本等を提出していただくこととなります。 実は、以上ご説明した書類は、不動産登記を申請する際に要求される添付書類とほぼ同じ考え方です。実際に名義書換請求があった場合には、以上の点を留意して取り扱ってください。 しばしば、株主様の所在がわからず、また、これがために管理コストを支出しなくてはならないのでなんとかしたい、といったご相談をいただくことがあります。 この制度は、①株式会社が当該株式の株主に対してする通知又は催告が5年以上継続して到達せず当該株主に対する通知又は催告を要しなくなったとき、かつ、②当該株式の株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったときは、株式会社は、当該株式を競売し、かつ、その代金を当該株式の株主に交付することができる、というものです。 売却の方法は、原則として競売ですが、例外として、市場価格がある株式については、市場価格として法令で定められる額で、市場価格なき株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、当該株式を売却することができます。 一方、所在不明株主の株式を売却するときは、当該所在不明株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨及び法令で定める事項を公告するとともに、当該所在不明株主及びその登録株式質権者に対し各別に催告しなければならない、とされていますので、スケジュールを十分に検討することも必要です。 裁判所の許可を得て売却した際の売却代金は、買受会社等から株主に支払われなくてはなりませんが、受領しないことは明らかですので、法務局で供託してしまうとよいでしょう。供託しないと、買受会社等は当該株主が現れるまで代金を管理しなければならないことになってしまいます。 一例として、非公開会社である取締役会設置会社が、所在不明株主の株式を売却する際のスケジュールを挙げておきます。 取締役会の決議 さて、当該株主が後日現れた場合は、当該株主は供託所に還付請求をすることができます。また、供託者が供託不受諾を理由に取り戻しをして、当該株主に交付してもいいでしょう。 なお、会社・法人代表者の資格や印鑑の簡易確認手続は、現在は次のようになっているので注意が必要です。 1 はじめに 株券不発行会社に移行することにより、今まで発行していた株券は無効となりますが、書面としての株券が無くなるのみで、株主各位の権利義務に何ら影響を与えるものではありません。 一方、書面による株券発行の手続費用等を省略でき、実務における効率化をはかることができます。 しかしながら、株券不発行会社とするには定款変更が必須であるため、株主総会の決議を経て、現在発行中の株券が無効となる旨の公告及び各株主への通知を行う必要があります。 少々手続が煩雑となりますので、皆様に、株券不発行会社とするための一連の流れを大まかでありますが、現に株券を発行している会社を例として説明致します。 2 株主総会における定款変更決議 そこで、事前に株主の理解を得るため、株券不発行会社に変更しても、株主各位には、なんらリスクが生じないことの説明をしておくことが望ましいです。 3 株券不発行会社となる旨の公告・通知 4 登記申請手続 登記申請手続きに必要となる書類は、下記のとおりの3点となります。 5 終わりに ■相続人等に対する株式売渡しの請求の定め ■定款変更を行うには株式会社が、この規定を定款に定めるには株主総会において、いわゆる特別決議の要件が必要となり、具体的には、原則として議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が可決要件となります。 ■具体的な売渡し請求の方法 ■株式の売買価格の協議 ■定款に売渡し請求の定めを設ける際の注意点も たとえば、会社設立の場合、1株の発行価額5万円、20株発行、資本金100万円などと、発行価額×株数=資本金という式が成り立つケースが大半です。 ところが、この公式はもろくも崩れます。たとえば、この会社がその後、新株式を発行する場合に、新たに株主となる人には1株5万円で買って貰いたいが資本金に入れるのはその半額、発行する新株式は10株とします。この募集株式発行が完了した暁には、発行済み30株、資本金125万円ということになり、30株に5万円を乗じても150万円にはならなくなります。 つまり、発行済みの株式の数と資本金の額は何の関係性もないのです。したがって、資本金の増減と関係なく株式の数を変更することができますし(株式の併合、消却、分割)、株式の数とは関係なく資本金を増加したり減少したりすることができます。 現在、株式は無額面ですが、以前はほとんどの会社で額面株式が採用されていたため、額面×株数=資本金という式が成り立たないと何か気持ち悪いと感じる人も多かったようです。そのため、最低資本金制度をクリアするために配当可能利益を資本金に組み入れる時など、そのタイミングとあわせて株式分割をして額面×株数=資本金という式を「意地でも維持する」というケースもありました。 株式は、種類株式でなければ1個1個の権利内容に差がないわけですから、会社法務の世界では、実は、それがいくらで発行されたかということはあまり意味がありません。その株主が何%の割合を所有しているかが大事なのです。 どうしても「昔の額面×株数=資本金」となるように修正したい場合は事務所までお問合せください。 お尋ねのケースでは、株式の全部を売り渡すように株式等売渡請求制度を利用することができます。ただし、この制度の利用により感情的対立を生じることもありますので、まずは買い取りを直接打診してみてはいかがでしょうか。 株式等売渡請求制度の概要 株式等売渡請求制度とは、特別支配株主が他の全株主に対して株式の全部を売り渡すよう請求することができる制度で、「キャッシュアウト」などとも呼ばれています。 売渡請求の手続 売渡請求をするときは、特別支配株主は、対価の額やその算定方法、取得日などを決め、対象会社に対してその通知をする必要があります。 感情面にも配慮を 株式等売渡請求の制度は、大企業においては、対価が適正であれば合理性を持つ場合が多いものと思われます。なぜなら、そのような会社においては、株式を所有する意味は会社の資産を間接的に保有する意味合いが強く、株式等売渡請求制度はこれを換価するひとつの手段と考えられるからです。 所在不明株主の株式売却制度の利用を検討しましょう 「株主に連絡がとれない」こうしたご相談をいただくことがしばしばあります。こうした声に対してはいくつかの対処方法が考えられますが、一定の要件を満たしている場合には所在不明株主の株式を強制的に売却する制度を利用することも考えられます。 制度の概要 株主の管理コスト削減のため、会社が、株主名簿に記載された住所に宛てて差し出した通知等が五年以上継続して到達しなかったときは、会社は、当該株主についてそれ以降は通知をする必要はないとされています。 二つの要件を満たすことが必要 所在不明株主の株式売却制度を利用するためには、①当該株式の株主に対する通知又は催告が五年以上継続して到達せず当該株主に対する通知又は催告を要しなくなったこと、 ②当該株式の株主が継続して五年間剰余金の配当を受領しなかったことの二つの要件を満たす必要があります。 売却の方法 当該株式の売却は原則として競売によりますが、市場価格のない株式は、裁判所の許可を得て競売以外の方法により売却することができます。 まずは株主名簿の適正な管理を 所在不明株主の株式売却制度を利用する以前の問題として、株主名簿が備え置かれていなかったり、管理が十分ではない会社も多いようです。
株式会社(株式の譲渡制限規定のある会社)の設立を お考えの方は、以下のスケジュール及び検討項目をご確認ください。
当事務所においては、早ければ1日、通常は1週間程度で株式会社の設立登記を申請することができます。もちろん、電子定款を作成することにより印紙代4 万円を節約し、設立登記もオンライン申請を活用することにより、全国どこの地域にも設立申請が可能です。
当事務所において資本金500万円の株式会社を設立する場合の諸費用は概ね下記のとおりです。ただし、事案により異なる場合もあります。
項 目
報 酬
実 費
定款等書類作成
21,000円
定款認証代理
22,000円
51,500円
登記申請
30,000円
147,000 円
登記事項証明書1 通取得
500円
550円
合 計
73,500円
199,050 円
当事務所では、必要項目を効率的に記入できる株式会社設立概要シートを提供しています。ダウンロードしてお使いください。
(1)商号
商号は会社の名前です。いわゆる社名です。商号には必ず「株式会社」の文字を入れなければなりませんが、位置は商号の頭(株式会社エービーシー)であっても末尾(エービーシー株式会社)であってもかまいません。
理屈としては、商号の途中(エー株式会社ビーシー)であってもかまいませんが、そのような商号はあまり見かけません。
ただし、符号は,字句(日本文字を含む)を区切る際の符号として使用する場合に限って使用することができるため、商号の先頭又は末尾には使用することが できません。
ただ、「.」(ピリオド)については,省略を表すものとして商号の末尾に使用することもできます。
なお、「(空白)」(スペース)は使うことができません。
以前は、同一の市区町村内に類似の事業目的で類似の名称の別の会社が存在する場合には新会社の設立はできませんでしたが、この規制は廃止されました。
しかし、「株式会社ヤマハ浜松」など、他の企業等の著名な名称や商品名を商号に使用することは避けるべきです。使用する者にその意図がなくても、著名な企業名等を利用して不正な利益を得ているとして紛争になることもあります。
本店所在地は会社の住所です。本店は、必ずしも会社の実際の事業所でな くてもかまいません。たとえば、事業所が賃貸物件で将来移転が考えられるような場合には、とりあえずご自宅等を本店としておけば、会社の引っ越しの都度本店移転登記をしなくてすみます。
会社の事業目的は、第三者が見た場合にどのような事業を営んでいる会社なのかある程度わかるような表現をしてください。
事業目的を定める場合には、設立後すぐには行わない事業であっても、将来的に行う可能性のある事業は記載しておいた方がいいでしょう。なぜなら、もしも、 将来、事業目的に定めのない新しい事業を展開することになりますと、事業目的の変更登記をしなければならなくなり、手間とコストがかかってしまうからで す。
株主とは、会社に対する資本の出資者のことを意味します。株主の人数には1人でも複数でも制限はありません。
小規模な株式会社を設立するという前提で考えますと、おそらく、1名~3名程度の場合が多いものと思われます。
また、出資をする割合には注意を配る必要があります。経営の主導権を持つためには過半数の出資を引き受ける必要があります。
(5)事業年度
初年度の第1期は、会社設立の日から事業年度末日までとなります。事業年度は1年を超えることができませんが、設立後、すぐに事業年度末日が到来すると決算事務をすぐしなければならなくなってしまいます。
したがって、事業年度は、会社設立日の前月末日などにしておく方がいいでしょう。
(6)設立日
登記を申請する日が会社設立日となります。したがって、法務局が登記の申請の受付を行わない 土曜日、日曜日、祝日を設立日とすることはできません。
実際に開業するとなると、事業所の賃貸借契約、電話の敷設、印刷物の発注など様々な準備があります。
しかも、賃貸借契約や電話の敷設などでは、会社の登記事項証明書などが求められることがあります。
したがって、仮に対外的には4月1日から開業したいのであれば、3月上旬には設立登記をすませてしまう方が準備がスムーズです。
株式会社においては、株主総会と取締役は必ず置かなければなりませんが、取締役会、監査役、会計参与、会計監査人については設置は任意とされています。
一般的には、次のような考え方で決めればよいと考えられます。
(前提:大会社ではない非公開会社)
考え方:所有と経営と一致している会社(家族経営のような場合)は
取締役会非設置会社でよいが、他人の出資がある場合は株主
総会の権限が限定的な取締役会設置会社の方が効率的である。
考え方:一人株主や純粋な家族経営の会社でない場合は、業務監査権
限(注)を有する監査役を設置する意味は大 きい。
(注)非公開会社(会計監査人設置会社を除く)の監査役は、定款で監査範囲を会計
に関するものに限定することができる(法389①)。
考え方:計算書類の信頼性を高める必要性(融資の交渉等)がある場
合には会計参与を設置する意味はある。
(8)役員の任期について
取締役、会計参与の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、監査役の任期は、原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなります。
しかし、株式の譲渡制限のある会社は、これらを10年まで伸長することができます。
しかし、将来、任期途中で役員を解任するような事態を想定すると、解任した役員から残存任期に対する損害賠償を請求されるおそれもありますので、任期が長いのが一概によいと言うこともできません。
A 非取締役会設置会社 発起人による選定
B 取締役会設置会社 設立時取締役による互選
②定款に選定方法の定めがある場合
以下のいずれかの方法を定款で定め、その方法により選定する。
A 定款で直接選定
B 発起人による選定
C 創立総会による選定
D 設立時取締役による互選
③上記の方法による選定がなされない場合
設立時取締役全員が設立時代表取締役となる
(旬刊商事法務1768号4~5頁,論点解説新・会社法千問の道標39~40頁(商事法務)参照)
※定款に選定方法の定めのない非取締役会設置会社の募集設立の場合、発起人による選定がされている場合であっても、設立時発行株式の募集に入ったときは、 発起人による選定の効力が失われるが、創立総会の決議により、選定方法を定款上定め、その選定方法(上記1.~3.のいずれか)により代表取締役を選定することができる。
また、合同会社についても単に残高があるだけではなく、払込があったことが分からなければなりません。なお、合同会社の払込は、会社法上金融機関に限定されていません。
通常は、名義書換請求書類に旧株主が会社に対して届出をしている印鑑を押印してもらう方法によればいいでしょうが、印鑑票を整備していない会社にあっては、旧株主の実印を押していただき、印鑑証明書の提出を求める必要があります。
このような状況を解決する一例として、所在不明株主の株式売却制度があります。
なお、いわゆる無配の株式会社であっても、この制度を利用できます。
※所在不明株主の売却手続承認
↓
官報公告・個別催告※会社法198条1項2項4項
↓
株式売却許可申立※会社法197条2項
↓
(売却許可決定)
↓
取締役会の決議
※譲渡承認
↓
買受に伴う供託
※発行会社の最寄りの法務局
① 供託窓口で発行される「依頼書」の受け取り
② 証明書発行窓口に「依頼書」を提出
印鑑カードが必要
③ 証明書等の受け取り
④ 証明書等を供託窓口に提出
株券の電子化に伴い、株券の紛失・盗難等のリスク回避及び株券管理の省力化のため、定款を変更して株券不発行としたいという相談を受けることがあります。
従って、従来どおりの権利義務が維持されますので、株主総会での議決権、剰余金の配当等の権利や出資責任を失うことはありません。
前述のとおり、株券不発行会社とするには株主総会の特別決議を経て、定款変更する必要があります。
特別決議の議決要件は、原則として、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。
株券不発行会社となることを、会社の定款に定められた公告方法によって行う必要があります。
さらに、各株主への個別通知を行うことも必要です。
これらの公告・通知は、株券不発行会社となる効力発生日の2週間前までに行う必要があります。
株券不発行会社とする旨の定めの効力発生日から2週間以内に、登記申請手続きを行う必要があります。
1 株主総会議事録
2 公告したことを証する書面
3 委任状
今回説明させていただいた一連の流れは、現実に株券を発行している会社となります。
株券発行会社であっても、現実に株券を発行していない会社の場合は、若干、流れが異なりますのでご承知おきください。
会社法第174条には、「株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。」と規定しています。
この規定は、株主に相続が発生した場合に、その株主の相続人が複数いる場合、株主数が増加することにより株式が分散することにより、株主総会の決議がスムーズに行われなくなってしまうことを防止するために規定されました。
また、株式売渡し請求の対象となる株主は、相続その他の一般承継により株式を取得した者であるため、合併により消滅会社の有していた株式を取得した承継会社も含まれます。そして、株式会社がこの売渡し請求を行うには定款の定めが必要となっています。
実際に相続人等に売渡し請求を行っていく場合は、株主総会を開催し、売渡し請求を行う対象株式の種類及び数と、その株式を有する者の氏名を定めます。この承認決議の要件は、株主総会の特別決議を要し、売渡請求の対象となる株主は議決権を有しません。
なお、この相続人等に対する売渡し請求は、買取請求を行う株式会社が相続等の一般承継が知った日から1年以内に行う必要があるため、注意が必要です。
株式会社が株式の売渡し請求をした場合、請求を受けた株主はそれを拒むことはできませんが、売買価格については、株式会社と当該株主の協議によって決定することができます。協議によって価格が決定しない場合、株式会社又は請求を受けた株主が、株式会社が売渡し請求を行った日から20日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立を裁判所に申立てを行うことができます。この場合、裁判所が売買価格を決定することになります。
この定めには株式分散のリスク防ぐことができる利点の裏返しとしての注意すべき点があります。
例えば、株主数2人の株式会社で、一人が95%、もう一方が5%の株式の取得割合である場合に、95%の株式を有している株主に相続が発生した場合、売渡し請求の決定の有無の株主総会は、95%の株主には議決権がなく5%の少数株主のみで決議が行われるため、95%の大株主が株式を手放す必要が生じてしまいます。このため、実際に定款にこの定めを設けることを検討される場合は、会社の状態をよく確認され当事務所にご相談ください。
株式等売渡請求を活用することにより会社の株主が一本化され、長期的視野に立った柔軟な経営の実現、株主総会に関する手続きの省略による意思決定の迅速化、株主管理コストの削減などのメリットが発生します。また、事業承継の前提として株主の一本化に利用することも考えられます。
ここで、特別支配株主とは、その会社の議決権の九割以上を有している者をいいます。ただし、他者との合算はできないため、自己の有する株式だけで九割以上を有している必要があります。
お尋ねのケースはこの要件を満たしていますが、仮に満たしていない場合には他者から株式の譲渡を受けるなどして要件を満たす必要があります。
また、九割以上を有しているという要件は、①株式等売渡請求時、②取締役会での承認時、③取得日のそれぞれにおいて充足していなければなりません。
対象となる会社には制約はなく、株式に譲渡制限の付いている非上場会社も対象です。
対象会社は、取締役会でこれを承認するかどうかを判断しますが、取締役会は、売渡請求の条件が適正であるかどうか、対価が交付される見込み等について確認をする必要があります。
対象会社が、取締役会で売渡請求を承認すると、特別支配株主にその旨通知するとともに、取得日の20日前までに売渡株主に一定の事項を通知します。これによって売渡請求の効果が発生します。
そして取得日において、株式の移転の効果が発生します。
売渡請求に不服のある株主は、価格決定の申立ができ、また、法令違反や著しく不当な対価等の場合には差し止め請求をすることもできます。
一方、中小企業においては、わずかな比率の株式を所有し続ける背景には、友人や親戚関係、共同して創業をした者として会社と関係を持ち続けていたいといった感情的な側面がある場合もあり得ます。
お尋ねのケースでは、株式等売渡請求をすることによって新たな感情的な対立を生み出す可能性も考えられます。そこで、まずは、株式の買取りを直接交渉してみて、それでも買取りに同意されない場合には売渡請求手続きをしてみてはいかがでしょうか。
例えば、株主総会の招集通知が五年以上継続して届かなかった場合には、それ以降は招集通知を送付しなくてもいいということになります。
もっとも、その場合でもそのような株主についても株主としての管理を省くことはできません。
しかし、当該株主の所在を特定できないことについて会社や他の株主には何らの責任がないにもかかわらず、その管理費用を他の通常の株主の負担において賄うのは不合理です。
そこで、所在不明株主の株式について競売等による売却又は会社による買受けをすることを認める制度が設けられています。
①は、前記のように株主総会招集通知が五年以上継続して到達しなかったという場合が考えられます。②については、配当を行っていない事業年度があってもかまいません。
また、市場価格がある株式については市場価格で売却することができます。
所在不明株主の株式を売却するときは、当該所在不明株主その他の利害関係人が所定の期間内に異議を述べることができる旨を公告するなど、一定の手続きが必要となります。
売却代金は、買受会社等から株主に支払う必要がありますが、もともと所在不明で受領しないことは明らかですので、法務局に供託をすることができます。
また、株主総会自体が開かれておらず。招集通知も発送していない会社も少なくないようです。
そのような会社では、株主名簿の調製から行う必要がありますので、司法書士に指導を仰ぐとよいでしょう。
▼▼株主総会に関する質問▼▼ 結論としては、株主総会議事録については署名(又は記名押印。以下同じ)する規定がないため署名義務はありません。取締役会議事録については、出席した取締役及び監査役は署名する必要がありますが、ご質問のような事情で全員の署名がそろわなくても、出席取締役の過半数の署名があれば登記可能と考えます。 この問題に関する登記先例としては、次のようなものがあります。 株主総会及び取締役会の議事録には、原則として出席取締役全員の署名を要するが、総会若しくは取締役会の終了後やむを得ない事由により署名不能の場合は、その旨を証明させれば、その他の出席取締役の署名で足り、また、取締役会については出席取締役の過半数の署名があればよい。 出席取締役のうち1名が株主総会議事録に記名捺印することを拒絶している場合には、他の出席取締役全員又は代表取締役から当該出席取締役の記名捺印を受けられない事情を付した上申書を添付すれば、当該株主総会の決議に基づく変更登記は受理される。 1 取締役会に出席したが、第1議案の決議に先立って退場した取締役も取締役会議事録に署名することを要する。 これらの先例を見ると、取締役会議事録に出席取締役及び監査役の署名が欠けている場合は、署名できない事情を記載した上申書を提出する必要があるようにも見えますが、よくよく見ると、取締役会については出席取締役の過半数の署名があれば上申書は必要ないと読むことができます。 これは、株主総会議事録と取締役会議事録とは、押印を求めている趣旨が異なるからだと思われます(もっとも現行法では総会議事録に署名すべき規定は存在しませんので、先例が出された商法時代の考え方ですが)。 すなわち、株主総会議事録に署名を求めているのは、議事録の真正担保という趣旨であると思われます。これは、議決権を持つのは株主であり、議事録署名者である取締役の署名が過半数あるからといってそれだけでは真正担保に十分ではないから、署名できない取締役についてはその理由等を明らかにさせるということであると思います。 そのため、理屈の上では上申書なしで一部の方の署名がない取締役会議事録だけで登記可能ということになるわけですが、実務の現場では、上申書なしで登記を申請するのは少し勇気が必要です。また、一部の方の署名がない議事録が少なくとも法務局に提出されるわけですから、会社の担当者としてもなぜ一部の方の署名のない議事録を外部に提出したのかということを記録として残ておきたいと考える方もおられるかと思います。 そこで、登記に添付するかどうかは別として、「これこれの事情で〇〇取締役は署名できない」という内容で報告書のような書面を1枚作成していただき、議事録に署名いただける役員さんに、議事録といっしょに署名していただいたらいかがでしょうか。そして、万が一法務局から上申書を提出するように指示があったらその報告書を提出できるように準備をしておいていただけると安心です。 そんなことを考えているうち、今の時代、遠隔地からテレビ会議等で参加した取締役は取締役会議事録に電子署名をし、電子署名された取締役会議事録と、リアルに署名をした取締役会議事録を併せて一本という、内容が同一で複数の取締役会議事録をそろえればいいのではないかという考えが頭をよぎり、調べてみましたら、次の先例がありました。 取締役会又は株主総会の議事録の原本3通を作成し、それぞれの議事録に取締役の一部が記名押印し、3通合わせて全取締役の記名押印がそろう場合には、議事録の作成手続は適法ではない。 ということで、複数の議事録は、現状はダメということです。 なお、通信機器を使って開催した会議の議事録の作成方法については、次のページを参考にしてください。 ご質問のケースでは基準日を設定する必要はないものと考えます。 株主総会に出席して議決権を行使することができる株主は、本来であれば議決権行使時点、すなわち株主総会当日の株主とするのが原則です。しかしながら、株主が大勢で日々変動する会社において株主総会当日の株主を確定するのが困難です。 そこで、そのような会社では、前もって一定の日に株主名簿に記載又は記録された株主に対して議決権を与える基準日制度を採用して議決権を行使することができる株主を確定しているのが実情です。 お尋ねのケースは、100%子会社ということですから、通常は株主に異動はなく、株主総会当日の株主は容易に確定できるものと考えられます。定款の規定も基準日を「定めることができる」と規定していることから、基準日を必ず定めなければならないということではありません。したがって、基準日を定める必要はないものと考えます。 また、付け加えれば、招集手続を経ていない場合でも、株主全員が出席して総会を開催することに同意した場合には全員出席総会として、その決議は株主総会の決議としての効力を有します(最一判昭和46.6.24民集25巻4号596頁等)。したがって、この要件が整った場合には招集手続きを経ることなく有効に株主総会を開催することもできます。 株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。 会社法の規定 次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。 なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。 そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。 「出席した取締役」とは誰か 3つのケースで考えてみましょう。 これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。 なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。 株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。 会社法の規定 次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。 なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。 そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。 「出席した取締役」とは誰か 3つのケースで考えてみましょう。 これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。 なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。 議事録の記載により、株主総会の招集の手続が法令又は定款に違反していることが明らかな場合があります。たとえば、招集期間が定款に違反して短期間であることが議事録の記載から明らかである場合です。 このように、招集の手続が定款に違反している場合、株主等は決議取り消しの訴えを提起することができます。しかし、いつまでも不安定な状態にしておくことはできないため、訴えの提起は決議の日から三箇月以内にしなければならないとされています。 (参考)会社法831条抜粋 そこで、決議の日から三箇月以内に上記の議事録を添付して登記の申請がなされた場合は、「登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき」として、却下することとされています(商業登記法24条10号)。 しかし、決議の日から三箇月以内に訴えが提起されなければ取り消されることはありませんので、その場合には、訴え提起のないことの証明を裁判所で発行してもらい、それを添付して登記申請することになります。なお、この訴えは本店を管轄する地方裁判所の専属管轄であるので、当該裁判所で証明書を発行してもらうことになります。 (参考)(提訴期間経過後の登記) 会社法295条1項では、「株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議することができる。」と定めていますが、同条2項で、取締役会設置会社においては、「株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。」と定めています。つまり、1項が適用されるのは取締役会非設置会社です。 会社法の定める取締役会設置会社における株主総会の決議事項としては、以下のようなものがあります。 また、会社法以外の法令が定める株主総会の決議事項としては、以下のようなものがあります。 取締役会設置会社では、法律または定款に定めていない事項について決議をしても無効です。 できます。今回の定時総会で、取締役の任期を10年とする定款変更決議をしてください。現任の取締役の任期は今回の定時総会の終結の時までですが、その任期が到来する直前に任期を伸長する決議がなされることにより、総会終了時に任期満了とはならず、あと8年、任期が続くこととなります。 いくつかの考え方があるようですが、私見では、総会を開催する会社が定時か臨時かを定めればよいと考えます。仮に、6月に開催されるべきであった定時株主総会で役員の任期が満了すべきであった場合には、当該役員の任期は6月末日で任期満了となり、10月の総会で後任役員が選任されて就任するまでの間は取締役としての権利義務を承継することとなります。 退職慰労金として不動産を給付することは可能です。退職慰労金の決定は、株主総会で決議をする必要がありますが、必ずしも金銭の支給ではなく、会社が所有する不動産を与えることも可能です(会社法361条1項3号)。この場合の不動産の所有権移転登記を申請をするときの登記原因は、「年月日退職慰労金の給付」とするのが相当であるとの質疑応答が出されています(登研790号)。 登記研究755号に次のような質疑応答があります。 問 取締役会設置会社であるA株式会社の代表取締役甲が同じく取締役会設置会社であるB株式会社の取締役でもある場合に、甲がA株式会社名義でB株式会社に不動産を現物出資してB株式会社の発行する募集株式を引き受ける行為は、A株式会社と甲の利益が相反する行為であるから、当該不動産の所有権の移転の登記の添付情報として、当該取引を承認したA株式会社の取締役会議事録を提供することを要すると考えますが、いかがでしょうか。 答 前段、後段とも、御意見のとおりと考えます。 このケースは、A株式会社にとっては取締役甲のためにA株式会社の株式を現物出資するわけだから、甲とA株式会社の利益が相反することになります。したがって、問の前段についてはそのとおりだと思われます。 取締役会設置会社における利益相反の承認は、取締役会で承認することを要します(会社法365条1項)。「株主総会の承認を得ている」ということですが、当該決議は利益相反承認の決議ではなく、募集株式発行の決議であると考えられます(B株式会社が非公開会社であれば、株主総会で募集株式の発行を決議する必要がある(会社法199条))。そもそも取締役会設置会社であるわけですから株主総会の決議事項は法定されています。なんでも決議することができるわけではなく、利益相反取引の承認は取締役会で行うべきです。そもそも、株主総会における募集株式発行の決議と取締役会における利益相反決議とは決議要件が全く異りますので、株主総会決議をもって利益相反決議があったものとみなすのは無理があるのではないでしょうか。それとも、この質疑応答について私の読み方が間違っているのでしょうか。
(昭28.10.2、民事甲第1,813号民事局長回答)
(昭38.12.18、民事四発第313号民事局第四課長回答)
2 右の場合取締役の退場により定足数を欠くに至ったときは、その時から有効な決議をすることができない。
3 取締役会の議事録に出席取締役の氏名が列記され、その過半数の捺印があり、捺印者数が取締役会の定足数を満たす場合には、その議事録を添付書類とすることができる。
(昭38.5.25、民事四発第118号民事局第四課長回答)
これに対し、取締役会議事録は、議決権を持つ取締役に署名義務を負わせていることから、過半数の取締役の署名があれば決議が有効に成立したことを認定できるということだと思われます。
(昭36.5.1、民事四発第81号民事局第四課長事務代理回答)
まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。
法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。
①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合
まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。
法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。
①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合
次の各号に掲げる場合には、株主等は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
商業登記法第25条 登記すべき事項につき訴えをもつてのみ主張することができる無効又は取消しの原因がある場合において、その訴えがその提起期間内に提起されなかつたときは、前条第十号の規定は、適用しない。
2 前項の場合の登記の申請書には、同項の訴えがその提起期間内に提起されなかつたことを証する書面及び登記すべき事項の存在を証する書面を添附しなければならない。この場合には、第十八条の書面を除き、他の書面の添附を要しない。
3 会社は、その本店の所在地を管轄する地方裁判所に、第一項の訴えがその提起期間内に提起されなかつたことを証する書面の交付を請求することができる。
・定款の変更(法466条)
・合併·会社分割·株式交換·株式移転(法783条1項,795条1項,804条1項)
・事業譲渡·譲受、子会社株式の譲渡(法467条1項)
・資本·準備金の減少(法447条1項,448条1項)
・解散(法471条3号)
・会社継続(法473条)
・組織変更(法776条1項)
・取締役、監査役、会計参与、会計監査人の選任·解任(法329条1項,339条1項)
・報酬等の決定(法361条. 379条,387条)
・責任の免除(法425条1項)
・株式の併合(法180条2項)
・剰余金の配当(法453条)
・自己株式の取得(法156条)
・全部取得条項付株式の取得(法171条1項)
・募集株式·新株予約権の有利募集(法199条3項, 201条1項,238条3項, 240条1項)
・計算書類の承認(法438条2項)など
・解散後の株式会社による会社更生手続開始の申立て(会社更生法19条)
・保険会社の合併等(保険業法165条の3,165条の10)など
近年では、買収防衛策の導入を決議する例がありますが、法的には効力はありません。もっとも、株主の意思を表明しているという意味では意義のあることです。
なお、定款変更が現任の取締役にも適用されることを明確にするために、定款変更議案を上程する際にその旨を説明しておく方が誤解もなく、わかりやすいかと思います。
この場合、後任役員が就任するまでは任期満了の登記はできず、また、登記をすべき法定期間の初日は後任役員が就任した日となります。
おそらく、会社法施行以前は、退職慰労金として金銭を支給する旨の決議しておいて、その代物弁済として不動産を与え、不動産の名義変更も「年月日代物弁済」と登記原因として登記を申請していたことが多いと思われます。会社法で金銭以外の報酬が認容されたことにより、上記の質疑応答が出されたものと思われます。
また、B株式会社については、当該現物出資を受け入れるに当たり、既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ないことから、B株式会社の取締役会議事録の提供を要しないと考えますが、いかがでしょうか。
また、B株式会社にとっても、取締役である甲に対し募集株式を割り当てることになるから利益相反になると考えられます。しかし、「既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ない」との考えは疑問が残ります。
▼▼登記申請書に添付する株主リストに関する質問▼▼ 商業登記申請の際に、登記すべき事項につき、①株主又は種類株主全員の同意を要する場合、 ②株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合に、申請書に添付すべき以下の事項を証明する書面である。 ①株主又は種類株主全員の同意を要する場合 ②株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合 なお、会社法第319条第1項(同法第325条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があったものとみなされる場合も同様である。証明書に記載すべき事項は、株主の「氏名又は名称」「住所」「当該株主のそれぞれが有する株式数及び議決権数」「当該株主それぞれが有する議決権に係る当該割合」である。 施行日以降になされた登記申請については、一律に同一の添付書面に基づき登記されることが相当であるとされ、経過措置は置かれていない。 この点は、商業登記規則等の一部を改正する省令附則2 (平成28年4月20日付官報第6760号3頁)において「この省令の施行前にした登記の申請については、この省令による改正後の商業登記規則第61条第2項又は第3項(これらの規定を他の省令において準用する場合を含む.)の規定にかかわらず、なお従前の例による」と記載されていることからも読み取ることができる。 そのため、例えば数年前に株主総会において決議がなされていたものの、登記を申請することを失念していた場合においても、株主リストの添付は必要となる。 今回改正の商業登記規則第61条2項及び3項における、いわゆる「株主リスト」とは、会社法第121条の「株主名簿」とは同一ではなく.「株主名簿」のうち主要な株主に関する情報が記載されたものであり、登記申請の添付書類として提出されるものである。 また、改正後の商業登記規則第61条第3項では「株主リスト」という文言が記載されているわけではない。 因みに、会社法第121条の「株主名簿」においては「株主の氏名又は名称及び住所」「保有する株式の数」「株式取得日」が記載事項であり、 さらに株券発行会社の場合には「株券番号」も記載事項とされている。一方、株主リストには、 「議決権の数」「議決決権割合」も記載事項とされており、その記載内容が異なる。 議決権数第10位の株主全員の記載が必要となる。 保有議決権数が同数の株主が複数いる場合は、同順位株主全員を記載すべきであり、上位となる10名の株主が11名以上となる場合は、その11名以上の数の株主を記載することになる。 上場・非上場を問わず、全ての会社に「株主リスト」が義務付けられている。なお 一定の要件を満たす場合は、有価証券報告書の大株主の状況欄や法人税の確定申告の際に作成する同族会社等の判定の明細書を添付した「株主リスト」作成することができる。 株主総会において議決権を行使することが出来る株主を記載すべきであり、基準日を定めた場合は基準日における株主を記載することになる。 基準日を定めなかった場合には株主総会当日の株主となる。 「株主リスト」は、株主名簿の記載等により会社が把握している情報をもとに作成される。 法務省は、適法に株主総会が開催され、その旨の議事録が作成されていながら、 「株主リスト」のみ作成できないという事態は想定し難いと考えているようであり、例えば、登記申請を懈怠していた事案において、株主総会時の株主が判明しないなどと記載した上申書を添付することによる救済措置は検討していないようである。 そのため、株主リストの作成ができない場合には、登記申請は却下されるものと考えられる。 したがって、現在の株主の氏名等をもとに、過去の株主総会までに行われた株式の譲渡や相続の状況を確認の上、株主総会時の株主の情報の把握に努める必要がある。なお、株主の情報の把握に当たっては、税務署において、確定申告書の閲覧をし、その別表2を確認することも有益と考えられる。 援用することができると考えられる。100%子会社や株主が特定少数である中小企業の実務としては、株主総会議事録の定番の記載内容として「株主リスト」の必要的記載事項を網羅しておくとよいであろう。 逆に、閲覧申請者の利害関係による閲覧可能部分(商業登記規則第21条第2項第3号)が株主総会議事録にのみ及び、「株主リスト」には及ばないこともあり得るので、株主総会議事録とは別に書類を作成する方がよいとも言える。 「株主リスト」にどのように記載すべきかは、対象となる株主総会の開催に当たり、当該会社が誰を株主として取り扱ったのかに従い記載することとなる。 株主に相続が発生し、遺産分割協議が未了である場合、当該株主が所有していた株式は、共同相続人の共有となるから、株主の氏名及び住所としては、当該共同相続人全員の氏名及び住所を列挙することになる。 基準日前に株主に相続が発生し、当該基準日までに遺産分割が未了であったときは、株式は共同相続人の共有である。よって、権利行使者の指定の通知の有無を問わず、「株主リスト」には、共同相続人全員を記載する。 基準日までに遺産分割を了していたとしても、株式会社が株式の承継人が誰であるかを知らなかったときは、同様である。 株主総会の招集手続の時点までに株式の名義書換えを了していれば、株式会社は、当該株式の承継人を、議決権を行使することができる株主として取り扱うことになるので「株主リスト」には、当該承継人を記載する。 株主総会の招集の時点までに株式の名義書換えが未了であった場合には、株式会社が名義書換未了の承継人を株主として取り扱ったときは、当該承継人を記載し、そうでないときは、被相続人の氏名等を記載する。 株式会社は、当該株式会社が基準日現在において認識していた情報を記載すればよいので、被相続人の氏名等を記載する。 基準日後に株主に異動が生じたとしても、株式会社は、当該株式会社が基準日現在において認識していた情報を記載すればよいので 被相続人の氏名等を記載する。 株主の現在住所が不明であったとしても、株式会社が情報として把握している住所(株主名簿に記載されている住所)を記載すればよい。株式会社は、株主リストの作成のために敢えて調査する必要はない。依頼者である株式会社において、戸籍法等の第三者請求の要件を満たさないと考えられるので、職務上請求用紙の使用は、不適切な事案である。 「株主リスト」の作成者(記名押印をすべき者)は、登記申請を行う株式会社の代表者であり、登記所届出印の押印を要する(平成23年6月23日付法務省民商第99号民事局商事課長依命通知)。数年前の株主総会議事録を添付する場合であっても、 「株主リスト」の作成者(記名押印をすべき者)は登記申請を行う現在の代表取締役である。 「株主リスト」に記載すべき株主は、当該株主総会において議決権を行使することができるものをいうから、複数の株主総会により、複数の登記事項が発生し、これらを一括して登記申請する場合には、登記すべき事項ごとに当該株主総会において議決権を行使することができる「株主リスト」を添付しなければならない。ただし、一の株主総会において、複数の登記すべき事項について決議された場合において、各事項に関して株主リストに記載すべき事項が同一である場合には、その旨注記して、一の株主リストを添付すれば足りるとされている。 「株主リスト」の提出を要するのは、株式会社(特例有限会社を含む。.)、投資法人、特定目的会社である。持分会社、その他法人については、 「株主リスト」の提出を要しない。 株主名簿に記載されているとおりの氏名住所等を記載する。 商業登記規則第61条第3項に基づく株主リストには、 自己株式の記載は要求されていない。また、 自己株式等の議決権を有しない株式の株主について株主リストに記載したとしても、当該株主についての記載は、株主リストに記載すべき人数に関するものとは認められない上、議決権割合の分母にも算入されないことになるので注意を要する。 なお、商業登記規則第61条第2項に基づく株主リストには、 自己株式の記載が要求される。株式会社がその自己株式を有する場合には株式会社自身は、その株式会社の株主である(相澤哲ほか著『論点解説新・会社法』151頁、 2006年商事法務) とされているためである。 法務省のホームページでは、 「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) 」という記載例が示されている。 原則通り、株主名簿に記載されているとおりの名称と住所を記載する。 従業員持株会が民法上の組合や権利能力なき社団の場合、株主名簿には組合の名称や社団の名称とその住所を記載することができる。また、任意的に代表者名を併記することも認められている。 ①吸収合併の場合における吸収合併消滅会社の株主リスト ①については吸収合併存続会社、②については新設合併設立会社、③については組織変更後の持分会社の代表者である。 いずれの場合も各株式会社の代表者の登記所届出印を押印しなければならないが法令の規定等により印鑑証明書を添付しなければならない場合を除き、各株式会社の印鑑証明書は添付を要しない。 株主リストについては平成28年6月23日付け民商第99号商事課長依命通知において、登記所届出印を押印すべきものとされているところ、これは、登記官において株主リストの作成の真正を確認できるようにする趣旨である。 そのため、合併、組織変更については、消滅会社等の権利義務の全てを承継し、登記の申請人となる吸収合併存続会社、新設合併設立会社又は組織変更後の持分会社の代表者が作成し、登記所届出印を押印すべきものである。 なお、債権者保護手続に関する上申書等については、登記所届出印を押印すべき旨の規定等がないので、従来の実務のような取扱いがされているものである。今回の商業登記規則の改正による株主リストと、債権者保護手続に関する上申書等に関する従来の実務とは、同様に考えることはできないものと考えられているので、留意されたい。 株主名簿上、外国人株主を外国文字の表記で把握している場合には、株主リストにも外国文字で記載すれば足りる。 有限会社については「株主リスト」を添付書面とすることを直接定めた法律の規定はありませんが、有限会社は、会社法の規定による株式会社として存続しているため(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条)、有限会社も登記すべき事項につき株主総会決議を要する場合には「株主リスト」の添付が必要です。 株主全員について、次の事項を記載し、代表者が証明することが必要です。 種類株主全員について、次の事項を記載し、代表者が証明することが必要です。 ①議決権数上位10名の株主(自己株式等の議決権を行使することができない株式を除き、株主総会に欠席し又は議決権を行使しなかった株主を含む)、または、②議決権割合の多い株主から加算して3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主について、次の事項を記載し、代表者が証明することが必要です。 ①議決権数上位10名の株主(自己株式等の議決権を行使することができない株式を除き、株主総会に欠席し又は議決権を行使しなかった株主を含む)、または、②議決権割合の多い株主から加算して3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない方の株主について、次の事項を記載し、代表者が証明することが必要です。 当該株主総会または株主の同意について議決権を行使できる株主です。したがって、基準日を定めた場合には、基準日現在の株主を記載することになります。 株主の住所は,株主名簿の記載等により会社が把握している住所を記載していただければいいと思われます。 分母は総株主の議決権(ただし,当該株主総会決議において行使できるものに限ります。)の数となり,分子はある株主が有する議決権(ただし,当該株主総会決議において行使できるものに限ります。)の数です。 株主全員の同意があった書面に、株主全員について、株主の氏名又は名称、住所、株式数、議決権数が記載されていれば その同意書を株主リストとして援用することも可能であると考えられます。 可能です。ただし、各株式引受人は1円以上で円単位の振込をする必要があります。 発起人が設立時代表取締役に払込金の受領権限を委任した旨の証明書を添付することにより、設立時代表取締役の口座への払込みも認められます。
a.株主全員の同意を要する場合
証明書に記載すべき事項は「株主全員の氏名又は名称」「住所」「各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。)」「議決権の数」である。
b.種類株主全員の同意を要する場合
当該種類株主全員について、上記a.と同様の内容が証明書に記載すべき事項である。
証明書に記載すべき株主は、株主全員である必要はなく、登記すべき事項について決議をした株主総会においての総株主(種類株主総会の決議を要する場合には、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議において行使することができるものに限る。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であって、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数でよい。
a.10名
b.その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が3分の2に達するまでの人数
②新設合併の場合における新設合併消滅会社の株主リスト
③株式会社が組織変更をする場合における組織変更をする株式会社の株主リスト
④吸収分割の場合における吸収分割会社の株主リスト
⑤新設分割の場合における新設分割会社の株主リスト
⑥株式交換の場合における株式交換完全子会社の株主リスト
⑦株式移転の場合における株式移転完全子会社の株主リスト
④については吸収分割会社、 ⑤については新設分割会社、⑥については株式交換完全子会社、 ⑦については株式移転完全子会社の代表者である。
(1)株主の氏名又は名称
(2)住所
(3)株式数
(4)議決権数
(1)株主の氏名又は名称
(2)住所
(3)種類株式の種類及び数
(4)当該種類株式の議決権数
(1)株主の氏名又は名称
(2)住所
(3)株式数
(4)議決権数
(5)議決権数割合
(1)株主の氏名又は名称
(2)住所
(3)種類株式の種類及び数
(4)当該種類株式の議決権数
(5)当該種類株式の議決権数割合
▼▼取締役に関する質問▼▼ 一口に補欠取締役と言っても、会社法329条2項に規定する補欠取締役の制度と、任期途中で死亡などの理由で退任した取締役の補充として後任の取締役を選任する場合の補欠取締役とがあります。このうち、会社法329条2項に規定する補欠取締役は、予め補欠取締役を選任する制度であり、事例としては多くありません。実務的には後者の補欠取締役を指すことが圧倒的に多いと思われます。 ところで、A取締役が辞任等の理由により退任し、B及びCの2名が補欠取締役として選任された場合、両名とも「補欠」でよいのか、という問題があります。これに対して明確な先例はありませんが、補欠であるかどうかは選任機関に意思により決定しますので、1名の役員の補欠として2名を選任するという総会の意思であれば、両名とも補欠という扱いで構わないと思われます。野球やサッカーの補欠とはちょっと異なるようですね。 有限会社の取締役について、株主から選任された取締役については任期の定めを設けず、従業員の中から選任した取締役について任期を定めることは合理的理由もあり、許されるものと考えられるとされています(登記研究772 33頁)。 この場合の定款の定め方は、「株主総会は、取締役の選任に際し、当該取締役について、任期を定めることができる。この場合の取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」というような定めが考えられると記載されています。 そうすると、株式会社も同様の定めをすることができると考えられます。たとえば、取締役の任期は10年である場合に、特定の取締役については株主総会の決議により任期を短縮することが考えられます。 参照条文 取締役の任期を短縮する場合、どのように議案を上程し、また、どのように登記を申請するか、考えてみましょう。 例えば、任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」から「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時」に変更するとします。 まず、総会の議案の順序としては、定款変更議案を審議し、現任取締役が選任後2年以上経過しているのであれば、その次に取締役選任議案を審議することになるでしょう。なお、現任取締役が選任後1年しか経過していない場合は、定款変更決議が承認されたとしても総会時点では取締役の任期は到来していませんから、取締役選任議案を上程する必要はありません。 一方、現任取締役が選任後2年以上経過している場合は、定款変更によって現任取締役の任期が到来することになりますから、取締役選任議案を上程する必要があります。 さて、現任取締役選任後2年が経過している場合は、その前の議案で変更された任期が現任取締役に適用されることになりますから、現任取締役の任期は、本総会終結の時をもって満了します。 もっとも、そこまで厳格に考える必要があるかは疑問です。それは、後者の場合であっても、株主総会の意思としては「重任」として選任するのが通常であると考えられるからです。 このような解釈の相違を避けるためには、変更定款に付則をもうけて現任取締役の任期については本総会終結の時までとするというような定めを設ける方法が考えられます。 できます。今回の定時総会で、取締役の任期を10年とする定款変更決議をしてください。現任の取締役の任期は今回の定時総会の終結の時までですが、その任期が到来する直前に任期を伸長する決議がなされることにより、総会終了時に任期満了とはならず、あと8年、任期が続くこととなります。
ちなみに、会社法329条2項の規定は次のとおりです。
(選任)
第329条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
2 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。
(取締役の任期)
会社法第332条 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(委員会設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
一方、現任取締役選任後2年超、例えば5年が経過している場合は、その前の議案で変更された任期が現任取締役に適用されてしまうと、定款変更議案が可決された瞬間に任期満了になってしまいます。
そのため、厳密に考えると、前者の場合は「重任」、後者の場合は「退任+就任」で登記する必要があるとも言えます。
なお、定款変更が現任の取締役にも適用されることを明確にするために、定款変更議案を上程する際にその旨を説明しておく方が誤解もなく、わかりやすいかと思います。
▼▼取締役会に関する質問▼▼ 結論としては、株主総会議事録については署名(又は記名押印。以下同じ)する規定がないため署名義務はありません。取締役会議事録については、出席した取締役及び監査役は署名する必要がありますが、ご質問のような事情で全員の署名がそろわなくても、出席取締役の過半数の署名があれば登記可能と考えます。 この問題に関する登記先例としては、次のようなものがあります。 株主総会及び取締役会の議事録には、原則として出席取締役全員の署名を要するが、総会若しくは取締役会の終了後やむを得ない事由により署名不能の場合は、その旨を証明させれば、その他の出席取締役の署名で足り、また、取締役会については出席取締役の過半数の署名があればよい。 出席取締役のうち1名が株主総会議事録に記名捺印することを拒絶している場合には、他の出席取締役全員又は代表取締役から当該出席取締役の記名捺印を受けられない事情を付した上申書を添付すれば、当該株主総会の決議に基づく変更登記は受理される。 1 取締役会に出席したが、第1議案の決議に先立って退場した取締役も取締役会議事録に署名することを要する。 これらの先例を見ると、取締役会議事録に出席取締役及び監査役の署名が欠けている場合は、署名できない事情を記載した上申書を提出する必要があるようにも見えますが、よくよく見ると、取締役会については出席取締役の過半数の署名があれば上申書は必要ないと読むことができます。 これは、株主総会議事録と取締役会議事録とは、押印を求めている趣旨が異なるからだと思われます(もっとも現行法では総会議事録に署名すべき規定は存在しませんので、先例が出された商法時代の考え方ですが)。 すなわち、株主総会議事録に署名を求めているのは、議事録の真正担保という趣旨であると思われます。これは、議決権を持つのは株主であり、議事録署名者である取締役の署名が過半数あるからといってそれだけでは真正担保に十分ではないから、署名できない取締役についてはその理由等を明らかにさせるということであると思います。 そのため、理屈の上では上申書なしで一部の方の署名がない取締役会議事録だけで登記可能ということになるわけですが、実務の現場では、上申書なしで登記を申請するのは少し勇気が必要です。また、一部の方の署名がない議事録が少なくとも法務局に提出されるわけですから、会社の担当者としてもなぜ一部の方の署名のない議事録を外部に提出したのかということを記録として残ておきたいと考える方もおられるかと思います。 そこで、登記に添付するかどうかは別として、「これこれの事情で〇〇取締役は署名できない」という内容で報告書のような書面を1枚作成していただき、議事録に署名いただける役員さんに、議事録といっしょに署名していただいたらいかがでしょうか。そして、万が一法務局から上申書を提出するように指示があったらその報告書を提出できるように準備をしておいていただけると安心です。 そんなことを考えているうち、今の時代、遠隔地からテレビ会議等で参加した取締役は取締役会議事録に電子署名をし、電子署名された取締役会議事録と、リアルに署名をした取締役会議事録を併せて一本という、内容が同一で複数の取締役会議事録をそろえればいいのではないかという考えが頭をよぎり、調べてみましたら、次の先例がありました。 取締役会又は株主総会の議事録の原本3通を作成し、それぞれの議事録に取締役の一部が記名押印し、3通合わせて全取締役の記名押印がそろう場合には、議事録の作成手続は適法ではない。 ということで、複数の議事録は、現状はダメということです。 なお、通信機器を使って開催した会議の議事録の作成方法については、次のページを参考にしてください。 取締役会を書面決議で行った場合には、次の事項を内容とする取締役会議事録を作成する必要があります(会社法施行規則101条4項)。 一方、代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、取締役会の決議によって代表取締役を選定した場合には、出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならないとされています。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りではありません(商業登記規則61条6項)。 このため、新任代表取締役の選定を書面決議で行った場合の取締役会議事録の作成方法及び登記の添付書類は次の点に注意して作成する必要があります。 1.旧代表取締役が取締役も退任した場合 なお、いずれの場合も、新任代表取締役の就任承諾を証する書面には新任代表取締役が記名押印(実印)し、市町村長の作成した印鑑証明書を準備する必要があります(商業登記規則61条4項)。 株式会社の役員の就任登記には本人確認書類が必要ですが、再任の場合は不要と聞きました。このたび、当社の取締役が退任し、同時に監査役に就任するのですが、これは「再任」にあたりますか? 最近、「web会議システムを利用して開催した取締役会議事録はどのように作成すればいいか」というご質問を受けることがあります。 平14.12.18民商第3045号民事局商事課長通知 電話会議システムによる取締役会が適法とされるのは取締役間の協議と意見交換が自由にできる状況であることが前提ですので、単に会議の場にいない取締役と電話で通話し、その意見を伝達して決議をしたにすぎない場合は通達の要件を満たしていないものと考えられます。 テレビ会議システムについては、取締役間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよくわかるようになっている場合、すなわち、各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みになっていれば、取締役会として開催することができると考えられています。 以上のように、通信機器を用いて開催された取締役会の議事録を作成する場合には、以上の通達等の要件を満たしていることを明らかにする必要があります。 たとえば、「定刻、代表取締役〇〇〇〇は議長席に着き、本日の取締役会は、web会議システムを利用し行う旨を述べ、出席者が一堂に会するのと同等に適時・的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認した。」「以上、本日のweb会議システムを用いた取締役会は、終始異状なく議題の審議を終了したので、議長は午前○時○○分閉会を宣した。」などと記載することが考えられます。 株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。 会社法の規定 次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。 なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。 そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。 「出席した取締役」とは誰か 3つのケースで考えてみましょう。 これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。 なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。 登記研究755号に次のような質疑応答があります。 問 取締役会設置会社であるA株式会社の代表取締役甲が同じく取締役会設置会社であるB株式会社の取締役でもある場合に、甲がA株式会社名義でB株式会社に不動産を現物出資してB株式会社の発行する募集株式を引き受ける行為は、A株式会社と甲の利益が相反する行為であるから、当該不動産の所有権の移転の登記の添付情報として、当該取引を承認したA株式会社の取締役会議事録を提供することを要すると考えますが、いかがでしょうか。 答 前段、後段とも、御意見のとおりと考えます。 このケースは、A株式会社にとっては取締役甲のためにA株式会社の株式を現物出資するわけだから、甲とA株式会社の利益が相反することになります。したがって、問の前段についてはそのとおりだと思われます。 取締役会設置会社における利益相反の承認は、取締役会で承認することを要します(会社法365条1項)。「株主総会の承認を得ている」ということですが、当該決議は利益相反承認の決議ではなく、募集株式発行の決議であると考えられます(B株式会社が非公開会社であれば、株主総会で募集株式の発行を決議する必要がある(会社法199条))。そもそも取締役会設置会社であるわけですから株主総会の決議事項は法定されています。なんでも決議することができるわけではなく、利益相反取引の承認は取締役会で行うべきです。そもそも、株主総会における募集株式発行の決議と取締役会における利益相反決議とは決議要件が全く異りますので、株主総会決議をもって利益相反決議があったものとみなすのは無理があるのではないでしょうか。それとも、この質疑応答について私の読み方が間違っているのでしょうか。
(昭28.10.2、民事甲第1,813号民事局長回答)
(昭38.12.18、民事四発第313号民事局第四課長回答)
2 右の場合取締役の退場により定足数を欠くに至ったときは、その時から有効な決議をすることができない。
3 取締役会の議事録に出席取締役の氏名が列記され、その過半数の捺印があり、捺印者数が取締役会の定足数を満たす場合には、その議事録を添付書類とすることができる。
(昭38.5.25、民事四発第118号民事局第四課長回答)
これに対し、取締役会議事録は、議決権を持つ取締役に署名義務を負わせていることから、過半数の取締役の署名があれば決議が有効に成立したことを認定できるということだと思われます。
(昭36.5.1、民事四発第81号民事局第四課長事務代理回答)
1.会社法第370条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした取締役の氏名
ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
2.会社法第372条第1項(同条第3項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
取締役会議事録に取締役全員が記名押印(実印)するか、各取締役の書面決議の同意書に記名押印(実印)し、全員の市町村長の作成した印鑑証明書を準備する。
2.旧代表取締役が取締役として在任している場合
前記1の方法による。ただし、次の方法でもよい。
取締役会議事録に、少なくとも、議事録作成取締役及び旧代表取締役が記名押印し、旧代表取締役の押印は登記所に届出ていた印鑑を押印する。又は、各取締役の書面決議の同意書に記名押印(旧代表取締役の押印は登記所に届出ていた印鑑を押印)する。
この問題に対しては、平成14年に電話会議システムについて法務省から通達が出されています。
電話会議システムにより出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり,出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることが確認できるような電話会議の方法による取締役会議事録は,適式な取締役会議事録と認められる。
したがって、web会議システムもテレビ会議システムと同様に考えればよいと考えられます。
まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。
法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。
①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合
また、B株式会社については、当該現物出資を受け入れるに当たり、既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ないことから、B株式会社の取締役会議事録の提供を要しないと考えますが、いかがでしょうか。
また、B株式会社にとっても、取締役である甲に対し募集株式を割り当てることになるから利益相反になると考えられます。しかし、「既に株主総会の決議を経ているため、当該取引についての取締役会の承認は必要ない」との考えは疑問が残ります。
▼▼監査役に関する質問▼▼ 平成26年改正会社法が平成27年5月1日に施行されましたが、実務的に影響が大きいもののひとつに、会計監査に限定した監査役を置いている会社は、その旨の登記をしなければならない、ということがあります。 対象となる会社 ①の「監査役が置かれている株式会社」かどうかは会社の登記事項証明書を見ていただければわかります。 ②の「定款で株式の譲渡について制限を設けている株式会社」とは、会社の登記事項証明書に「株式の譲渡制限に関する規定」という欄があり、その内容として、「当会社の株式の譲渡については取締役会の承認を得なければならない」等と記載されている会社です。もしも、その記載がなければ、本件の改正による影響はありません。 次に、③「監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社」かどうかですが、次の3つのケースがありますので注意深く検討する必要があります。 a 平成18年5月1日より前に設立された株式会社で、当時、資本金が1億円以下または負債総額が200億円未満であった会社・・・これに該当する会社は、平成18年5月1日以降は監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがあるものとみなされています(その後、定款を変更して監査役の監査の範囲を限定しないこととした会社は除きます)。 b 平成18年5月1日以降に設立した株式会社で、監査役の監査の範囲を会計に限定する定めのある会社・・・「監査役の監査の範囲を会計に限定する定めのある会社」かどうかは定款に記載されていますので確認してみてください。 c 平成18年5月1日以降に定款変更をして、監査役の監査の範囲を会計に限定することとした会社・・・平成18年5月1日以降の株主総会議事録を確認していただく必要があります。 会計監査限定の定めの登記 登記の添付書類 なお、前記aに該当する会社は会計監査限定の定めを設定することを決議していませんので、その決議をした株主総会の議事録を添付することができません。その場合は会計監査限定の定めが設定されていることがわかる定款を添付することになりますが、その定款をも添付できないときは、上記の添付書面を添付することができないことを確認することができる書面を添付しなければならないこととされています。 具体的には,代表者の作成に係る証明書(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第53条の規定により,監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるとみなされた株式会社であり、かつ、定款又は株主総会の議事録のいずれも添付することができないことを記載したもの)等がこれに該当するとされています。 会社法の改正により、監査役の権限を会計に限定している株式会社は、平成27年5月1日以降に監査役の登記を申請するときまでに、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨を登記しなければならないものとされました。 提案1 平成18年5月1日以降に作成した定款を探す 提案2 平成18年5月1日以降に定款を作成したことがないので新たに定款を作成する 提案3 監査役の権限についてのみ定款変更をして明記する 提案4 定款の作成や一部変更をせずにすませる なお、「コスト」とは、当事務所にご依頼いただいて議事録等作成・登記を行った場合の費用であり、表示金額は「監査役の権限の登記」のみの金額(報酬等を含む)です。これとは別に、監査役の重任等の登記費用(約37,000円)が必要となります。 株式会社の監査役は、原則として、会計に関する監査権限と取締役の業務執行に関する監査権限とを有しています。しかし、非公開会社の場合、定款で、監査役の権限を会計に関する権限に限定することができます。このような監査役を俗に「限定監査役」と呼んでいます。 もっとも、会社法施行後に定款を変更していることもありますので、まずは定款の規定を確認してみましょう。
そこで、平成27年5月1日より前から存在している株式会社について、現時点で考えられる実務的な対応を検討しておきたいと思います。
①監査役が置かれている株式会社で、②定款で株式の譲渡について制限を設けており、なおかつ、③監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社が対象です。
前記の対象となる会社は、会計監査限定の定めの登記をすることが義務づけられました。ただし、上記a、bまたはcにより平成27年5月1日より前から監査役の監査の範囲が会計に限定されている会社は、平成27年5月1日以降にはじめて就任または退任する監査役の登記とあわせて行えばよいとされています。また、このように役員の変更登記と併せて登記をする場合には、役員変更分の登録免許税だけを納付すれば足ります。
登記の添付書類は、会計監査限定の定めが設定されていることがわかる定款、又は、会計監査限定の定めの設定を決議した株主総会議事録です。
しかし、このような場合には、現在の実態に合致するように定款を整備して、その定款を提出するのがよろしいかと思います。
貴社は平成10年設立とのことですが、平成18年5月1日より前に設立された株式会社で、当時、資本金が1億円以下または負債総額が200億円未満であった会社は、平成18年5月1日以降は監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがあるものとみなされています。
そこで、平成27年5月1日以降に監査役の登記を申請するときまでに、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨を登記しなければなりませんが、この登記をするためには、法務局に定款等を提出して監査役の権限を会計に限定していることを証明する必要があります。そこで、今回の改正に対する実務的な対応について提案いたします。
現在の会社法施行日(平成18年5月1日)以降に作成された定款には、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する」旨の規定がされていると思われます。この定款があれば、スムーズに登記をすることができます。・・・・・・コスト約7,700円※
平成18年5月1日に会社法が施行されたため、定款に使用する文言が大幅に変わっています。今回の改正を機に、現在の法律に合致した定款を作成します。なお、定款変更は株主総会の決議事項ですので株主総会議事録に定款変更議案も記載することになります。・・・・・・コスト約35,000円
現在、定款はあるが、監査役の権限を会計に関するものに限定する規定が抜けている場合、当該規定を追加することができます。なお、定款の一部変更は株主総会の決議事項ですので株主総会議事録に定款変更議案も記載することになります。・・・・・・コスト約15,000円
会社法施行日(平成18年5月1日)以降に定款を作成したことはないが、監査役の権限を会計に関するものに限定していることは間違いない場合には、その旨の上申書を提出することにより対応することができます。・・・・・・コスト約15,000円
現在は、監査役の権限が会計に関する監査権限に限定されている場合はその旨を登記することとされていますが、限定監査役であるかを判断する一助として、次の知識を有しておくとよいでしょう。
平成18年の会社法施行時の整備法では、資本金1億円以下の旧小会社の監査役の権限については「旧株式会社がこの法律の施行の際現に旧商法特例法第一条の二第二項に規定する小会社(以下「旧小会社」という。)である場合又は第六十六条第一項後段に規定する株式会社が旧商法特例法の適用があるとするならば旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、会社法第三百八十九条第一項の規定による定めがあるものとみなす」旨の経過規定が設けられています。
したがって、会社法施行時に資本金1億円以下の会社の監査役は、原則として限定監査役となりました。しかし、会社法389①の規定による定めは公開会社でない株式会社においてのみ置くことのできるものであることから、旧小会社のうち公開会社に相当する会社についてはこの経過規定は適用されず、会社法施行によって通常の権限の監査役を置く会社とみなされました。
ちなみに、公開会社である旧小会社は、法施行と同時に監査役の権限が職務執行監査権限に拡大するため、既存の監査役の任期は会社法の施行と同時に満了することとなり、実際にそのような処理をしました。
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事業年度を変更した場合の会計監査人の任期について教えてください
会社計算規則59条2項の解釈により。事業年度を変更する場合、変更後の最初の事業年度は1年6か月まで延長することができると考えられます。
(各事業年度に係る計算書類)
会社計算規則第59条 法第四百三十五条第二項 に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定に従い作成される株主資本等変動計算書及び個別注記表とする。
2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
3 法第四百三十五条第二項 の規定により作成すべき各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書は、当該事業年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければならない。ところで、会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされ、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなすとされています。
会社法第338条 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。そうすると、定時総会で事業年度の変更の決議(定款変更決議)をした場合の会計監査人の任期が問題となります。
例えば、27年3月末が事業年度の会社が27年6月の定時総会で定款変更決議をして、事業年度末日を9月末に変更するため、変更後の最初の事業年度を平成27年4月1日から平成28年9月末日にしたとします。そうすると、次の定時株主総会は平成28年12月頃ということになりますから、「選任後一年以内に終了する事業年度」が存在しないことになります。
これについて、東京法務局の取扱は次のようにしているとのことです。
①事業年度を変更した後に会計監査人を選任してときは、当該会計監査人に当初からその事業年度の終了までを任せていると考えられるから、変更後の事業年度が1年以内に終了しないときでも当該事業年度に関する定時株主総会の終結の時に退任する。
②会計監査人を選任した後に事業年度を変更した場合には、選任時からその事業年度の終了までを任せていないことになるから、変更後の事業年度が選任後1年以内に終了しないときには、当該事業年度の変更の効力が発生した時点で退任する(上の例では24年6月の総会で任期が終わる)。
そのため、②のケースは、みなし選任ではなく、実際に選任決議をする必要があるという取扱をしているとのことです(登記研究770号参照)。
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当社は会計監査人設置会社です。会計監査人は、毎年定時株主総会で自動的に再任されますが、今年の総会後に重任登記をしようとしたところ、半年前に会計監査人の法人名が変更されていることに気がつきました。この法人名変更の登記をしていませんが、遅ればせながら変更登記をすべきでしょうか。
会計監査人の法人自体に変更がなく単に法人名が変更されているだけであれば、変更登記をせずに、現在の法人名で重任登記をすることは可能です。もっとも、変更登記と重任登記をいっしょに申請することも可能です。どちらにするかは会社の判断で決めていただけれは結構です。
これに対し、単なる名称変更ではなく、会計監査人である法人が他の監査法人に吸収合併されて他の名称となった場合には、変更登記を省略することはできません。
▼▼資本金・計算関係に関する質問▼▼
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株式数に発行価額を賭けても資本金の額と一致しません。修正する方法はありませんか?
たとえば、会社設立の場合、1株の発行価額5万円、20株発行、資本金100万円などと、発行価額×株数=資本金という式が成り立つケースが大半です。
ところが、この公式はもろくも崩れます。たとえば、この会社がその後、新株式を発行する場合に、新たに株主となる人には1株5万円で買って貰いたいが資本金に入れるのはその半額、発行する新株式は10株とします。この募集株式発行が完了した暁には、発行済み30株、資本金125万円ということになり、30株に5万円を乗じても150万円にはならなくなります。
つまり、発行済みの株式の数と資本金の額は何の関係性もないのです。したがって、資本金の増減と関係なく株式の数を変更することができますし(株式の併合、消却、分割)、株式の数とは関係なく資本金を増加したり減少したりすることができます。
現在、株式は無額面ですが、以前はほとんどの会社で額面株式が採用されていたため、額面×株数=資本金という式が成り立たないと何か気持ち悪いと感じる人も多かったようです。そのため、最低資本金制度をクリアするために配当可能利益を資本金に組み入れる時など、そのタイミングとあわせて株式分割をして額面×株数=資本金という式を「意地でも維持する」というケースもありました。
株式は、種類株式でなければ1個1個の権利内容に差がないわけですから、会社法務の世界では、実は、それがいくらで発行されたかということはあまり意味がありません。その株主が何%の割合を所有しているかが大事なのです。
どうしても「昔の額面×株数=資本金」となるように修正したい場合は事務所までお問合せください。
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催告書に記載すべき計算書類に関する事項とは何のことですか
会社の合併等の場合に債権者異議申述手続きを行いますが、原則として、官報に掲載するほか、知れている債権者には個別に催告書を送付する必要があります。その場合、催告書に記載すべき事項は法定されています。
会社法の条文は次のとおりです。
(債権者の異議)
第799条
1 略
2 前項の規定により存続株式会社等の債権者が異議を述べることができる場合には、存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 吸収合併等をする旨
二 消滅会社等の商号及び住所
三 存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨この3号で、「存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの」を記載しなければなりませんが、「法務省令で定めるもの」とは会社法施行規則199条のことです。
また、会社法施行規則199条7号は「前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容」と規定しています。立案を担当した方の解説書「千問の道標」によりますと、この規定は決算公告を怠っている場合をも想定した規定であるというです。
そうすると、合併公告よりも前に催告書を発送するのであれば、催告書に貸借対照表の要旨を掲載すればいいということになります。なお、会社法施行規則199条の条文は次のとおりです。
(計算書類に関する事項)
第199条 法第七百九十九条第二項第三号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第七百九十九条第二項第三号の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項又は第二項の規定により公告をしている場合 次に掲げるもの
イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁
ロ 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で公告をしているときは、当該日刊新聞紙の名称、日付及び当該公告が掲載されている頁
ハ 電子公告により公告をしているときは、法第九百十一条第三項第二十九号 イに掲げる事項
二 最終事業年度に係る貸借対照表につき公告対象会社が法第四百四十条第三項に規定する措置を執っている場合 法第九百十一条第三項第二十七号に掲げる事項
三 公告対象会社が法第四百四十条第四項に規定する株式会社である場合において、当該株式会社が金融商品取引法第二十四条第一項の規定により最終事業年度に係る有価証券報告書を提出しているとき その旨
四 公告対象会社が会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第二十八条の規定により法第四百四十条の規定が適用されないものである場合 その旨
五 公告対象会社につき最終事業年度がない場合 その旨
六 公告対象会社が清算株式会社である場合 その旨
七 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容
▼▼合併等組織再編に関する質問▼▼ 会社の合併等の場合に債権者異議申述手続きを行いますが、原則として、官報に掲載するほか、知れている債権者には個別に催告書を送付する必要があります。その場合、催告書に記載すべき事項は法定されています。 会社法の条文は次のとおりです。 この3号で、「存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの」を記載しなければなりませんが、「法務省令で定めるもの」とは会社法施行規則199条のことです。 また、会社法施行規則199条7号は「前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容」と規定しています。立案を担当した方の解説書「千問の道標」によりますと、この規定は決算公告を怠っている場合をも想定した規定であるというです。 なお、会社法施行規則199条の条文は次のとおりです。
(債権者の異議)
第799条
1 略
2 前項の規定により存続株式会社等の債権者が異議を述べることができる場合には、存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第四号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 吸収合併等をする旨
二 消滅会社等の商号及び住所
三 存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
そうすると、合併公告よりも前に催告書を発送するのであれば、催告書に貸借対照表の要旨を掲載すればいいということになります。
(計算書類に関する事項)
第199条 法第七百九十九条第二項第三号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 最終事業年度に係る貸借対照表又はその要旨につき公告対象会社(法第七百九十九条第二項第三号の株式会社をいう。以下この条において同じ。)が法第四百四十条第一項又は第二項の規定により公告をしている場合 次に掲げるもの
イ 官報で公告をしているときは、当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁
ロ 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙で公告をしているときは、当該日刊新聞紙の名称、日付及び当該公告が掲載されている頁
ハ 電子公告により公告をしているときは、法第九百十一条第三項第二十九号 イに掲げる事項
二 最終事業年度に係る貸借対照表につき公告対象会社が法第四百四十条第三項に規定する措置を執っている場合 法第九百十一条第三項第二十七号に掲げる事項
三 公告対象会社が法第四百四十条第四項に規定する株式会社である場合において、当該株式会社が金融商品取引法第二十四条第一項の規定により最終事業年度に係る有価証券報告書を提出しているとき その旨
四 公告対象会社が会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第二十八条の規定により法第四百四十条の規定が適用されないものである場合 その旨
五 公告対象会社につき最終事業年度がない場合 その旨
六 公告対象会社が清算株式会社である場合 その旨
七 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容
▼▼登記に関する質問▼▼ 取締役会を書面決議で行った場合には、次の事項を内容とする取締役会議事録を作成する必要があります(会社法施行規則101条4項)。 一方、代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、取締役会の決議によって代表取締役を選定した場合には、出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならないとされています。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りではありません(商業登記規則61条6項)。 このため、新任代表取締役の選定を書面決議で行った場合の取締役会議事録の作成方法及び登記の添付書類は次の点に注意して作成する必要があります。 1.旧代表取締役が取締役も退任した場合 なお、いずれの場合も、新任代表取締役の就任承諾を証する書面には新任代表取締役が記名押印(実印)し、市町村長の作成した印鑑証明書を準備する必要があります(商業登記規則61条4項)。 株式会社の役員の就任登記には本人確認書類が必要ですが、再任の場合は不要と聞きました。このたび、当社の取締役が退任し、同時に監査役に就任するのですが、これは「再任」にあたりますか? 株主総会に関しては、実務担当者の方々は株主総会議事録や取締役会議事録の作成に苦労されていると思いますが、それぞれの議事録に誰が記名押印をしなければならないのか相談を受けることがあります。そこで、議事録に記名押印すべき方は誰なのかを考えてみたいと思います。 会社法の規定 次に、取締役会議事録について調べてみますと、会社法369条3項では、「取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない」とされています。 なお、「書面をもって作成されているときは」としているのは電磁的記録により取締役会議事録が作成されることも想定しているからであり、その場合には、同条4項は「法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない」としています。 そうしますと、結論として、法律上は、株主総会議事録に記名押印する必要はなく、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役が、署名又は記名押印しなければならないということになります。 「出席した取締役」とは誰か 3つのケースで考えてみましょう。 これらの場合、通説では、株主総会開会から閉会までの間に取締役として在任していた取締役を「出席した取締役」として扱っています。したがって、①前任取締役のみが該当する、②現任取締役及び新任取締役が該当する、③新任取締役は該当しない、ということになります。 なお、議事録に押印する印鑑については会社法そのものには規定はありませんが、商業登記法には詳細な規定があります。説明は割愛させていただきますが、ご不明な点は事務所までお問い合わせください。 官庁の許可を要する事項の登記を申請する場合には、申請書に官庁の許可書又はその認証がある謄本を添付しなければならないとされています(商業登記法19条)。 ただし、この場合の「官庁の許可を要する事項」とは、許可又は認可が登記すべき事項の効力要件である場合を言うとされています。したがって、営業認可のように当該許可又は認可が登記事項の効力発生要件ではない場合にはその添付を要しないとされています。 登記先例は次のとおりです。 では、効力発生要件である許可又は認可にはどのようなものがあるのでしょうか。登記先例を見てみましょう。 ●銀行が、その営業の全部譲渡及びこれを条件とする解散の決議をした場合には、当該銀行については、大蔵大臣の認可を受けてその営業の全部を譲渡したときから銀行法の適用がなくなり、当該解散の決議は、大蔵大臣の認可を受けなくても、営業の全部を譲渡したときに効力を生じることとなるので、この場合の解散の登記の申請書に、営業の全部譲渡についての大蔵大臣の認可書又はその認証がある謄本及び営業の全部譲渡をした旨の公告をしたことを証する書面が添付されているときは、これを受理することができる。 この先例は、営業の全部譲渡については認可が効力要件だが、これを条件とする解散自体は、既に銀行法の適用がなくなっているので認可は不要ということを確認したものでしょう。 また、学校教育法は次のように定めています。 なるほど、この条文を読むと、学校の設置は認可を必要とするため、いかに構造改革特区で株式会社が学校の経営を行う場合であっても、認可がなければ学校の経営を目的とした株式会社を設立することはできないということになります。営業許可ではないわけです。(平16.6.18民商第1765号) 銀行法とそれに関する通達を見てみましょう。 ●銀行業を営むことを目的とする株式会社の設立登記の申請には、主務大臣の免許を証する書面の添付を要しない。 免許は銀行設立の効力要件ではなく、営業開始の要件のようですね。 債権管理回収業に関する特別措置法 これも営業開始の要件のように読めます。したがって、許可を受けなくても「債権管理回収業」を目的に定めることができるのでしょうか? 議事録の記載により、株主総会の招集の手続が法令又は定款に違反していることが明らかな場合があります。たとえば、招集期間が定款に違反して短期間であることが議事録の記載から明らかである場合です。 このように、招集の手続が定款に違反している場合、株主等は決議取り消しの訴えを提起することができます。しかし、いつまでも不安定な状態にしておくことはできないため、訴えの提起は決議の日から三箇月以内にしなければならないとされています。 (参考)会社法831条抜粋 そこで、決議の日から三箇月以内に上記の議事録を添付して登記の申請がなされた場合は、「登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき」として、却下することとされています(商業登記法24条10号)。 しかし、決議の日から三箇月以内に訴えが提起されなければ取り消されることはありませんので、その場合には、訴え提起のないことの証明を裁判所で発行してもらい、それを添付して登記申請することになります。なお、この訴えは本店を管轄する地方裁判所の専属管轄であるので、当該裁判所で証明書を発行してもらうことになります。 (参考)(提訴期間経過後の登記) 会社計算規則59条2項の解釈により。事業年度を変更する場合、変更後の最初の事業年度は1年6か月まで延長することができると考えられます。 (各事業年度に係る計算書類) ところで、会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされ、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなすとされています。 会社法第338条 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。 そうすると、定時総会で事業年度の変更の決議(定款変更決議)をした場合の会計監査人の任期が問題となります。 例えば、27年3月末が事業年度の会社が27年6月の定時総会で定款変更決議をして、事業年度末日を9月末に変更するため、変更後の最初の事業年度を平成27年4月1日から平成28年9月末日にしたとします。そうすると、次の定時株主総会は平成28年12月頃ということになりますから、「選任後一年以内に終了する事業年度」が存在しないことになります。 これについて、東京法務局の取扱は次のようにしているとのことです。 ①事業年度を変更した後に会計監査人を選任してときは、当該会計監査人に当初からその事業年度の終了までを任せていると考えられるから、変更後の事業年度が1年以内に終了しないときでも当該事業年度に関する定時株主総会の終結の時に退任する。 ②会計監査人を選任した後に事業年度を変更した場合には、選任時からその事業年度の終了までを任せていないことになるから、変更後の事業年度が選任後1年以内に終了しないときには、当該事業年度の変更の効力が発生した時点で退任する(上の例では24年6月の総会で任期が終わる)。 そのため、②のケースは、みなし選任ではなく、実際に選任決議をする必要があるという取扱をしているとのことです(登記研究770号参照)。 会計監査人の法人自体に変更がなく単に法人名が変更されているだけであれば、変更登記をせずに、現在の法人名で重任登記をすることは可能です。もっとも、変更登記と重任登記をいっしょに申請することも可能です。どちらにするかは会社の判断で決めていただけれは結構です。 会社の本店移転の登記手続について、次のような通達が出されています。 本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記の申請において、当該登記申請書に記載すべき登記すべき事項(商業登記法第17条第4号)については、商業登記法第53条に規定する事項(ただし、「会社の成立年月日」を除く。)を除き、「別添登記事項証明書記載のとおり」と記載し、当該登記事項証明書と申請書とを契印する取扱いとすることとして差し支えない。また、この場合、登記事項証明書の記載内容を引用する方法によるほか、登記情報提供サービスの提供結果の内容を引用する方法によることとしても差し支えない。(平19.11.12、民商第2,451号民事局商事課長通知・登研719号154頁、月報62巻12号132頁) どういうことかと言いますと、会社の登記には管轄があり、本店所在地を管轄する法務局にその会社の登記情報が記録されています。今では全国から登記情報を瞬時に調査することができますが、その登記の記録は本店所在地を管轄する法務局にあるのです。 ですから、会社が、それまでと異なる法務局の管轄の地に本店移転した場合には、登記の申請人は、新本店を管轄する法務局に旧法務局で登記されていた情報を提出する必要があるのです。この通達は、その際に、旧本店所在地で取得した登記事項証明書を添付するだけでもいいよ、ということを言っているのです。 なお、平成29年7月6日付法務省民商第110号では次の取扱い認めています。 登記情報がオンラインを経由して日本全国どこからでも取得できる時代ですから、もう、管轄という概念を取り払ってもいいかもしれませんね。 「各登記所において、(商業登記)法第27条の規定により登記することができない商号の調査のため、登記簿に記録されている事項のうち、商号、本店の所在地、目的に係る情報を提供することができ、この情報の提供は、登記所の窓口に備え付ける商号調査端末を使用して行う。」 これは、平20.2.22民商第674号民事局長通達の一部です(登研726号127頁、月報63巻4号151頁)。 商業登記法27条とは、同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止を規定したもので、「商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあつては、本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない」と規定されています。 会社法が施行された際、それまでの類似商号制度が廃止され、同一本店同一商号だけが禁止されるようになりました。その後も、商号見出帳(だったかな?)という帳簿が法務局に備え付けられていましたが、この通達により、端末で情報提供することになったのでしょうね。 しかし、今では、登記のオンラインシステムで事務所にいながら全国の商号検索をすることができますので、「登記所の窓口に備え付ける商号調査端末」は使ったことがありません。 それにしても、時代はどんどん変わっていくものですね。 結論から言うと、できません。 ですから、お尋ねの場合では、本院移転決議の日を本店移転日として登記することになります。 退職慰労金として不動産を給付することは可能です。退職慰労金の決定は、株主総会で決議をする必要がありますが、必ずしも金銭の支給ではなく、会社が所有する不動産を与えることも可能です(会社法361条1項3号)。この場合の不動産の所有権移転登記を申請をするときの登記原因は、「年月日退職慰労金の給付」とするのが相当であるとの質疑応答が出されています(登研790号)。 会社の事業目的は、第三者が見た場合にどのような事業を営んでいる会社なのかある程度わかるような表現をしましょう。 事業目的は、通常、末尾に「前各号に付帯する一切の事業」という記載を入れます。したがって、事業目的として記載していない業務が発生したとしても、許認可等を受ける必要のない限り、会社の事業として行うことは問題ありません。 建設業などの許認可を受ける事業を行いたい場合には、許認可を受ける官庁に、記載方法について相談してみるのもよいでしょう。さらに、許認可を必要とする事業の中には、一定の資格者の確保や経験年数などの要件を満たす必要がある場合もあります。これは事前に確認しておきたいものです。 ちなみに、建設工事の完成を請け負うことを営業するには、その工事が公共工事であるか民間工事であるかを問わず、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受けなければなりません。ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいこととされています。 なお、「軽微な建設工事」とは、次の工事をいいます、 さて、許認可を受ける建設工事の種類は、次のとおり、2種類の一式工事と26種類の専門工事に分かれています。もしも、すぐには建設業の許可を受けないにしても、将来許認可を受けることも視野に入れて、次の種類から選択して事業目的に記載することをお奨めいたします。 •土木一式工事業 さらに、建設業を行う場合には「産業廃棄物の収集及び運搬」を事業目的に入れるかどうかも検討する必要があります。「産業廃棄物の収集及び運搬」は、他人の出した産業廃棄物を産業廃棄物処理業者に運搬する業務で、許可が必要となります。自分の排出した産業廃棄物のみを運搬する場合には、産業廃棄物収集運搬業の許可は必要ありません。 ちなみに、収集運搬の基準は次のとおり厳格に定められています。 株式会社、有限会社、一般(公益)社団・一般(公益)財団法人、投資法人、特定目的会社の設立の登記、取締役、監査役等の「就任」(再任を除く)による変更の登記の申請書には、就任する取締役等の印鑑証明書を添付する場合を除き、就任承諾書に記載された取締役等の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載された公的証明書(本人確認証明書)の添付が必要です。 「本人確認証明書」の例としては次のようなものがあります。 1 住民票記載事項証明書(住民票の写し) 個人番号が記載されていないもの 運転免許証コピーによる本人確認証明書の作成例はこちらをご覧ください 取締役、監査役又は執行役の就任(再任は除きます)による変更登記の際には本人確認証明書の添付ですが、本人確認証明書としては、就任承諾書に記載された氏名・住所と同一の氏名・住所が記載されている市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む)であることが必要です。 海外に居住する日本人で、日本に住民登録がない場合は、次のような書類が本人確認証明書に該当します。 外国在住の外国人については、本国官憲が発行したサイン証明書(住所の記載のあるものに限る。)のほか、身分証明書等の写し(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付することが考えられます。また、住所を記載して発行されたパスポートがあれば、その写し(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本)を添付することでもかまいません。 「再任」にあたるかどうかについて、登記研究806号65頁に考え方が示されています。まず、重任は「再任」にあたるということで問題ありません。 権利義務承継役員(任期は満了しているが香仁の役員が選任されていないため役員としての権利義務を引き継いでいる者)が再選された場合も「再任」にあたるとしています。また、任期調整などのために辞任等で退任した役員について辞任登記未了の間に再度同じ役員に再選された場合も「再任」にあたるとしています。 一方、退任登記はなされているが、その退任された役員の名前が履歴事項証明書に搭載されている間に再選された場合や、監査役を辞任し即取締役に就任した事案において、議事録の記載から、同一人ということが確認できる場合については見解は示されていません。このような場合は、実務的には本人確認書類を添付していることが多いと思われます。 したがって、ご質問の場合にも本人確認書類をご用意いただきたいと思います。 「本人確認証明書」の例としては次のようなものがあります。 運転免許証コピーによる本人確認証明書の作成例はこちらをご覧ください このたび退任する取締役に対し、退職慰労金とてして不動産を給付することは可能ですか? また、可能である場合、不動産の名義変更の登記原因はどのようになるでしょうか。
1.会社法第370条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした取締役の氏名
ハ 取締役会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
2.会社法第372条第1項(同条第3項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により取締役会への報告を要しないものとされた場合 次に掲げる事項
イ 取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
ロ 取締役会への報告を要しないものとされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
取締役会議事録に取締役全員が記名押印(実印)するか、各取締役の書面決議の同意書に記名押印(実印)し、全員の市町村長の作成した印鑑証明書を準備する。
2.旧代表取締役が取締役として在任している場合
前記1の方法による。ただし、次の方法でもよい。
取締役会議事録に、少なくとも、議事録作成取締役及び旧代表取締役が記名押印し、旧代表取締役の押印は登記所に届出ていた印鑑を押印する。又は、各取締役の書面決議の同意書に記名押印(旧代表取締役の押印は登記所に届出ていた印鑑を押印)する。
まず、会社法の規定を確認してみましょう。会社法318条は、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定しています。そこで、「法務省令で定めるところ」とは会社法施行規則72条のことですが、この規則には議事録に記載すべき事項は定められていますが、記名押印のことは全く規定されていません。つまり、株主総会議事録には記名押印すべき規定は存在しないのです。
法律上の規定はともかくとして、各社の事例では、株主総会議事録の末尾に「議長及び出席した取締役は記名押印する」等と記載され、それにしたがって出席取締役が記名押印している例が多く見られます。
さて、ここでの問題は、「出席した取締役」とは誰のことを指すのか、ということです。
①定時役員改選により、株主総会終結の時をもって前任取締役の任期が満了する場合
②株主総会で取締役追加選任が決議され、新任取締役が即時就任した場合
③株主総会終結の時をもって辞任する取締役の後任として新任取締役が前任取締役の辞任の効力発生と同時に就任した場合
非訟事件手続法第150条ノ2(商業登記法第19条)により登記申請書に添付すべき許可又は認可を証する書面は、当該許可又は認可が登記すべき事項の効力要件である場合に限り添付することを要する。(大正5.4.19、民第440号回答を変更)
(昭26.8.21、民事甲第1,717号民事局長通達・先例集下2415頁、登研45号25頁)
(平10.6.2、民四第1055号民事局第四課長通知)
学校教育法
第四条 次の各号に掲げる学校の設置廃止、設置者の変更その他政令で定める事項(次条において「設置廃止等」という。)は、それぞれ当該各号に定める者の認可を受けなければならない。
銀行法
(営業の免許)
第四条 銀行業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない。
(昭31.11.15、民事甲第2,633号)
(営業の許可)
第三条 債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない。
次の各号に掲げる場合には、株主等は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
商業登記法第25条 登記すべき事項につき訴えをもつてのみ主張することができる無効又は取消しの原因がある場合において、その訴えがその提起期間内に提起されなかつたときは、前条第十号の規定は、適用しない。
2 前項の場合の登記の申請書には、同項の訴えがその提起期間内に提起されなかつたことを証する書面及び登記すべき事項の存在を証する書面を添附しなければならない。この場合には、第十八条の書面を除き、他の書面の添附を要しない。
3 会社は、その本店の所在地を管轄する地方裁判所に、第一項の訴えがその提起期間内に提起されなかつたことを証する書面の交付を請求することができる。
会社計算規則第59条 法第四百三十五条第二項 に規定する法務省令で定めるものは、この編の規定に従い作成される株主資本等変動計算書及び個別注記表とする。
2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
3 法第四百三十五条第二項 の規定により作成すべき各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書は、当該事業年度に係る会計帳簿に基づき作成しなければならない。
2 会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。
これに対し、単なる名称変更ではなく、会計監査人である法人が他の監査法人に吸収合併されて他の名称となった場合には、変更登記を省略することはできません。
「新所在地における登記の申請は, 旧所在地を管轄する登記所を経由してしな
ければならず(商業登記法第51条第1項), 申請人の会社法人等番号は,新所在地を管轄する登記所の登記官においても明らかであるところ,同法第1 9条の3
の趣旨に鑑みると,新所在地における登記の申請書には,登記すべき事項とし
て,同法第53条に規定する事項(ただし,「会社の成立年月日」を除く)の記載があれば足り,その他の事項の記載を省略しても差し支えない」
定款変更を伴わない本店移転について(つまり、定款には本店の最小行政区画が定められており、その行政区画内で本店移転したために定款変更の必要はなく、取締役の決定か取締役会決議により新本店を定めるケースという意味)、「移転後、取締役会の承認決議があつたときは、決議の日に移転したものとみなされる」という通達があります(昭35.12.6、民事甲第3,060号民事局長電報回答)。
おそらく、会社法施行以前は、退職慰労金として金銭を支給する旨の決議しておいて、その代物弁済として不動産を与え、不動産の名義変更も「年月日代物弁済」と登記原因として登記を申請していたことが多いと思われます。会社法で金銭以外の報酬が認容されたことにより、上記の質疑応答が出されたものと思われます。
事業目的を定める場合には、設立後すぐには行わない事業であっても、将来的に行う可能性のある事業は記載しておいた方がいいでしょう。なぜなら、もしも、 将来、事業目的に定めのない新しい事業を展開することになりますと、事業目的の変更登記をしなければならなくなり、手間とコストがかかってしまうからです。
①建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
② 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
•建築一式工事業
•大工工事業
•左官工事業
•とび・土工工事業
•石工事業
•屋根工事業
•電気工事業
•管工事業
•タイル・レンガ工事業
•鋼構造物工事業
•鉄筋工事業
•舗装工事業
•しゅんせつ工事業
•板金工事業
•ガラス工事業
•塗装工事業
•防水工事業
•内装仕上工事業
•機械器具設置工事業
•熱絶縁工事業
•電気通信工事業
•造園工事業
•さく井工事業
•建具工事業
•水道施設工事業
•消防施設工事業
•清掃施設工事業
1.産業廃棄物が飛散し、流出しないようにすること
2.悪臭、騒音又は振動によって、生活環境の保全上、支障が生じないように必要な措置を講じること
3.収集運搬のための施設を設置する場合には、生活環境の保全上、支障を生じないように必要な措置を講じること
4.運搬車、運搬容器及び運搬用パイプラインは、産業廃棄物が飛散、流出し、悪臭が漏れる恐れのないこと
5.運搬車の車体の外側に、産業廃棄物の収集運搬車である旨を表示すること
6.運搬車に、「産業廃棄物収集運搬業」許可証の写しの他、所定の書類を備えおくこと
2 戸籍の附票
3 住基カード(住所が記載されているもの)のコピー(裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して記名押印する)
4 運転免許証のコピー(裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して記名押印する)
(1)在留証明書(海外の日本大使館・領事館で作成されたもの)
(2)住所の記載のあるサイン証明書(海外の日本大使館・領事館で作成されたもの)
(3)住所の記載のあるサイン証明書(帰国時に日本の公証役場で作成されたもの)
1 住民票記載事項証明書(住民票の写し) 個人番号が記載されていないもの
2 戸籍の附票
3 住基カード(住所が記載されているもの)のコピー(裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して記名押印する)
4 運転免許証のコピー(裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して記名押印する)
※印鑑証明書が必要となる場合もあります。
▼▼公正証書に関する質問▼▼ 判断能力について主治医からの意見聴取などを行っておくとともに、契約締結の状況を保全しておくために公証人に立ち会ってもらう方法も考えられます。 判断能力の確認 ご心配されているのは、相手先の代表取締役の判断能力かと思われます。契約当時、判断能力が欠けていたということになると、契約の効力自体が否定される可能性があります。したがって、相手方に依頼して診断書を提出してもらうか、主治医の意見を直接聞いてみてはいかがでしょうか。 また、契約締結の状況を保全するために公証人に立ち会ってもらい、事実実験公正証書を作成してもらう方法もあります。 事実実験公正証書とは 事実実験公正証書とは事実に係る公正証書であり、公証人が自ら事実実験した事実を録取し、かつ、その実験の方法を記載して、写真撮影・録音・ビデオ撮影等も活用して記録に残す公正証書です。 また、公証人が依頼者等の行う行為や状況を確認して、これを事実実験の実施状況として公正証書に記録することもできます。 民事訴訟手続において、公正証書は真正に成立した公文書と推定され、高い証拠能力が付与されています。したがって、事実実験公正証書は証拠保全の方法として活用することができます。 活用例 事実実験公正証書はお尋ねのようなケースだけではなく、次のような様々な活用方法があります。 ①書類(発明に関する資料、,アイデア集、技術計算書類等)の封入保全 ②開発中のシステム、ソフトウェア等の封入保全 ③ホームページにおける意匠等の無断使用の状況の証拠保全 ④契約締結状況の証拠保全 ⑤違法状態の確認 ⑥携帯電話のメールの交信記録 ⑦街宣車の宣伝活動の状況 ⑧不法行為を承認する供述(会社内の横領行為等) ⑨放置自動車の状況 ⑩死亡した建物賃借人の室内残置物の状況確認 ⑪土地の境界の状況の証拠保全 ⑫貸金庫の開扉 ⑬尊厳死宣言 宣誓認証も活用を 公証人の活用方法としては、事実実験公正証書の他に宣誓認証も知っておくとおいでしょう。宣誓認証は、私署証書や供述書の作成者が公証人の面前で証書に記載された内容が真実であることを宣誓し、公証人が認証したものです。したがって、宣誓認証を作成した当時にその内容を公証人の面前で供述したという証拠保全機能があります。 公証制度のさらなる活用を 我が国の公証制度は、関係者間に紛争が起きないように、あらかじめ法律関係や事実関係を整序し、証拠を保全して予防司法の役割を担っています。 それに加え、公証制度を利用しておけば、仮に紛争が生じてしまった場合でも、証拠として的確に活用することができます。公証制度を上手に活用していきたいものですね。
契約実務と改正法施行との関係
改正民法は2020年4月1日から施行されますが、 施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率については旧法の規定によることとされています(附則15条1項)。つまり、2020年4月1日より前に利息が生じている場合には年5パーセントの法定利息が発生し、2020年4月1日以降についても年3パーセントではなく、年5パーセントの利率のままであるということです。 また、契約が2020年4月1日より前であっても利息が2020年4月1日以降に発生した場合の法定利息の利率は年3パーセントということになります。 次に、遅延損害金の法定利率ですが、施行日前に債務が生じた場合(施行日以後に債務が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む)におけるその債務不履行の責任等についても、旧法の規定によることとされています(附則17条1項)。したがって、2020年4月1日より前に遅延損害金が生じている場合には年5パーセントの遅延損害金が発生し、2020年4月1日以降についても年3パーセントではなく、年5パーセントの利率のままであるということです。 そして、2020年4月1日以後に遅延損害金が生じる場合であっても、その原因である法律行為が2020年4月1日より前にされたときも、年3パーセントではなく、年5パーセントの利率が適用されることになります。 まず、前段のご質問については、原則として、更新後の賃借人の債務についても保証人の責任が生じるとするのが判例です(最判平成9年11月13日)。 後段については未だ明確ではなく、今後の実務の趨勢を見ながら検討する必要がありますが、もしも、新法が適用されるとすると、極度額を定めて合意をしておく必要があり、何ら合意をしていない場合には、極度額の定めがないことを理由に無効となる可能性があります。 改正民法が施行される2020年4月1日より前に締結された賃貸借契約に改正民法が適用されるかどうかは、改正民法の「附則」を注意して見ておく必要があります。 施行日前に贈与、売買、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例によるとされていますから(附則34条1項)、2020年4月1日より前に締結された賃貸借契約には旧法が適用されます。 また、施行日前に通知が発せられた意思表示の効力発生時期については旧法が適用されますので(附則6条2項)、例えば、施行前に発せられた解除等の意思表示の到達は旧法が適用されます。 さらに、施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例によるとされていますから(附則10条4項)、施行前に生じた賃料等の消滅時効期間は旧法が適用されます。 このほか、施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率についてはなお従前の例によるとされていますから(附則15条1項)、施行前に生じた利息は旧法が適用され、施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率についてもなお従前の例によるとされていますから(附則17条3項)、施行前に生じた利息の法定利率は旧法によります。 また、施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例によるとされていますから(附則21条1項)、施行前にされた保証契約には旧法が適用されます。 さらに、施行日前に契約が締結された場合におけるその契約の解除については、なお従前の例によるとされています(附則32条)。 一方、施行日前に締結された定型取引に係る契約については、改正民法の適用を受けることとなりますので(附則33条)、賃貸借契約に付随して締結された定型取引に係る契約は、改正民法施行により定型約款の規定の適用を受けることになります。 反対の意思表示をすることにより、改正法の定型約款の規定が適用されないこととなります。その場合には、改正法施行後も改正前の民法が適用されることになりますが、改正前の民法には約款に関する規定が置かれていないため、反対の意思表示をすることにメリットがあるのかどうか、一概には言えません。個別の事例によって、反対の意思表示をするかどうかを検討した方がよいと思われます。 なお、契約又は法律の規定により解除権を現に行使することができる者は,反対の意思表示をすることはできないこととされています(附則33条2項)。 一部の規定を除き,2020年4月1日から施行されますが、次のとおり、2つの例外がありますのでご注意ください。 ① 2018年4月1日から2020年3月31日までの間に定型約款の反対の意思表示をすることができます。 ② 2020年3月1日から公証人による保証意思の確認手続をすることができます。 今回の改正により、定型約款の規定が新設されました。改正法施行前においても定型取引にかかる契約は多数締結されています。これらの施行日前に締結された定型取引にかかる契約に対しても、改正法の定型約款の規定が適用されます(附則33条1項)。その結果、改正法施行前の定型取引契約の契約当事者も、改正法施行後は、改正法のもとで定型約款の適用を受けることになってしまいます。 そこで、改正法施行前に定型取引にかかる契約を締結した場合で、既存の定型約款の効力に異議があるときは、施行日前に定型約款を提供する相手方に対して、新設された定型約款のみなし合意の規定を適用することに反対する旨の意思表示をすることができることとしました。 なお、改正法施行後は、定型取引を行うことの合意をした者は、次に掲げる場合には、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなされることとなります(法548条の2第1項)。 一概には言えませんが、当初の契約が2020年4月より前に締結され、改正民法施行後に自動更新された場合でも、契約締結時、すなわち、改正前の民法が適用されるものと思われます(附則34条1項参照)。 これは、契約の当事者は契約を締結した時点において通用している法令の規定が適用されると考えるのが通常であるため、施行日前に契約が締結された場合について改正後の民法の規定を適用すると、当事者の予測可能性を害する結果となること等によるものです(部会資料85-4頁参照)。 しかし、いずれの民法が適用されるのかを明確にするため、更新時に改正民法を前提として起案した契約書を締結し直すことは有意義であると考えます。 なお、法第604条2項(賃貸借の存続期間)の規定は、施行日前に賃貸借契約が締結された場合において施行日以後にその契約の更新に係る合意がされるときにも適用されます(附則34条2項参照)。 これは、賃貸借契約の更新は契約の当事者の合意により行われるものであるため、更新後の賃貸期間の上限を20年から50年に改める旨の改正後の民法の規定を施行日前に契約が締結された場合について適用しても、契約の当事者の予測可能性を害することにはならないこと等を根拠としています(部会資料85-4頁参照)。 一概には言えませんが、当初の契約が2020年4月より前に締結され、改正民法施行後に自動更新された場合でも、契約締結時、すなわち、改正前の民法が適用されるものと思われます(附則34条1項参照)。 これは、契約の当事者は契約を締結した時点において通用している法令の規定が適用されると考えるのが通常であるため、施行日前に契約が締結された場合について改正後の民法の規定を適用すると、当事者の予測可能性を害する結果となること等によるものです(部会資料85-4頁参照)。 しかし、いずれの民法が適用されるのかを明確にするため、更新時に改正民法を前提として起案した契約書を締結し直すことは有意義であると考えます。 なお、法第604条2項(賃貸借の存続期間)の規定は、施行日前に賃貸借契約が締結された場合において施行日以後にその契約の更新に係る合意がされるときにも適用されます(附則34条2項参照)。 これは、賃貸借契約の更新は契約の当事者の合意により行われるものであるため、更新後の賃貸期間の上限を20年から50年に改める旨の改正後の民法の規定を施行日前に契約が締結された場合について適用しても、契約の当事者の予測可能性を害することにはならないこと等を根拠としています(部会資料85-4頁参照)。 書面(その内容を記録した電磁的記録によってされた場合を含む。)で行う必要があります(附則33条1項)。 通知書 例文 私、貴社の間で締結した平成○年○月○日付○○サービス契約に関する約款に対し、改正民法(民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)548条の2ないし548条の4の適用に反対いたしますので、その旨通知いたします。 改正法465条の6第1項は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、:原則として、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じないとしています。 また、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約についても465条の6第1項の規定を準用しています(465条の8第1項) しかし、本体施行日である2020年4月1日上記の規定を施行するとなると、保証契約の締結が円滑に行われないおそれがあります。 そこで、保証人になろうとする者は、2020年3月1日移行において上記の公正証書の作成を嘱託することができることとされています(附則21条2項等)。 当事者間で契約書を締結していたり、民法と異なるルールを合意している場合には、その契約書の内容や合意の内容が優先します。契約書を締結していなかったり、民法と異なるルールを合意していない場合には、民法のルールが適用されることになります。 仮に、契約書を締結していたり、民法と異なるルールを合意していた場合であっても、それらの内容に含まれない事項については民法のルールが適用されることになります。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
二 定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき
債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または、権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効により消滅します。 ところで、期限の定めのない債権については、債権者はいつでも債務者に履行を請求することができます。そして、そのことは、債権者も知っていると考えられます(実際には知識がなく知らなかったとしても、法的には知っていたものとして扱われます)。 したがって、「債権者が権利を行使することができることを知った時」と「権利を行使することができる時」とは同じ時点となるため、その時点から5年で消滅事項期間が経過することになります。 しかし、貸金を代表とする消費貸借契約では、当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、相当の期間を定めて返還の催告をすることができるとされていることから(民591条1項)、相当期間が経過しなければ返還の請求をすることができません。ですから、相当期間が経過してから5年経過しなければなければ消滅事項期間が経過したとは言えません。 債権の消滅時効の起算点と時効期間は次の2通りとなりました。 1 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。 民法改正前は、消滅時効の起算点は「権利を行使できる時」のひとつだけでしたが、民法改正により、「権利を行使することができることを知った時」という起算点が加えられました。これらのいずれかの時効期間が満了すれば、消滅時効が完成するということになります。 また、債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅することになります。 民法改正により、権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しないものとされました。 1 その合意があった時から1年を経過した時 したがって、時効完成が間近な場合で、交渉している間に消滅時効が完成してしまう可能性のある場合には、上記の方法で時効完成猶予をすることができます。もちろん、裁判上の請求をして時効の完成猶予をすることもできますが、裁判上の請求まではしたくない場合には、上記の書面による完成猶予を選択するとよいと思われます。 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年です。この点については改正されていません。 催告をしたことにより時効完成は6ヶ月猶予されますが、6ヶ月経過により消滅時効き完成すると考えられますので、その間に権利についての協議を行う旨の合意を書面で行っても、時効完成猶予期間を延長させることはできないものと考えられます。 例えば、売掛金として2年の短期消滅時効の適用のある債権(民法改正前)について勝訴判決を得ると、時効期間は10年に延長される。 ここで、その10年に戻った債権について、判決確定後に一部弁済があり、時効が中断した場合に、その後の時効期間は何年になるか、という問題を考えたい。 たとえば、売掛債権の判決確定から1年を経過したときに一部弁済があったとすると、そこからの時効期間は10年なのか、売掛債権の短期消滅時効にもどって2年なのか、はたまた、9年(10年―1年)なのか、仮に、判決確定から一部弁済の間で改正民法が施行された場合には5年になるのか。 この問題については、判決確定によりなぜ時効期間が10年になるのか、その理由を探るとヒントになりそうだ。 なぜ10年に延長されるかについては、確定判決によって債権の存在が公の手続きによって明確になったのであるから、原則的な時効期間である10年に延長されると説明されているようである。 つまり、10年は確定判決を取得した特典ということではなく、短期消滅時効制度から解放されて原則的な期間に戻るという意味のようである。「時効期間の転換」というような表現もされているようである。 このような考え方を前提に本問を検討すると、判決確定後に一部弁済があつたとしても、既に「時効期間の転換」が生じているのであるから一部弁済後の時効期間は10年と考えるのが相当であると思われる。 ところで、改正民法は、判決確定後の消滅時効期間は10年とし、改正前の期間を維持している。一方で、一般の債権の消滅時効期間は権利を行使することができることを知ったときから5年、権利を行使することができるときから10年を原則的な期間としている。 そうすると、改正前は「時効期間の転換」という論理で判決確定後の時効期間10年の説明がされていたが、改正後に「時効期間の転換」の論理を持ち出してくると、判決確定後の消滅時効期間は、権利を行使することができることを知ったときから5年、権利を行使することができるときから10年となってしまい、判決確定後の時効期間を10年とすることと整合性がとれなくなってくるのではないか。 ふとそう思ったので、備忘録として掲げておく。 商事債権の消滅時効期間を5年とする商法522条が削除されました。したがって、商事債権であっても、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から原則として10年間の消滅時効期間となります。 改正により、債権の種類ごとの短期消滅時効は廃止され、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から原則として10年間の時効期間に統一されました。 たしかに同じ時点である場合が多いとは思いますが、異なる時点となることも考えられます。 たとえば、弁済期の定めのある債権(支払期の定めのある売買代金債権、返済日の定めのある貸金債権等)については、債権者は、支払期や弁済期がいつであるかは知っているものと考えられますので、「債権者が権利を行使することができることを知った時」と「権利を行使することができる時」とは同じ時点になります。そうすると、実質的にはその時点から5年で消滅事項期間が経過することになります。 しかし、不確定期限(ある事実が生じることを期限とするもので、その事実の生じる時期が不明なもの)や条件が付された債権については、期限が到来したり条件が成就した時が「権利を行使することができる時」に該当しますが、債権者がその事実を即座に知ることができずに後日知ったという場合には、その後日が「債権者が権利を行使することができることを知った時」となります。この場合には、「権利を行使することができる時」から10年間と、「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年間のいずれか早く満了する時期に時効期間が経過することになります。 たしかに同じ時点である場合が多いとは思いますが、異なる時点となることも考えられます。 たとえば、弁済期の定めのある債権(支払期の定めのある売買代金債権、返済日の定めのある貸金債権等)については、債権者は、支払期や弁済期がいつであるかは知っているものと考えられますので、「債権者が権利を行使することができることを知った時」と「権利を行使することができる時」とは同じ時点になります。そうすると、実質的にはその時点から5年で消滅事項期間が経過することになります。 しかし、不確定期限(ある事実が生じることを期限とするもので、その事実の生じる時期が不明なもの)や条件が付された債権については、期限が到来したり条件が成就した時が「権利を行使することができる時」に該当しますが、債権者がその事実を即座に知ることができずに後日知ったという場合には、その後日が「債権者が権利を行使することができることを知った時」となります。この場合には、「権利を行使することができる時」から10年間と、「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年間のいずれか早く満了する時期に時効期間が経過することになります。 民法改正前は、消滅時効の「中断」、消滅時効の「停止」とされていた概念が、消滅時効の「完成猶予」、消滅時効の「更新」という概念に整理され、従来の消滅時効の中断事由、消滅時効の停止事由が分類され直しています。 消滅時効の「完成猶予」とは、消滅時効期間が満了するまでの間に一定の事由が生じた場合には、その間(又はその事由が解消されてから一定の期間)は、消滅時効期間の進行を停止させるという意味です。 一方、消滅時効の「更新」とは、新たに時効期間がスタートするという意味です。 消滅時効期間が満了するまでの間に訴訟を提起した場合を例に説明すると、訴訟提起によって消滅時効が「完成猶予」され、時効期間は進行しませんが、判決が確定すると、消滅時効が「更新」され、新たに消滅時効期間がスタートすることになります。 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされ、その合意において当事者が協議を行う期間を定めたときは、その期間を経過するまでは消滅時効は完成猶予されます。ただし、その期間は1年に満たないものに限るとされています。 ご質問の趣旨は、協議を行う期間を1年未満と定め、その期間が自動更新される旨の合意書面であれば完成猶予の期間も更新されるか、という意味だと思われます。 しかしながら、当初の完成猶予期間が更新されるのは、満了する前に再度の合意をした場合とされていますから、「再度の合意」を伴わない自動更新では、完成猶予期間が更新されないと考えておくべきだと思います。
2 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
3 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
改正民法は2020年4月1日から施行されますが、 施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率については旧法の規定によることとされています(附則15条1項)。つまり、2020年4月1日より前に利息が生じている場合には年5パーセントの法定利息が発生し、2020年4月1日以降についても年3パーセントではなく、年5パーセントの利率のままであるということです。 また、契約が2020年4月1日より前であっても利息が2020年4月1日以降に発生した場合の法定利息の利率は年3パーセントということになります。 次に、遅延損害金の法定利率ですが、施行日前に債務が生じた場合(施行日以後に債務が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む)におけるその債務不履行の責任等についても、旧法の規定によることとされています(附則17条1項)。したがって、2020年4月1日より前に遅延損害金が生じている場合には年5パーセントの遅延損害金が発生し、2020年4月1日以降についても年3パーセントではなく、年5パーセントの利率のままであるということです。 そして、2020年4月1日以後に遅延損害金が生じる場合であっても、その原因である法律行為が2020年4月1日より前にされたときも、年3パーセントではなく、年5パーセントの利率が適用されることになります。 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定めることとされました。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率によります(419条1項)。 改正前の法定利率は年5パーセントでしたが、民法改正時の法定利率は年3パーセントに変更されました。また、これに伴い、商事法定利率(年6パーセント)の規定は廃止され、改正民法の法定利率に統一されることになりました。 さらに、法定利率は3年に1度見直されることになりました。 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率によることとされましたので(419条)、売買代金の債務不履行の場合における遅延損害金は、遅滞が生じた時点における法定利率が適用されることになります。 改正前の法定利率は年5パーセントでしたが、民法改正時の法定利率は年3パーセントに変更されました。また、これに伴い、商事法定利率(年6パーセント)の規定は廃止され、改正民法の法定利率に統一されることになりました。さらに、法定利率は3年に1度見直されることになりました。 もしも、契約どおりに支払わなければペナルティを受けるというプレッシャーが弱くなってしまうことが心配でしたら、法定利率ではなく、遅延損害金の利率を契約で定めておく必要があります。
民法465条の6は、「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」と規定しています。したがって、公正証書の作成をしなければならない保証契約は、①「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約」と、②「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約」のふたつということになります。 お問合せのケースを考えるにあたり、「貸金等債務」という概念を確認しておきたいと思います。 そうすると、準消費貸借契約にもとづく返還債務は、原則として「貸金等債務」に含まれないと考えられます。しかし、事業のために負担した貸金等債務を目的として準消費貸借が成立した場合には、旧債務との間に同一性が認められ、「事業のために負担した貸金等債務」と同じ扱いとなると考えられます(改正債権法と保証実務102)。 したがって、企業の売掛債権について準消費貸借が締結される場合は本条の適用はありませんが、従来の貸付金に対して準消費貸借が締結される場合は本条の適用があると考えられます。 個人根保証契約について法定の元本確定事由を設けたのは当事者間の衡平等を考慮して保証人を保護するためです。ですから、当事者の約定で保証人の責任を追及することができる範囲を広めることは立法の趣旨に反するものと考えます。 保証人は、通常、主債務者による債務不履行があるかどうか、主債務をどれくらい弁済し、残額がどれほどかを当然に知り得る立場にはありません。そのため、主債務者が主債務について債務不履行に陥っても保証人が長期間にわたってそのことを知らず、保証人が請求を受ける時点では遅延損害金が積み重なって多額の履行を求められるという酷な結果になる場合があることが指摘されていました。そのため、主債務の履行状況について保証人が知る手段として、458条の2が設けられました(部会資料76A 11頁)。 例えば債権者が金融機関の場合や契約上の守秘義務がある場合には、主債務者の履行状況を、保証人からの照会に対して回答することが許されるかどうか判断に迷うところですが、本条が設けられた背景を考慮すると、保証人の照会は法的な権利であり、債権者は回答すべきであると考えます。 なお、保証契約書において、保証人の上記の請求を制限する条項を設けることも考えられますが、本条が設けられた趣旨に鑑みると当該条項を設けたとしても無効とされる可能性が高いと考えられます。 条文は「保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。」と規定しています。 したがって、「債権者」は法人、事業者である個人、事業者でない個人いずれにも適用があり、また、「保証人」についても「主債務者」についても、法人、事業者である個人、事業者でない個人いずれにも適用があると考えられます。 なお、保証人については「委託を受けた保証人」であるという要件があります。 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(いわゆる「根保証契約」)であって保証人が法人でないもの(いわゆる「個人根保証契約」)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負うものとされ、個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じないとされました(民465条の2)。 賃貸借契約の個人保証も「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」ですから個人根保証契約であり、この条文が適用されます。 さらに、その極度額は書面等で定めなければ保証契約が無効となってしまいますので注意が必要です。 この場合、極度額が100万円であり、既に連帯保証人は60万円の保証債務を履行していますので、賃貸人が連帯保証人に請求できる金額は40万円が限度となります。100万円の限度額の範囲である80万円全額を請求できることにはなりませんので注意が必要です。 民法改正により個人の保証人には極度額を定めなければならないこととなりましたが、これは、個人の保証人が過大な保証債務を負担することがないように限度額を定めることを義務付けたものです。したがって、賃貸借契約に保証会社をつける場合には、原則として保証の極度額を定める必要はありません。 保証会社は、家賃滞納等があった場合には賃借人に代わって賃貸人に賃料等を支払いますが、保証会社はその金額等を賃借人に求償することになります。そして、その求償権を保全するために個人の保証人を徴求するこしがあります。そのような場合に、保証会社が個人保証人に対して求償できる限度額を定めておかなければ個人の保証人保護に欠けることとなります。 そこで、保証会社の求償権を保全するために個人の保証人を徴求する場合には、賃貸人と保証会社との間の保証契約に極度額を定めておかなければならないとされましたので注意が必要です。 改正民法では、賃借人が死亡した場合には個人保証人の責任の範囲が確定することとされました。たとえば、賃借人Aが死亡したときは、その時点でAが賃貸人に支払うべき債務の範囲で個人保証人の責任の範囲が確定しますから、仮に、10ケ月分の賃料滞納があった場合には、その後もAの相続人が賃料滞納を続けたとしても、個人保証人Bは10ケ月分のみの責任を負えば足ります。この場合、もしも、個人保証人Bの極度額が10ケ月分未満の金額である場合には、個人保証人Bの責任は極度額までということになります。 ところで、賃借人Aが死亡したとしても賃貸借契約は終了せず、Aの相続人が賃借人の地位を承継することになります。そうしますと、Aの死亡時点以降はBは保証人としての責任を負わなくてよいことになりますから、賃貸人としては保証人がいない状態で賃貸借契約を続けなければならなくなります。 個人の方に連帯保証人になっていただく場合には保証債務について極度額を定める必要があります。また、その極度額は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額の全部に係る極度額である必要があり、そのことを明示しておくべきだと思われます。 なお、極度額の定めは保証人が負担する保証債務の範囲の全部を対象とし、その上限の金額が一義的に明確でなければならず、かかる方式によらない元本の極度額のみの定めは(旧)465条の2第1項の極度額の定めには当たらないものと解するのが相当であるとした判例(熊本地裁平成21年11月24日判決(判時2085号124頁)があります。 極度額をいくらにすべきかは法令上の制限はありません。もちろん、極度額を無限とすることはできないものと考えられますが、あまり高額な極度額ですと連帯保証人となることを躊躇することになるでしょう。したがって、万が一、主債務者の賃料未払いや明渡債務不履行等が生じた場合に想定される請求額を考慮して適切妥当な金額を検討して極度額を定めるべきでしょう。 保証契約は個人的情義等から無償で行われることが通例である上、保証契約の際には保証人が現実に履行を求められることになるかどうかが不確定であることから、保証人において自己の責任を十分に認識していないまま安易に契約が結ばれる場合も多く、そのため、個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれるような事例が後を絶たない状況が続いていました。 保証人にとって過酷な結果を招くという問題が最も深刻に生じているのは、主たる債務者が事業のための資金を借り入れた債務の保証についてであり、事業のための資金の借入れは、主債務者が法人であろうと自然人であろうと、多額になりがちだからです。そのため、事業のための借入れに当たっての、特に経営に関与しない第三者による保証の問題性は広く認識されるに至り、保証に依存しない融資実務の確立に向けた試みが行われてきました。 例えば、中小企業庁は、「事業に関与していない第三者が、個人的関係等により、やむを得ず保証人となり、その後の借り手企業の経営状況の悪化により、事業に関与していない第三者が、社会的にも経済的にも重い負担を強いられる場合が少なからず存在することは、かねてより社会的にも大きな問題とされてきております。」という認識を示した上で、信用保証協会が行う保証において経営者本人以外の第三者を保証人として求めることを原則として禁止しました(平成18年3月31日付け「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」)。 また、平成25年8月に金融庁が定めた「主要行等向けの総合的な監督指針」においても、経営者以外の第三者の個人保証について、直接的な経営責任がない第三者に債務者と同等の保証債務を負わせることが適当なのかという指摘があるという状況に鑑み、金融機関には、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立するという趣旨を踏まえた対応を取る必要があるとされ、金融機関に対する監督における着眼点として、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする方針を定めているか、経営に関与していない第三者が例外的に個人連帯保証契約を締結する場合に、当該契約は契約者本人による自発的な意思に基づく申し出によるものであって、金融機関から要求されたものではないことが確保されているか、などが挙げられていました。 上記のような中小企業庁、金融庁の対応などの結果、実務上も、事業資金の融資において、主債務者の経営に実質的に関与していない第三者に保証をさせることは減少していきました(部会資料70A等)。 しかし、一方で、起業をする際に物的担保の対象とするだけの財産を持たない一方で起業を支援しようとする第三者が保証する意思を有している場合などのように、第三者が保証する社会的に有用であるようなこともあり、第三者保証を全くなくしてしまうこともできないという指摘もされたようです。 そこで、保証人が自発的に保証する意思を有することを確認する手段を講じた上で、自発的に保証する意思を有することが確認された者による保証契約は有効とするという方向性が示されました。 つまり、保証契約の締結に先立ち保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示し、公正証書を作成する制度を創設したのは、原則として第三者保証を制限する流れの中の例外的措置であると位置づけることができると思われます。 これまで、主たる債務者が期限の利益を喪失してから相当な期間が経過した後に保証人に一括請求がなされ、元本に加え、膨大な遅延損害金を請求されてしまう事態が少なからず生じていました。 そこで、保証人を保護する必要性から本条が設けられたという背景を鑑みると、仮に、保証契約書において、債権者の上記の通知義務を免除する条項を設けたとしても、当該条項は無効とされる可能性が高いと考えられます。 民法465条の6は、「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」と規定しています。したがって、公正証書の作成をしなければならない保証契約は、①「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約」と、②「主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約」のふたつということになります。 ①について準消費貸借契約が含まれるかという論点 原則・・・準消費貸借契約にもとづく返還債務は「貸金等債務」に含まれない したがって、企業の売掛債権について準消費貸借が締結される場合は本条の適用はないが、従来の貸付金に対して準消費貸借が締結される場合は本条の適用がある。 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする根保証契約であって保証人が法人でないものの保証人は、極度額を限度として履行をする責任を負うものとされ、極度額を定めなければ根保証契約の効力は生じないとされましたが、その場合、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額の全部に係る極度額を定める必要があります。 熊本地裁平成21年11月24日判決(判時2085号124頁)は、極度額の定めは保証人が負担する保証債務の範囲の全部を対象とし、その上限の金額が一義的に明確でなければならず、かかる方式によらない元本の極度額のみの定めは(旧)465条の2第1項の極度額の定めには当たらないものと解するのが相当であると判示しています。 したがって、元本についてのみの極度額を定めてあった場合には、その保証契約は無効とされる可能性がありますので注意が必要です。 民法改正前は、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする根保証契約であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるものの保証(法人を除く)には極度額を定めなければ保証契約の効力は生じないとされていました。 しかし、改正民法465条の2は、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする根保証契約であって保証人が法人でないものの保証人は、極度額を限度として履行をする責任を負うものとされ、極度額を定めなければ、根保証契約の効力は生じないとされました。 つまり、改正前は貸金等の債務が含まれる債務に限定されていましたが、改正法はその範囲の限定を取り除き、「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」とだけ規定しました。 これは、保証人の根保証債務が多額に及ぶのは主債務が貸金等債務の場合ばかりではなく、売買代金債務、リース料債務、賃借料債務等、さまざまな債務についての根保証債務も同様であるという背景があったからです。 個人が根保証人となる場合には極度額を定めなければ効力が生じないとされましたが、その場合の主たる債務は、一定の範囲に属する不特定の債務とされます(465条の2第1項)。 このように、主たる債務は貸金等債務に限られるものではなく、継続的な商品取引契約の売買代金支払債務、賃貸借契約の賃料支払債務等、一定の範囲に属する不特定の債務であればこの制限の対象となります。 したがって、これまでは必ずしも極度額を定めていなかった個人根保証契約については、極度額を定める必要があります。 個人根保証契約が締結される場合の主債務は、貸金等債務だけではなく、建物賃貸借契約の賃料支払債務、継続的売買契約の売買代金支払債務など様々なものが考えられます。 このうち、建物賃貸借契約は法定又は合意により期間が更新されることが多く、また、企業間で行われる継続的売買契約等も、契約が自動更新されて長期に亘って契約関係が継続することも多いと思われます。 このような場合にまで元本確定期日を定めなければならないとすると、元本確定期日以降の取引については根保証の効力が及ばないこととなってしまいます。 そ こで、元本確定期日を定める465条の3の規定は、個人貸金等根保証債務を含む場合に限って適用することとされました。 貴社の販売取引基本契約書がいつ作成され、改正民法が適用されるのか旧民法が適用されるのか不明ですが、仮に改正民法の適用がある場合には458条の3の通知義務が適用されると考えられます。 458条の3の「期限の利益」という用語から主債務が金銭消費貸借取引である場合に限ると連想されるかもしれませんが、条文は「主たる債務者が期限の利益を有する場合において」とするのみですので金銭消費貸借取引のみならず様々な金銭債務が想定されます。したがって、販売取引基本契約においても「主たる債務者が期限の利益を有する場合」には本条の適用があると考えられます。 また、債権の性質も、事業のために負担する債務である必要もなく、また、保証人は委託を受けた保証人である必要もないと考えられます。 ①事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約、又は、②主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、原則として、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じないとされました(465条の6)。
したがって、①については根保証ではない場合も公正証書の作成が必要となるので注意を要します。
「貸金等債務」(金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務)という概念は平成16年改正時に根保証に関する規定を申請した際に設けられた概念です。ですので、これを前提として検討する必要があります。
したがって、個人根保証契約において、法定の元本確定事由が生じても元本が確定しないとの特約を定めることは無効と考えます。(改正債権法と保証実務88頁参照)
したがって、①については根保証ではない場合も公正証書の作成が必要となるので注意を要します。
「貸金等債務」(金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務)という概念は平成16年改正時に根保証に関する規定を申請した際に設けられた概念である・・・これを前提として検討していくことになる
例外・・・事業のために負担した貸金等債務を目的として準消費貸借が成立した場合は旧債務との間に同一性が認められ、「事業のために負担した貸金等債務」と同じ扱いとなる。(改正債権法と保証実務102)
譲り受けること自体は可能と考えられます。しかしながら、預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権について譲渡制限の意思表示があるときは、A銀行は、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人に対抗することができ、支払いを拒むことができます(466条の5)。 預貯金は、通常、譲渡を禁止する特約が付されており、これは周知の事実です。したがって、定期預金を譲り受けても、通常は「譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった」ということになると思われます。 譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人(債権の全額を譲り受けた者であって、その債権の譲渡を債務者その他の第三者に対抗することができるものに限る。)は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったときであっても、債務者にその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託させることができます(466条の3)。 したがって、譲受人は、供託金から回収することができるということになります。 なお、これは譲渡人が破産した場合であって、譲渡人が民事再生や会社更生した場合には適用されません。 債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(債務の履行地が債権者の現在の住所により定まる場合にあっては、譲渡人の現在の住所を含む。次条において同じ。)の供託所に供託することができるとされています(466条の2第1項)。したがって、債務者は供託することにより債務を免れることができます。 公共工事の工事請負契約では、請負代金の譲渡を禁止していることが多いようです。民法改正前では、このような譲渡禁止特約が付された債権を譲渡することは原則として無効であるとしていました。そして、例外的に、その債権の譲受人が譲渡禁止特約があることを知らず、かつ知らないことに重大な過失がなかった場合には、譲受人に対して、無効であることの主張をすることができないとしていました。 しかし、債権の譲渡性に着目して資金調達が盛んに行われることになった現在、特段の理由もなく定型的に譲渡禁止特約を付していることがこの資金調達の妨げになっているとの批判もあったようです。 そこで、466条2項では、「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」とし、譲渡禁止又は制限の意思表示がある場合でも、その債権の譲渡は有効であることとされました。 したがって、ご質問のとおり、譲渡禁止特約の付された債権も有効に譲り受けることができることになります。 しかし、債権譲渡自体は有効であっても、債務者は、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、その債務の履行を拒むことができます。なおかつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することもできます(466条3項)。 ご質問の趣旨からすると、貴社は、譲渡禁止特約が存在することを知っていた(悪意)と考えられますから、まさに466条3項のケースに当たると考えられます。つまり、貴社が譲渡禁止特約が存在することを知っていたという理由で、公共工事請負代金の支払いを拒絶される可能性があるということになります。しかも、何らかの理由で取引先に対して請負代金を支払う必要がなくなったというような事由があれば、貴社に対してもそのことを主張することが可能であるということになります(これらの抗弁を放棄して貴社に対して請負代金を支払うことも可能ですが)。 このような点を考えると、有効に債権譲渡を受けたとしても、必ずしも、貴社が直接請負代金を受領することができることは保証されていないということが言えます。 しかし、上記のような場合であっても、請負代金を理由もなく取引先に支払わない場合には、貴社が相当の期間を定めて取引先への履行の催告することができます。そして、その期間内に取引先への支払いがなされないときは、請負代金の債務者は、譲受人である貴社に対して譲渡禁止・制限があったことを主張することができなくなります(466条4項)。つまり、この場合には、貴社が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかったとしても、直接請負代金の支払いを請求することができるようになります。 466条の4第1項は、「第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない」と規定しています。466条3項は、当事者が譲渡制限の意思表示をした債権の譲渡がなされた場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができるという規定ですが、債権差押の場合にはこの規定を適用しないことを明らかにしています。 なお、このような場合に、仮に、債務者の抗弁を許すとなると、当事者の合意により差押禁止債権を作ることができることになってしまうため、妥当ではないと考えられています。
定型約款とは、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」と定義されており、そこでいう「定型取引」とは、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」とされていますので(法548条の2)、定型約款に該当するかどうかは、 ① ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引 ② その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの ③ 契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された ④ 条項の総体 不動産賃貸借契約は、賃貸借する不動産や賃借人がそれぞれ異なります。したがって、一定のひな型を使っているとしても、取引内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的であるとはいえないと考えられます。 また、賃借人の個性によっては契約内容を変更したり、特約事項を設けることも考えられますので、一般的に、「不特定多数の者を相手方とする取引」にも該当しないと考えられます。 したがって、所定のひな型の賃貸借契約書を使っているからといって、定型約款に該当することはないと考えられます。 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)を行うことの合意(「定型取引合意」)をした者は、現実に合意をしていなくても、定型約款の条項についても合意をしたものとみなされます(548条の2)。 しかし、すべての場合に合意をしたものとみなされるのではなく、定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、 または、定型約款準備者(定型約款を準備した者)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときに限られます。 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならないこととされています(548条の3第1項)。その方法としては、請求を受けた条項準備者は、定型条項を記載した書面を現実に開示したり、定型条項が掲載されているウェブページを案内するなどの相当な方法によって相手方に定型条項を示すことが想定されます(部会資料75B 11頁)。 定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、改めて定型約款の内容を示す必要はありません。 なお、定型約款準備者が定型取引合意の前において定型約款の内容提示の請求を拒んだときは、原則として、548条の2の「みなし合意」規定は適用されず、「みなし合意」は成立しません。(548条の3第2項)。 定型約款とは、「定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体」と定義されており、そこでいう「定型取引」とは、「ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」とされています(法548条の2)。 したがって、貴社の商品販売契約書の雛形が上記の定義に当てはまるかどうかを検討していただくことになります。 ご質問の商品販売契約書の雛形は、ご質問の趣旨からすると、「不特定多数の者を相手方として行う取引」ではなく、相手方の個性に着目し、相手方との交渉によっては契約条項の変更もあり得る取引を前提としたものであると考えられます。 また、商品売買取引においては、基本契約書で契約条件の詳細を定めておき、個々の発注時には対象物の品質、数量等のみを示して個別契約を結んで取引をすることも少なくありません。このような取引は、基本契約で内容を十分に認識して合意されているものと思われます。そして、個別の発注時において、基本契約書で定められた取引条件に拘束されるのは基本契約の効力によるものと考えられます。したがって、このような取引は「定型約款」による取引とはいえないものと思われます。
① ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引
② その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの
③ 契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された
④ 条項の総体
のいずれにも該当する契約であることが要件といえるでしょう。そこで、これらの要件を検討していくことにします。
「不特定多数の者を相手方として行う取引」とは、相手方の個性に着目せずに行う取引という趣旨です。この要件により、例えば、労働契約において利用される契約書のひな型は「不特定多数の者を相手方として行う取引」に関する契約書とは言えず、定型約款に含まれないということになります。なお、一定の集団に属する者との間で行う取引であれば直ちに「不特定多数の者を相手方とする取引」に該当しないというわけではなく、相手方の個性に着目せずに行う取引であれば「不特定多数の者を相手方とする取引」に該当し得ることを前提としていることが部会資料86-2-1頁に記載されています。
「その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」の典型例は、相手方が不特定多数であり給付が均一である場合があげられ、ある企業が一般に普及しているワープロ用のソフトウェアを購入する場合などは、事業者間の取引ではあるが、上記の要件を満たすので、その場合には、定型約款に当たります。
一方、仮に当事者の一方によってあらかじめ契約書案が用意されていたとしても、製品の原材料の供給契約等のような事業者間取引に用いられる契約書は定型約款に含まれません。なぜなら、当該取引においては、通常の契約内容を十分に吟味し、交渉するのが通常であり、この種の取引は画一的であることが両当事者にとって合理的とまではいえないからです。
事実上の力関係等によって交渉可能性がないこともあるが、そういった場合であっても、プロ同士の取引であって、画一的であることが両当事者にとって合理的といえないのであれば、定型約款には当たりません。
以上と類似するものとして、基本契約書に合意した上で行われる個別の売買取引などがあります。このような取引においては、基本契約書で合意したところに従い、契約条件の詳細は定められていて、個々の発注時には対象物の品質、数量等のみを示して取引が行われることが少なくありません。しかし、このような取引については、別途基本契約で内容を十分に認識して合意しているものであり、個別の発注時に基本契約書で定められた取引条件に拘束されるのは基本契約の効力によるものと解されます。したがって、このような取引は「定型約款」による取引とはいえないものと解されます (部会資料83-2-38頁参照)。
この要件は文字どおりです。
「条項の総体」とは条項の集まりという意味です。「実務解説改正債権法」(359頁)では、「1枚の契約書における一部の契約条項群のみが「定型約款」に該当することはあり得る。例えば、個品割賦販売契約書の裏面に細かい字で印刷されている契約条項群(いわゆる裏面約款)などは、当該部分が定型約款に該当すると解される」としています。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができます。しかし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除をすることができません(541条)。 債務不履行が軽微かどうかは、「その契約及び取引上の社会通念に照らして」判断することになります。したがって、契約の性質、契約をした目的、契約締結に至る経緯、その契約についての取引上の社会通念などに照らして軽微と認められる場合には解除は認められないことになります。そこで、契約実務においては、契約書の前文や目的規定において、契約に至る経緯や契約に至った動機、当事者の意図等について詳細に記載しておくことが考えられます。 また、債務の不履行が軽微であるときとは、不履行の部分が数量的にわずかの場合や、付随的な債務の不履行にすぎない場合などが考えられます。たとえば、地代の支払いが不履行であったために履行を催告した場合において、債務者が誠意をもって履行したが催告期間の経過した時に僅かな金額について支払うことができなかった場合、土地の売買契約において売買代金支払債務は履行されたが固定資産税清算金の支払債務が履行されない場合などが考えられます。 民法562条1項は「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。」と規定しています。 したがって、買主としては、売主に対し、まず、履行の追完を求めることができます。 どのような方法、つまり、目的物の修補を請求するのか、代替物の引渡しを請求するのか、不足分の引渡しを請求するのかは、買主が選択することができます。これは、条文の構造上明らかです。 しかし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができることになります。 そして、この場合には、原則として、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をすることになります。債務不履行の場合には一般に履行の催告をすることが必要ですので、売買の場合には追完の催告をすることになります。そして、上記の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができます(563条1項)。 買主は、売主に対し、相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができるとされましたが(563条1項)、契約書で履行の追完の催告をすることなく代金減額請求ができるように定めることは可能です。 スピーディーに簡潔したいような取引について契約書を作成する際は、こうした民法の原則を踏まえ、契約でどのように修正するのかを検討することが重要ですね。 改正民法541条は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」としながら、「ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない」と、債務不履行が軽微である場合には契約の解除をすることができないと規定しています。 そこで、債務不履行が「軽微」かどうかが問題となりますが、契約実務においては、契約書の前文や目的規定において、契約に至る経緯や契約に至った動機、当事者の意図等について詳細に記載しておくことにより、当事者がどのような意思をもって契約したのかを明らかにしておくことが重要となります。 また、債権者側から考えると、債務不履行により解除することができる契約条項を充実しておき、軽微な債務不履行でも解除することができるように工夫することも重要となります。 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができます。しかし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除をすることができないこととされています(541条)。 このように、「その期間を経過した時における債務の不履行が」軽微かどうかを判断することになりますので、債権者が履行の催告をした時点では軽微とは言えなくても、催告期間中に債務の一部が履行されたために催告期間経過時に債務不履行が軽微となった場合には解除をすることができないということになります。 「契約の内容に適合しない」とは、契約の性質、契約をした目的、契約締結に至る経緯その他の事情にもとづき、取引通念を考慮して定まる契約の趣旨に合致しない、という意味です。したがって、売買契約書を作成する場合にあっては、契約をした目的、契約締結に至る経緯その他の事情等を盛り込んでおくことが重要です。 また、当事者の主観的な意思や契約書の文言だけではなく、社会通念をも考慮して、契約内容適合性判断について、総合的に検討する必要があります。 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができません(412条の2第1項)。したがって、「履行不能かどうか」の判断は、当事者がどのような意思をもって契約したのかが重視されることになります。 そこで、契約実務において、契約書の前文や目的規定において、契約に至る経緯や契約に至った動機、当事者の意図等について詳細に記載しておくことが考えられます。なお、改正民法の下では、契約の目的物の瑕疵の有無や解除、損害賠償の場面においても当事者の意思が重視されますので、契約書の記載方法はこれまで以上に重要になります。 また、「履行不能かどうか」を判断するためには、契約内容が明確に特定されている必要もあります。そういう意味においても、今後は契約書を作成しておくことがますます重要になります。 さらに、「履行不能かどうか」の解釈が争いとならないよう、履行不能となる場合を契約中に列挙しておくことも考えられます。 改正民法は2020年4月1日から施行されますが、 施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率については旧法の規定によることとされています(附則15条1項)。つまり、2020年4月1日より前に利息が生じている場合には年5パーセントの法定利息が発生し、2020年4月1日以降についても年3パーセントではなく、年5パーセントの利率のままであるということです。 また、契約が2020年4月1日より前であっても利息が2020年4月1日以降に発生した場合の法定利息の利率は年3パーセントということになります。 次に、遅延損害金の法定利率ですが、施行日前に債務が生じた場合(施行日以後に債務が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む)におけるその債務不履行の責任等についても、旧法の規定によることとされています(附則17条1項)。したがって、2020年4月1日より前に遅延損害金が生じている場合には年5パーセントの遅延損害金が発生し、2020年4月1日以降についても年3パーセントではなく、年5パーセントの利率のままであるということです。 そして、2020年4月1日以後に遅延損害金が生じる場合であっても、その原因である法律行為が2020年4月1日より前にされたときも、年3パーセントではなく、年5パーセントの利率が適用されることになります。 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合においては、買主がその不適合を知った時から1年以内であれば、買主は、履行の追完の請求をすることができます。この期間制限は、履行の追完請求のみならず、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除に共通です。しかし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りではありません(566条)。 なお、民法改正により、錯誤は「無効」から「取り消すことができる」ことに改正されましたが、取消権は追認をすることができる時から5年間、行為の時から20年間行使することができます(126条)。 したがって、買主が錯誤を主張することができるケースでは、売主の履行の契約不適合を主張するのか、錯誤取消しを主張するのかで主張できる期間が異なることになります。 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定めることとされました。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率によります(419条1項)。 改正前の法定利率は年5パーセントでしたが、民法改正時の法定利率は年3パーセントに変更されました。また、これに伴い、商事法定利率(年6パーセント)の規定は廃止され、改正民法の法定利率に統一されることになりました。 さらに、法定利率は3年に1度見直されることになりました。 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率によることとされましたので(419条)、売買代金の債務不履行の場合における遅延損害金は、遅滞が生じた時点における法定利率が適用されることになります。 近年、反社会的勢力を社会から排斥するという目標のもと、契約書中に、相手方が反社会的勢力であることが明らかとなった場合には無催告解除することができる条項を設けているケースが多く見られます。 条項例としては、次のようなものがあります。 (反社会的勢力の排除) 仮に、このような条項を盛り込んでいなかった場合には、相手方が反社会的勢力であることが判明しても、民法の規定上、無催告解除をすることは困難なケースが多いと考えられます。 そのため、契約中に、相手方が反社会的勢力であることが判明した場合には無催告解除することができる旨を明示しておくことは有用です。 「履行を拒絶する意思を明確に表示した場合」とは、履行不能の場合と同様に扱ってよい程度の状況が必要であると考えられています。例えば、債権者と債務者との間の交渉の過程で、債務者がその債務の履行を拒絶する趣旨の言葉を発しただけでは要件を満たさないと考えられています(部会資料82-2 5頁)。 「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」とは、「債務の不履行それ自体によりもはや契約をした目的を達することができないと評価されるため催告要件を課すこと自体が不適切である場合」で、例えば、大型機材を用いたビルの清掃業務の委託契約において、債務者の従業員がその不注意によってビル内の人に大怪我を負わせた場合などが該当すると説明されています(部会資料68A 24頁)。 裁判例としては、賃貸人が、ショッピングセンターとするために一棟の建物を区分してこれを青物商果物商等の店舗として各賃貸するにあたり、ショッピングセンターの正常な運営維持のため賃貸契約に特約を付し、賃借人が、粗暴な言動を用いたり、濫りに他人と抗争したり、あるいは他人を煽動してショッピングセンターの秩序を棄したりすること等を禁止している場合において、賃借人が右禁止に違反して他の賃借人に迷惑をかける商売方法をとつて他の賃借人と争い、そのため賃貸人が、他の賃借人から苦情をいわれて困却し、そのことにつき賃借人に注意しても、賃借人がかえつて暴言を吐き賃貸人に暴行を加える等判示のような事情があるときは、賃貸借契約の基礎である信頼関係は破壊され、賃貸人は右契約を無催告で解除することができるとしたものがあります(最高裁昭和50年2月20日判決 民集第29巻2号99頁)。 改正民法415条1項は、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と規定しています。 このように、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由である場合には損害賠償請求をすることができません。したがって、債務の不履行の判断は、当事者がどのような意思をもって契約したのかが重視されることになります。 そこで、契約実務において、契約書の前文や目的規定において、契約に至る経緯や契約に至った動機、当事者の意図等について詳細に記載しておくこと、帰責事由の判断基準を明記しておくことなどが考えられます。なお、改正民法の下では、契約の目的物の瑕疵の有無や解除などの場面においても当事者の意思が重視されますので、契約書の記載方法はこれまで以上に重要になります。 また、債務不履行かどうかを判断するためには、契約内容が明確に特定されている必要もあります。そういう意味においても、今後は契約書を作成しておくことがますます重要になります。 改正民法415条1項は、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と規定しています。この条文の規定ぶりから、債務者が損害賠償を免れるためには、債務者が帰責事由がないことを立証しなければならないと解釈されます。そのような意味で、「立証責任の分配が明確にされた」と言われています。 そこで、契約書を作る際には、その点について修正をしておくことが考えられます。債権者の側から考えると、債務者自身に帰責事由がなくても、たとえば、債務者の下請業者の事情により実際に損害が発生した場合のことを想定して損害賠償義務を明示しておくことが考えられます。この例示の場合、債務者自身に帰責事由がないとは言い切れない場合もあると思いますが、そのような点で争いになることを考えれば、なおさら、そのような修正をしておくことが必要となります。 逆に、債務者の側から考えると、債務者の帰責事由がないことの立証責任を軽減する方向で契約条項を作成することが考えられます。 改正前の法定利率は年5パーセントでしたが、民法改正時の法定利率は年3パーセントに変更されました。また、これに伴い、商事法定利率(年6パーセント)の規定は廃止され、改正民法の法定利率に統一されることになりました。さらに、法定利率は3年に1度見直されることになりました。 もしも、契約どおりに支払わなければペナルティを受けるというプレッシャーが弱くなってしまうことが心配でしたら、法定利率ではなく、遅延損害金の利率を契約で定めておく必要があります。 まず、債務の履行が不能かどうかによってとるべき手段が変わります。債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができません(412条の2第1項)。逆に言うと、債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして可能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができます。 ここで、「履行不能かどうか」の判断は、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」検討することになりますので、当事者がどのような意思をもって契約したのかが重視されることになります。したがって、AとBが契約した場合と、AとCが契約した場合とでは、それぞれの契約に至る経緯や契約に至った動機、当事者の意図等が異なる場合があり、「履行不能かどうか」の判断が異なることがあるということになります。 当事者間で契約書を締結していたり、民法と異なるルールを合意している場合には、その契約書の内容や合意の内容が優先します。契約書を締結していなかったり、民法と異なるルールを合意していない場合には、民法のルールが適用されることになります。 仮に、契約書を締結していたり、民法と異なるルールを合意していた場合であっても、それらの内容に含まれない事項については民法のルールが適用されることになります。 改正民法416条は、1項で「債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする」、2項で「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる」と規定しています。1項は「通常損害」、2項は「特別損害」と言われています。 1項の通常損害については改正はされませんでした。2項の特別損害は、改正前は「予見し、又は予見することができたときは」となっていましたが、「予見すべきであったとき」に改正されています。 この点について、部会資料79-3 12頁では次のような説明がされています。 「現行の民法第416条には、同条第2項の債務者の「予見」に関する要件が、債務者が現実に予見していたかどうかという事実の有無を問題とするものではなく、債務者が予見すべきであったかどうかという規範的な評価を問題とするものであることが条文上明確でないとの問題があり、少なくともその点については、何らかの改正をする必要があるとの指摘もあった。 改正民法541条1項は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」と定めています。このように、債権者が債務者の債務不履行により解除をするためには、原則として履行を催告する必要があります。 しかしながら、履行不能であるなど、催告すること自体意味のない場合があります。改正民法542条は、債権者は、次の場合には、催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができるとしています。 一 債務の全部の履行が不能であるとき。 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。 四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。 五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。 民法改正以前は543条で「履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と定めていましたが、改正により後段が削除されました。そのため、債務者の帰責事由は必要なくなりました。 このように改正されたのは、債務不履行による解除の制度が、債務者に対して債務不履行責任を追及するための制度ではなく、債権者が契約の拘束力からの解放を認めるための制度として理解されるようになったからと言われています。 なお、債務不履行による解除に伴って損害賠償責任を追及する場面では、債務者の帰責事由の存在が必要となります。 民法541条は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」と定めています。したがって、原則として履行の催告をすることが必要です。 一方、催告をしても契約をした目的を達するに足りる履行がなされる見込みがない場合など、次のように、催告をすることが無意味な場合には無催告解除が認められます(民542条1項)。 1 債務の全部の履行が不能であるとき。 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができますが、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができます(563条1項)。 このように、いきなり代金減額請求をすることができるわけではなく、相当の期間を定めて履行の追完の催告をした上で、履行の追完がない場合に初めて代金減額請求をすることができるわけです。 しかし、履行の追完の催告をしても意味がない場合には、履行の追完の催告をすることなく代金減額請求をすることができます。履行の追完の催告をしても意味がない場合として、次のような場合が定められています(563条2項)。 一 履行の追完が不能であるとき。 二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。 三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。 四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。 なお、履行された内容が契約の内容に適合しない場合に、それが買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、代金減額請求をすることはできません(563条3項)。
第●条 甲および乙は,現在,暴力団,暴力団員,暴力団準構成員,暴力団関係企業,総会屋,社会運動等標榜ゴロまたは特殊知能暴力集団等,その他これに準ずる者(以下,「反社会的勢力」という)のいずれでもなく,また,反社会的勢力が経営に実質的に関与している法人等に属する者ではないことを表明し,かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2 甲または乙は,相手方が次の各号のいずれかに該当する場合,何らの催告をすることなく契約を解除することができ,相手方に損害が生じてもこれを賠償することを要しない。
① 反社会的勢力に該当すると認められるとき
② 相手方の経営に反社会的勢力が実質的に関与していると認められるとき
③ 相手方が反社会的勢力を利用していると認められるとき
④ 相手方が反社会的勢力に対して資金等を提供し,または便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき
⑤ 相手方または相手方の役員もしくは相手方の経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき
⑥ 自らまたは第三者を利用して,暴力的な要求行為,法的な責任を超えた不当な要求行為,脅迫的な言動,暴力および風説の流布・偽計・威力を用いた信用棄損・業務妨害その他これらに準ずる行為に及んだとき
そこで、民法第416条第1項の規定は維持した上で、同条第2項の「予見し、又は予見することができたとき」との要件を「予見すべきであったとき」との要件に改めることとした。これにより、例えば、契約の締結後に債権者が債務者に対してある特別の事情が存在することを告げさえすればその特別の事情によって生じた損害が全て賠償の範囲に含まれるというのではなく、債務者が予見すべきであったと規範的に評価される特別の事情によって通常生ずべき損害のみが賠償の範囲に含まれるとの解釈をすることが可能となる。」
2 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
3 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
4 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
5 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
改正民法477条では、「債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる」と規定されました。 改正前までは振り込みにより支払った場合の弁済の効力発生時期についての規定はなく、解釈にゆだねられていました。 たとえば、振込手続は当日に行ったが金融機関の営業時間の関係で着金が翌日となったり、金融機関側のシステムトラブルにより当日に送金することができなかったような場合が考えられますが、改正民法では、いずれも支払先の預金口座に入金がされ、相手先が金融機関に払い戻しを請求することができる時に弁済の効力が生じることを明確にしました。 したがって、契約書の中で弁済の効力発生時期について、民法の規律どおりに定めるほか、債務者が機関機関に対し振込振手続きを行ったときに弁済の効力が生じることと定めたり、通常であれば債権者の口座に着金すべき時に弁済の効力が生じることと定めることが考えられます。 ご質問のとおり、連帯債務者の一人について時効が完成した場合には、改正前は絶対的効力を有するとされていましたが、民法改正により相対的効果に変更されました(民法441条)。 たとえば、甲、乙及び丙が300万円の連帯債務を負っており、甲の債務について時効が完成したとしても、相対的効果とかないために、債権者は、乙、丙に対して300の万円の請求をすることができることとなります。 また、445条は「連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。」と規定していますので、乙または丙が債権者に弁済した場合には、時効が完成している甲に対して求償することもできます。 さらに、442条1項は「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する」と規定していますので、仮に、乙が債権者に対し60万円の弁済をした場合においても、乙は甲及び丙に対してそれぞれ20万円ずつ求償することができることとなります。 民法改正前は、連帯債務者の一人について履行の請求をすれば連帯債務者全員について履行遅滞に陥らせたり、連帯債務者全員について時効中断の効果が生じていましたが、改正民法により履行の請求は相対的効力とされたため、連帯債務者の一人について履行の請求をしても、他の連帯債務者については履行遅滞や時効中断の効果が生じないことになります。 したがって、連帯債務者全員について履行遅滞に陥らせたり、連帯債務者全員について時効中断(完成猶予)の効果を生じさせるためには連帯債務者全員に対して履行の請求をする必要があります。 なお、これと平仄を合わせ、改正民法により連帯保証人に対する履行の請求も相対的効力に変更され、主たる債務者に対して履行遅滞や時効中断(完成猶予)の効果が生じないこととなりましたので注意が必要です。 連帯債務は一人の債務者の無資力の危険を分散するという人的担保の機能を有しているため、絶対的効力事由が多ければ多いほど連帯債務の担保的効力が弱まる方向に傾斜します。そのため、絶対的効力事由を多数認めることは、通常の債権者の意思に反するのではないかという問題も指摘されていたようです。そこで、審議過程では、絶対的効力事由の一つ一つについて絶対的効力を維持すべきかどうか検討されました。そして、連帯債務者の一人による相殺については絶対的効力を維持することとされたため、改正民法においても絶対的効力があることに変更はありません。 しかしながら、他の連帯債務者による相殺権の援用(改正前民法436条2項)については、連帯債務者の間では他人の債権を処分することができることになり不当であるとの指摘がされており、債権者に対して債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない場合の規律についてはどのようにすべきか検討がされました(部会資料8-1 4頁)。 改正民法では、当事者間の関係を簡便に決済するという趣旨からすれば、債権者に対して反対給付を有する連帯債務者の負担割合の限度で、他の連帯債務者が履行を拒むことができるという抗弁権を与えれば足りるとの考え方により、その連帯債務者の負担部分の限度で、他の連帯債務者は、自己の債務の履行を拒絶することができると整理されました(部会資料67A 6頁)。 契約の成立には申込みと承諾が必要であるということは、これまでも明文規定はなかったものの当然の法理として考えられてきました。ところが、実際には、なされた意思表示が契約の「申込み」なのか、単なる契約の申し込みの「勧誘」なのか、争われることがしばしばあります。 本条では、いわゆる「申込み」を、「「契約の内容を示して」その締結を申し入れる意思表示」としていますので、改正後は、本条文に照らして申込みと勧誘の峻別を検討していくことになると考えられます。 民法412条の2は、「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。」と規定していおり、部会資料68A2頁では、「その債務の履行が不能であるかどうかは、当該契約の趣旨に照らして判断されるべきである(中略)。ここにいう「契約の趣旨」は、契約の内容(契約書の記載内容等)のみならず、契約の性質(有償か無償かを含む。)、当事者が契約をした目的、契約の締結に至る経緯を始めとする契約をめぐる一切の事情を考慮し、取引通念をも勘案して、評価・認定されるものである。」としています。 後に、「契約の趣旨」という表現からは「取引上の社会通念を含む」ということを解釈しにくいので、条文は「取引上の社会通念に照らして」との表現にすることとされましたが(部会資料79-3)、いずれにしても、契約により発生した債務が履行不能かどうかは、契約の内容、契約の性質、契約をした目的、それらを契約の締結に至る経緯を始めとする契約をめぐる一切の事情を考慮して判断することになりますので、逆に言えば、契約締結の際にはそれらを明確に規定しておくことが必要となります。 また、契約上の取引条件についてもどのような場合に履行不能とするのかを明確に定義する必要性も考えられます。たとえば、製造委託契約において最低ロット数を定めておき、当該ロット数未満の発注は製造原価の観点から履行不当とすることなどが考えられます。 このように、履行不能かどうかの判断は、当事者の意思を考慮して判断されることになりますので契約実務においては注意が必要です。
諾成的消費貸借契約とは、合意のみによって消費貸借契約の成立を認めるものです。したがって、諾成的消費貸借契約が成立すると、契約の効果として、貸主には貸す義務、借主には借りる義務等様々な権利や義務が発生します。 このように、合意のみによって様々な権利義務関係が発生してしまうことから、軽率に消費貸借契約が成立してしまうことを防止するため、諾成的消費貸借は、消費貸借の合意に書面がある場合に限ってその成立を認めることとされました。 「従来の消費貸借契約」とは要物契約としての消費貸借契約という意味であると思われますが、諾成的消費貸借契約が規定されたからといって要物契約としての消費貸借契約がなくなるというわけではありません。 また、諾成的消費貸借契約が規定されたからといって書面が作成されれば常に諾成的消費貸借契約になるということではなく、書面中に「目的物の交付によって消費貸借の効力が生ずる」という特約が定められていれば要物的な消費貸借を書面によって成立されることも可能です。 諾成的消費貸借契約とは、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約束し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約束することで成立する契約です。なお、諾成的消費貸借契約は、書面により合意することが必要とされています。 民法改正前は、消費貸借契約は、金銭等の目的物が相手方に交付されたときに成立する要物契約とされていましたが、判例では、(最判昭和48年3月16日)では、当事者間の合意のみで貸主に目的物を貸すことを義務付ける契約が認められていました。 これは、金銭貸借ついて貸主と借主が合意したにもかかわらず、借主からの金銭の交付請求を貸主が拒絶することができてしまうのでは、確実に融資を受けたいと考えていた借主にとって不都合であるからです。 民法改正による消費貸借に関する改正点としては、主に5点あげられます。 まず、諾成的消費貸借に関する条文が整備されました。これまで、消費貸借は、目的物の交付を必要とする「要物契約」であるとされていました。したがって、当事者の合意のみでは消費貸借契約は成立しないと考えるのが原則でした。しかし、判例では、目的物の交付がなくても当事者間の合意に基づいて貸主に目的物を貸すことを義務付ける契約をすることができるとされていました(最判昭和48年3月16日)。 次に、消費貸借による物の返還債務を消費貸借の目的とする準消費貸借について規定が整備されました。旧法では、消費貸借によらない物の返還債務を消費貸借の目的とする契約として「準消費貸借」が規定されていましたが、判例では、消費貸借による物の返還債務を消費貸借の目的とする準消費貸借も認めていましたので(大判大正2年1月24日)、改正民法はこのような準消費貸借契約について規定を設けました。 3つ目として、貸主は、特約がなければ借主に対して利息を請求することができないこと、利息の特約があるときであっても借主に請求することができるのは借主が金銭等を受け取った日以後の利息であることを明文化しました。 4つ目は、無利息の消費貸借は、その目的である物又は権利を、消費貸借の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定すること。一方、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができることが規定されました。 そして、5つ目として、借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができるものとし、かつ、当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、貸主は、借主に対し、その賠償を請求することができることが規定されました。 改正民法においては、諾成的消費貸借の借主は、目的物を受け取るまでは、契約の解除をすることができることとしましたが、これは、契約成立後において、必要性が消滅しているのに借主に借入れ強いるのは不合理だからであり、強行規定であると解されています。 したがって、当事者間の契約において「借主は目的物交付前に消費貸借契約を解除することができない」と定めることはできないものと考えられます。 この場合に貸主が損害賠償請求できる損害とは、貸主が金銭等を調達するために負担した費用相当額等と考えられます。現実に目的物の交付を受けていないのですから、弁済期までの利息相当額を損害とすることは考えららません。 もっとも、貸主が金融機関や貸金業者であって借主の解除により貸付けができない場合でも資金を他の貸付先に流用することが容易にできる場合には、損害は発生しないものと考えられます。 たとえば、100万円について諾成的消費貸借契約が成立し、貸主が借主に100万円を交付する前に借主が別の資金調達をして借りる必要がなくなったとします。 しかし、契約の拘束力からすると、貸主は貸す義務を負い、借主は100万円を返済する義務を負うことになります。しかし、必要性が消滅しているのにそれぞれに義務を強いるのは不合理です。 そこで、改正民法においては、諾成的消費貸借の借主は、目的物を受け取るまでは、契約の解除をすることができることとしました。 しかし、借主からの契約解除によって貸主に損害が発生した場合には、その損害を貸主が負担するのは不合理であることから、貸主は損害賠償の請求をすることができるとされました。
そこで、改正法は、書面による諾成的消費貸借に関する規定を新設しました。
実は、敷金については、これまではっきりとした規定は民法にありませんでした。そこで、今回の民法改正で、初めて次のような規定が設けられました。 民法622条の2第1項 もっとも、この規定は、これまで敷金について一般的に理解されていた内容と異なるものではありませんので、実務的な影響は少ないものと考えられます。 この場合に説明すべきことは、賃借人の財産や収入、賃借する不動産の家賃等以外に債務があれば、その額や弁済状況、賃借する不動産の家賃等のために担保を設定する場合はその内容です。 この説明をしなかったり、虚偽の説明をした場合には、保証人は保証契約を取り消すことができます。したがって、賃貸人、賃借人、保証人のいずれも、どのような内容の説明をしたのかを何らかの記録で残しておくことが望まれます。 元本に対しては遅延損害金が発生します。遅延損害金の率は賃貸借契約で定められていることが多いと思われますが、定められていない場合には法定利率により計算します。ちなみに、改正民法施行時の法定利率は年3パーセントです。確定した元本が極度額を下回っていたとしても、遅延損害金は日々発生します。保証人が責任を負う極度額にはこの遅延損害金が含まれることになります。もっとも、どんなに遅延損害金が発生しても、保証人が責任を負うのは極度額の金額が上限となります。 民法改正により、賃貸借契約における個人の保証人の保護が強化されましたが、賃貸借契約の賃借人が保証人になろうとする者に対し賃借人の財産状況を説明しなければならないとされるのは、一定の場合に限られます。 まず、賃借人が事業のために賃借する場合に限られます。したがって、賃借人が自らの住居として賃借する場合は該当しません。また、保証人が個人の場合に限られます。 このいずれにも該当する場合は、賃借人は、保証人になろうとする者に対し、賃借人の財産状況を説明しなければなりません。説明をしなかったり、虚偽の説明がなされた場合には、保証人は保証契約を取り消すことができますので注意が必要です。 まず、前段のご質問については、原則として、更新後の賃借人の債務についても保証人の責任が生じるとするのが判例です(最判平成9年11月13日)。 後段については未だ明確ではなく、今後の実務の趨勢を見ながら検討する必要がありますが、もしも、新法が適用されるとすると、極度額を定めて合意をしておく必要があり、何ら合意をしていない場合には、極度額の定めがないことを理由に無効となる可能性があります。 民法改正後に個人が賃貸借契約の保証人となる場合には保証契約に極度額を定めることが必要ですが、会社等の法人が賃貸借契約の保証人となる場合には、保証契約に極度額を定めることは必要ありません。これは、会社等の法人は、リスクを負うかどうかについて自らの責任で判断すべきだからです。 改正民法では、敷金は「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」には、「その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」と規定していますが、当事者間でこれと異なる契約をすること自体を禁止しているわけではありません。したがって、ご質問のような契約も原則として可能と考えられます。 しかしながら、賃借人が消費者である個人の場合には、消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項で消費者の利益を一方的に害するような契約は、消費者契約法によって無効となる可能性がありますので注意が必要です。 保証人は賃借人が正常に家賃を支払っているかどうか、重大な利害関係があります。そこで、改正民法は、保証人から請求があれば、賃貸人は、遅滞なく家賃の履行状況や滞納金額等を伝えなければならないと定めました。もしも、保証人から家賃支払状況等について尋ねられても賃借人が回答しなかったり、虚偽の回答をしたことにより保証人に損害が発生した場合には、損害賠償請求を受ける可能性があります。 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(いわゆる「根保証契約」)であって保証人が法人でないもの(いわゆる「個人根保証契約」)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負うものとされ、個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じないとされました(民465条の2)。 賃貸借契約の個人保証も「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」ですから個人根保証契約であり、この条文が適用されます。 さらに、その極度額は書面等で定めなければ保証契約が無効となってしまいますので注意が必要です。 改正民法621条で定める賃借人の原状回復義務の規定(賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない)は任意規定と解されています。 このため、賃貸人と賃借人との間でこれと異なる特約を定め、賃借人の原状回復義務の範囲を拡大することは、理論上は可能です。しかし、そのハードルは、決して低くはありません。 この点について、最高裁判例では、「建物の賃貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗及び経年変化についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗及び経年変化の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である」との判断が示されています。 また、消費者契約法9条1項1号は、「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額の予定」等について、「平均的な損害の額を超えるもの」はその超える部分で無効であること、同法10条で「民法、商法」等による場合に比し、「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」と規定されています。 したがって、賃借人の原状回復義務の範囲を拡大する旨の特約を設ける場合ためには、例えば家賃を低廉に設定する代わりに、賃借人の原状回復義務の範囲を拡大するなどの必要性を明らかにして、明け渡しの際の原状回復の内容等を具体的に契約前に開示し、賃借人の十分な確認を得たうえで、双方の合意により契約事項として取り決める必要があります。 ※この回答は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省住宅局 平成23年8月)を引用しています。 この場合、極度額が100万円であり、既に連帯保証人は60万円の保証債務を履行していますので、賃貸人が連帯保証人に請求できる金額は40万円が限度となります。100万円の限度額の範囲である80万円全額を請求できることにはなりませんので注意が必要です。 民法改正により個人の保証人には極度額を定めなければならないこととなりましたが、これは、個人の保証人が過大な保証債務を負担することがないように限度額を定めることを義務付けたものです。したがって、賃貸借契約に保証会社をつける場合には、原則として保証の極度額を定める必要はありません。 保証会社は、家賃滞納等があった場合には賃借人に代わって賃貸人に賃料等を支払いますが、保証会社はその金額等を賃借人に求償することになります。そして、その求償権を保全するために個人の保証人を徴求するこしがあります。そのような場合に、保証会社が個人保証人に対して求償できる限度額を定めておかなければ個人の保証人保護に欠けることとなります。 そこで、保証会社の求償権を保全するために個人の保証人を徴求する場合には、賃貸人と保証会社との間の保証契約に極度額を定めておかなければならないとされましたので注意が必要です。 賃借人が賃借物件内で自殺してしまうと、嫌悪感のため、通常はその物件の賃借を希望する人が見つかりません。したがって、賃借人の相続人に対して損害賠償請求することは可能と考えられます。この賃貸借契約に個人保証人がいる場合には、賃借人の死亡によって保証債務の額が確定しますが、賃借人の死亡の時に損害賠償請求権が発生すると考えられますから、個人保証人に対しても損害賠償の保証債務を履行することを求めることは可能です。 ところが、民法改正により、個人保証人の場合には極度額を定めておく必要がありますので、将来、このような事態が生じた場合にどの程度の損害賠償請求をすることができるかを予想して極度額を定めておく必要があります。 様々な裁判例がありますが、東京地裁平成19年8月10日の判決では、2年分の賃料に相当する損害賠償を認めました。2年分というのは、最初の1年間は貸し出すことができず、次の2年間は半額の家賃でなければ貸し出すことができないという計算です。このような裁判例を参考にしながら極度額を検討する必要もありそうですね。 極度額を定める場合の定め方については、今後の実務や裁判例を注視していく必要があり、「賃料○カ月分」という定めが有効かどうか、現時点では不明です。ただ、平成16年改正で設けられた貸金等根保証契約の限度額については、具体的な金額を定めなければならないと解説しているものもありますので、その考え方を踏襲すると、「賃料○カ月分」という定め方は避けた方が無難であると思われます。 また、仮に「賃料○カ月分」という定め方をしてしまうと、賃料が改定されたときにはそれに連動して限度額が変動してしまうことになり、具体的な金額を定めたものとは言いがたいものとなってしまいます。 したがって、「賃料○カ月分」という定め方をするのであれば、「当初賃料○カ月分」等と、具体的金額が変動することなく把握できるようにすべきであると思われます。 極度額を定める場合には、家賃の額、予想される損害の額、敷金の額、保証人の資力、家賃滞納等で解除し明け渡しを求めるのにどの程度の期間を要すると考えるのが合理的か、などを総合的に勘案して定めるのが一般的かと思われます。また、したがって、そのような計算からかけ離れた金額を極度額として定めた場合には、公序良俗に反して無効とされてしまうことも考えられます。 仮に、極度額の定めが無効とされてしまうと、極度額を定めていないと同じことですから、個人根保証契約も無効とされ、保証人に何の請求もできないこととなりますので注意が必要です。 民法では特に基準を定めていませんが、一般的に言えば、家賃の額、どのような物件か、保証人をつける目的、賃借人の資力、保証人の資力、予想される損害の内容、解約時の修繕の程度などを考慮して定めることになるでしょう。また、家賃滞納があった場合には、そのまま放置すると極度額を高めに設定しなければなりませんので、放置せずに早期に対応していくことを前提として合理的な範囲で定めるべきかと思われます。 保証人の財産に強制執行や担保権の実行がされるときは、保証人が相当程度苦境に陥っていることが考えられるため、個人保証人の保護のために元本を確定させることとしたと言われています。 改正民法では、賃貸借契約の個人の保証人が死亡した場合には保証人の責任の範囲が確定することとされました。たとえば、個人保証人Bが死亡したときは、その時点で賃借人Aが賃貸人に支払うべき債務の範囲で保証人の責任の範囲が確定しますから、仮に、10ケ月分の賃料滞納があった場合には、保証人Bの相続人は、10ケ月分のみの責任を負えば足ります。この場合、もしも、保証人Bの極度額が10ケ月分未満の金額であった場合には、保証人Bの相続人の責任は極度額までということになります。 ところで、保証人Bが死亡したとしても賃貸借契約は終了しません。そうしますと、Bの死亡時点以降に発生する債務についてはBの相続人は責任を負わなくてよいことになりますから、賃貸人としては保証人がいない状態で賃貸借契約を続けなければならなくなります。この点は注意が必要です。 改正民法では、賃借人が死亡した場合には個人保証人の責任の範囲が確定することとされました。たとえば、賃借人Aが死亡したときは、その時点でAが賃貸人に支払うべき債務の範囲で個人保証人の責任の範囲が確定しますから、仮に、10ケ月分の賃料滞納があった場合には、その後もAの相続人が賃料滞納を続けたとしても、個人保証人Bは10ケ月分のみの責任を負えば足ります。この場合、もしも、個人保証人Bの極度額が10ケ月分未満の金額である場合には、個人保証人Bの責任は極度額までということになります。 ところで、賃借人Aが死亡したとしても賃貸借契約は終了せず、Aの相続人が賃借人の地位を承継することになります。そうしますと、Aの死亡時点以降はBは保証人としての責任を負わなくてよいことになりますから、賃貸人としては保証人がいない状態で賃貸借契約を続けなければならなくなります。 賃借人が破産したとしても、賃借人が賃料を支払い続けている限り、賃貸借契約が終了することはありませんし、保証人の元本が確定することもありません。一方、個人の保証人が破産したときは、保証人の元本が確定し、その時点における賃借人の債務額を保証債務として破産手続きにより処理されることになります。 個人の方に連帯保証人になっていただく場合には保証債務について極度額を定める必要があります。また、その極度額は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額の全部に係る極度額である必要があり、そのことを明示しておくべきだと思われます。 なお、極度額の定めは保証人が負担する保証債務の範囲の全部を対象とし、その上限の金額が一義的に明確でなければならず、かかる方式によらない元本の極度額のみの定めは(旧)465条の2第1項の極度額の定めには当たらないものと解するのが相当であるとした判例(熊本地裁平成21年11月24日判決(判時2085号124頁)があります。 極度額をいくらにすべきかは法令上の制限はありません。もちろん、極度額を無限とすることはできないものと考えられますが、あまり高額な極度額ですと連帯保証人となることを躊躇することになるでしょう。したがって、万が一、主債務者の賃料未払いや明渡債務不履行等が生じた場合に想定される請求額を考慮して適切妥当な金額を検討して極度額を定めるべきでしょう。 原状回復は毀損部分の復旧ですから毀損部分に限定する必要があります。しかしながら、通常、当該部分のみの補修工事を施工単位としない場合には、毀損部分の補修工事が可能な最低限度を施工単位を負担対象範囲として算出すべきです。 この場合、毀損部分と補修工事施工箇所にギャップがあるケースが問題となります。 例えば、壁等のクロスの場合、毀損箇所が一部であっても他の面との色や模様あわせを実施しないと商品価値を維持できない場合があることから、毀損部分だけでなく部屋全体の張替えを行うことが多いと思われます。しかし、賃借人の負担すべき修繕義務という観点からは、賃借人にどのような範囲でクロスの張替え義務があるとするかということが問題となります。 この点、当該部屋全体のクロスの色・模様を一致させるのは、賃貸物件としての商品価値の維持・増大という側面が大きいというべきであり、当該部屋全体のクロスの張替えを賃借人の義務とすると、原状回復以上の利益を賃貸人が得ることとなり、妥当ではありません。 一方、毀損部分のみのクロスの張替えが技術的には可能であっても、その部分の張替えが明確に判別できるような状態になり、このような状態では、建物価値の減少を復旧できておらず、賃借人としての原状回復義務を十分果たしたとはいえないとも考えられます。 したがって、クロス張替えの場合には、毀損箇所を含む一面分の張替費用を賃借人の負担とすることが妥当と考えられます。 ※この回答は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省住宅局 平成23年8月)を引用しています。 賃借人は、賃借物を善良な管理者としての注意を払って使用する義務を負っています(民法400条)。建物の賃借の場合には、建物の賃借人として社会通念上要求される程度の注意を払って賃借物を使用しなければならず、日頃の通常の清掃や退去時の清掃を行うことに気をつける必要があります。 賃借人が不注意等によって賃借物に対して通常の使用をした場合よりも大きな損耗・損傷等を生じさせた場合は、賃借人は善管注意義務に違反して損害を発生させたことになります。例えば、通常の掃除を怠ったことによって、特別の清掃をしなければ除去できないカビ等の汚損を生じさせた場合も、賃借人は善管注意義務に違反して損害を発生させたことになると考えられます。 また、飲み物をこぼしたままにする、あるいは結露を放置するなどにより物件にシミ等を発生させた場合も、賃借人は善管注意義務に違反して損害を発生させたことになると考えられます。 なお、物件や設備が壊れたりして修繕が必要となった場合は、賃貸人に修繕する義務がありますが、賃借人はそのような場合には、賃貸人に通知する必要があるとされており、通知を怠って物件等に被害が生じた場合(例えば水道からの水漏れを賃貸人に知らせなかったため、階下の部屋にまで水漏れが拡大したような場合)には、賃貸人は、賃借人に対し、損害賠償を求めることも可能である場合があると思われます。 ※この回答は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省住宅局 平成23年8月)を引用しています。 保証人から家賃滞納状況等を尋ねられたら、答えるのが当然であると考えます。しかし、賃借人の家賃滞納状況等は個人情報に該当するため、賃借人の同意を要するという考え方もあったようです。この点につき、改正民法は、保証人から請求があれば、賃貸人は、遅滞なく家賃の履行状況や滞納金額等を伝えなければならないと定めましたので、回答することについて明確な根拠となります。 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(いわゆる「根保証契約」)であって保証人が法人でないもの(いわゆる「個人根保証契約」)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負うものとされ、個人根保証契約は、極度額を定めなければ、その効力を生じないとされました(民465条の2)。 そこで、賃貸借契約においてどのような債務が含まれるのかを考えてみますと、滞納家賃、滞納家賃に対する利息や遅延損害金、賃貸借契約から生じる違約金、損害賠償金などが含まれると考えられます。 賃貸借契約の連帯保証人は、賃貸借契約にもとづいて賃借人が支払わなければならない様々な債務を支払う必要があります。家賃や、賃貸借契約解除後に至っても賃借人が退去しないために生じた損害賠償債務、賃貸物件の設備を壊してしまった場合の修繕費、退去後に放置された物品の処分費等、その範囲は広範です。賃借人が賃貸物件内で自殺をしてしまった場合には、それが原因で他人に賃貸できなくなったことによる損害賠償債務を負うこともあります。 このため、改正民法では、個人の連帯保証人の責任が制限なく広がらないように改正がされました。 改正民法606条1項は、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」と定めています。 つまり、原則として賃貸人が修繕義務を負うが、賃借人の責任で修繕が必要となった場合には賃貸人は修繕義務を負わないということです。 これまでは、この点について明確な規定はありませんでしたが、民法改正により規定が設けられました。 したがって、賃貸人の立場から言えば、修繕が必要となった場合には、どうして修繕が必要となったのか、その事情を賃借人から説明してもらうことが必要となります。そして、それが専ら賃借人の責任によるものであれば、賃貸人は修繕義務を負わないということになります。 そして、現実的な対応としては、修繕の負担について修繕をする前に充分協議したうえで勧めていくことが必要であると考えられます。 改正民法は、次の場合に賃貸借契約の個人の連帯保証人の責任の範囲が確定することとしました。この改正は、実務的にも大きな影響がありますので注意が必要です。 ①賃借人の死亡 改正民法621条は、「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と規定しました。 実は、これまでは、賃貸借契約終了後の原状回復について民法にこれほど具体的な規定は置かれていませんでした。もっとも、平成17年の最高裁判決では、賃借人が通常の使用をしていても生じる損傷や劣化(自然損耗)については、賃借人は原則として原状回復費用を負担する義務はないと判断されましたから、裁判実務ではこの考えが定着しています。なお、この判例では、例外的に、賃貸借契約等で、賃借人が負担すべき損傷の範囲が具体的かつ明確に定められている場合には賃借人が原状回復費用を負担する必要があると判断しています。 今回の民法改正で上記のような具体的な規定が設けられましたが、これは、それまでの最高裁判例等を踏まえて原状回復費用の負担のルールを明確にしたということができます。 クリーニングに関する特約についてもいろいろなケースがあり、修繕・交換等と含めてクリーニングに関する費用負担を義務付けるケースもあれば、クリーニングの費用に限定して借主負担であることを定めているケースがあります。 後者についても具体的な金額を記載しているものもあれば、そうでないものもあります。 クリーニング特約の有効性を認めたものとしては、契約の締結にあたって特約の内容が説明されていたこと等を踏まえ「契約終了時に、本件貸室の汚損の有無及び程度を問わす専門業者による清掃を実施し、その費用として2万5000円(消費税別)を負担する旨の特約が明確に合意されている」と判断されたもの(東京地方裁判所判決平成21年9月18日)があり、本件については借主にとっては退去時に通常の清掃を免れる面もあることやその金額も月額賃料の半額以下であること、専門業者による清掃費用として相応な範囲のものであることを理由に消費者契約法10条にも違反しないと判断しました。他方、(畳の表替え等や)「ルームクリーニングに要する費用は賃借人が負担する」旨の特約は、一般的な原状回復義務について定めたものであり、通常損耗等についてまで賃借人に原状回復義務を認める特約を定めたものとは言えないと判断したもの(東京地方裁判所判決平成21年1月16日)もあり、クリーニング特約が有効とされない場合もあることに留意が必要です。 ※この回答は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省住宅局 平成23年8月)を引用しています。 できません。賃借人は、賃貸借契約にもとづいて賃料を支払う義務があります。賃借人から敷金を滞納家賃に充当するように請求することはできません。 逆に、賃貸借契約継続中に、賃貸人から、敷金を滞納家賃に充当することはできます。その場合には、賃借人に対して充当した金額を敷金として再度預けるように請求することができます。 改正民法が施行される2020年4月1日より前に締結された賃貸借契約に改正民法が適用されるかどうかは、改正民法の「附則」を注意して見ておく必要があります。 施行日前に贈与、売買、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例によるとされていますから(附則34条1項)、2020年4月1日より前に締結された賃貸借契約には旧法が適用されます。 また、施行日前に通知が発せられた意思表示の効力発生時期については旧法が適用されますので(附則6条2項)、例えば、施行前に発せられた解除等の意思表示の到達は旧法が適用されます。 さらに、施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例によるとされていますから(附則10条4項)、施行前に生じた賃料等の消滅時効期間は旧法が適用されます。 このほか、施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率についてはなお従前の例によるとされていますから(附則15条1項)、施行前に生じた利息は旧法が適用され、施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率についてもなお従前の例によるとされていますから(附則17条3項)、施行前に生じた利息の法定利率は旧法によります。 また、施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例によるとされていますから(附則21条1項)、施行前にされた保証契約には旧法が適用されます。 さらに、施行日前に契約が締結された場合におけるその契約の解除については、なお従前の例によるとされています(附則32条)。 一方、施行日前に締結された定型取引に係る契約については、改正民法の適用を受けることとなりますので(附則33条)、賃貸借契約に付随して締結された定型取引に係る契約は、改正民法施行により定型約款の規定の適用を受けることになります。 詳細な解説は別のFAQで行うこととしますが、大きく3つのポイントがあると思われます。 ひとつめは、賃貸借契約について直接改正された部分です。たとえば、敷金に関する規定の新設、賃借人の原状回復義務の取扱いの明確化、賃借人の修繕権などがあります。 次に、保証ルールの改正も大きな影響があります。賃貸借契約に個人の保証人をつける場合には限度額を定めておきなければ保証契約が無効となってしまいます。また、事業のために賃借する場合の個人の保証人には、賃借人が自らの財産状況を保証人に説明しておく必要があります。 三つ目は、その他の改正点が及ぼす影響です。たとえば、改正民法施行時の法定利息は年3%ですから、滞納家賃の遅延損害金利率に影響があります。また、賃貸借契約解除を目的として滞納家賃の催告をした場合、一部のみの支払いしかなかったときでも、改正民法により、賃貸借契約を解除できないこともあり得ます。 不動産賃貸借契約は、賃貸借する不動産や賃借人がそれぞれ異なります。したがって、一定のひな型を使っているとしても、取引内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的であるとはいえないと考えられます。 また、賃借人の個性によっては契約内容を変更したり、特約事項を設けることも考えられますので、一般的に、「不特定多数の者を相手方とする取引」にも該当しないと考えられます。 したがって、所定のひな型の賃貸借契約書を使っているからといって、定型約款に該当することはないと考えられます。 国土交通省住宅局が公表しているガイドラインでは、次のような図を用いて修繕等の費用の負担者について説明しています。 A:賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるものは、「経年変化」か、「通常損耗」であり、これらは賃貸借契約の性質上、賃貸借契約期間中の賃料でカバーされてきたはずのものである。したがって、賃借人はこれらを修繕等する義務を負わず、この場合の費用は賃貸人が負担することとなる。 A(+G):賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生するものについては、上記のように、賃貸借契約期間中の賃料でカバーされてきたはずのものであり、賃借人は修繕等をする義務を負わないのであるから、まして建物価値を増大させるような修繕等(例えば、古くなった設備等を最新のものに取り替えるとか、居室をあたかも新築のような状態にするためにクリーニングを実施する等、Aに区分されるような建物価値の減少を補ってなお余りあるような修繕等)をする義務を負うことはない。したがって、この場合の費用についても賃貸人が負担することとなる。 B:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したりしなかったりすると考えられるものは、「故意・過失、善管注意義務違反等による損耗等」を含むこともあり、もはや通常の使用により生ずる損耗とはいえない。したがって、賃借人には原状回復義務が発生し、賃借人が負担すべき費用の検討が必要になる。 A(+B):賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生するものであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗が発生・拡大したと考えられるものは、損耗の拡大について、賃借人に善管注意義務違反等があると考えられる。したがって、賃借人には原状回復義務が発生し、賃借人が負担すべき費用の検討が必要になる。 なお、これらの区分は、あくまで一般的な事例を想定したものであり、個々の事象においては、Aに区分されるようなものであっても、損耗の程度等により実体上Bまたはそれに近いものとして判断され、賃借人に原状回復義務が発生すると思われるものもある。したがって、こうした損耗の程度を考慮し、賃借人の負担割合等についてより詳細に決定することも可能と考えられる。
「賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
1 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
2 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。」
②保証人の死亡
③保証人が破産したとき
④保証人の財産に強制執行がされたとき
改正民法では、注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなった場合には、既にされた仕事の結果のうち、可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は、その利益の割合に応じて報酬を請求することができるとしていますが、この場合、請負人は、注文者に帰責事由がないことについてまで主張立証をする必要はないと考えられます。 一方、注文者に帰責事由にあって仕事を完成することができなくなった場合には、債権者は、反対給付の履行を拒むことができないことから(民536条2項前段)、報酬全額の請求が可能となります。この場合には、請負人は、注文者の帰責事由について主張立証する必要があると考えられます。 なお、この場合、請負人は、自己の債務を免れたことによる利益の償還をしなければならないということになります(民536条2項後段)。 改正民法では、注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなった場合には、既にされた仕事の結果のうち、可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は、その利益の割合に応じて報酬を請求することができるとしています。 一方、注文者に帰責事由にあって仕事を完成することができなくなった場合には、債権者は、反対給付の履行を拒むことができないことから(民536条2項前段)、仕事が未了の部分も含めて報酬全額の債務を負うことになり、債務者は、自己の債務を免れたことによる利益の償還をしなければならないということになります(民536条2項後段)。 改正民法634条では、注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなった場合又は請負が仕事の完成前に解除された場合において、請負人は、既にした仕事の結果が一定の要件を満たすときは、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができるとされました。 旧民法では、仕事が中途で完成しなかった場合の報酬については規定されていませんでした。しかし、判例では、民法641条に基づき仕事の完成前に請負が解除された事案や仕事の完成前に請負人の債務不履行を理由に請負が解除された場合であっても、中途の結果によっても注文者が利益を受けている場合には、請負人がその利益の割合に応じた報酬を請求することを認めていました(大判昭和7年4月30日、最判昭和56年2月17日)。 これに加え、このような割合的な報酬の請求は、判例で認めていたような請負が解除された場合に限らず、仕事の完成前に請負人の債務の履行ができなくなった場合には一般的に認めるのが合理的であると考えられます。 改正民法634条では、請負が仕事の完成前に解除された場合において、請負人は、既にした仕事の結果が一定の要件を満たすときは、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができるとされていますが、これは、当事者が合意により請負契約を解除した場合をも含むと考えられます。もっとも、解除の合意の中で報酬について634条の内容と異なる合意がなされていればそれにしたがうことになります。
そこで、改正民法ではこれらを明文化しました。