釈迦に説法

2006年10月15日 のブログネタです。当時のサラ金・ヤミ金問題の様子が蘇ります。

  ネクタイ姿の人を相手に講義するのは慣れているが、今日は少々趣が違った。袈裟姿の方行寺住職100名以上に「最近のサラ金・ヤミ金問題」の講義だ。お寺の住職も、檀家からいろいろな相談を受けることがあるらしく、借金の相談などもあるという。そうした際の参考になれば・・・ということらしい。

講義は、サラ金三悪、つまり、高金利、過剰融資、取り立ての問題に始まり、金利問題にからめてヤミ金や振り込め詐欺の問題にも触れ、任意整理、破産、再生など債務整理手続きの解説に入る。そして、エピソードなどを交えて事例を紹介し、サラ金利用者は被害者であるとしか言いようがない実態、被害者たちは解決方法として自殺までも選択枝としているという事実を指摘していく。
そして、最後は、借金の問題は命にかかわっている問題であること、借金の問題は絶対解決できることを再確認し、講義を終えた。
質問も出て、講義は盛況のうちに終えた。

Img_842802_14989802_1_4 ところで、プロフェッション(Profession)という言葉を知っているだろうか。ヨーロッパで、聖職者・医師・弁護士の三大職種を指して用いられた言葉であり、学識に裏づけられ、それ自身一定の基礎理論をもった特殊な技能を、特殊な教育または訓練によって習得し、それに基づいて、不特定多数の市民の中から任意に呈示された個々の依頼者の具体的要求に応じて、具体的奉仕活動をおこない、社会全体の利益のために尽くす職業であると言われる(定義は石村善助都立大法学部教授)。

今や、さまざまな職業でプロフェッション論が語られ、司法書士もプロフェッションたらんと様々な議論がされている。
住職さんを聖職者と呼んでいいのかどうかわからないが、ヨーロッパにおける定義からすれば、我が国におけるプロフェッションとして掲げることができるだろう。そうしたプロフェッションに対して講義をするというのも感慨深いものである。

        第12回住職・副住職研修会

                              平成17年6月10日

 「サラ金・ヤミ金問題の現状」

                        講師 司法書士 古橋清二

皆さん、こんにちは。只今ご紹介いただきました古橋清二です。よろしくお願いします。

ご紹介の中で、「司法書士の仕事以外で、色々なご相談をうけている」とありましたが、実は相談を受けているのは全部司法書士の仕事です。といいますのは、おそらく皆さんは司法書士といいますと、不動産の登記ですとか、建物の登記、会社の登記。皆さん方でいいますと、宗教法人の登記、こういうことをやるのが司法書士だと思われていると思います。一般世間でもそう思われていると思います。実は、司法書士のもう一つの大きな仕事は裁判関係の仕事があります。これはあまり知られていないのですが、知られていないのは当然でして、司法書士の誰でもが裁判手続きをやっているかというとそうではありません。浜松市に約70名の司法書士がいます。この中で裁判関係をやっているのは10~15人くらいで、非常に少ないということもありまして、テレビドラマなどで法律問題といいますと、当然弁護士ということになると思うのですが、なかなかその知名度が低いんです。しかし、実際仕事として色々ご相談にのって裁判を行っているという現状があります。

私の事務所では、今日お話するようなサラ金、ヤミ金のご相談を、年間で400~500人くらいの方の相談を受けていて、1日平均2人くらいの新たな相談があるというような状況で、事務所はいつもパニック状態です。

自己紹介をさせていただきますが、平成2年に司法書士の登録を致しまして、今こういう形で裁判手続きをやるということは全然考えていませんでした。開業しまして最初ひとりぼっちで始めたわけですが、当然暇で、事務所でいつも「仕事がないなあ」と言っていたわけですが、ある時、近くの弁護士事務所の弁護士さんが、ある方(弁護士さんへの依頼者)が、「サラ金にお金を返しに行くので一緒についていって欲しい」と。「付いて行って欲しいというのはどういうことか」と言うと、この方の家を担保に入れちゃったんですね。担保に入れたということは、お金を返済するからそれと引き替えに担保を抹消する書類を預かって、それを確認して欲しいということで話があったんです。別にそれ自身はなにも難しい話でなくて、「わかりました」とついて行ったわけです。ところが、その2日後くらいに、この方は女性の方だったんですが、突然事務所を訪れまして、「どうしたの?」と言うと、「実はまだ色々借金があるんだ」と、こういうことを話し始めて、「それは弁護士さんに相談したらどうなの」と言うと、「弁護士さんも色々忙しくてなかなか取り合ってくれないので相談に乗って欲しい」と言うのです。

これが私の借金の問題との出逢いといえば出逢いですね。司法書士の試験というのがありまして、色々な法律を勉強して試験を受けるわけですけれども、その中で民法とか色々あるわけです。お金の貸し借りの中で、「利息制限法」といって利息の上限を定めた法律があります。これが金額によって違うわけです。何十万といったお金の貸し借りでは、「利息は年18%が上限です。それ以上は無効です」というふうになっているわけです。

私は試験勉強を受けてきたのでその知識しかないわけです。ところが実際その方のお話を聞いたり、現状をみていると、利息が40%と書いてあったり、38%と書いてあったりという契約書や書類がボロボロ出てくるわけです。しかもそれがその辺の町金融とか個人でやっているような所でなくて、テレビでコマーシャルをやっているような大きな会社がそういう契約をしている。これは一体どういうことか。全然そこでは理解できなかったわけです。そこで色々勉強するということになったわけです。今でこそ本屋さんに行くと色々破産関係の本だとか、債務整理の本だとかあるわけですが、当時、まだ平成の初め頃、平成2年頃はまだそういうような本もほとんどないという状況です。ちょうどバブルも終わりかけの頃で、自分で法律を色々紐解いて調べてみると、いろんなことがわかってきたわけです。

いろんな歴史的な沿革があるわけですけど、先程言いました「利息制限法」。これはいってみれば利息の憲法、絶対守らなければいけない憲法です。ところがもう1つ法律がありまして、「出資法」という法律があります。当時は出資法という法律で利息が年40.004%となっていました。004とか細かい数字が出てきますが、それは日歩計算で100円借りたら1日何分の利息が付くかということで、365日借りたらそういうような数字になるわけです。当時は、40.004%が上限とわかってきたわけです。そうすると、ダブルスタンダードになっていまして、利息制限法と出資法の利息はどういう関係があるかと言いますと、40.004%を越えるような利息で貸し付けをしたら捕まると、そういう利息ですね。ところが利息制限法の18%という利息は、これを越えて貸し付けしても無効であるだけで、なにも刑事的な罰はないということです。ですからいわゆるサラ金というところは18%から40.004%の間で商売をしている。つまり、捕まらない金利である。無効であるけれども利息をもらって、借りた本人が異議を唱えなければそのままになってしまうということです。

今回の研修会のテーマは「騙し」というテーマらしいですけど、まさに僕が日々仕事をしているのは、ああいったテレビでコマーシャルをやっている業者であっても、これはもうだましだと考えているわけです。そういった白でもない、黒でもない灰色の部分でまさに商売をしている、そういったことがわかってきたわけです。

今日の資料で、「サラ金問題とは何か」と書いてあるわけですが、まず第1番目の問題は金利の問題です。現在では出資法で先ほどの40.004%というのが下がって29.2%ということになっています。これはなぜ下がったかといいますと、きっかけがありまして、5年ほど前、いわゆる商工ローンというのがありまして、『日栄』、今は会社の名前を変えてしまいましたが、日栄という中小の事業者に貸し付けをする業者があるわけで、この業者が取り立てをするわけですけど、その業者が「腎臓を売れ」だとか「目ん玉を売って金にしろ」だとかこういうことをいって脅かして金を払わせた。こういうことが社会問題になりました。それがきっかけで金利の問題がクローズアップされて29.2%まで下げようということになったわけですね。これは段階的に出資法の金利というのは下がっているわけで、昭和50年代は109.5%だったんですね。それが段階的に54.75%になってようやく29.2%まで下がったとこういうことになっているわけです。

今は非常に低金利の時代で、サラ金各社は銀行から借り入れをして、貸し付けをするわけですが、借り入れの利息は、2%、3%で、それをこういった高金利で貸し付けるというような商売が非常に繁盛しているということです。今日の静岡新聞の朝刊にもアメリカの『フォーブス』という雑誌が金持ちの名前を出しているわけですが、日本の金持ち何人かを出したらしいんです。その順位の中にやっぱりサラ金の社長、オーナー数人が入っていますよね。これはちょっと異常な世界という気がします。

例えばドイツ。私は行ったことが無いんで聞いた話ですが、ドイツでは貸し付けの時に10数%金利を取ると、これはもう逮捕される。もっといえば、お金を払わないからと、電話でガンガン取り立てをすると、これはもう「テレフォンテロ」ということで非常に問題になるということらしいです。ところが日本では借りた者の弱みと、貸した者の強みで、こういった金利だとか、ひどい取り立てだとか、こういう現状があるわけです。

ちなみにそこに「日賦貸金業者」というのがありますが、これは特例がありまして、日賦貸金業者というのは例えば、スナックだとかそういう事業をやっている方に貸し付けをすると、ほとんど毎日のように取りに行く。週に5回くらい集金に行く。こういう業者で、そういう手間がかかるから出資法でも特例として、54.75%という金利を取っていいと、捕まらない範囲であるということになっていますが、こんな金利も通常考えられない。皆さんではちょっと考えられない利息になるわけです。そういった金利の問題があるということです。

実はこの金利の問題、今、見直しの時期に入っていまして、多分、来年あたりはこれをどうするのか。当然私たちはもっと下げろ、18%まで下げろという運動をしているわけです。業界の方は上げろ、規制緩和だからこれを撤廃しろというふうに言っているわけです。

それで、今日はヤミ金の話もしますが、ちょうど5年ほど前に金利が40%から29.2%に下がったのとタイミングを同じくしてヤミ金というのができたわけです。古典的なヤミ金というのは、例えば当初3万円くらい貸し付けして、1週間ごとに3万5000円位返させる。金利もなにもへったくれもなくて、滅茶苦茶な貸し借り。これはもう貸し借りと言えないくらいのことなんですが、これを利息で計算すると、3000%とか5000%とか途方もない利息になるわけです。業界側の言い分としては、金利を下げたから、食えなくなった金融業者がヤミ金に走ったという言い方をして、出資法の金利を上げろ。あるいは、規制緩和だから撤廃しろという主張をしているわけです。別にヤミ金融をやって捕まっている連中が元々金融業をやっていたかというとそうではなくて、暴力団と繋がっていたり、あるいはその辺の若い連中、22~3歳の連中がやっているわけで、僕らはそれは関係ないと主張しているわけです。金利は出資法、利息制限法でそういった規制があるということです。

次のサラ金の問題として、そこに「過剰融資」と書いてあるんですが、お金を貸す、融資をするといった場合、当然その人の返済能力がどうかとか、担保がどうかとか、事業をやっているのなら事業計画がどうなのか、そういうことを考えてお金を貸すということが通常であろうかと思います。けれどもサラ金の場合はそんな事は全く考えていません。全く収入のない主婦であっても平気でいきなり50万円くらいポーンと貸します。じゃあ、返済が危ないんじゃないかということですけれども、サラ金の方はおそらくその主婦から返してもらおうなんてことは全く考えていません。ご主人の給料、あるいは実家のお父さん、お母さん。場合によっては、返せないのであれば他のサラ金から借りてきて返してくれということです。ですから、返済能力がなくてもどんどん、どんどん貸し付ける。最後に誰が「ババ」を掴むのか、こういう話になります。「ババ」というのは、破産したり、夜逃げとか、そういうことですけれども、そこまではどんどん、どんどん貸し込む。その方の返済能力をいちいち考えるよりも、無差別に貸した方が利益が出るということのようです。

ここに書いてありませんが、もう一つの問題というのは過酷な取り立てです。私は平成2年に司法書士になりましたので、あまり昔のことは知らないんですが、昭和50年代は、いわゆる「サラ金地獄」という時代があったようですね。サラ金地獄というのは、サラ金が地獄に堕ちたわけではなくて、サラ金によって市民が地獄に堕とされた。例えば玄関のドアに、「金返せ」だの、そういった張り紙をベタベタ張るだとか、拡声器で「こいつは泥棒です」とか近所にわめいて、嫌がって観念するのを待って金を払わせるだとか、そういうことが横行していたようですね。そこで自殺者、あるいは夜逃げというのが大量に出た。そういうことがあったようです。その反省から昭和59年に、貸金業を規制する法律ができて、具体的にこういう取り立てをしてはいけないということが定められたわけです。

その「貸金業規制法」をみますと、非常に面白くて本当に具体的に書いてあるんですね。

        大声を出して取り立てしてはいけない

        張り紙をしてはいけない

        職場まで電話して取り立てしてはいけない

だとか、法律にしては非常に具体的に書いてある。何故そんなに具体的に書いてあるかというと、それはそういうことをやって来たからです。そういうことをやって来て非常に困ったからそういうことを具体的に規制している。だから現実にそういう時代があったということですね。

では「今はどうなんだ」ということなんですけれども、確かにサラ金については、表面的にはそういったような取り立てはしていないと思います。ただ非常に陰湿といいますか、そういったサラ金から職場まで電話が来たらもうそれだけで嫌ですね。それが1日に2回も3回も来たら、それだけで「一体お前、何やってるんだ」という話になりますね。こういう形でサラ金というのは人の心理を読んで、こういったことをしたら嫌がるだろうということをやってくるわけですね。

話は飛ぶんですが、銀行が非常に不良債権を抱えて経営が苦しい。そういう時に、「銀行はサラ金の経営を見習え」というようなことを言われたわけですけれども、これは非常におかしなことで、サラ金のやっていることを直視してないと僕は思っておりました。こういった高金利の問題、過剰融資の問題、そういった取り立てがあるものですから、取り立てが怖いからまた借りる。借りに行くとジャブジャブ融資すると、その金利が高い。で、返せなくなる。するとまた取り立てをうける。そういったことがぐるぐる回ってしまうわけですね。

どのくらいこういったサラ金を利用している人がいるかというと、おそらく皆さんの想像をはるかに超えているんではないかと思います。『武富士』が業界で最大手のサラ金ですが、お客さんの数、口座数ですけれども300万件近いですね。300万人近い人が利用しているわけです。後はある程度有名な『アコム』ですとか『アイフル』、そういったところでも2百数十万人お客さんを抱えている。もちろん一人で何カ所からも借りていることも当然あるわけですけれども、だからものすごい数ですね。表面上では、サラ金の問題というのは、昔からの社会問題ですから、マスコミもあまり目新しくないんで取り上げないんですが、これは非常に大きな社会問題だというふうに思います。

もちろんこういう話をすると、「そんな高金利で借りなければいいじゃないか」という話ですとか、「借りたら返すのは当たり前でしょう」とかいう話が出るわけですが、それは当然の話なんですが、ただ問題はそれほどシンプルではないというふうに考えるわけです。

具体的に少しイメージして頂きたいんですけど、普通のサラリーマンの家庭で、ご主人が20万円とか25万円くらいの手取りを得て、奥さんがパートに出て月に5~6万円の収入を得ている。それで、子供が小学校、中学校に通っている。普通の標準的な家庭ですね。そこで家賃を月6~7万円。あるいは住宅ローンを払って、もちろん食費、電気、水道、ガス、学校の校納金だとか、そういうものも払わなきゃあいけない。そうするとおそらくそんなに余裕はない。いっぱい、いっぱいなんですね。月に1万円くらい貯金ができるかどうか。車のローンなんかがあったらますますそうですね。そういうのが標準的な家庭だと思うんです。こういう中で何かの事情があって、あるいは子供が病気をしてお母さんがパートを休まなきゃあいけない。そうすると収入が月に数万円減るわけですね。減ってどうするかというと、今までは、皆が健康で毎日学校へ行って、毎日働きに行って、そういう前提で成り立っている家庭が崩れていく。崩れるからしょうがないから、最初は月々1万円ずつ積み立ててあったお金を少しずつ取り崩して生活したり、あるいは生命保険を解約して、解約金で生活をしたりするわけですけど、いよいよ足りなくなる。

おそらく昔であれば実家の援助を求めたり、ご近所でお味噌を借りたりとかあったんでしょうけれども、今はそういう世の中ではないものですから、何とかしなきゃあと。特に家庭で旦那さんが威張っている。俺が働いて給料をやっているんだから、それで月々やり繰りをするのが女房の勤めだということを言っているんですね。家庭のお金がどうなっているのか、本当に無関心な旦那さんがいるんですね。そうすると奥さんは「お金が足りない」なんていうと怒られるものですから一人で悩む。一人で悩んで、ボーッとテレビを見ているとサラ金のコマーシャルが朝から晩まで流れている。それから新聞の広告やチラシに簡単に借り入れできそうな、非常にさわやかな広告が入っているんですね。「じゃあちょっと10万円くらい借りてみましょうか」と、こういう気持ちになる。これはしょうがないことですね。そこで恐る恐る電話をしたり、お店に行ってみる。サラ金のお店も非常に今や爽やかでありまして、まあ銀行とまではいわないですけども、小じんまりした事務所のような形で女性なんかが応対していて爽やかな事務所ですね。で、「お幾ら御利用ですか?」ということで、とりあえず10万円ぐらい借りてきちゃう訳ですね。で、「案外簡単に借りられたな」ってことで段々抵抗感が無くなってくるんです。

大体10万円ぐらい借りると月々の返済が8千円とか1万円ぐらいですね。それを一生懸命返済します。で、先程のように生活費ぎりぎりの中で、月々1万円返していくことになる訳です。ですので、これはなかなか大変なことで、食費を削ったりして返していく。そうするとそれを2~3ヶ月続けていくと、必ずサラ金というのは連絡してくるんですね。「非常に真面目に返してくれてますから、枠が上がりました。是非お店に来て下さい。契約を書き換えます」という事でお店に呼ばれるわけですね。最初は、「いやいや、結構」なんて言っているんだけれども、段々「自分はそんな信用があるのかな」と錯覚を起こしまして行っちゃう訳ですね。で、行っちゃって、「残金は8万円ですよ」と。「30万円まで枠を上げましょう」という事で20万円ぐらい借りてきちゃう訳ですね。で、そういった借りたお金というのはどうするかというと別に貯金なんかしている人はまずいませんよね。何に使ったかというと別に何に使ったかという記憶もない。「今まで2~3ヶ月我慢して生活してきたから少し家族と食事に行きましょう」とか、せいぜいその程度の話で、あっという間にもう無くなってしまう。こういう風なことになることが多いようです。今度30万円借りますと毎月の返済が1万8千円ぐらいになってきますからまたまた大変な事になる。

サラ金の貸し付けというのは、まあ50万円まで無担保です。「50万円までですよ」と法律はなっています。現実はもっと貸してますけどね。で、50万円まで枠が上がると「後は返済するだけですよ」という話になってきますので50万円まで借りて月々2万3千円ぐらい返さなければいけないという状況になって、とても無理なんで、今度は他のサラ金に行ってまた10万円借りてくる。そうするとまた簡単に借りれたという話になる訳ですね。この繰り返しなんですね。特に先程言ったような旦那さんが威張っているような家庭はバレたらまずいんで、1日でも遅れたら電話が直ぐに掛かってきますから一生懸命返す。サラ金にとってはこんな良い客はない訳ですね。旦那さんにもご相談出来ずに借金がどんどん増えていってしまう。

サラ金から借りてる場合、毎月返すのは借金の総額の5%ぐらいですね。だからこれが何件も重なって200万円。サラ金の借金が200万円になってしまったら月々10万円ぐらい返していくんです。先程の家庭ではとても無理なんです。どこかから借りてこないととても返済はできない。そのような形で借金が増えてくるということです。

もちろんその中にはパチンコをやっている方とかそういう人もいる訳ですけれども、案外そういう人は少ない訳で、やはり僕は「日本人は真面目だなあ」と思うんですけれども、ほとんど生活費だとか医療費だとかそういうことで借りる人が多いんじゃないかとこういう風に思っております。

では、今の奥さんが一体その200万円なり300万円なり膨れてしまった借金を何に使ったかということなんですけれども、聞いても何にということはない訳ですよね。もちろん最初に子供が病気になったので医療費だとか生活費が足らなくて10万円借りた。それでまた枠が増えたので少し食事に行ったという事はあるかもしれません。ただ後はもうひたすら返済なんですね。返済するために借りる。こういうことで一体奥さんが何を責められることをしたのかという風に思う訳です。そういう風な誰でも陥り易い問題なんですね。また、そういうところに付け込む連中、悪い連中がいろいろおります。

例えば「紹介屋」なんていうのがいますね。皆さんは見ないと思いますけれども低俗な雑誌がありますよね。雑誌なんかに、「借金を一本化します」とか、「審査なしで直ぐ融資します」だとか、ほとんど東京の業者なんですけど、そういった広告、ちっちゃい広告があります。いっぱい出ている訳です。で、いよいよ困ってその雑誌を見て電話とかしてね、「借り入れをしたい」という申し込みをすると一応向こうでは審査らしきことをするんですね。「今、何件で幾らぐらいあるんですか?」「収入はどれ位ですか?」こういう事を聞くようです。ただ実際に審査なんかしてないですね。最初から貸すつもりはない。で、「一応審査をしますから審査が終わったらまたご連絡します」ということで連絡をしてくる。或いは連絡させると、「残念ながら今回は無理です。ただ、うちの方でコンピュータを操作してやりますから、近くの浜松駅前のニコニコクレジットというのがあるからそこに行って50万円借りてきなさい」と。で、「コンピュータ操作しておく」だとか、或いは「あそこは店長を知ってるから店長にお願いしてあげる」ということで「行って来なさい」と。その代わりにそういうような形で紹介するものですから、「借りたお金は6割うちに払って下さいね」というような形。これがいわゆる「紹介屋」。これはあくまで違法ですけど、そういう業者も東京にいっぱいあります。

とにかく明日の返済に困っている訳で少しでも10万円でも必要なわけですよね。で、藁をも縋る思いでそういう雑誌を見て電話して、結局もう何も思考能力が無くなった状態でニコニコクレジットに借りに行くんですね。で、50万円を借りて30万円を紹介屋に払って手元に20万円残って「ああ、良かった」というような話になる。こういうのを騙しのテクニック。テクニックと言いますか、普通の状態であれば「そんなバカな」って話なんですけれども、やっぱり返済でその追い込められている人は簡単に引っ掛かってしまう訳です。

それとか「換金屋」なんていうのもありますね。大体勧誘する手口というのは先程言ったのと同じですね。雑誌なんかに広告出して、そうするとまたその審査をして、「ああ、今回無理です」と、こういう話をするんですけども、「あなたクレジットカード持っていませんか」という訳ですよ。で、或いは、「そのクレジットならまだ使えますよ。浜松でしたら駅前に、『山田電器』ってとこがあるから、そこに行ってソニーのビデオカメラ『VS何とか』というのがあるからそれを2台クレジットで買いなさい。そうしたらウチのほうで買いとってあげますよ」というようなことを言う訳ですね。で言われたように行ってそのクレジットを書いて申し込みをすると通っちゃった。それでビデオ2台40万円ぐらいで買って、それで東京に送ると1台7万円ぐらいで買い取ってくれて「ああ、良かった。お金が入った」と。ところが40万円のクレジットをこれから払っていかなきゃいけない訳ですね。そういった商品の末路がどうなっていくのか僕はよく分かりませんけれども、そういったことでクレジットの債務を抱えてしまうというようなことで、これはある意味、お互いに騙して騙されてというか、もちろんその東京の業者はそういう形で騙している訳ですけど、利用しているクレジットで買い物をした本人も実は騙しているんですね。何を騙しているかというとそのクレジットで買った商品というのはあくまでもクレジット会社のものなんですね。クレジットを支払いきるまではその人のものを売ってしまったということなんで、これは後々いろいろ問題になってくる訳です。その東京の業者はそんなことお構いないのでとにかくそのソニーのビデオ1台7万円で手に入ったと、こうなる訳ですね。

それから、「システム金融」なんていうのが一時期ありまして、それこそ5年ぐらい前に盛んにあったんです。「システム」というのは、今でいう「ヤミ金」と一緒なんです。特に資金繰りに困ったような事業者にいちいちFAXを送ってくるんですね。「融資しますよ」と。「手形か小切手を送ってくれればすぐ融資しますよ」なんてことでFAXを送ってくる。金利もメチャメチャな金利ですよね。それこそ何百%という金利で融資をする。商売人にとっては、手形とか小切手とか不渡りになるというのはもう致命的なんですね。もう商売ができない、銀行取引ができないということになりますから、一旦手形を出して、一応お金がある程度入った。それでなんとか事業が進められるけれども、「さあ、返済期日が近づいてきた」ということになると、それを落とせないと、お金を当座預金に入れないと不渡りになってしまう。「不渡りになってしまうと事業ができなくなりますよ」ということになるものですから一生懸命金策を考える訳ですよね。で、その時に別の業者からまた勧誘がくる。「融資しますよ」と。「あっ、そうか。金利は高いけれど、これで借りればなんとか明日手形を落とせる」という事でまた申し込みをする。で、これがあっという間に2~3ヶ月そういうことをやっていると、もうそういった業者は50社ぐらいから借りてるということになる訳ですね。

実は「システム金融」という「システム」というのはそういった業者で繋がっているんですね。当然、「あそこのAという業者が融資した。これの支払い期日はいつだ」というのが分かっていて、「じゃあ、そろそろいいだろう」ということで次の融資の勧誘をするといった「システム」なんですね。そういう非常に大問題が起こってきてそれが少し鳴りを潜めてきたかなと思ったら今度はヤミ金です。やり方は全く一緒ですね。ただ対象が違う。システム金融はご商売をやっていた方なんだけれども、今度はもう市民、市民ですよ。市民に対して同じような、金額的には小口なんですけれども、契約書も何もないですよ。電話で、「じゃあ、3万円融資しましょう。1週間に1回返済してもらいます。3万5千円です」とこういう訳の分からないことを言う。で、「1日遅れたんであんた違約金10万円だ」とかね。なんの計算もないんですね。やっている連中がメチャクチャな連中なんで、言っている事がメチャクチャで、僕らも電話で喧嘩をするんですけれど、もうメチャクチャな訳です。そういうような連中は、どこからそういった「困っているよ」という情報を得るかということなんですけども、大抵ブラックリストのようです。

ブラックリストというのは、「返済が滞る」、或いは「破産をした」とか、「債務整理をした」とか、こういうのが信用情報ですね。銀行だとかクレジット会社とかサラ金で信用情報をコンピュータをみんなで使ってそこに登録するんです。こういう情報がどこかから洩れてリストになって売られている。売られてそういう業者が勧誘してくる。これも同じように1週間3万円返さなければいけないという時に、また他の業者から電話が掛かって来るのでどんどん借りる。しかもこれは借りる時にいろんなことを言わされる訳ですね。勤務先の会社名、電話番号、お父さん、お母さんの電話番号。或いはその兄弟の勤務先の電話番号、そういったことを全部言わされる訳です。だから1日でも遅れると職場にジャンジャン電話が入る。それこそ物の言い方なんていうのはもうサラ金の比じゃない。「今から行って身の安全は分からんぞ」とかね。僕なんかはそういった対応をしているものだから、うちの事務所に5人前ぐらいピザが届いたりね。まあ、それはもちろん丁重にお断りする訳で、うちの事務員は、「先生、気が利いてる」なんて言っているんだけども、そうじゃなくてそれは勝手に向こうが送ってきたもので…。

それとか、私は「古橋」という名前なんで、これは浜松地方に多い名前ですよね。「古橋清二」なんてありきたりの名前ですね。私は自分の自宅というのは電話帳とか104に載せてないんです。ところが舞阪に古橋清二さんという方がいらっしゃって、そこに嫌がらせの電話がガンガン入る。そこからどうもおかしいということで、うちの事務所に電話が掛かって来て「お宅じゃないの」とかいう話で「多分そうでしょ、申し訳ない」と。そうしたらやっぱり血筋は争えないというか「一緒に戦いましょう」なんてことを言っていたけれども、そのような嫌がらせは、僕らは別にいいんですが、ただ借りている本人は参っちゃいますよね。ほんとに会社のほうでも、「こいつ何やっているんだ」ということで「クビだ」ということになってしまう訳ですよね。

それで、「架空請求」なんていうのはいっぱいありますけれど、あれも訳分からないですよね。何の身に覚えもない、それこそ何か「アダルトサイト、インターネットの料金が滞納しているんで、それが30万円なっています」みたいなハガキが来て、「そういえば、あの時ちょっと見たかな」という覚えがあると、「まあ、30万円ぐらいだったら払えるかな」ということで払ってしまう。或いは問い合わせしてくるんですね。「どういうことですか」と問い合わせすると、もう向こうでこちらの電話番号分かりますから、それでもうジャンジャン先程のヤミ金と同じような取立てが入る。こういうことになる。だから架空請求なんていうのは、あんなのデタラメなので「身に覚えのない物に対しては電話をしない」という対策しかないんです。「振込詐欺」なんていうのも全く一緒ですね。一緒というか恐らくやっている連中は同じような連中だと思うんですよ。ただ手を変え、品を変えやってくる。恐らく向こうはゲーム感覚ですね。「今度はどうやって騙してやろうか」という事だと思うんです。「交通事故で云々」とかね。「妊娠させちゃった」とか、「今度何でやろうか」というようなことで考えているんじゃないかと。で、これが何でこういう商売が…商売じゃないね、こういうことが横行するのかというと、やっぱり2つ問題があって、一つは携帯電話。携帯電話のプリペイドはコンビニエンスストアなんかで携帯3千円分の通話だとかということで買えますよね。あれが、今は携帯会社によっては「身分をちゃんと明らかにしないと売りません」だとかというところもあるんですけれども、あんなの簡単に買えてしまう。大体こういうことをやっている連中は携帯電話ですね。携帯電話だから何処にいるか分からない。電話番号は分かるけれども、捕まえようがないということが一つの問題。

それから後は口座。銀行の口座が売買されている。最近は法律ができて、銀行の口座を売買することについても罰則ができましたけれども、銀行の口座、通帳をいっぱい持っている訳ですよね。いろんな名義の通帳を利用して足の付かないような形でそういったことをやるというようなことが横行をしている。本当に「日本はどうしちゃったのかな」という風に思う訳です。

それで、僕がある時、ヤミ金の奴と電話で話をしていて向こうに諦めさせたんですね。「もう止めろよ、こんなこと」という話もしたんですけれども、そいつはせせら笑ってましてね。「幾ら先生が頑張ったってこういう問題は無くならないんだ」と。「こんなお金の貸し借りの問題なんて江戸時代からあるんだよ」という訳ですね。「ああ、なるほどな」と思いましたね。昔は勿論知りませんけれども「借金払えなかったら娘で払う」だとかそういう事があったようですから、「ああ、そうかそうか」と思ったんです。確かに「お金の問題というのは昔からあって、今後も多分あるんだろうな」とこういう風に思った訳です。

次に、「サラ金は国民の心理的抵抗を払拭してしまった」という事ですけれども、昔であれば恐らく昭和40年代、或いは50年代もそうだったかもしれないけれども、こういった高利貸し、いわゆる高利貸しがどこか裏筋の通りにあるとか、人目を避けてお金を借りる、質屋みたいなものだったと思うですけれども、今では若い人に言われるんです。「『アコム』って銀行じゃないんですか」と言うんですよね。「そんな馬鹿な」という話をするんだけれども、銀行とサラ金の区別が付かないような状態。コマーシャルを流して「『アコム』っていったらあの娘が可愛いな」っていうとか、そういうような感じになっちゃっている訳ですね。昔は裏筋にあったのが、藤枝の駅前なんかサラ金しかないんですもんね。そういうような形で人目に付くような形、藤枝の方がいたら申し訳ないんですけれども、もう本当に心理的抵抗感をなくすような作戦で商売をしているということですね。

次にその「資金調達の多様化が更に追い風」ということがあるんです。お金を貸すわけですから、その融資するお金を何とか調達しなければいけないということになる訳で、これはまず元凶は銀行なんですよね。銀行は「私達はそういうことはしません」ということを言いながら、言いながらというかそういう顔をしながら、サラ金にジャブジャブ融資しているんですね。で、非常に銀行にとってサラ金は良い顧客な訳です。ついでに言うと「正にサラ金というのは日本の構造そのものだなあ」と思うんです。銀行がどんどん融資するでしょ。サラ金の役員の構成というのはいろいろ調べれば「どういう人かな」って分かるんですが、勿論創業者もありますけれども天下りが半分ぐらい入っていますね。昔でいう大蔵省、今でいう金融庁。大体こういったサラ金というのは監督官庁が今でいう金融庁です。そこから天下っている。或いはその金融庁だから税務署とかもあるんですけれども、そこから天下っているのが役員に入っているということです。

では「株主は誰なんだ」という風に見ると、もちろん創業者等もいっぱい持っていますけれど、金融機関だとか生命保険会社、損保会社なんていうのがいっぱい持っている。正にこれは「日本の古典的な社会構造そのものだな」という風に思う訳です。

銀行がジャブジャブ貸す訳ですけれども、平成4・5年だと思うんですが、初めてサラ金が上場したんですね。『プロミス』かどこかだったと思います。株式を上場した。そうすると市場から資金をガサッと集める訳です。株式を発行して集めることができるということになる。株主に対してはチョロっと配当しとけばいいものですから、市場からガサッと金を集める。それから相次いでサラ金が上場するようになった。

当時サラ金が上場するか、しないかという時に、僕も違う浜松のある事業をやっている会社の上場のプロジェクトに顔を出していまして、そこに証券会社の上場を担当している職員が来ていたんですね。で、食事をした時に、「何であんなサラ金を上場するんだ」という風に言ったら、やはり景気が悪いものですから、証券取引所としても手数料収入が下がっている。手数料収入というのは、上場している会社が証券取引所に年間幾らか払うらしいですね。その収入が減っている。多分取引料とかそういうことで決まってくるんじゃないかと思いますけれども、そこで新しい会社をどんどん上場させていかないと立ちいかない。それで、今景気がいいのはサラ金だという訳で、それでサラ金の上場に踏み切ったという事らしいんです。それからもう相次いでサラ金の上場をして、市場からガサッとお金を持っていく。それで高利で貸し付けをするということになっちゃった訳ですね。こういう問題は大きく捉えると色々な問題があるんですけれども、とにかくそういった問題も見ながら個々の相談者に対応していかなければならないとこういうことになる訳です。

まずその金利の問題ですね。僕らが相談に応じる時に、分かり易く言うと今日の資料の後ろのほうに「計算書1、計算書2」と書いてあるページがあります。左上に「利息制限法の引直計算例」こう書いてあります。「計算書1は業者計算」。「計算書2は利息制限法引直し」と書いてあります。左のページの計算書1を見ますと、平成14年11月に30万円借りて月々返済した。また途中で借りて返済して、繰り返しているわけです。それで「利率」というのが真ん中にあります。これは29.2%。これがサラ金の金利です。これで計算をしているわけです。そうしますと一番右の「残元金」というのがありますが、元金がいくら減ったかということが書いてあります。ズーッといって平成17年の4月28日時点で約23万円ぐらい残っていますよ、とこうなるんですね。ところが右のページへいきますと、計算書に、これは取引日、借入日、返済額等は左のページと全く同じです。それを利率、18%でもう一度計算をして見ますと、残元金が14万円チョット。まさに半分ぐらいになります。本来は法律上払わなければいけないのはこっちなんですね。ところがずっと騙され騙されして、今23万円ぐらい残っていますよというふうなことです。

それで、僕らに相談があって依頼を受けるとサラ金に必ず開示請求します。「何時、幾ら貸して、何時、幾ら返済したのかというのをよこせ」と。大体こういった借り入れしている人はほとんどとってないですね。家族に内緒とかでそういった伝票とか契約書をどんどん捨てちゃって、だからそんな細かいことぜんぜん分からない。「借りたのは5年前かな?10年前かな?」と言っているくらいなんで全然皆目見当がつかない。そういうことで業者から資料を取り寄せるわけです。それは法律でこういった問題があるものだから、業者は資料の開示に協力しければいけないということになっておりますので、業者は渋々開示をします。なかなか開示しない業者もあります。捨てちゃったとかいろんなことを言って。それで計算を全部やり直すわけです。計算をやり直してみると、僕らの経験から言うと、サラ金と取引をして、6~7年取引をすると、仮にいまサラ金から「まだ50万円ありますよ」と言われてても、こういった計算をやり直すと大体0円なんです。いまサラ金の借り入れというのはカードで、機械でお金を借りる、返済する、いつでもできる、こういうような形になっていますので、最初50万円借りて毎月ズーッと真面目に返済だけしてきましたという人はほとんどいないわけで、50万円借りてて、2万3千円くらい返しに行きます。お金入れると、「今、お金入れたんで今日は八千円借りられますよ」と、そこでまた八千円借りてくる。そういうことで残高としてズーッと50万円に張り付いている。毎月毎月張り付いている。こういう取引をしている人がほとんどなんですね。それでもそういう取引であっても、大体6~7年取引をするとサラ金の借金が0円になります。サラ金と取引をして2~3年、ちょうどここにある例が2年半くらいのもの。そのくらい取引をしていると半分くらいになると見当はつきますね。そういった計算をしてみて実際、残高が残るという事になりますと、そこから交渉に入るわけです。

交渉というのは具体的にどういう内容の交渉かというと利息0円の残金分割払い。こういう交渉に入る。大体それで整理をしています。6~7年以上取引しているとどうなのか。10年くらい取引しているとどうなのか。これは払い過ぎなんです。「払い過ぎなので返せ」という交渉をします。あるいは裁判を起こして返してもらう。こういうことは日常茶飯事でやっています。だから変な話、借金に困って相談に来て、しょぼくれちゃって顔色も悪いわけですけれども、そこで、「あなた、お金一杯返ってくるよ」という話をすると、狐につままれたような顔をして、その人が家に帰って、今日相談に行ったら「お金が返ってくるよ」と言われたと言ったら、「お前、騙されてるんだろう」ということを言われたなんて事があるわけですが、実際そういうことが一杯あるわけです。

 具体的事例というのがありますが、こんなような感じになるわけですね。具体的事例で、事例1 任意整理(1)とありますが、そこで表が二つありまして、上の表です。受任時の債務状況、事務所に来た時にどうなっていたか。約定残高。「約定」というのはサラ金の契約。20何%契約の残高がトータルで315万円くらいありましたということですね。右の備考に契約の日付が書いてあります。実際調査を入れまして、計算をし直してみたところ、残高としては本当は204万円だった。これを利息無しの分割払いということで交渉をして月7万円の支払いになる。これならいけるということですので、これで和解交渉を進めていった。そういうような経緯ですね。

 右のページ、任意整理(2)というのがありますけれども、これは僕も印象深い事件でしたが内容を少し変えてあります。この方はどういう方かというと65歳の男性です。10年以上前に友人の保証人になったんですね。その時は会社にお勤めをしておりました。会社を退職して、退職金で保証人になって借金を払った。ただそれでは足りずサラ金にも手を出してしまったということなんです。いよいよサラ金の借金がどんどん増えて、もちろん退職してしまったので収入も少なかったんでしょうね。サラ金に何社か借りて家族に家を追い出されたんです。追い出されたのは平成15年12月。追い出されて行く所がないものですから、いわゆるホームレスになってあっちこっち寝泊りして、冬ですよね。寒い中そういう生活をした。いよいよそういう生活を三ヶ月くらいしていたらしいんですけれども、お金も無くなって自殺を考えたんですね。遠州灘の浜に行きまして、多分冷たかったろうと思いますけれども、水の中にジャブジャブ入って行ったというんですよ。それが昼間なのか夜なのか聞き忘れたんですけれども、若いカップルが砂浜に遊びに来ていたらしいんです。カップルの男が男性に気が付いて、ジャブジャブとその男性が海の中に入っていくものですから、「おじさん、何やってんだ」ということで海の中から救い出されたらしいんですね。で、「おじさん、何やってんだ」と言ったら、「いや、僕はお金が無いし、死ぬしかないんだ。死なしてくれ」というふうに言ったわけですけども、「おじさん、とにかく今日は落ち着きなさい」と。で、『バーデン・バーデン』という寝泊りできるお風呂屋さんがあるんですね。

「そこに連れてってあげるから、今日はそこに泊まんなよ」と男が言ったわけです。「だけども僕はそんなとこへ行くお金も無いんだ」と言ったら、その男が、「おじさん、そのくらいは俺が出してやるから」ということで、おじさんはそこで救われて、『バーデン・バーデン』に行ったらしいんです。結局、おじさんは市に保護されたらしいんです。おじさんは僕の事務所に来て、本当に涙を流しながら話をするんですね。行方不明の状態であったわけですから、今のところサラ金からの取立ても無いわけですよね。保護されて、生活保護をもらうようになって、ある市営のアパートに細々と暮らすようになった。そこで借金を何とかしなきゃいけないということを思い出して私の事務所に相談に来たんですね。そういう状態なものですから資料が何も無いんです。ここでいうA、B、Cという会社から借りてたというわけです。だからこちらもしょうがないから手探りの状況で債権の調査、内容の調査に入ったわけですね。ところが調査をしたら、この表にもありますけれども、全部払い過ぎなんですね。トータルでは65万円ということです。結局このおじさんは法的にいうと借金なんか無かったんですね。むしろ払い過ぎというか、そういう状態の中で追い込まれて家族にも見捨てられて、砂浜にカップルがいなかったら多分死んでたでしょうね。だから借金の問題というのは、単にお金をどうやって返すのか、返済ができるのかできないのか、破産するのかどうするのかという問題に止まらない、本当に命が懸かっている。先ほどおじさんは自殺を考えたと言いましたけれども、大体僕のとこへ相談に来る方はみんな考えてますね。実際水の中へ入る、入らないは別として、払うか、破産するか、夜逃げするか、死ぬかという選択肢で悩んでいる。選択肢の中に自殺するという選択肢がほとんど入っている。そういう問題なんですね。

それで思い出すんですけれども、こういう事例もあったんです。もうこれは多分6~7年前になると思います。僕は新聞を見て知っていた事件なんですけども、浜松市内で母子家庭で、お母さんと幼稚園くらいの子供がいて、心中を図ったんですね。まず最初子供の首を絞めて殺してしまって、自分も死のうと思ったけれども死に切れなくて警察に捕まったんです。そしてしばらくして、その方の妹さんという方から相談があったんです。どういう相談かというと、実はこういう事件がありました。あれは実は姉です。ところがこれは皮肉なことに、お母さんが借金があってそういうことをしたらしいんですね。たかだか百万円チョットの借金らしいんですね。借金は実は残っているんだ。皮肉にも子供が亡くなったから、どこかからお金が出たらしいんです。どういうお金か知りませんけれども、保険なんですかね。それでお姉さんの借金を整理して欲しいということで相談に来たんですね。僕は前に新聞で見た事件を思い出して、複雑な思いがあったわけですけれども、お母さんは岐阜の方の刑務所に入った。いくらお姉さんから言われても、ご本人の借金の整理というのは勝手にやるわけにはいかないので、その岐阜の刑務所に何回も手紙を出して、「妹さんからそういう話がありました。本当にそういうことでよろしいでしょうか。よろしければ委任状を書いてください」ということで手紙を何回もやり取りした。まあ、はっきりいってへたくそな字で委任状を書いてきましてね。ほとんど漢字も使えないような形で、「よろしくおねがいします」というような形で書いてきました。その借金の整理というのはそれほど難しい話ではないので、それはそれでやったんです。本当にたかだか百万円のお金で、彼女は一生、子供の人生までも棒に振ってしまったということなんですね。本当にお金というのは、サラ金・ヤミ金の借金の問題というのは無くならないんだという話がありましたけど、根が深い問題だなというふうに思っているわけです。

 次に事例(3)というので、破産があります。破産は年間、全国で20万件くらい出てますね。ほとんどが個人です。法人が破産するというのは全体の5%くらいだと思います。ほとんどが個人で、しかもその9割方はこういったサラ金で破産をする。やはり破産というと一般の方から見るとどうなのか、いろんな意味でね。そういう思いがあろうかと思いますけれども、破産というのは法律が用意した、最終的な、究極的な立ち直りの方法なんですね。だからさっき言ったように百万円とか二百万円の借金で人生を終わりにするぐらいのことを考えるんだったら、もう破産してもう一回やり直したほうがいいという話はよくするんです。破産についてもかなり間違ったイメージで捉える方がいらっしゃるんですけれども、はっきりいって生活上の不便というのは全く無いです。よく「戸籍にのっちゃうからいやだ」と言う風な方もいるんですけど、そういうことも無いわけです。選挙権が無くなるようなこともないし、まあ、そういう人はあまり選挙に行かないかもしれないけれども、ほとんど財産を持ってないですね。財産を持ってないと手続きとしても簡単に終わる。そもそも破産手続きというのは別に困った人を救済する制度ではないわけです。どういうことかというと、債権者が一杯いるので、それを早い者勝ちで取ったら世の中が目茶目茶になるものだから、もう払えないよという状態だったら公平に債権者を扱いましょう、そこで財産をお金に換えて按分しましょうという制度なわけです。だけども実際にはそれが反射的に債務者の救済に役立っているということなんですけれども、ほとんど財産が無い人ばかりですから、破産手続きもわりと簡単に終わっちゃうんですね。時間でいうと6~7ヶ月といっても裁判所に一回程度行くだけということで終わる。ただそういうことをとらえて簡単に破産するなんていうのはどうかというような意見もあるわけです。先程言いましたようにほとんどの方はやはり生活費とかで困っていたりするという実態がありますし、それを何とかしなきゃいけないということで、いろいろ悩みながら最終的にこの破産の手続きに辿り着くとこういうことになるものですから、簡単に「いいや、こんな借金、破産すりゃ」とこう考えて借金をしていたわけではない。別に弁護するわけではないんですが、実態として何百人の方とお話をしていると、やはりそんな簡単には皆さん考えていない。やはり皆さん真面目に考えている。それで、最終的に破産に至っている。こういう事情があります。これはなかなか理解してくださいといっても、一回で理解はできないと思いますけれども、現実に直面をして見るとそういう方が多いですね。

 そこにいろいろ書いてありますが、要は先ほど言いましたブラックリストに載るので、当面お金を借りたり、クレジットカードを作ったりすることができなくなるということが唯一のデメリットであるわけで、生活していくのにはなんら問題は無いということです。

 あと、「民事再生」というのがあるんですね。これは破産とはちょっと違って、借金の総額の五分の一程度、計画を立てて払っていくということで、その計画を裁判所で認めてもらえば、その通り払えばそれ以上の借金は払わなくていい。一口で言うとそういう制度なんですね。この手続きを使う最も多いケースというのが、住宅ローンを抱えている方なんです。住宅ローンを抱えている方については、その住宅ローンの特則というのがありますが、それを利用すると、住宅ローンはそのまま払っていきます。それ以外の借金は五分の一ぐらいにカットして、計画を立てて払っていく。こういうようなことができるんです。そうするとサラ金ばかり困るんじゃないのかということになるんですが、全然困らないわけです。と言いますのは、この制度ができたのは4年ぐらい前なんですけれども、それまではこういう方は破産するしかなかったんですね。破産すると住宅ローンは家を担保にとってます。バブルで下がっちゃったから、実際今の住宅の価値が例えば二千万円であって、担保が二千五百万円ついている。担保というのは優先的な権利がありますから、その住宅を競売にかけてそこから取れるということになります。そうすると何もおつりが出ないですね。そうすると担保を取ってないサラ金というのは何もありません。ゼロですよ、ということになるんですね。サラ金にとってはそれよりもよっぽど良い。五分の一でも払ってくれるということですね。だから債権者にとってもある意味メリットがあるし、この手続きを利用する人は非常に大きいメリットがある。

そもそもこの手続きは、民事再生というのは会社の手続きから始まったんです。その頃大きいデパートで『そごう』ですとか、そういうところが民事再生をしちゃったんです。当時の法務大臣か誰かがちょっと言ったらしいんですね。会社は確かにそういうような制度がある。ただ個人が一生働いて家も持てないなんていうのは、これはおかしくはないかと。その鶴の一声かどうかは分かりませんけれども、こういった個人向けの民事再生の手続きをきちっと見直しをして、利用し易くしたということです。だからこれは住宅を持っていようが、持っていまいがこの手続きを使えますので、例えば住宅が無ければ借金が500万円あったら、100万円払うという計画を立てていくわけですけれども、住宅が無い方でこれを利用するケースというのもありまして、敢えてこれを利用するというケースというのが若い方、まだ二十代前半とか、こういう方達がお金の使い方とか借り方を知らないまま世の中に出てきて、滅茶苦茶な使い方をしちゃったという人は一杯いるわけです。そういう人達に今後、長い人生の中で計画的に自分の収入でやり繰りするということはやってもらわなきゃいけないので、よくお話をして、場合によったらお父さん、お母さんに来てもらいます。

 A、B、C、Dと書いてありますけれども、100万円くらいを3年間くらいで払っていくことになりますが、支払い先は各社に毎月払うわけです。普通の方はお仕事もあったりして、そんなことはなかなかできないですね。私の事務所の場合には、その方の専用の口座を作って毎月お金を持ってくるか送るようにしなさい、ということでやっているわけですけれども、そういう癖をつけて3年間で終わりだから貯金をしてみようという話をして若い方は敢えてそういう手続きをとることもあります。だからいろんな手続きのバリエーションがあるんですね。

先程言いました架空請求、ヤミ金融ですね。この対策としては一切取り合わない。やっている連中というのはゲーム感覚でやっていますし、会社でやっているわけではないですから、個人で適当にやっている連中なんで、いわゆる債権とかの管理なんてしてないですね。普通の会社であればいくら貸して、いくら返済して、いくら残っているからこれをどうするんだ。今期処理しようかということをきちっと管理しているわけですけれども、そんなことは全くやっていない連中ですから、とにかく無視する。もし借りてしまって返済しなければいけないということで、取立てがガンガン入ってくるような状況でも全部無視する。まず、携帯電話の番号を変える。それから口座。たとえば静銀の通帳とかを持っていたとしますとそこを全部解約する。なぜ解約するかというと、「押し貸し」といいまして、勝手に振り込んでくるんですね。勝手に振り込んできて、「通帳を見てみろ」、「この金を貸したからこの金を返せ」ということをやるわけです。なんで通帳の番号を知っているかというと、情報が全部横に繋がっている。携帯電話の番号も分かっている。だから口座も解約する。それで会社にガンガン取立てが入る。本人に連絡がつかなくなるから会社にどんどん電話が入るようになって、場合によったら、上司から「困った、困った」と私に電話が来るわけですね。で、「首にした」と言ってくださいと言うわけです。これは嘘なんです。嘘なんだけれども、向こうは違法な連中だからまともに対応する必要はない。それでもガンガン嫌がらせはありますけれども、債権の管理はしていない連中ですから、長くて一週間耐えれば終わる。要するに向こうも金にならないことをやっていてもしょうがないということであきらめるわけです。だから一切払わない。もし例えば3万円借りたと。まだ一回も払っていませんよ。でも一切払わない。もともと「ヤミ金規制法」というのができたんですけれども、そんな超高金利のお金の貸し借りは無効ということにしたんですね。それは解釈上今までもそうだったんですが、もともとこんなのは詐欺ですよね。だからまともに3万円借りたから3万円返す。そんなことをやる必要はないということです。

これも面白い事件がありまして、お金を借りてる人が毎週振り込みますよね。相手が誰だか分からん。携帯電話を使って、偽の名前を使ってるから誰だか分からんということなんですけれども、この口座を差し押さえてしまうんです。そういうことをやったんですね。一遍に30件くらい裁判所にもっていきまして、その頃はまだそういうやり方というのはなかったものですから、面白いように差し押さえができました。そうすると業者から泣きの電話が入ってくるわけです。口座から下ろせなくなる、お金が下ろせなくなる。「お金を払うから差し押さえは止めてくれ」ということを言ってくるので、「入金があったら止めてやる」と言い返すわけです。どっちがヤミ金なのかよく分からないような状況になってくるんです。それもヤミ金30件くらい借りている方がいきなり来たものですから「ちょっと、これでやってみよう」と試しで裁判所へ持っていったんですね。それでたしか金曜日の4時50分くらいに書類を持っていったんです。そしたら裁判所の職員が、「今日、僕もう帰りたいんです」と言うものですから、

「お前ら、土・日に人が死ぬぞ」と脅かしてやらせたんです。あれで土・日にガンガン取立てをやられたら本当に月曜日生きているのかなという感じがしました。かといって裁判所に金曜日に受け付けてもらったからといったって、それですぐ差し押さえができるわけじゃないんだけれども、とにかく受付したという印をもらいまして、ヤミ金にバンバン、ファックスで送りつけて、そうしたらもう月曜日から「返します、返します」という電話ばかりありました。最初はなかなか上手くいったんですけれども、最近は向こうも学習をしておりまして、お金が入ったらすぐ出しちゃうんです。だから振り込め詐欺などもそうですよね。大体そんなの裁判手続きをしてもたぶん空振りになるんでしょうね。裁判所の職員の方もいろんな知恵を出してくれまして、あくまでも裁判所は中立なんですよね。だけども事情を理解してくれて、相手がどこの誰だか分からないから、調べてみたらこういうようなやり方ができそうだからと色々調べてくれまして、なかなか記憶に残った事例です。

もう少し具体的な話をしたいと思いますけれども、「相続放棄」というのも非常に多くて、これは16年3月に、ここに死亡診断書、死体検案書というのがあるんですけれども、自宅の納屋でロープで首を吊ってぶら下がっているのを家人が発見し、警察に連絡した。まあ、こう書いてある。首吊り自殺です。事務所でこの方の相談を受けていたわけじゃないんですけれども、この方の相続人からお話がありまして、住宅ローンを始め色々借金があったと。で、「私たち相続人なんですけれどどうしたらいいんでしょうか」こういうことですから、「これは相続放棄をしてください」ということで、3ヶ月以内にすればいいものですから、裁判所に申し出をするわけですけれども、相続放棄をすれば借金については免れることはできますよというようなお話で解決したというような事件もあります。

本当にいろんな事件があって、面白いというと怒られるんですけれども、『武富士』という会社がありますね。今からお話しする方は、お父さんが会社員をやっていたんですが、昭和56年か57年くらいに独立したんですね。機械の仕事を始めたんです。ところが収入が苦しいということで、息子さんは当時、浜松のある会社にお勤めになっていましたけれども、息子さんに頼んで50万くらい調達してくれと頼んだ。息子さんとしては親父が頼む話だし何とかしてやりたいと思ってサラ金から借りたということを言わずに『武富士』から借りてお父さんに渡した。ところがお父さんが機械を買うとかそういう話は嘘で、資金繰りだけだったんです。しかも色々借金があったみたいです。それでお父さんが昭和58年くらいに破産をしたんです。破産をしたんだけれども、普通は司法書士に相談に来て、通知を出すだけで取り立ては止まりますので問題はないんですが、当時はそういう規制もなかったし、なおかつ町の金融業者、高利貸しはなかなかそういう規制では一筋縄ではいかないところがありますので、破産をしても取り立てにきていたらしいです。そこでも一家離散で、お父さんも息子さんも散り散りになってしまった。その息子さんは浜松の魚屋さんにお勤めしたり、流れ流れて建設会社に行って、「実は私はこういう過去があるんです」と社長にお話して、「名前を変えて勤めればいいじゃないか」ということで仕事をしていたらしいんです。ところが3年前くらいに保険か何かの関係でどうしても自分の名前を出さなきゃいけないということで、そしたら即、『武富士』から手紙が来るようになりました。『武富士』には1年くらいしか返していなかったわけですね、それで一家バラバラになっちゃって全然返していない。そういう中で元金の25万円くらい残っているわけですね。「利息が300万円くらい付いていて、どうするんですか」こういう手紙が来た。どこの会社に勤めているかということも『武富士』は探し出したみたいで、いきなり電話がかかってきた。こういうことだったんです。で、青ざめますよね。昔のいやな思い出が甦って来る。「チョットここじゃ困るから浜松の店に行ってくれ」電話は東京から来たらしいんですけれども、浜松の『武富士』に行った。そこから電話をよこせということですね。お店へ行っちゃったら終わりなんですけれども、向こうの意のままなんです。東京と電話をして、「今日1万円でも入れれば大幅にまけてやるから」ということを言われて、スッタモンダして千円かいくらかそこでお店の人に払ったらしいんですね。で、

「今後どうやって返済するのかということを毎週東京へ電話をよこせ。電話がなかったら会社へ電話するからな」ということで、渋々毎週電話をして6回くらい払ったらしいんです。

ところがこれはよくよく考えると時効だったんです。サラ金の借金は5年で時効になります。とっくに5年以上経っているわけです。時効というのは変な制度で、5年経ったら時効が完璧に成立するのではなくて、5年経っていても、たとえば一部お金を払ってしまったら、お金を払ったということは、支払い義務があるということを認めたことになる。それとかお金を払わないまでも、「確かに借りているので何とか払います」と言った瞬間に時効はブッ飛んじゃうんですね。無くなっちゃうんです。だから今日千円でも払えということはそういうことなんです。これも騙しですよね。少しでも払えば利息を大幅にまけてやるとか、そういうことを言っておきながら、千円を払わせておいて時効を飛ばしておいて…こういうやり方です。で、事務所に相談に来た。これはやり方としては非常に汚いやり方です。その『武富士』から電話が掛かって来た状況だとか、何故千円を払ったとか、その後毎週電話をしなければいけなかった事情だとか、その辺を細かく聞きまして、そして裁判を起こして、最初は向こうと交渉した時には、『武富士』の社員が非常に強がったことを言っていましたけれども、一回の裁判で終わりということになりました。まあ、実際に昔に遡って計算すると確かに元金が20何万円残っているんですよ。裁判も長期化するのも困るものですから、一応10万円くらいで和解しましょうということで終わりにしました。何故10万円くらいで和解しましょうということになったかというと、やはりこの方も借金が払い過ぎのものが一杯あって、それをかなり取り返したものですから、お金に余裕があったから、別に裁判を長々やらなくても和解で終わるのであればそれでいいんじゃないということで終わらせたわけで、そういうこともありました。

一人ひとり思い出していくと、一人ひとりドラマがあるなあ、というふうに思うんですけれども、こういう方もいらっしゃいました。ご夫婦で二人とも障害者なんですね。奥さんが障害者の1級、ご主人が2級。この方がサラ金の借金の整理をしている時にお母さんが亡くなって、若干の死亡簡易保険が出たものですから、それを使って借金の整理をしたんです。そのことよりもこの方の非常に印象に残っているのは、全部終わりまして、「じゃあ、これで元気でやってね」ということで送り出したわけですが、外で私の事務所を拝んでいるわけですよ。あれは非常に印象深い事件でしたね。

要は最後に二つだけ覚えておいてほしいのは、まず借金の問題というのは命が懸かっている問題だということ。これが一つ。それと借金の問題は絶対に解決できるんだ。百パーセント解決できるというのが二つ。解決というのはいろんな解決があります。破産して解決ということもあるでしょう。法的に百パーセント解決できるということです。精神的にいろんな負い目を追ったりすることは、それは払拭できない部分はあるかもしれませんけれども、絶対解決できる。この二つは絶対に覚えておいてほしいと思います。非常に雑駁なお話で恐縮でしたが、お時間ですのでこれで終わりにいたします。ご静聴ありがとうございました。

投稿者プロフィール

古橋 清二
古橋 清二
昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A
浜松西部中、浜松西高、中央大学出身
昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる
平成2年 古橋清二司法書士事務所開設
平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立

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古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立

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