4 対抗要件具備行為(法164)
支払の停止等があった後、権利の設定、移転又は変更をもって第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む。)をした場合において、その行為が権利の設定、移転又は変更があった日から15日を経過した後支払の停止等のあったことを知ってしたものであるとき。悪意の立証責任は破産管財人にある。なお、当該仮登記又は仮登録以外の仮登記又は仮登録があった後にこれらに基づいて本登記又は本登録をした場合は、この限りでない。
ここで「支払ノ停止」とは、債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいうものと解されている。債務者が債務整理の方法等について債務者から相談を受けた弁護士との間で破産申立の方針を決めただけでは、他に特段の事情のない限り、いまだ内部的に支払停止の方針を決めたにとどまり、債務の支払をすることができない旨を外部に表示する行為をしたとすることはできないものというべきである(最判昭和60年2月14日(判時1149号159頁、判タ553号150頁等))。店舗を閉鎖して退去した行為(東京高判昭和36年6月30日(判時272号19頁))、退職金をもって債務整理をする意図で退職願いを提出する行為(大阪高判昭和57年7月27日(判タ487号166頁))、債務者の代理人である弁護士が債権者一般に対して債務整理開始通知を送付した行為(最判平成24年10月19日(判時2169号9頁))はいずれも「支払ノ停止」と認定されている。
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より