破産管財人とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいい(法2ⅩⅡ)、破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する(法78Ⅰ)。
破産管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならず、破産管財人が善管注意義務を怠ったときは、利害関係人に対し損害を賠償する義務を負う(法85)。
破産管財人は、就職の後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手しなければならない(法79)。
裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は信書便物を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができ(法81Ⅰ)、破産手続が終了したときは、裁判所は、この嘱託を取り消さなければならない(法81Ⅲ)。
破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができるるが(法82Ⅰ)、破産者は、破産管財人に対し、破産管財人が受け取った郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができる(法82Ⅱ)。
破産管財人は、破産者、破産者の代理人、破産者の役員等(法40Ⅰ各号に掲げる者及び同条Ⅱに規定する者)に対して説明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができるほか(法83Ⅰ)、子会社、支配株主等に対する調査権を有し(法83Ⅱ、Ⅲ)、破産手続開始の申立てをした者に対し、破産債権及び破産財団に属する財産の状況に関する資料の提出又は情報の提供その他の破産手続の円滑な進行のために必要な協力を求めることができる(規則26Ⅱ)。
裁判所と破産管財人は、破産手続の円滑な進行を図るために必要があるときは、破産財団に属する財産の管理及び処分の方針その他破産手続の進行に関し必要な事項についての協議を行うものとされ(規則26Ⅰ)、破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない(法78Ⅱ)。この場合、破産管財人は、遅滞を生ずるおそれのある場合を除き、破産者の意見を聴かなければならない(法78Ⅵ)。
① 不動産に関する物権、登記すべき日本船舶又は外国船舶の任意売却
② 鉱業権、漁業権、公共施設等運営権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、育成者権、著作権又は著作隣接権の任意売却
③ 営業又は事業の譲渡
④ 商品の一括売却
⑤ 借財
⑥ 破産者が破産手続開始の決定後にした相続の放棄の承認(法238条Ⅱ)、破産者が破産手続開始の決定後にした包括遺贈の放棄の承認(法234)又は破産手続開始の決定前に破産者のために特定遺贈があった場合において破産者が当該決定の時においてその承認又は放棄をしていなかったときに破産管財人が破産者に代わってする特定遺贈の放棄(法244Ⅰ)
⑦ 動産の任意売却
また、破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならないが(法78Ⅱ)、最高裁判所規則で定める額(100万円。規則25)以下の価額を有するものに関するとき、裁判所が許可を要しないものとしたものに関するときは許可を得ることを要しない(法78Ⅲ)。
① 債権又は有価証券の譲渡
② 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときにする破産管財人が破産者の債務を履行してする履行の請求(法53条Ⅰ)
③ 訴えの提起
④ 和解又は仲裁法に規定する仲裁合意
⑤ 権利の放棄
⑥ 財団債権、取戻権又は別除権の承認
⑦ 別除権の目的である財産の受戻し
⑧ その他裁判所の指定する行為
破産管財人は、その職務と責任にふさわしい額として裁判所が定める報酬を受けることができる(法87Ⅰ、規則27)。
破産管財人の任務が終了した場合には、破産管財人は、遅滞なく、計算の報告書を裁判所に提出し、破産管財人の任務終了による債権者集会への計算の報告を目的として債権者集会の招集の申立てをしなければならず(法88Ⅰ、Ⅲ)、又は当該申立てに代えて、書面による計算の報告をする旨の申立てを裁判所にすることができる(法89Ⅰ)。
裁判所は、書面による計算の報告をする旨の申立てがあり、かつ、法88条1項又は2項の規定による計算の報告書の提出があったときは、その提出があった旨及びその計算に異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告しなければならない。この場合においては、その期間は、一月を下ることができない(法89Ⅱ)。
破産者、破産債権者等は、この期間内に破産管財人の計算について書面で異議を述べることができるが、期間内に異議がなかった場合には、法88条1項又は2項の規定による計算は、承認されたものとみなされる(法89Ⅳ)。
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より