ⅩⅠ 委任契約

委任契約は、一方当事者の破産により当然に終了するが(民653②)、委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができないとされている(民655)。そこで、委任者について破産手続が開始された場合において、受任者が民法655条の規定による破産手続開始の通知を受けず、かつ、破産手続開始の事実を知らないで委任事務を処理したときは、これによって生じた債権について、破産債権者としてその権利を行使することができることとされている(法57)。

 ところで、株式会社と、その取締役、監査役、会計参与、会計監査人との関係は委任契約とされており(会社330)、受任者である取締役等に破産手続が開始すると委任契約が終了し、その地位を失うため、「退任」を原因として変更登記を申請する必要がある。しかしながら、破産者であることは取締役又は監査役の欠格事由ではないため、破産者を取締役、監査役に選任することは可能である。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立