Ⅲ 破産者の居住に係る制限
破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない(法37Ⅰ)。なお、居住地を離れることの許可申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる(法37Ⅱ)。
「居住地を離れる」とは2泊以上の宿泊を含む旅行や出張もこれに当たり、海外については1泊でもこれに当たると解されている(「条解 破産」304頁、管財手引 126頁)。
これらの規定は、破産者の逃走や財産の隠匿を防止するとともに、破産者の説明義務を尽くさせようとするものであるから、同時廃止により破産手続が終了した場合は適用の余地はない。
裁判所は、居住地を離れることの許可の申立てがあると、破産者の居住、移転の自由(憲法22条)と破産手続への支障の程度を比較考量することになるので、実務上は、破産管財人の同意を求め、または意見を聴くこととなる。そのため、破産者は、転居の場合には転居先、連絡先、転居日、転居理由等を、旅行や出張の場合は旅行先、期間、連絡方法、理由等を明らかにして許可を求める必要がある。
破産管財人が 同意をすべきかどうかは、管財業務の支障の有無で判断することになり、管財業務に支障がないと判断できれば、同意をして差し支えないと考えられているが(管財手引 127頁)、破産者が海外に行くことは、管財業務に支障を来すのが通例である上、債権者集会や免責審尋期日への出頭も困難となるから、破産管財人としては、これに同意するかどうかについて慎重に対応し、必要に応じて 裁判所と協議することが求められている(管財手引 128頁)。
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より