1 新株予約権の登記の手続
ア 新株予約権の登記の制度が設けられたが,新株予約権付社債の場合には,当該新株予約権付社債に付された新株予約権について登記をすべきこととされ,社債部分については登記事項とされていない。
イ 新株予約権又は新株予約権付社債を発行するときは,払込期日(新株予約権の無償発行の場合には,発行する日)から,本店所在地においては2週間以内に,支店所在地においては3週間以内に,新株予約権の登記をしなければならない。
ウ 登記の事由は,「新株予約権の発行」又は「新株予約権付社債の発行」であり,登記すべき事項は,①新株予約権の数,②新株予約権の目的たる株式の種類及び数
,③各新株予約権の発行価額(無償発行の場合には,その旨),④各新株予約権の行使に際して払込みをすべき額(払込価額),⑤新株予約権を行使することができる期間(行使期間),⑥新株予約権の行使の条件(払込価額及び行使期間を除く。),⑦会社が新株予約権を消却することができる事由及び消却の条件である。
エ 会社が新株予約権の登記を申請するには,申請書に記載すべき登記すべき事項は,新株予約権欄の用紙と同一の用紙に記載しなければならない。なお,新株予約権の登記は,一つの決議に基づいて発行された新株予約権ごとに各別の用紙にしなければならない。
オ 本店所在地においてする新株予約権の登記の申請書には,代理人によって申請する場合のその権限を証する書面のほか,①取締役会議事録(定款に株主総会の決議により新株予約権を発行する旨の定めがある場合は株主総会議事録),②定款(株主総会の決議による旨の定めがある場合)③新株予約権又は新株予約権付社債の申込み及び引受けを証する書面,④新株予約権の発行価額(新株予約権付社債の場合にあっては,社債及び新株予約権の発行価額)の全額の払込みがあったことを証する書面(無償で新株予約権を発行した場合を除く。)を添付しなければならない。
カ 新株予約権の登記の記載をする場合,新株予約権欄の用紙の丁数の記入は,一つの決議に基づいて発行された新株予約権ごとに区分し,その新株予約権を特定する適宜の符号を付さなければならない。
2 新株予約権の行使による変更の登記
ア 新株予約権を行使する者は,請求書に新株予約権証券又は新株予約権付社債券を添付して会社に提出し,かつ,発行決議において定められた新株予約権の行使に際して払い込むべき価額の全額の払込みをしなければならない。この払込みは,新株予約権証券又は新株予約権付社債券に記載された払込場所において行わなければならない。
イ 新株予約権の行使があったときは,毎月末日現在により,本店所在地においてはその日から2週間以内に,支店所在地においてはその日から3週間以内に,新株予約権の行使による変更の登記をしなければならない。
ウ 登記の事由は,「新株予約権の行使」であり,登記すべき事項は,①発行済株式の総数並びに種類及び数,②資本の額,③新株予約権の数,④新株予約権の目的たる株式の種類及び数につき変更があった旨及びその年月日である。なお,新株予約権の全部が行使されたときは,③及び④に代え,新株予約権全部行使の旨及びその年月日が,登記すべき事項となる。
エ 本店所在地においてする新株予約権の行使による変更の登記の申請書には,代理人によって申請する場合のその権限を証する書面のほか,①新株予約権の権利行使の請求書の提出を証する書面,②払込みを取り扱った銀行又は信託会社の払込金の保管に関する証明書,③新株予約権の行使により発行する新株の発行価額中資本に組み入れない額を定めたときは,当該定めの決議があったことを証する書面を添付しなければならない。
3 新株予約権の消却による変更の登記
ア 会社は,新株予約権の発行の決議において新株予約権を消却することができる事由として定めた事由が発生したときに限り,新株予約権を消却することができる。新株予約権を消却するには,取締役会の決議をもって消却されるべき新株予約権を定めるとともに,1月を下らない一定の期間内に当該新株予約権証券を会社に提出すべき旨を公告し(ただし,新株予約権証券が発行されている場合に限る。),かつ,新株予約権者に通知しなければならない。
イ 新株予約権又は新株予約権付社債に付された新株予約権を消却したときは,消却の効力が生じた日から,本店所在地においては2週間以内に,支店所在地においては3週間以内に,新株予約権の消却による変更の登記をしなければならない。
ウ 登記の事由は,「新株予約権の消却」であり,登記すべき事項は,「新株予約権の数」及び「新株予約権の目的たる株式の種類及び数」につき変更があった旨並びにその年月日である。なお,新株予約権の全部が消却されたときは,新株予約権の全部消却の旨及びその年月日である。
エ 新株予約権又は新株予約権付社債に付された新株予約権の消却による変更の登記の申請書には,代理人によって申請する場合のその権限を証する書面のほか,①新株予約権の消却をすることができる事由として定められた事由の発生を証する書面,②消却されるべき新株予約権を決定する決議をした取締役会議事録,③新株予約権証券又は新株予約権付社債券を提出すべき旨の公告(新株予約権証券を発行していない場合には,新株予約権者に対する通知)をしたことを証する書面を添付しなければならない。
4 新株予約権の行使期間の満了による変更の登記
ア 新株予約権又は新株予約権付社債の発行の決議において,新株予約権の行使期間を定めることができ,新株予約権は,当該行使期間の満了により消滅する。
イ 新株予約権の行使期間が満了したときは,満了の日から,本店所在地においては2週間以内に,支店所在地においては3週間以内に,新株予約権の行使期間の満了による変更の登記をしなければならない。
ウ 登記すべき事項は,新株予約権の行使期間が満了した旨及びその年月日である。
エ 新株予約権又は新株予約権付社債に付された新株予約権の行使期間の満了による変更の登記の申請書には,代理人によって申請する場合のその権限を証する書面を除き,書面の添付を要しない。
5 株式交換又は株式移転による新株予約権の登記
ア 株式交換及び株式移転の場合においては,当事会社間において債権債務の承継を生じないが,完全子会社となる会社が発行した新株予約権に係る義務については,新株予約権付社債に付されたものである場合を除き,一定の要件と手続の下で,完全親会社となる会社が承継することができる。
イ 完全親会社となる会社が株式交換によって新株予約権に係る義務を承継したときは,当該会社は,株式交換の日から,本店所在地においては2週間以内に,支店所在地においては3週間以内に,新株予約権の登記をしなければならない。完全親会社となる会社がする株式交換による新株予約権の登記(本店所在地においてするものに限る。)は,①完全親会社となる会社が当該株式交換による変更の登記をもすべき場合には,本店所在地においてする当該登記,②当該株式交換により完全子会社となる会社が本店所在地においてする当該株式交換による新株予約権の登記の変更の登記と同時に申請しなければならない。
ウ 株式移転により設立する完全親会社が新株予約権に係る義務を承継したときは,当該会社は,株式移転による設立の登記と同時に,新株予約権の登記をしなければならない。
エ 登記の事由は,「株式交換」又は「何年何月何日株式移転の手続終了」である。
オ 本店所在地においては,株式交換により完全親会社となる会社が株式交換による変更の登記をする必要がない場合には,①株式交換契約書,②完全子会社の株主総会議事録,③完全子会社の登記簿謄本(当該登記所の管轄区域内に完全子会社の本店又は支店がある場合を除く。),④簡易株式交換に反対の意思を通知した株主が有する議決権の総数及び総株主の議決権の数を証する書面,⑤商法第359条1項の規定による公告をしたことを証する書面並びに⑥株式交換契約書を承認した完全親会社となる会社の株主総会議事録(商登法第79条第1項)を添付する。
なお,本店所在地における株式交換又は株式移転により完全子会社となる会社がする当該株式交換又は当該株式移転による新株予約権の登記の変更の登記の申請書には,代理人によって申請する場合のその権限を証する書面を除き,書面の添付を要しない。
(平14.3.29、民商第724号民事局長通達)

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立