お墓を誰が継ぐのか、まとまりません。この場合、相続人の共有にすることはできますか
 お墓は、祭祀財産として相続財産から外され、特定の者が承継することになっています。承継の順位は民法第897条で決められており、第一順位に被相続人の指定した人、指定がなければ習慣に従って決め、習慣が明らかでないときは、家庭裁判所が決めることになっています。

 一般に祭祀の承継者は一人に限られるべきであるが、事情によって共同承継を認めている事例もあります。

 祭祀財産の承継者の指定申立事件において、被相続人と当事者の生活関係、祭具の管理状況、当事者の対立状況等によれば、祭祀財産の承継者を各別に指定することもやむを得ないとして、祭具の承継者を申立人とし、墳墓の承継者を相手方と定めた(奈良家審平成13年6月14日家月53巻12号82頁)。

 祭祀承継者は一人であるべきところ、被相続人との特別な事情を考慮して、祭祀用財産の一部を被相続人の前妻の子に、一部を後妻に指定する審判がなされた場合、後妻を指定したことは、結婚以来40年以上にわたり、被相続人と生活をともにして支えていたことや被相続人が後妻名義とした土地に被相続人とともに27年間にわたり居住し、仏壇仏具位牌は後妻名義の被相続人の自宅に置かれていること等の当人と被相続人との関係、当人の祭祀主宰の意思や能力あるいは関係者の意向等の諸事情に照らし、相続人の中で被相続人と共同生活を最も親密に送った者として承継者に相応しいと考えられることから相当であり、被相続人の前妻の子と後妻とを指定する審判は是認される(東京高決平成6年8月19日判時1584号112頁)。

 墓地の所有形態が甲、乙の共有であつて、両家の祖先が埋葬され、「甲、乙両家の墓」として代々祭祀が行われ、管理されてきたこと等の特別の事情がある場合には、祭祀財産を共同して承継するものとして承継者を共同指定することも差し支えない(仙台家審昭和54年12月25日家月32巻8号98頁)。

 一般的には系譜、祭具および墳墓の承継者は一人に限られるが、特別の事情があるときは、これらを分けて指定しても差支えない(東京家審昭和42年10月12日家月20巻6号55頁)。

 したがって、特別な事情があれば、相続人が共同で祭祀を承継することが認められる場合があると思われます。

(文責 川端満秋)

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立