亡父が、亡くなる20年前に弟に結婚資金として500万円を贈与しています。この500万円は、遺留分を算定する際に考慮できますか?
 相続人に対する贈与の場合、贈与財産に含まれる価額は、相続開始前10年間の婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与とされました(改正民法1044条2項)。かつての判例では、相続人が過去に受けた特別受益はすべて遺留分算定のための財産の価額に含むとされていましたが(最判平10・3・24判例時報1638号82頁)、改正法により10年間の制限が設けられました。

 したがって、すでに贈与から20年間が経過している今般の贈与は、原則として遺留分算定のための財産の価額に含まれないことになります。もっとも、相続人に対する贈与の場合も、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与は、1年間に限定されません。

 また、特別受益に該当しないような贈与の場合は、相続開始前1年間の贈与であっても遺留分算定のための財産の価額に含まれないことになりますが、この場合も当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与は、10年間に限定されず遺留分算定のための財産の価額に含まれる点にご注意ください。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立