1名の退任取締役の後任として複数の補欠取締役を選任することができますか

 一口に補欠取締役と言っても、会社法329条2項に規定する補欠取締役の制度と、任期途中で死亡などの理由で退任した取締役の補充として後任の取締役を選任する場合の補欠取締役とがあります。このうち、会社法329条2項に規定する補欠取締役は、予め補欠取締役を選任する制度であり、事例としては多くありません。実務的には後者の補欠取締役を指すことが圧倒的に多いと思われます。
 ちなみに、会社法329条2項の規定は次のとおりです。
(選任)
第329条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第371条第4項及び第394条第3項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
 2 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。

 ところで、A取締役が辞任等の理由により退任し、B及びCの2名が補欠取締役として選任された場合、両名とも「補欠」でよいのか、という問題があります。これに対して明確な先例はありませんが、補欠であるかどうかは選任機関に意思により決定しますので、1名の役員の補欠として2名を選任するという総会の意思であれば、両名とも補欠という扱いで構わないと思われます。野球やサッカーの補欠とはちょっと異なるようですね。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立