法制審議会 民法・不動産登記法部会 第23回会議議事録

  引き続き,部会資料53についてお諮りを致します。「第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の更新を図るための仕組み」及び「第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み」,この二つの柱でございますから,部会資料で申しますと,補足説明まで含めますと15ページまでの範囲でございますけれども,この範囲につきまして御意見を承ります。いかがでしょうか。
○今川委員 第2の1の氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付けについてですが,登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の住所等の変更情報を取得して不動産登記に反映させるための仕組みを設ける,その前提としてこの義務化が必要だというのであれば,その限りにおいて,①の規律には賛成であります。ただ,基本的に②の過料については,やはり消極意見が多いです。登記名義人の負担が大きくなる可能性があるということと,これは相続登記についてもいえるのですけれども,登記官が正当な理由がない場合というのを判断する場面がどのような場面なのか,その実効性に疑問であるということと,登記官が職権で登記をするという制度を認めていくということと過料との関係がうまく整理できないというのが理由であります。
  幾つか質問があるのですが,住所について,区制が施行されたとか住居表示が実施されたといった当事者の行為に基づかないものは,もちろん義務化の対象外ということでよろしいですねということと,住所を間違っていたという場合もあるのですが,その更正登記をすることについて,これは対象内でしょうか,対象外でしょうかというのが質問です。
  それから,これも非常に細かいお話になるのですが,数回の住所変更があった場合の起算点はいつになるのかと,それぞれの変更の日から起算されるのであろうとは思いますが,そこも一応確認をさせてください。
  それと,職権でもできるということは,当事者が申請をした場合には非課税なのですねという質問です。
  それと,この本文の規律が施行されたときに既に所有権の登記名義人の住所や氏名について変更がある場合はどのように取り扱うか,相続登記と同じように,これにも義務を課していくのか,施行の際,既に住所,氏名に変更がある,その登記をまだしていないというものについてはどういうふうな扱いをするのかということを教えてください。
  それから,2の登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み,これも賛成であります。これも幾つか質問があるのですが,登記名義人が自然人で,登記官が申出があるときに限って住所変更等を職権で行うという規律になっていますが,これは職権で変更登記をする前に登記名義人に通知をする,その返事がない場合というか,その返事によっては,これは登記官が正当な理由があるかないかということを知る機会になって,この場合には過料の制裁につながる可能性があるのかという点であります。
  それから,この仕組みについて,詳細は法務省令で定められると思いますが,申出がある場合に職権登記をするという規律の仕方について,この申出という文言が,別途申出行為が必要なのかということとか,申出があると職権で登記するというのは,いつでも登記名義人が申出をすれば職権で登記をしてもらえるのかとも読めるので,これは単に異議がない旨の返答とか,そういう意味ですねという質問であります。
  それから,第3の登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得する仕組みも,これは賛成です。要望ですけれども,検索用情報については今後,省令で定まるとなっておりますが,是非外国人の場合はアルファベット表記等も検索情報としていただくようお願いをしたいと思っております。
  それと,高齢者消除は,その情報を入手した場合,死亡の情報ではないので,含めていいのだろうかという意見がやはりありまして,含めるなら,その理由をもう少し示していただきたいという意見がありました。
○山野目部会長 御意見は頂きました。司法書士会の意見をお取りまとめいただきましてありがとうございます。何点かにわたり事務当局に対する質問がありましたから,回答を差し上げます。
○村松幹事 住所の変更の関係は,住居表示の変更とかその辺りは義務の対象外かということかの確認でございますが,対象外だと理解しています。それから,誤ったケースというのは,登記官が間違って登記してしまったという,たまになくはないかもしれません,そういうケースでしょうか。
○今川委員 申請人が間違っていたという。そのまま登記が通って,そのまま登記が存置している状況。
○村松幹事 総じて言って,登記官も見逃しているということだと思いますので,そういったケースについては,義務が掛からないというのか,過料がないというのか,あれですけれども,それは本来,更正の登記で是正されるべきだと思いますので,ここの規律の直接の対象として想定されるものではないだろうと思います。
  それから,数回にわたって住所変更があるようなケース,それぞれのタイミングから義務がスタートするのかということだと思いますけれども,それは観念的にはそのとおりであります。
  あと,申請のケースに関しての課税の在り方というところです。
 改めて,登録免許税の課税の在り方については,この部会では検討がされず,政府全体といいますか,与党も含めて申しますと,政府と与党の税制調査会というものがありますので,具体的な検討はそういった場所で行われます。与党税制調査会の令和3年度税制改正大綱が12月10日に決定されておりますけれども,法務省や与党法務部会からの要望も踏まえて,この所有者不明土地等問題の解消に向けての税の在り方,必要な措置については令和4年度税制改正において検討されるということがしっかり書き込まれたところでございます。令和4年度の税制改正というのは,実際,来年のそれこそ今ぐらいの時期に最終結論が出る,そういうタイミングになるのが通例かと思いますが,不動産登記法の改正案を踏まえて,そこで議論がされるということがスケジュール的にはもう決まっているというところになっておりまして,具体的にはそこでの御議論を待つことになるというところだと思っております。
  その上で,どれぐらいのものとしてこの申出を理解していくのかという辺りが,恐らくその申請のケースも含めて,関連してくるところだと思っておりますけれども,基本的にはここでいう申出というのは,非常に軽いものを想定しているというところであります。主眼としては,御本人の意思を確認して,問題ないですねということの確認ができれば,それでよいと,基本的に必要な内容はそこに尽きてきますので,その部分の確認だけをごく簡単にやらせていただくということで,今までの登記申請よりも,ここも同じですけれども,非常に軽い手続を,できるだけ負担のない手続として想定しております。登記官側の方から,少なくとも積極的にアクションする形にして,その申請を待たなくても大丈夫だという形にはしたいと思っております。
  他方,検索のタイミングというのは,少しタイムラグがもちろんありますので,その間にその変更がしたいということ,これは当然あり得る話だと思いますので,そこについてある種の,本当の意味での確認というよりは,どちらかというと積極的な申出が所有権の登記名義人側からあるということはあり得ると思っておりまして,こういうケースについてもある程度職権的に対応できないかということで,一応そこはそういう検討をしたいと考えてございます。おっしゃるように,細部についてはまたこの省令も含めて,この施行の段階までの間に更に詰めることが可能なものにはなりますけれども,そういったところを考えております。
  あと,少し戻りますが,施行時に既に所有権の登記名義人となっている方についても義務を掛けるのかどうかという部分です。相続登記については,若干の反対意見というお話も出ておりますけれども,賛成の御意見の方が多く,従前のものについても適用するという形になっておりますので,住所変更についても同じではないかという考え方も十分にあろうかと思います。弁護士会からの御意見にありましたように,これが既存分についても同じ2年で行くのか,それともやはり少し延ばしておくのかという部分はあるかもしれませんけれども,同じように義務を掛けておくという選択肢もあるのではないかと考えておりまして,ここは今回の議論状況を踏まえて,また検討してみたいと思っておりますし,この後,御意見を頂ければ幸いだというところになってございます。
  それから,正当な理由の有無との関係です。ここは相続登記の部分でも出てまいりますけれども,主観的要件あるいは正当な理由の有無,ここらについてしっかりと法務局側で確認する。間違っても,取りあえず裁判所に過料通知しておくので,もし問題があるのだったら裁判所に言ってくださいとか,こういったような運用にはもちろんならないように,丁寧で慎重な手続をここは想定する必要があるというのを申し上げています。その意味で,相続登記についてもそうでございますし,また,この住所変更についても,相続登記と比べると判断要素が少ないように見えるかもしれませんけれども,やはり正当な理由の有無として非常に深刻な部分もあります。自分はDV被害者だと思っているとか,犯罪被害者の要件に当たると思っているとか,そういった方も当然いらっしゃいますので,そこの部分について余り軽々に,例えば,一度通知をしたときにそういうことをおっしゃっていなかったけれども,自分でやるとおっしゃっていましたねと,なのに2年経過してもまだされていませんよということがあるかも分かりませんが,そのときに,当然登記をすることができたはずでしょうといえるかどうかは,確認を経ませんとなりません。そういった被害に遭うなどの状況は時々刻々と動き得ますので,そういったところはもちろん丁寧に確認をしなくてはいけないということを念頭においております。そういった辺りは登記所側でしっかりとした手続を踏んだ上で,裁判所の方に対する過料通知をやらせていただいて,それこそ当事者の皆様にも裁判所にも御迷惑をお掛けするというものにはしないというのが適切ではないかと考えているところです。
○山野目部会長 よろしゅうございますか。
○今川委員 はい,結構です。
○山野目部会長 今川委員から頂いた御質問を契機として,委員,幹事に御案内を差し上げておきます。この部会資料53で扱っている様々な事項の全般を通じて,経過措置をどのようにすべきかということについては網羅的な提案は差し上げておりません。法制審議会における調査審議の慣行といたしまして,一般にここで経過措置についてまで委員,幹事の御議論によって一つの方向をまとめるということは今までされてまいりませんでした。それと同時に,しかし例外が全くなかったものでもなくて,やはり構想されている規律の社会経済における影響とか政策的効果の観点から見て,経過措置が実は非常に重要な意味を持つというような事項につきましては,ここでの審議を頂いてきたという経過もございます。
  部会資料53に掲げている事項でいいますと,相続登記の義務付けは,従来のものについても適用するかどうかが我が国の不動産登記制度の運用,ひいては所有者不明土地問題の解決の在り方に非常に重要な影響をもたらすものですから,注記の仕方で経過措置についての大づかみな構想をお示ししたところであります。それ以外の事項については経過措置の案を示しておりませんけれども,もちろんそれは議論を妨げる趣旨ではありませんで,御疑問に感じていただいたところは,ただいまの今川委員の住所変更の登記の義務付けに係る経過措置の在り様のお尋ねのような仕方で,御遠慮なくお出しいただきたいと望みます。佐久間幹事,どうぞ。
○佐久間幹事 ありがとうございます。第2の1と2の関係について2点,質問がございます。
  一つは,先ほど村松さんがお答えになったのかなと思っておるのですけれども,変更登記の申請が2年以内にされない場合に5万円以下の過料に処するという,この罰則規定が設けられた際に,具体的にどのような発動の仕方になるのかということについてです。2年の期間を設けたというのは,すべからくではないのかもしれませんが,基本的に2の職権による登記もにらみながら,職権による登記をする前提として,住所変更があったので変更しませんかという照会を掛けたところ,申出を断るというようなことを名義人が言ってきた,その結果,2年の期間を経過してしまった。そのようなときに過料の制裁があり得るところ,そこで申出を断ったことについて正当な理由が基本的には問われることになるのだ,それ以外に,例えば職権の登記の促しが全くなかったところ,たまたま,2年経過していましたね,はい,あなたは過料を支払わなければなりません,というようなことは基本的には想定されていないということでよろしいでしょうか,というのが1点目です。
  2点目は,先ほど今川委員がおっしゃった,変更登記の申請をしたときに,登録免許税が掛かるのかという話なのですが,それは今後決まることですというお話が村松さんからあったのですけれども,それも含めて,仮に登記申請を自らしたときの方が不利だということになった場合,職権の登記をしようと思うのですがいかがですかという照会が登記所からあり,それに対して申し出るということを待たず,自分が窓口に行って,実は住所の記録を変更したのですが,変更申請ではなくて職権の登記を申し出たいと言った場合は,これは受け付けてもらえるのか,受け付けてもらえないのか。受け付けないということはあり得ると思うのですけれども,受け付けなかったら,では,職権の登記の照会があるのを待ちますという態度に出られてしまうこともありうるのではないかというような気がします。要領を得ない言い方になっていますけれども,この登記の申請と申出は,一体どういうすみ分けがされるということを考えられているのか,特に,例えば登録免許税が掛かるということになった場合どうなのか,ということを伺いたいと思いました。
○村松幹事 まず1点目ですけれども,恐らく大枠はおっしゃっているとおりだと思っております。法務局側で定期的な検索をした上での照会を行うというのが前提になっておりまして,この照会もされないのに2年が経過して過料に問われるという事態にはもちろんならない。そのような期間として,一応2年を設定してはどうかと考えてございます。なので,申出を,理由があるのかはないのかは客観的にはよく分からない状況かもしれませんけれども,今はしないというお話をされたのだけれども,その後,経過したようなケース,こういったケースについては過料の制裁が具体的に発動し得る状況にはなります。ただ,そうは言いましても,もちろん,正当な理由の有無を確認し,精査する必要があるというのは,先ほど来申し上げているとおりです。
  あと,典型的にこの枠組みの外に出てしまう外国居住の方たちに関しては,直接的に,しかし罰則付きで,しっかりと対応していただきたいということを御説明することにはなりますが,こちらについても正当な理由については同じような枠組みで捉えるのだろうと,過料の制裁の枠組みは同じように運用をするのだろうと思っております。
  それから,職権で行うわけですけれども,申出というものをどのように位置付けるのかというところで,ここは先ほど今川委員からも御指摘があった部分ですけれども,窓口に来て,住所変更が必要なのだけれども,職権でやってもらえないのかという部分が当然あり得るところになってまいりますので,そういった部分については個別の,本当の意味での職権発動の促しに近い部分になってきますけれども,そういった促しの部分に関して,法務局側で対応するということも十分あり得るのではないかとは感じておるところです。
  このあたりは登録免許税の在り方によっても多少説明の仕方が変わり得る部分はあるのかもしれないなとは考えておりますけれども,法務局側での事務の営みとしては,できるだけそういった方向で考えられないかなということでは考えております。ここで申出といっておりますけれども,基本的な考え方としては,必要な書類を全て備えて登録すべき情報もしっかりと自分で記載して住所変更の登記の申請をするという従来のものと比べると,登記所側で必要な情報などは検索を行って把握していくということで,申請のケースと,申出に基づく,しかし,職権性の強い変更登記のケースとでは,その在り方に区別があるということでございます。
○山野目部会長 佐久間幹事,いかがでございましょうか。
○佐久間幹事 結構です。ありがとうございました。
○山野目部会長 ありがとうございます。
  藤野委員,どうぞ。
○藤野委員 ありがとうございます。第2のところは特にそうなのですが,実務的にかなり各会社,関心の高いところですので,何点か質問させていただければと思います。
  まず第2の2の,変更情報を法人登記のシステムから取得して職権で反映していただくということについては,非常に合理的な対応であり,賛成したいと思っておるのですが,少し気になっておりますのは,第2の1のいわゆる過料を伴う義務付けの話と,2の関係でございまして,先ほどもちらっとどなたかから御意見があったかもしれませんが,職権登記が期待できる,というような状況にあることが,第2の1の②の過料に処するかどうかの要件とされている,正当な理由がないのに,というところと関わってくるのかどうか。例えば,商業法人登記システムの方ではきちんと住所変更,名所変更の申請をしていたということによって,別途,その法人が所有権の登記名義人としては名称や住所の変更の登記申請をしていなかったとしても,正当な理由ありということになるのかどうかというところは,教えていただければと思っています。
  もう一つ,会社の法人等番号とリンクしていただくというところは今後の話,といいますか,ここに出てきているのは,これから新たに会社法人番号を登記事項としてリンクできるようにするという話なのかなと思っております。ただ,一方でこれまでの部会資料の中では,既に登記されている不動産等についても会社法人等番号とのひも付けをするというような話も頂いていたかと思うところでございまして,そうなってきたときに,今回,第2の2の職権でやっていただけるというメリットを及ぼそうと思ったときにどうすればいいのかという話がやはり出てくるのかなと。
  以前,第16回の部会だったかと思いますが,御質問させていただいたときは,いわゆる変更登記の申請というよりは,何か違う申出のようなものでやるというような話もちらっと頂いていたかとは思うのですが,今回,部会資料に特に具体的にそのような形では書かれていなかったものですから,ここはどういう形になるのか。今まで登記事項でなかったものが新たに入るということなので,過去のものに全部遡って,では変更登記で登録免許税を負担してやってくださいという話になってくると,これはかなりハレーションが大きいというか,コスト的な負担がかなり大きいということになってしまいますので,できればそのようなことがない形で整理していただけるといいのかなと思うところですので,そこを確認させていただければと思っております。
  以上,2点でございます。
○山野目部会長 ただいまの話も経過措置に関わる側面がございます。事務当局の方で現段階で考えていることをお話しください。
○村松幹事 まず質問の1点目ですけれども,おっしゃるとおり,職権でやるというのを制度的には全般的に一体として仕組んでいるというところでございますので,正当な理由の判断にそこは反映するというのは御指摘のとおりで考えてございます。
  それから,会社法人等番号を変更登記の形で,既に登記が入っている部分については,入れる必要があります。これは,そういう意味では申請などで起こる問題ではありますけれども,ある種,経過措置的な問題ということになりますので,部会長からも御指摘がありましたように,これは経過措置の中で,その変更の登記についてどのような位置付けをするのかということは考える必要があるかなと思っております。職権的な対応をここもするのかどうかというところは検討ポイントだと思っておりますので,そこは今回,特に資料を出しておりませんけれども,経過措置の検討の中で検討してみたいと思います。
○山野目部会長 藤野委員,いかがでしょうか。
○藤野委員 ありがとうございます。今まで登記事項ではないけれども,例えば添付情報などで出していますという話もある中で,そこから拾って職権で登記してくださいというのは余りにもハードルが高すぎるかなと思うのですが,一方で,何を登記と呼ぶかという先ほどの話とも関わってくるのですけれども,そこがすごく登記名義人側に重い手間の掛かるやり方でしかできない,ということになってしまうと,せっかく入れていただいた制度が定着せず,かつ,下手をすると多くの法人が過料のリスクまで負うということになってしまうので,そこのところは慎重な御検討をお願いできればと思っております。
○山野目部会長 御意見ないし御要望を承りました。
  ほかにいかがでしょうか。
○橋本幹事 日弁連としての意見を申し上げたいと思うのですが,ここについても今回も従前と同様の意見が多数でありました。既に大勢が決している感じはあるのですが,ここについても抽象的義務にとどめるべきであって,過料の制裁については反対であるという意見が多数でした。
  2に関しては賛成でありますが,過料の制裁を課するについても,先ほど村松課長がおっしゃっていたように,正当な理由に関してはきちんと通達で明確化するという手当てをきちんとしていただきたいと考えております。
  第3なのですが,ここについても基本的に賛成です。方向性として賛成なのですが,前回の部会資料38のときにも申し上げましたが,連携先の情報システムについては,現時点ではなかなか難しいという補足説明ではありますが,やはり将来的には戸籍副本データシステムとの連携というものについては諦めないで,システム構築を引き続き目指していっていただきたいと考えています。
○山野目部会長 弁護士会の御意見を頂き,ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
  特段,委員,幹事から御発言がなければ,ここの段階で,先ほど岩井幹事から問題提起を頂き,山本幹事がお見えでなかったところから,審議をしばらく留保しておきましょうと御案内していた事項について,御相談をさせていただきます。山本幹事におかれては,お忙しいところお越こしを頂きましてありがとうございます。
  岩井幹事の方からお話がありましたとおり,部会資料53の7ページの補足説明のところにおきましては,相続人申告登記が相続人の申出によってするという仕組みにされておりますところ,その申出を却下する登記官の措置,あるいは,その申出に対して登記官が何も応答をしないといったような対応があった場合について,これらの事態を行政事件訴訟法や行政不服審査請求の手続における抗告訴訟や審査請求の対象として扱うという考え方が示されており,あわせて,相続人申告登記の申出の手続や登記に関し必要な事項を法務省令に委任するということも想定しているところでございますが,これについて岩井幹事から,果たして職権で登記官がするという仕組みになっていることと,審査請求,抗告訴訟の対象となると思考整理をすることとの間に整合性が確保されているかといった点は更に検討してほしいという御要望があり,また,相続人申告登記に係る細目の事項について,申請人の申出に対する措置,具体的には却下の事由等を定めることにわたって,法務省令への委任をするという方向は相当ではなく,法律事項として考えるべきではないかという御示唆を頂いたところであります。
  これについては,御案内いたしましたように,行政事件訴訟法等の解釈運用,理解が関わる部分がございます。山本幹事の御意見を聴いた上で,更に委員,幹事の御意見を広く承ってまいりたいと考えます。恐れ入りますが,山本幹事におかれてお感じになっていることを御紹介いただければ有り難いと望みます。
○山本幹事 今伺ったところですので,それほど考えがまとまっているわけではないのですけれども,資料を拝見いたしますと,行政事件訴訟法及び行政手続法,行政不服審査法上は,申請に対する処分として,申出を申請とし,それに対する却下の処分は申請に対する処分であると整理をすると,ただ,通常の申請の場合に比べると行政側で進める手続の部分が大きいため,不動産登記法上は申出という表現を使い,申出という手続をとると理解いたしましたので,一応そのように説明は付くのではないかと思います。
  確かに法律で定めた方が明確であることは間違いないので,何らかの形で法律上,申請の仕組みにすることについて手掛かりを置いておいた方が明確であるとは思います。ただ,省令に委任をして,法律の解釈で申請の仕組みをとることまで委任しているといえれば,ぎりぎりそれでも大丈夫という感じはいたします。近時の最高裁の判例において,処分性をかなり法律の解釈でもって認めています。具体的に法文を作る段階で少し検討する必要が出てくるのではないかと思いますけれども,ぎりぎり法律の解釈で申請の仕組みをとることが読めれば,それも可能ではないかと思います。
○山野目部会長 山本幹事におかれましては,唐突に御指名を差し上げたにもかかわらず,有益な御教示を頂きまして,ありがとうございます。岩井幹事,山本幹事から問題提起を頂いた事項について,委員,幹事から御意見がありますれば承ります。いかがでしょうか。
  特段なくていらっしゃいますでしょうか。そうしましたならば,岩井幹事及び山本幹事から頂いた意見を踏まえて,御指摘のあった点について事務当局において検討を続けることにいたします。
  あわせて,岩井幹事にお願いとして,裁判所においても行政訴訟の仕組みについて専門的に研究しているセクションの方にお伝えいただきたいことを2点に分けて御案内を差し上げるといたしますと,一つは,今般構想されている相続人申告登記は,それを履践すれば相続登記の義務付けに係る過料の制裁を免れる等の関係から,申請人となる国民の権利義務に重要な影響をもたらすものでございます。したがいまして,その申出があったのに対して登記官がする措置や対応は,そのような意味において国民の権利義務に重要な影響を与える性格を持つと感じられます。そのことを更に御検討いただきたいとお願いします。
  それから,もう1点,併せて参考に御案内いたしますけれども,不動産登記法27条3号のいわゆる表題部所有者の記録は,表題登記の申請があったときに,それを受けて登記官がするときがございますけれども,あわせて同法28条,29条の規定に基づいて,登記官の調査により職権でするということも可能であるというふうな仕組みにされてございます。職権でされる場合であると申請でされる場合であるとを問わず,性質上の区別なく,これについての登記官の処分は,平成9年3月11日の最高裁判所の判例によりますと,抗告訴訟の対象となる処分としての性格を持つと考えられているところでございます。このような隣接場面の従前の判例上の取扱いも参考にしていただき,御案内申し上げましたように事務当局においても検討いたしますけれども,裁判所の御専門の分野においてもなお検討を深めていただき,意見交換を続けていただきたいと望むものでございます。御指摘を頂きまして,どうもありがとうございました。
  第2,第3の部分について,ほかに御意見はなくていらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございますか。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立