故人の預貯金を払い戻すために家庭裁判所に対し仮分割の仮処分を申し立てる方法があると聞きましたが、どのような制度ですか。

 家事事件手続法200条2項に定められている仮分割の仮処分制度です。家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、審判又は調停の申立てをした者又は相手方の申立てにより、遺産の分割の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができます。

 これにより共同相続人間の実質的な公平を確保しつつ、個別的な権利行使の必要性に対応できると思われます。

 しかし、遺産の分割の審判又は調停の申立てがなされていること、「強制執行を保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要がある」ことが必要です。

 したがって、葬儀費用の支払いや一時的な生活費の補填という程度の理由では、仮分割の仮処分が発令される可能性は低いと思われます。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立