個人の預貯金を払い戻すために家庭裁判所に対し仮分割の仮処分ではなく、預貯金の払い戻し請求権を相続人に仮に取得させる仮処分を申し立てる方法があると聞きましたが、どのような制度ですか。

 家事事件手続法200条3項に定められている仮処分制度です。

 家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を、審判又は調停の申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができます。

 このように、この制度を利用するためには、遺産の分割の審判または調停の申立てがあったこと、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を当該申立てをした者または相手方が行使する必要があると認められること、仮処分の申立てがあったことが必要です。

 したがって、家事事件手続法200条2項が定める仮分割の仮処分よりも使いやすくはなっていますが、故人の預金から葬儀費用をすぐに払いたいというのであれば、まずは、法定相続人として金融機関に法定限度内で一部払戻請求をするという方法を検討されてはいかがでしょうか。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立