このたび、司法書士として法務大臣表彰を拝受いたしました。表彰基準は知る由もありませんが、察するところ、業務歴30年以上の単位会会長又は副会長経験者で、現在は役職を退いた者のうち単位会が推薦する者、というあたりかと思います。誠に栄誉なことと嬉しく受け止めていますが、残念ながらまだまだ「ご苦労さん」と言われるつもりはありません。
比較的会務からフリーとなった今だからこそ、「法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与する」(法1条)ためには、司法書士として今後どのように生きるべきか、思案をめぐらせています。折角の機会ですので若い司法書士や会の執行を司る役員さんたちに少しだけ思いを書かせていただきます。
第1 社会の変化に柔軟に対応しない職業は滅びる
脱ハンコ、脱面談、IT化、AI化、格差の拡大、人口減少等急速に変化を続ける社会に対し、常に自らの「変異」を模索し、柔軟な発想で対応していく必要がある。変化できない職業は滅びるのみ。既に「タイピスト」「腹話術師」「 キャバレーのレジスター係」「ミシン販売員」は職業分類から消えている。日司連や本会が決めてくれるだろう、まだ時間がある、司法書士だけは別、などと考えているようでは「司法書士」も職業分類から消えてしまう。
第2 相続バブルで踊ってはいけない
所有者不明土地問題を解消するため相続登記が義務化される。おそらく、どの事務所も相続登記で多忙を極めることになるだろう。しかし、相続登記だけではなく、相続財産や共有物の管理制度等の大幅な法改正により、司法書士が活躍できる場面が多数考えられる。こうしたニッチな局面においても地道な研究と実践をすべきである。また、ここ30年で司法書士の血となり肉となった消費者問題や裁判への取り組みをおろそかにしてはならない。相続登記だけでは「自由かつ公正な社会の形成に寄与する」ことにはならない。
第3 会員を信頼する組織運営を
第1、第2を実践するためには、組織は、会員が伸び伸びと活動する環境を整えることに力を注ぐべきである。現在は逆行している。会員を単位や規則でがんじがらめにすればする程、会員は萎縮し思考停止状態に陥る。もちろん会員の活動活発化は責任を伴う。しかし、そのぐらいのこと、司法書士たる者、自覚している筈だ。
第4 でも、譲れないものがある
第1から第3までの戯言は無責任の誹りを免れないかもしれないが、まったく自由な活動をすべきと言っているわけではない。その根底には絶対に譲れないものがある。それは、司法書士の誇りとでも言うべきなのか、具体的な言葉としてうまく言えないので、「司法書士制度を築き上げてきた多くの先達から預かっている襷」とでも表現しておくこととする。この襷を次世代の司法書士に渡さなければならない、これは絶対に譲れないのである。
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