有限会社から株式会社への移行の登記申請書に添付する株主リストの作成者

投稿者: | 2019年1月10日

有限会社から株式会社への移行の登記申請書に添付する株主リストの作成者

 有限会社から株式会社へ移行するためには、有限会社の株主総会において商号変更にかかる定款変更の決議を行い、これにもとづいて株式会社の設立登記の申請と有限会社の解散登記の申請を同時に行う必要がある。移行前の有限会社と移行後の株式会社は同一人格ではあるが、単に商号変更の登記申請をすればよいのではなく、株式会社の設立登記と有限会社の解散登記を申請することになるのである。これは、新たに株式会社の登記記録を作成し、有限会社の登記記録を閉鎖する必要があるという登記技術的な要請によるものと考えられる。
 その際の株式会社の設立登記申請書には、商号変更を決議した有限会社の株主総会議事録を添付する必要があるため、当該株主総会にかかる株主リストも添付することになる。問題は、当該株主リストの作成者は有限会社なのか株式会社なのか、はたまたどちらでもいいのか、ということである。
 似たような問題として、合併、組織変更にかかる登記申請書に添付する株主リストは次のように取り扱われている。
 ① 吸収合併の場合における吸収合併消滅会社の株主リストは吸収合併存続会社が作成する。
 ② 新設合併の場合における新設合併消滅会社の株主リストは新設合併設立会社が作成する。
 ③ 株式会社が組織変更をする場合における組織変更をする株式会社の株主リストは組織変更後の持分会社の代表者が作成する。
 ④ 吸収分割の場合における吸収分割会社の株主リストは吸収分割会社が作成する。
 このように、登記申請人とは異なる会社の株主総会の株主リストであるにもかかわらず、上記の場合には登記申請人が株主リストの作成者となる必要があるとされているのである。
 登記の真正担保という側面を考えると、株主リストの作成者は当該株主総会を主催した会社であることが望ましいと思われる。にもかかわらず、上記の取り扱いとされているのは、平成28年6月23日に発出された法務省民商第99号「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(依命通知)」に沿った運用をせざるを得ないという事情があるのではないかと思われる。
 すなわち、同通知では、「規則第61条第3項に規定する書面としては,代表取締役の作成に係る同項に規定する事項を証明する書面であって,登記所に提出された印鑑が押印されたものがこれに該当する。」とされているところ、「登記所に提出された印鑑」とは登記申請人の印鑑を指すものと考えられているからである。
 さて、有限会社から株式会社への移行は、上記①~④と異なり、同一法人格が維持されている。しかも、移行は効力要件とされているため、登記申請前には商号変更の効力は生じていない。そのため、登記申請前に株式会社が作成者となって株主リストを作成することは不可能である。一方、移行による設立登記申請は、商号変更の効力が生じていないにもかかわらず株式会社が申請人となることとされている。したがって、株主リストの作成者は登記申請人であるという論理を貫く結果、株主リストは株式会社が作成するということになってしまう。
 この点について、全国的にどのような取り扱いになっているのかは不明であるが、少なくとも私の地元の法務局の取り扱いはそのようになっている。
 もともと、株主リストが添付書類とされたのは登記の真正担保のためだった筈だ。登記の真正担保よりも一遍の通達を尊重しようとするために上記のような取り扱いをしているとしたら本末転倒ではないだろうか。

投稿者プロフィール

古橋 清二
古橋 清二
昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A
浜松西部中、浜松西高、中央大学出身
昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる
平成2年 古橋清二司法書士事務所開設
平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立

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カテゴリー: 会社法務
古橋 清二

古橋 清二 について

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立

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