「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が「市民と法」に掲載されました。

「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が「市民と法」に掲載されました。

 「市民と法」という法律雑誌(民事法研究会)がありますが、このたび、古橋清二の論考「民法918条2項にもとづく相続財産管理人の活用(実践編)」が掲載されました。

 おそらく、今後、民法918条2項にもとづく相続財産管理人を活用する場面が増えると思いますので、興味のある方はご一読ください。

 はしがきだけ掲載しますので、あとは、「市民と法」をご覧ください。

1.本稿の目的

 本誌108号から始まった「遺産承継業務・静岡モデル」の短期集中連載では静岡県司法書士会あかし運営委員会[1]の研究成果を紹介しているが、静岡モデルの根底には、司法書士が行う遺産承継業務は一般受託業務[2]であって、司法書士法施行規則31条(以下、「規則31条」という。)の「他人の財産の管理若しくは処分を行う業務」には該当しないとの考え方が流れている。そして、そのような立場では司法書士は遺産分割に実質的に関わることはできないと考えている。

一方で、相続においては、何らかの事情で相続人の一部または全部が相続に関わろうとせず、またはそれが期待できないために、相続財産が散逸したり、相続人、第三者又は利害関係人の利益が損なわれる事態が生じる場合があるが、このような場合、司法書士が他人の財産の管理若しくは処分を行う業務を行うことが許容される地位に就くことができれば、相続財産の管理処分を適切に行い、又は、円滑に相続人に財産を引き継ぐ役割を担うことが可能となる(規則31条1号)。

前号では、上記のような場面において、民法918条2項の規定にもとづいて選任される相続財産管理人(以下、「918条財産管理人」という。)の活用と権能等について理論面からの考察を行った。

本号では、筆者が918条財産管理人に選任された四つの例について紹介するものであるが、いずれも利害関係人が保管を余儀なくされている相続財産を相続人に引き渡すことを目的として申し立てられたものである。このうち2例は筆者自身が申立書の作成を受任したものであり、内1例は筆者自身が申立人となった事例である。

[1] 静岡県司法書士会では、平成28年7月の法定相続情報証明に関する報道から間もなく、新制度の稼働を契機に相続手続きの初期段階から司法書士が関与することにより「『相続登記の専門家』から『相続の専門家』へ」を合言葉に掲げる研究団体を発足し、これを母体として平成29年度より「あかし運営委員会」が新設されている。「あかし」の由来は、法定相続情報証明の「証」より。なお、同委員会の活動記録はウェブサイト(http://akashi.wp-x.jp/)を参照されたい。

[2] 「一般受託業務」とは、附帯業務のうち司法書士法施行規則31条で規定されていない業務という趣旨である。詳しくは、拙稿本誌108号「遺産承継業務は規則31条業務なのか~とりわけ遺産分割への関わり方に対する問題提起~」参照

投稿者プロフィール

古橋 清二
古橋 清二
昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A
浜松西部中、浜松西高、中央大学出身
昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる
平成2年 古橋清二司法書士事務所開設
平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます

  • 法定相続分を超える債権相続の対抗問題法定相続分を超える債権相続の対抗問題 【法定相続分を超える債権相続の対抗問題】 父Aが死亡し、相続人は子供の私Xと弟Yの2名です。遺産分割協議の結果、Aの遺産のうち、AのGに対する1000万円の貸金債権は私が相続することになりました。そこで、私はGに対し1000万円の返還請求をしましたが、Gは全額私が相続したのかどうかわからないと言って500万円しか返還してくれません。 私が残り500万円を請求するためにはど […]
  • 金銭以外の特別寄与料請求の可否金銭以外の特別寄与料請求の可否 【金銭以外の特別寄与料請求の可否】 特別寄与料として、相続財産である不動産の給付を請求することはできますか。 回答 できません。特別寄与料の請求は、特別寄与者の寄与に応じた額についての金銭の支払請求のみが認められています。 […]
  • 可分債権を遺産分割の対象とすることの可否可分債権を遺産分割の対象とすることの可否 【可分債権を遺産分割の対象とすることの可否】 貸金債権のような可分債権の相続においては、当該債権が遺産分割の対象となるかどうかが問題となります。判例では、被相続人が相続開始時に有していた貸金債権は、相続開始とともに当然分割されて各相続人に法定相続分に応じて帰属することになるため、遺産分割の対象とならないとされています(最判昭29.4.8)。  しかしながら、裁判所の実務で […]
  • これから羽ばたこうとしている君へこれから羽ばたこうとしている君へ これから羽ばたこうとしている君へ  少し遠回りをしたかもしれないが、ようやく君も法曹として一歩を踏み出そうとしている。後で考えれば、その遠回りも必ずや、人生にとって必要なことだったに違いない。  ともあれ、社会人一年生として、謙虚に、そして、一途にやっていきなさい。迷ったときは、何故その道を選んだのか振り返ってみなさい。  就職祝いをあれこれ考えたが、結局、雑巾とメモ帳 […]
  • 【動画】不動産登記は早い者勝ち! オンラインの障害の責任は誰が負う?【動画】不動産登記は早い者勝ち! オンラインの障害の責任は誰が負う? 【動画】不動産登記は早い者勝ち! オンラインの障害の責任は誰が負う? https://youtu.be/AGD0eA0ZWYc
  • 2021民法・不動産登記法改正を研究する 第1回 法制審議会第1回議事録を読んでみる2021民法・不動産登記法改正を研究する 第1回 法制審議会第1回議事録を読んでみる  令和3年2月2日、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」が閣議決定されました。そこで、それまでの法制審議会の議論、同審議会に提出された資料等を順次検討していきたいと思います。  また、同審議会の議事内容、同審議会に提出された資料等を整理し、本ページ作成者の独断で、色つけ、アンダーライン、注記等の処理をした下記のページを更新中です。まだまだ十分に […]
  • 借金問題は命の問題だ (浜松支部事例検討会)借金問題は命の問題だ (浜松支部事例検討会)  静岡県司法書士会浜松支部は、法テラスカード普及活動のひとつとして、福祉等との連携を模索する事例検討会を開催している。本日は、その4回目、テーマは借金問題!  講師兼進行役を任された私は、実際にあった事例を交えて借金問題の悲惨さ、そこに潜む本質的な問題を語り、また、法的解決方法を説明しながらいくつかの設問を出し、グルーブディスカッションをしてもらった。  後半では、末尾記 […]
  • 自筆証書遺言の誤記を訂正したいのですが、簡易な方法で訂正するにはどうすればいいですか自筆証書遺言の誤記を訂正したいのですが、簡易な方法で訂正するにはどうすればいいですか 自筆証書遺言の誤記を訂正したいのですが、簡易な方法で訂正するにはどうすればいいですか  自筆証書遺言中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更 […]
  • 2021民法・不動産登記法改正を研究する 第10回 改正民法 ~相続の放棄をした者による管理~2021民法・不動産登記法改正を研究する 第10回 改正民法 ~相続の放棄をした者による管理~ https://youtu.be/QACUpdXooLg
  • 破産によって解散した会社の抵当権抹消破産によって解散した会社の抵当権抹消 破産によって解散した会社の抵当権抹消 https://youtu.be/0hcpli7JtlU
  • 考えてみれば、被告が50人もいたら訴状の送達に問題が生じるのは必然だった考えてみれば、被告が50人もいたら訴状の送達に問題が生じるのは必然だった  このところ、毎年のように、原告の代理人になり、10人から50人ぐらいの相手方を被告として訴訟を提起することがある。内容は、時効取得による所有権移転登記手続を求めたり、妨害排除請求としての抵当権抹消登記手続を求めるなどの登記手続を求める訴訟である。  例えば、時効取得による所有権移転登記手続を求める場合、相手方は占有開始時の所有者であるが、その方に相続が発生しており、また、 […]
  • 【動画】破産手続の諸問題 受任通知が到達した後にその銀行に給料が振り込まれた場合の対応は?【動画】破産手続の諸問題 受任通知が到達した後にその銀行に給料が振り込まれた場合の対応は? 【動画】破産手続の諸問題 受任通知が到達した後にその銀行に給料が振り込まれた場合の対応は? https://youtu.be/qD3gT1liWHI
  • 相続分の指定と所有権の対抗問題相続分の指定と所有権の対抗問題 【相続分の指定と所有権の対抗問題】  父Aが死亡し、相続人は子供の私Xと弟Yの2名です。Aは、「Xの相続分を3分の2、Yの相続分を3分の1とする」との遺言を残していました。この遺言をもとにXは甲土地全てを含む遺産の3分の2を、Yが預貯金から残りの3分の1を相続することになりました。甲土地について、まだAからXへの所有権移転登記はしていませんでした。  ところが、Yには借金 […]
  • 仮換地の従前地に登記する賃借権登記の借賃の記載方法仮換地の従前地に登記する賃借権登記の借賃の記載方法 仮換地の従前地に登記する賃借権登記の借賃の記載方法  賃借権登記の登記事項である借賃は、土地毎に登記するものとされている。例えば、A、B、Cという3筆の土地を月額10万円の借賃で借りるとしても、登記は、A、B、Cそれぞれの土地毎に賃料を登記しなければならない。もちろん、A、B、Cはそれぞれ面積が異なるし、方角や道路との位置関係も全く異なる。賃貸借契約の当事者は、あくまでも全 […]
  • 【動画】改正相続法を具体的事例で検討してみよう【動画】改正相続法を具体的事例で検討してみよう 【動画】静岡県司法書士会研修会 「改正相続法を具体的事例で検討してみよう」  7月27日、台風で開催が危ぶまれましたが、予定どおり、静岡県司法書士会第1回会員研修会「さらにパワーアップ 相続実務必携 「相続登記の専門家」から「相続の専門家」になる」が開催されました。  参加申込みは、なんと252名! 昨年開催された研修会の最高が約140名とのこと。とんでもない記録的な参加 […]
  • 訴訟代理人は依頼者にストーリーを語らせよ  ― 訴訟代理人の極意 ―訴訟代理人は依頼者にストーリーを語らせよ  ― 訴訟代理人の極意 ― 訴訟代理人は依頼者にストーリーを語らせよ   ― 訴訟代理人の極意 ― (本稿は、「月報司法書士」2016年9月号に寄稿したものです。内容は、一部事案を変更し、または複数の事案を組み合わせています)   1.心地よい疲れ […]
  • 2021民法・不動産登記法改正を研究する 第14回 改正民法 共有制度の見直し ~共有物の変更・管理の内容に関する新しい非訟手続し~2021民法・不動産登記法改正を研究する 第14回 改正民法 共有制度の見直し ~共有物の変更・管理の内容に関する新しい非訟手続し~ https://youtu.be/yBZtT-0ID9g
  • 平成30年度考査の結果発表平成30年度考査の結果発表  昨日、平成30年度簡裁訴訟代理等能力認定考査の認定者の発表があった。この考査で認定された司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる。当事務所でも神谷司法書士が受験し、問題なく認定された。  認定の合格率は43.1パーセントということであるが、私が受験した平成15年(第1回考査)は、確か70パーセント前後であったことを考えると、随分合格率が低下したものだ。最近では […]
  • 2021民法・不動産登記法改正を研究する 第16回 改正民法 共有制度の見直し ~共有物分割訴訟の規律の見直し~2021民法・不動産登記法改正を研究する 第16回 改正民法 共有制度の見直し ~共有物分割訴訟の規律の見直し~ https://youtu.be/AXch2PaYSW4
  • 相続放棄と固有の財産の関係相続放棄と固有の財産の関係 相続放棄についての少し真面目な話(1)制度の趣旨 相続人は、相続開始の時から被相続人に属した財産上の一切の権利義務を当然に承継する(民896)。しかし、その一方で、相続人につき、単純承認、限定承認、放棄のいずれをも自由に選択することを認めている。これは、債務を強制的に相続人に承継されることは個人主義的財産観念に反するからであると言われている。 (2)相続財産と相続人固有の […]

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)