1 定時総会の決議による株式の消却
(1) 株式を消却する方法
改正法施行前においては、株式を消却することができるのは、資本減少の手続に従つて行う場合のほかは、定款の規定に基づき配当可能利益をもつて行う場合に限られていた(商法第212条第1項)が、改正法施行後は、定款に株式の利益消却に関する規定がない場合であつても、定時総会の決議により、配当可能利益の範囲内で自己株式を取得して消却することができることとされた(商法第212条ノ2第1項)。
(2) 定時総会の決議による株式の消却の手続(省略)
(3) 定時総会の決議による株式の消却による変更の登記
ア 登記すべき事項
定時総会の決議による株式の消却による変更の登記において登記すべき事項は、「発行済株式の総数」、「発行する株式の総数」並びに数種の株式を発行している場合には「発行済各種の株式の数」及び「発行する各種の株式の数」につき変更を生じた旨並びにその年月日である。
この場合の変更の年月日は、株式失効の手続を行つた日である。
定時総会において消却を目的として自己株式を取得することが決議された場合においては、決議された株式の総数及び取得価額の総額の範囲内で、当該決議後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時まで適宜自己株式を取得することができ、取得した自己株式は遅滞なく消却されることになるので、定時総会の決議による株式の消却による変更の登記は、取得した自己株式を消却した都度申請すべきこととなる。
イ 添付書面
定時総会の決議による株式の消却による変更の登記の申請書に添付すべき書面は、①定時総会の議事録及び②取締役会議事録(商業登記法第79条第1項)並びに③代理人により申請する場合にはその権限を証する書面である。
ウ 記載例
定時総会の決議による株式の消却による変更の登記の記載例は、定款の規定に基づく利益による株式の消却による変更の登記の記載例と同様である。
エ その他
定時総会の決議による株式の消却は、株式を取得する都度行われる(上記ア参照)ところ、発行済株式の総数の変更の原因は、登記簿上、必ずしも明らかではないので、資本の減少を伴わない発行済株式の総数の減少の登記が既にされている会社について、定時総会の決議による株式の消却による変更の登記が申請されたときは、当該申請により減少する発行済株式数が定時総会により消却のため買い受けることができる旨決議された株式の総数の範囲内であることを確認することができない場合もあり得るが、登記申請書及びその添付書面から、当該株式の消却が定時総会又は取締役会において決議された株式の総数を超えて行われたことが明らかである場合を除き、受理して差し支えない。
2 配当可能利益の計算に関する改正
配当可能利益については、改正法施行前においては、貸借対照表上の純資産額から改正前の商法第290条第1項各号の金額を控除して計算すべきこととされていたが、改正法施行後においては、使用人に譲渡するために取得して保有している自己株式等について貸借対照表の資産の部に計上した金額の合計額をも控除すべきこととされた(商法第290条第1項第5号)。
なお、商法第290条第1項第5号に定める合計額は、貸借対照表に注記されることとされたので(平成6年法務省令第46号による改正後の株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則第36条)、商業登記法第86条の利益の存在を証する書面は、従来どおり、貸借対照表(株主総会の議事録添付のものの援用可)で差し支えない。
(平6.9.20、民四第5,868号民事局第四課長通知)

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立