6 破産手続終了後の問題

破産手続が終了した後に残余財産がある場合、個人の破産者の場合には財産の管理処分権限が回復するため、破産者が権限を行使することになる。

一方、会社が破産手続開始の決定を受けた後破産終結決定がされた場合は、会社の法人格は消滅するとされているが(法35)、残余財産が残っている場合には法人格は消滅しない。そのため、破産手続開始の決定を受けて清算の目的の範囲内で存続している法人としてそのまま存続することになる。

なお、破産管財人が別除権の目的物を破産財団から放棄する場合のように、破産財団の組成物を破産財団から放棄する場合も上記と同様の状況が生じることとなる。そこで、定款に清算人の定めがない場合には、株主総会で清算人を選任するか、利害関係人の請求によって裁判所が清算人を選任しなければならない(最判昭和43年3月15日(民集22巻3号625頁))。これについては、破産者が株式会社である場合において、破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき、別除権者が旧取締役に対してした別除権放棄の意思表示は、これを有効とみるべき特段の事情の存しない限り、無効と解するのが相当であり、別除権放棄の意思表示を受領し、その抹消登記手続をすることなどの管理処分行為は、旧商法417条1項但書の規定による清算人又は同条2項の規定によって選任される清算人により行われるべきものであるとした事例(最高裁平成16年10月1日決定(裁時1373号1頁、判時1877号70頁、判タ1168号130頁)がある。

しかしながら、このような場合に株主総会を開催して清算人が選任されることは期待できないので、実務的には会社法478条2項にもとづき、利害関係人の申立てにより裁判所が清算人を選任しているのが実状である。なお、破産手続の終了と近接した時点で清算人を選任する場合には、破産管財人であった者を清算人に選任する扱いが多く見られる。

 法人について破産手続終結決定がされた場合は、破産した法人に対する債権は消滅すると解されているが、当該債権を被担保債権として第三者が根抵当権を設定していたケースについて、債権が消滅したとしても根抵当権の効力には影響を及ぼさないとした事例がある。その場合、独立して存続することになった根抵当権については、被担保債権ないしその消滅時効を観念する余地はないから民法167条2項の原則に従い20年の時効によって消滅すると解するのが相当であるとしている(東京高判平成11年3月17日(金法1547号46頁、金商1064号3頁))。

このほか、存在しない債務については時効による消滅を観念することができないという趣旨で、「会社が破産宣告を受けた後破産終結決定がされて会社の法人格が消滅した場合には,これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべきであり,この場合,もはや存在しない債務について時効による消滅を観念する余地はない。この理は,同債務について保証人のある場合においても変わらない。したがって,破産終結決定がされて消滅した会社を主債務者とする保証人は,主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張して時効の援用をすることはできないものと解するのが相当である」と判示した最判平成15年3月14日(民集57巻3号286頁、裁時1336号4頁、判時1821号31頁、判タ1120号100頁等)がある。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立