8 債権譲渡担保契約

債権譲渡担保契約は、債権者の債務者に対する債権の担保のために、債務者の第三債務者に対する債権を債権者に移転するという形式をとる譲渡担保である。債権譲渡担保を第三債務者に対抗するためには、譲渡人である債務者が第三債務者に債権譲渡した旨を通知し、又は第三債務者が承諾をする方法(民467Ⅰ。以下、「通知型」という。)、債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに登記をする方法(債権譲渡4Ⅰ。以下、「登記型」という。)がされたときは,第三債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は第三債務者が承諾をする方法がある(同条4Ⅱ)。

通知型の場合、債権譲渡担保契約の締結と同時に通知を行うと債務者の信用不安を生じかねないので、実務的には、債務者の手形不渡等の信用悪化を停止条件として債権譲渡の効力を生じさせ、第三債務者に対する通知を行うという方式が多く用いられている。

一方、登記型の場合には、債権譲渡担保契約締結と同時に債権譲渡登記を行うことにより第三者対抗要件を具備したうえで、債務者の信用悪化が生じるまでは従前どおり債務者に第三債務者から債権を回収させるため通知型のような信用不安は生じにくいという特徴がある。

なお、現在及び将来の債権を包括的に譲渡する集合債権譲渡担保についても、譲渡対象となる債権が他の債権から識別できる程度に特定されている限り有効とされているが(最判平成11年1月29日(民集53巻1号151頁))、これは、通知型、登記型双方に適用があると考えられる。

 債権譲渡契約の否認についてはこれまで多くの裁判例が出されているが、最判平成16年7月16日(民集58巻5号1744頁、裁時1368号1頁、判時1827号64頁、判タ1167号102頁)で一定の整理がされていると考えられる。

判例は、「債務者の支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約は,その契約締結行為自体は危機時期前に行われるものであるが,契約当事者は,その契約に基づく債権譲渡の効力の発生を債務者の支払停止等の危機時期の到来にかからしめ,これを停止条件とすることにより,危機時期に至るまで債務者の責任財産に属していた債権を債務者の危機時期が到来するや直ちに当該債権者に帰属させることによって,これを責任財産から逸出させることをあらかじめ意図し,これを目的として,当該契約を締結しているものである。

 上記契約の内容,その目的等にかんがみると,上記契約は,破産法72条2号の規定の趣旨に反し,その実効性を失わせるものであって,その契約内容を実質的にみれば,上記契約に係る債権譲渡は,債務者に支払停止等の危機時期が到来した後に行われた債権譲渡と同視すべきものであり,上記規定に基づく否認権行使の対象となると解するのが相当である」としている。

 このように、通知型で停止条件付債権譲渡契約は遍頗行為否認の対象となることが明らかとされた。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立