3 偏頗行為
① 義務にもとづく担保供与、債務消滅行為(法162Ⅰ①)
既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為で、破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る(悪意の立証責任は破産管財人にある)。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。
これらは、債務者に支払停止等があった時以降の時期を債務者の財産的な危機時期とし、危機時期の到来後に行われた債務者による担保の供与等の行為をすべて否認の対象とすることにより、債権者間の平等及び破産財団の充実を図ろうとするものである。
② 義務なき担保供与、債務消滅行為(法162Ⅰ②)
破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前30日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。債権者に悪意が推定され、債権者に善意の立証責任がある。
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より