(3)破産手続開始の公告等
裁判所は、破産手続開始の決定をしたときは、直ちに、次に掲げる事項を公告しなければならない(法32Ⅰ)。
① 破産手続開始の決定の主文
② 破産管財人の氏名又は名称
③ 法31条1項の規定により定めた期間又は期日
④ 破産財団に属する財産の所持者及び破産者に対して債務を負担する者は、破産者にその財産を交付し、又は弁済をしてはならない旨
⑤ 簡易配当(法204Ⅰ②)をすることが相当と認められる場合にあっては、簡易配当をすることにつき異議のある破産債権者は裁判所に対し破産債権の調査をするための期間の満了時又は期日の終了時までに異議を述べるべき旨
法31条5項の決定があったときは、破産債権者に対する通知をせず、かつ、届出をした破産債権者を債権者集会の期日に呼び出さない旨をも公告しなければならない(法32Ⅱ)。
また、裁判所は、破産管財人、破産者及び知れている破産債権者、知れている財産所持者等、保全管理人、労働組合等に対し、破産手続開始の決定の公告すべき事項を原則として通知しなければならない(法32Ⅲ、Ⅳ)。
一方、破産債権者が通知又は期日の呼出しを受けるべき場所を届け出たときは、破産手続及び免責手続において当該破産債権者に対して書面を送付する方法によってする通知又は期日の呼出しは、当該届出に係る場所においてすることとなり(規則8Ⅰ)、また、民事訴訟法104条1項の規定により送達を受けるべき場所を届け出たときは、当該破産債権者に対する前項に規定する通知等は、当該届出に係る場所においてすることとなる(規則8Ⅱ)。
これらの点について、債権者一覧表に債権者として記載されていたにもかかわらず、破産裁判所の担当書記官が破産宣告の通知を送達しなかったため、債権届をする機会を失い配当を受けられなかったと主張して国賠法1条1項に基づき損害賠償等を請求した事案がある(大阪高判平成18年7月5日(判時1956号84頁)。
判決では、送達と公告を併用する場合の送達の効力を定めた旧法118条2項の趣旨は、多数の手続関係者が関与する破産手続の安定を図るために、一部の関係者に対する送達の欠缺を理由に手続的効果を覆滅させることが相当ではないことから、一般的な告知方法である公告があった場合に一律に送達の効力が生ずるとしたものであって、重要な事項について、各関係者に個別に告知するという送達を省略することまでを認めた規定ではないと解されるとし、旧法143条2項の規定は、破産裁判所書記官が、個別の知れたる債権者に対し、手続的利益を確保させるために手続の開始及び重要な期日等を告知するための規定であり、職務上の義務を課したものと解するのが相当であり、本件不作為は国賠法上の違法であると判示した。
そのため、破産手続開始決定後、新たな債権者がいることが判明した場合は、申立(代理)人から当該債権者に対し、①事件番号、破産者の氏名,住所・生年月日、②破産手続開始及び同時廃止決定があったこと及び決定日、③免責意見申述期間及び意見書提出先、④免責審尋期日及び場所を記載した書面を送付し、かつ、裁判所に対しその送付をした旨の上申書を提出し、裁判所宛ての上申書には、新たな債権者がいることが判明したことに加えて、上記の送付をした旨を記載する必要があるとされている(管財手引 81頁)。
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より