ⅩⅠ 他の手続の中止命令、包括的禁止命令、債務者の財産に関する保全処分

裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続の中止を命ずることができる(他の手続の中止命令。法24Ⅰ)。

①  債務者の財産に対して既にされている強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特権の実行若しくは留置権(商法又は会社法の規定によるものを除く。)による競売の手続で、債務者につき破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権若しくは財団債権となるべきものに基づくもの又は破産債権等を被担保債権とするもの 。ただし、それらの手続の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限る。

②  債務者の財産に対して既にされている企業担保権の実行手続で、破産債権等に基づくもの

③  債務者の財産関係の訴訟手続

④  債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続

⑤  船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第三章 又は船舶油濁損害賠償保障法第5章の規定による債務者の責任制限手続。ただし、責任制限手続開始の決定がされていない場合に限る。

⑥ 債務者の財産に対して既にされている共助対象外国租税の請求権に基づき国税滞納処分の例によってする処分で、破産債権等に基づくもの(同項6号)

 また、裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、法24条1項1号の規定による中止の命令によっては破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、すべての債権者に対し、債務者の財産に対する強制執行等及び国税滞納処分(国税滞納処分の例による処分を含み、交付要求を除く。以下同じ。)の禁止を命ずることができる(包括的禁止命令)。ただし、事前に又は同時に、債務者の主要な財産に関し法28条1項の規定による保全処分をした場合又は法91条2項に規定する保全管理命令をした場合に限る(法25Ⅰ)。

 このほか、裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、その財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる(債務者の財産に関する保全処分。法28Ⅰ)。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立