Ⅹ 費用の予納
破産手続開始の申立てをするときは、申立人は、破産手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない(法22Ⅰ)。
申立人が予納すべき金額の内容は、通常は、公告及び通知の費用、破産管財人の費用、報酬である(条解規則 53頁)。そのため、予納すべき金額は、破産財団となるべき財産及び債務者の負債(債権者の数を含む。)の状況その他の事情を考慮して定められる(規則18Ⅰ)。 また、破産手続開始の決定があるまでの間において、予納した費用が不足するときは、裁判所は、申立人に、更に予納させることができる(規則18Ⅱ)。費用の予納に関する決定に対しては、即時抗告をすることができる(法22Ⅱ)。
管財事件において予納金の分納を認めるか否かも、裁判所により扱いが異なる。東京地裁は、集会の1週間前までに予納金を引き継げばよく、大阪地裁でも免責観察型は分納が認められているが、札幌地裁では予納金の分納は原則として認めていない(150問13頁)。また、管財事件の予納金が準備できていない場合に、新得財産で予納金を積み立てる取扱いもあるようである(法律相談26頁)。
裁判所は、申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは、破産手続の費用を仮に国庫から支弁することができ(法23Ⅰ前段)、その場合には、申立人は、破産手続の費用を予納することを要しない(法23Ⅱ)。職権で破産手続開始の決定をした場合も同様である(法23Ⅰ後段)。
いかなる場合に国庫支弁できるかについては広島高決平成14年9月11日(金融・商事判例1162号23頁)が示している。すなわち、民事訴訟を初めとする、他の取引法、企業法関係の司法手続費用は、利用者負担を原則とし、自己破産の申立ての場合も、仮支弁した費用を回収する見込みがなければ、原則として仮支弁を行うことはできない。ただ、個人消費者の自己破産申立ての場合であって費用を負担させることが酷であるとか、公益上の要請が特に強いなどの例外的な場合に限り、仮支弁することができるにとどまると解するべきである、ということである。
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より