Ⅸ 破産手続開始申立書の審査・補正命令・却下等

破産手続開始の申立書に法定の記載事項が記載されていない場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命ずる処分をしなければならず、この処分は、これを記載した書面を作成し、その書面に処分をした裁判所書記官が記名押印してしなければならない。そして、この処分は、相当と認める方法で告知することによって効力を生ずる。民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い破産手続開始の申立ての手数料を納付しない場合も、同様である(法21Ⅰ、Ⅱ)。  

 この補正命令に対し、破産手続開始の申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、破産手続開始の申立書を却下しなければならず(法21Ⅵ)、一方、この却下については即時抗告をすることができる(法21Ⅶ)。

なお、裁判所は、相当と認めるときは、破産手続開始の原因となる事実又は法30条1項各号に掲げる事由に係る事実の調査を裁判所書記官に命じて行わせることができるとされている(規則17)。

破産申立を却下した事例として、次のようなものがある。

① 自己破産申立後、申立人が所在不明になったことを理由に、申立自体を不適法として却下した事例(仙台地決昭和59年9月3日(判タ537号247頁))

② 2度にわたって裁判所に提出した書面(破産申立ての関係書類及び同時廃止に関する上申書)において、退職金で購入したフィリピン所在の不動産を全く説明せず、退職金の使途についても審問時の供述とは重要部分で異なる説明をしていたばかりか、審問によって実情を把握し裁判所が前記財産の実質価値等につき釈明を命じたにもかかわらず、期限経過後も何ら釈明をしない。また、債務者が主張する負債及びその発生原因のうち、債務者の現妻による浪費分が約400万円にも及ぶとされているため、その経緯等についても釈明を命じたが、債務者は前同様に全く釈明をせず、同時廃止を求めるばかりで、破産手続上重要な事実関係につき誠実に説明を尽くそうとする姿勢が見受けられず、真摯に申立てを維持する意思があるとは認められないとして破産申立てを不適法として却下した事例(東京地決平成13年10月24日(金商1132号41頁))。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立