Ⅷ 破産手続開始申立書の添付書類

破産手続開始の申立書には、次に掲げる書類を添付する必要がある。

① 債務者が個人であるときは、その住民票の写しであって、本籍(本籍のない者及び本籍の明らかでない者については、その旨)の記載が省略されていないもの(規則14Ⅲ①)

本籍の記載を求めているのは破産者の特定をするためとされるが(条解規則 46頁)、前述のとおり、裁判所書記官は、免責許可の決定が確定したときを除き、破産者の本籍市区町村において戸籍に関する事務をつかさどる者に対し、当該破産者について破産手続開始の決定が確定した旨を通知する必要があるため、そのような意味においても本籍の記載のある住民票の添付を求めているものと考えられる。

② 債務者が法人であるときは、その登記事項証明書(規則14Ⅲ②)

③ 限定責任信託に係る信託財産について破産手続開始の申立てをするときは、限定責任信託の登記に係る登記事項証明書(規則14Ⅲ③)

④ 破産手続開始の申立ての日の直近において法令の規定に基づき作成された債務者の貸借対照表及び損益計算書(規則14Ⅲ④)

   民事再生では申立ての日の前3年以内に作成された貸借対照表等を添付する必要があるが(民再規則14)、破産手続の場合は直近に作成されたもので足りるとしている。これは、破産手続が清算型手続であり、破産手続開始申立時の資産及び負債状況が把握できれば足り、過去の経営推移の把握は必ずしも必要ではないからと考えられる。

⑤ 債務者が個人であるときは、次のイ及びロに掲げる書面(規則14Ⅲ⑤)

イ 破産手続開始の申立ての日前一月間の債務者の収入及び支出を記載した書面

ロ 確定申告書の写し、源泉徴収票の写しその他の債務者の収入の額を明らかにする書面

⑥ 債務者の財産目録(規則14Ⅲ⑥)

債務者の財産目録についても、個人の自己破産については各裁判所で様式を用意している。そして、財産目録に記載した財産は、その存在や時価を証する資料を積極的に添付しておくべきである。規則15条でも、裁判所は、破産手続開始の申立てをした者又はしようとする者に対し、破産手続開始の申立書及び破産法又は破産規則の規定により当該破産手続開始の申立書に添付し又は提出すべき書類のほか、破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権及び破産財団に属すべき財産の状況に関する資料その他破産手続の円滑な進行を図るために必要な資料の提出を求めることができるとしている。

たとえば、不動産については登記事項証明書、固定資産評価証明書、査定書など、生命保険については保険証券、解約返戻金計算書などである。事業者については在庫品、機械器具、什器備品なども記載して作成すべきだが、破産申立前に陳腐化したものを処分するのであれば、後日それを不正な処分をしたと疑われないよう、写真撮影などして報告書を作成しておくとよいであろう。

 このほか、財産を漏らさず把握するために、通帳の入出金や給料からの天引きなどを注意深く確認することが必要である。さらに、通帳の写しに、給料の振込み、家賃や公共料金の支払など、債務者の生活状況から一般的に想定される出入金がない場合や、債務者名義の他の口座への振込みの記載がある場合は、他に口座があるのではないかとの疑義が生じることがある。債権者の中にクレジットカ一ド業者がいる場合は、その支払を口座引落しとしていることが通例であり、当該引落し口座に係る通帳があるか否かも確認する必要がある(管財手引 41頁)。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立