Ⅵ 破産手続開始申立書の記載事項
1 必要的記載事項
破産手続開始の申立書は、個人債務者の自己破産については各地の裁判所で申立書と陳述書の様式が用意されている。一方、法人の破産についての様式は必ずしも用意されていないようであるので、法律上の記載要件を満たすように作成する必要がある。破産手続開始の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない(法20Ⅰ)。
① 申立人の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所(規則13Ⅰ①)
② 債務者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所(規則13Ⅰ②)
③ 申立ての趣旨(規則13Ⅰ③)
④ 破産手続開始の原因となる事実(規則13Ⅰ④)
これらの事項の記載を欠くときは、裁判所書記官は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命ずる処分をしなければならない(法21Ⅰ)。
2 訓示的記載事項
また、破産手続開始の申立書には、上記のほか、次に掲げる事項を記載するものとされているが(規則13Ⅱ)、これらの事項の記載がなくても、それだけの理由で補正処分の対象となったり申立書の却下処分がなされることにはならない。しかし、特に自己破産の場合にはこれらの事項についても十分な記載をなすべきである。
① 債務者の収入及び支出の状況並びに資産及び負債(債権者の数を含む。)の状況(規則13Ⅱ①)
② 破産手続開始の原因となる事実が生ずるに至った事情(規則13Ⅱ②)
③ 債務者の財産に関してされている他の手続又は処分で申立人に知れているもの(規則13Ⅱ③)
④ 債務者について現に係属する破産事件、再生事件又は更生事件があるときは、当該事件が係属する裁判所及び当該事件の表示(規則13Ⅱ④)
⑤ 管轄の特例(法5③から⑦)までに規定する破産事件等があるときは、当該破産事件等が係属する裁判所、当該破産事件等の表示及び当該破産事件等における破産者若しくは債務者、再生債務者又は更生会社若しくは開始前会社の氏名又は名称(規則13Ⅱ⑤)
⑥ 債務者について外国倒産処理手続があるときは、当該外国倒産処理手続の概要(規則13条Ⅱ⑥)
⑦ 債務者について次のイ又はロに掲げる者があるときは、それぞれ当該イ又はロに定める事項(規則13Ⅱ⑦)
イ 債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合 当該労働組合の名称、主たる事務所の所在地、組合員の数及び代表者の氏名
ロ 債務者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者 当該者の氏名及び住所
⑧ 債務者について規則9条1項の規定による通知をすべき機関(法人の事業開始について官庁その他の許可、登録等をした機関)があるときは、その機関の名称及び所在地(規則13Ⅱ⑧)
⑨ 申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)(規則13Ⅱ⑨)
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より