Ⅲ 審理方式・不服申立・公告

破産手続等に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができ(法8Ⅰ)、口頭弁論を開くか否かは裁判所の裁量に任されている。また、破産手続等に関する資料の収集については職権調査主義が採られており、裁判所は、職権で、破産手続等に係る事件に関して必要な調査をすることができる(法8Ⅱ)。 もっとも、申立人は裁判所の職権に頼らず、判断資料を積極的に提出すべきである。

 破産手続等に関する裁判につき利害関係を有する者は、破産法に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し一週間の即時抗告期間内に即時抗告をすることができる。裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して2週間が抗告期間とされる(法9)。これは、破産手続における集団的処理の要請等に照らし、その公告が効力を生ずるときを基準として抗告期間を算定するのが相当だからである(大阪高決平成6年8月15日(高民集47巻2号149頁))。

即時抗告をすることができるのが破産法に特別の定めがある場合に限定されるのは、「破産法9条は、破産手続の円滑な進行を図る趣旨で定められた、民事再生法9条及び会社更生法9条と同趣旨の規定であり、即時抗告ができる裁判を限定したものであって、特別の定めがない限り破産手続に関する破産裁判所の判断を終局的なものと定めたものと解される」と説明される(東京高決平成22年10月21日(法1917号118頁))。

 破産法の規定による公告は官報に掲載してするものとされ、掲載があった日の翌日に、公告の効力を生ずる。破産法の規定により送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができるが、破産法の規定により公告及び送達をしなければならない場合は、特別の定めがない限り、公告をもって送達に代えることができない。 なお、破産法の規定により裁判の公告がされたときは、一切の関係人に対して当該裁判の告知があったものとみなされる(法10)。これは、破産事件は債権者をはじめ多数の関係者が存在するから、効力の発生を一時期に決める必要があるからである。

旧法の事例であるが、免責決定が異議申立人に特別送達の方法で告知されるとともに、公告もされた場合は即時抗告期間をいつから起算するかについて、最高裁平成12年7月26日(民集54巻6号1981頁、裁時1272号5頁、判時1721号82頁、判タ1040号132頁)は、破産法上公告が必要的とされている決定についての即時抗告期間と同様に、公告のあった日より起算して2週間であるとしている。

上記判断の補足意見では、「公告がされた場合には、すべての利害関係人は、公告から二週間で不服申立権を失うとされている以上、別途送達を受けた者、あるいはその後に送達を受ける者も、右の時点で一律に不服申立権を失うものと解せざるを得ない」とし、その理由として、「破産法上の手続のような集団的権利関係の処理においては、画一的処理による確実性、能率的事務処理による手続の迅速性、手続の全体的な安定性等への配慮も欠かすことができず、知られざる利害関係人もいることから、公告の手続が多く利用されるのであって、送達を受けた者についてのみ個別的に即時抗告期間を起算することは、破産法上の手続に関する裁判に画一的に不可争性を付与して手続の進行を安定させるという目的に沿わないのである」と説明している。そして、この判例を踏襲し、破産手続開始決定に対する即時抗告期間についても開始決定の公告があった日から起算して2週間であると判示している(最高裁平成13年3月23日決定(判時1748号117頁、判タ1060号170頁))。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立