Ⅱ 破産事件の管轄

破産事件は、債務者が営業者であるときはその主たる営業所の所在地、営業者で外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄裁判所となる(法5①)。 この管轄裁判所がないときは、破産事件は、債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄裁判所となる(法5②)。

法人が株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、親法人について破産事件、再生事件又は更生事件が係属しているときにおける子株式会社についての破産手続開始の申立ては、親法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、子株式会社について破産事件等が係属しているときにおける親法人についての破産手続開始の申立ては、子株式会社の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができる(法5③)。

法人について破産事件等が係属している場合における当該法人の代表者についての破産手続開始の申立ては、当該法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、法人の代表者について破産事件又は再生事件が係属している場合における当該法人についての破産手続開始の申立ては、当該法人の代表者の破産事件又は再生事件が係属している地方裁判所にもすることができる(法5⑥)。

また、次に掲げる者のうちいずれか一人について破産事件が係属しているときは、それぞれに掲げる他の者についての破産手続開始の申立ては、当該破産事件が係属している地方裁判所にもすることができる(法5⑥)。

①  相互に連帯債務者の関係にある個人

②  相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人

③  夫婦

このほか、破産債権となるべき債権を有する債権者の数が500人以上であるときは高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所、債権者の数が1000人以上であるときは、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所にも、破産手続開始の申立てをすることができる(法5⑧⑨)。

 これらの規定にもかかわらず、東京地裁では管轄の規定を緩やかに解して営業所や住所が東京地裁の管轄区域内にない場合も破産手続開始申立を受け付けていた。しかし、平成22年2月からは、運用が厳しくなり、営業者でない個人債務者については、東京都、 千葉県、神奈川県、埼玉県に住所がない場合には、破産手続開始申立を受け付けないこととされるようになった(到達点と課題2頁)。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立