(8)従業員の解雇と労働債権の支払

     従業員は破産申立前(又は当日)に解雇し、なるべく早く失業保険の給付を受けられるように配慮する。解雇にあたっては解雇予告手当(労基20)を支払う必要があるが、解雇予告手当は財団債権として扱われず、優先的破産債権(法98)にすぎない。ちなみに、給料、賞与、退職金、解雇予告手当の全額を支払うことができない場合には、まず解雇予告手当を支払い、次に賞与を支払うべきである。これは、解雇予告手当、賞与については労働者健康福祉機構の未払賃金立替払制度の対象にならないからである。

 解雇予告手当、賞与を支払ってもまだ支払余力がある場合には、退職日の6か月以上前に支払日が到来していた金額について優先して支払っておきたい。これも、労働者健康福祉機構の未払賃金立替払制度が、退職日の6か月前の日以降に支払日が到来している定期賃金と退職手当を対象としているためである。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立