Ⅱ 事件類型とスケジュールの立案

 破産手続は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続であるが、破産手続開始申立の準備をするにあたっては、債務者が個人である場合には経済生活の再生の機会の確保を重視し、法人である場合には債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図ることが重視されよう。

裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは破産手続開始の決定と同時に破産手続廃止の決定(同時廃止)をしなければならない。したがって、個人債務者の経済生活の再生の機会の確保を重視する立場からは、費用が低廉で手続期間も短い同時廃止型を目指すことになる。しかし、破産財団をもって破産手続の費用を支弁することができる場合や、否認該当行為があるため破産管財人によって破産財団を原状に復させることが必要な場合、免責不許可事由の調査が必要である場合などは原則どおり破産管財人を選任することとなる。

早期に免責を得たいと思う個人債務者が同時廃止処理を望むことは自然であり、加えて、予納金の準備等の面で債務者の経済的負担にも大きく関わるため、破産手続開始の申立てにあたっては、債務者側の利害関心が開始決定時に同時廃止事件となるか管財事件となるかという点に集中する傾向が見られ、債務者の意向に応じ、同時廃止決定を得ることを目標にした開始決定までの活動が非常に重要なウエートを占めるという状況が生じている(到達点と課題73頁)。

一方、債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図ることが重視される法人の破産は、支払不能等の破産手続開始原因が生じた時期からなるべく近接した時点で破産手続開始決定を得て破産管財人を選任することにより法人財産の散逸や否認該当行為の発生を防ぐ必要がある。もっとも、支払停止等により事実上倒産してから相当期間経過していることにより債権者の関心も大きく薄れている法人が、代表者の個人破産と同時に法人についても破産申立をするようなケースもある。

以上のように、破産申立を準備するにあたっては、同時廃止型(個人)、管財人選任型(個人)、管財人選任型(休業法人)、管財人選任型(稼働中法人)という類型ごとにスケジュールの設定や破産申立までに行うべき課題が異なる。

なお、一部で、法人であっても廃業後一定年数が経過している場合には同時廃止を認める取扱いもあるようであるが、一般的には破産管財人を選任している。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立