(11)持家

 「住宅だけは手放したくない」という理由で破産を躊躇する相談者も多く見られる。しかし、破産手続を利用せざるを得ない場合には、いずれ住宅を手放すこととなり、同時廃止の場合は担保権実行または任意売却により住宅を処分することになり、破産管財人が選任された場合には原則として破産管財人が住宅を処分することになる。しかし、これらには、通常、数カ月を要するので、即座に退去を迫られることにはならない。したがって、その間に転居先、転居費用の確保に努めることが可能である。

 なお、住宅に抵当権などの担保が登記されている場合で、その担保の被担保債権額が住宅の時価を相当程度上回るとき(いわゆる「オーバーローン」。不動産時価の1.5倍程度という扱いが多い)には、住宅に財産価値があるとは認められない。したがって、他に価値のある財産がなく、その他破産管財人を選任する必要性が認められない場合には同時廃止となることが多い。ただし、時価の認定方法(不動産業者の査定書など)、財産価値が認められないと認定されるオーバーローンの程度などの運用は、各地の裁判所によって異なるようである。

(12)保証人・物的担保・所有権留保物件

 受任通知による取立禁止の効力は、保証人には及ばない。したがって、主債務者が破産申立準備に着手した場合、債権者から保証人へ請求がなされることが予想されるため、相談者にはその旨を説明しておく必要がある。

 保証債務には附従性があり、主債務が免除または一部免除されれば保証債務も主債務の限度に減縮されるのが原則であるが(民448)、免責によって主債務者の債務の支払義務がなくなったとしても、その効力は保証債務には影響を及ぼさない(法253Ⅱ)。そのため、保証人が無資力等で支払不能である場合には保証人にも何らかの手当てが必要な場合もある。

 また、抵当権・根抵当権などの物的担保、所有権留保物件などが存在する場合、破産においては、別除権(法65)として破産手続とは別に権利行使が可能である。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立