(6)職業及び資格制限
勤務先の会社に破産した事実が知られることもないし、破産を理由に会社を退職する必要もない。公務員も破産は退職事由ではない
ただし、勤務先に給料の前借をしている場合には勤務先を債権者として債権者一覧表に記載しなければならず、勤務先を破産手続に巻き込まざるを得ない。勤務先に密接に関係する共済組合などから借入れをしている場合も同様である。このような場合、事実上、退職を余儀なくされることはままある。
会社の取締役や監査役の地位にある者が破産した場合には、会社と委任契約が終了するため(会330、民653②)、取締役又は監査役の地位を失う。ただし、破産者を取締役又は監査役に選任することは可能である(会331、335)。
また、破産者は一定の職業に就くことができないという資格制限があるので確認をしておく必要がある。
なお、保険業法には、保険募集人である「個人」について、破産手続開始決定がされた場合に、その旨の届出をしなければならない旨の規定はなく、破産手続開始決定により、当然に保険募集人の登録が失効することもない(到達点と課題45頁)。したがって、保険募集人については、破産した場合の資格制限を心配する必要はほとんどないとも考えられる。
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より