2 相談の準備
(1)個人の相談
個人債務者の債務整理相談は、負債の状況、収入の見込み、所有資産、債務者の置かれた状況、債務者の今後の希望などを詳細に聴取し、相談者はどのような整理を望んでいるのかを十分に踏まえたうえで、適切なアドバイスを施す必要がある。そのためには、次のような資料にもとづいて相談を受けるのがよかろう。
① 債務に関する契約書、領収書、督促状等の一切の書類およびカード
② 債権者全員の氏名、残高一覧表
③ 最近の給与明細書、所得証明書等収入の状況がわかるもの
④ 預金通帳
⑤ 生計を同一にする家族の職業と収入一覧表
⑥ 所有不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
⑦ 借家等の賃貸借契約書
⑧ 保険証書、車検証等、所有資産の概要がわかるもの
また、相談者から聞き取る内容は、おおむね次のとおりであるが、個人の破産手続開始原因は支払不能又は支払停止であること(法15)を意識して聞き取りを行う必要がある。
① 収入の状況
現在の手取収入、家族の手取収入のほか。各種手当、年金、生活保護などの公的給付の有無
② 財産の状況
所有不動産の時価及び担保の状況、生命保険の解約返戻金額・積立預金等の額、退職金見込額。なお、給与明細書の控除欄や預金通帳の自動引落により生命保険契約の存在が明らかとなる場合もあるので精査が必要である。
③ 家計の状況
通帳の入出金や相談者からの聞き取りにより、簡単な家計表を作成し、可処分所得月額を算出する。
④ 多額の負債を負うに至った経緯
生活費、住宅ローン、事業の失敗、名義貸し、保証、浪費など、多額の負債を負うに至った経緯を確認する。
⑤ 債権者
簡易な債権者一覧表を作成する。金融機関、貸金業者、信販会社のみならず、友人・知人・勤務先からの借入れ、未払賃料、税金・社会保険料等の公的負担の未払い等も確認する。
⑥ 援助者
家族等で弁済や破産予納金等の資金援助をする可能性のある者が存在するか、存在する場合はどの程度が期待できるのかを確認する(ただし、家族等からの弁済を強要したり促したりするものではない)。
「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より