Ⅲ 利用状況

 破産手続開始の申立件数は減少傾向にあり、平成24年の申立件数は約9万 3000件と平成15年のピーク時と比べると約3分の1となっている。また、平成15年ころには9割以上を占めていた同時廃止事件は減少傾向にあり、管財事件が増加傾向となっている。平成24 年は約4割の事件で破産管財人が選任されている。

 個人再生事件については、全国的には、平成13年の施行以来、申立件数は増加していたが、平成19年をピークに減少傾向となっており、平成24年の申立件数は約1万件となっている。また、小規模個人再生事件が9割以上を占め、原則的な手続となっている。

以上のように、破産事件、個人再生事件ともに申立件数は減少傾向にあり、債務整理の普及、政府による多重債務対策、貸金業法の改正などの多重債務問題に対する取組みは一定の成果を挙げていると思われる。

日本弁護士連合会消費者問題対策委員会が行った『2011年破産事件及び個人再生事件記録調査』では、前回(2008年)調査から比較すると、失業(15%→20%)、給料の減少(11%→16%)、生活用品の購入(9%→11%)が増加しており、1997年以降最大値となっており、前々回の調査(2005年)から指摘される「不況による生活苦型破産」の傾向が進展し、より深刻化している状況がよくわかるとされている。

また、住宅購入(10%→12%)も1997年以降最大値となっており、失業・給料の減少などにより、住宅ローンが支払えず破産せざるを得ない多重債務者の実情をうかがわせるとしている。

他方、浪費・遊興費(10%)、投資(1%)、ギャンブル(5%)などの比率は相変わらず低いとされている。

また、同調査によれば、破産債務者の平均月収は、11万7576円であり、前回調査より減少している(2008年調査:12万1288円、2005年調査:11万0061円、2002年調査:10万4639円)。生活扶助基準以下である月収15万円以下の収入層は63%と全破産者の3分の1近くに上っている。

そして、破産債務者の平均負債額は、3018万8485円であるが、破産債務者の52%、半数以上が負債額500万円未満である。

以上のとおり、前回調査でも指摘された少ない負債額でも支払い不能となる債務者が増加している傾向が強まっており、負債額100万円未満が2%→5%、200万円未満が11%→15%と増加している。

負債総額300万円未満で破産している破産債務者の割合は36%(前回30%)であり、破産者の3分の1以上を占めており、女性に限れば負債総額300万円未満が48%(前回37%)であり、約半数を占めている。

このほか、給与生活者は、前回調査より減少し(61%→53%)、給与生活者の約半数は、正社員以外(非正規雇用)である。他方、生活保護受給者が前回調査から倍増し(3%→7%)、過去最高値となっている。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立