Ⅱ 改正破産法の要旨

 現行破産法は、平成17年1月1日に施行された平成16年改正破産法(平成16年法律第75号)であるが、法は、債務者の財産等の適正かつ公平な清算とともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図るという目的を高らかに宣言した(法1)。そして、大正11年に制定された破産法(大正11年法律第71号)を全面的に見直した。そして、これにより、平成8年以来の倒産法制の全体的な見直し作業が完結した。

 この改正作業において、消費者破産について旧法の主な問題的は次のようなものであった。

 ① 破産法が主として事業者の破産を想定しているため、消費者破産に対する手続的な手当が十分でなかった

 ② 自由財産の範囲が限定的であり、破産者の経済生活の再生に不十分であった

 ③ 免責手続中の個別執行が可能であり、破産者の経済生活の再生に支障を来すことがあった

 そこで、改正破産法は、消費者破産について、主に次のとおりの改正を行った。

 1 自由財産の範囲の拡張

 破産者の生活保障や経済生活の再生を図るため、標準的な世帯の必要生計費の3か月分の金銭を自由財産とするとともに、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた自由財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる制度を導入した。

 2 破産手続と免責手続の一体化

 消費者の破産手続開始の申立ては、免責を得ることを主たる目的としているという実態から、個人が破産手続開始の申立てをした場合には、原則として、同時に免責許可の申立をしたものとみなすものとした(法248Ⅳ)。

 3 免責手続中の強制執行の禁止

  破産者の経済生活の再生を図るため、免責許可の申立てがあったときは、破産手続の終了後であっても免責許可の申立てについての裁判が確定するまでの間は破産債権にもとづく強制執行等を禁止した(法249Ⅰ)。

 4 免責不許可事由等の調査に対する破産者の協力義務

 免責不許可事由等についての調査を有効かつ効率的に行うとともに、手続の公正さを確保するため、破産者に裁判所または破産管財人が行う免責不許可事由についての調査に協力する義務を課した(法250Ⅱ)。

 5 非免責債権の範囲の拡張

 免責により破産者が得る利益と債権者が被る不利益との調整を図るため、破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、破産者の扶養義務等に係る請求権を新たに非免責債権とした。

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立