1 平成14年司法書士法改正への対応

このような中、平成13年6月12日付司法制度改革審議会の意見書は、隣接法律専門職種の活用等について、「訴訟手続において、隣接法律専門職種などの有する専門性を活用する見地から、司法書士への簡易裁判所での訴訟代理権については、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、これを付与すべきである。 また、簡易裁判所の事物管轄を基準として、調停・即決和解事件の代理権についても、同様に付与すべきである」と述べるに至り、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(平成14年法律第33号)が成立し、司法書士の業務として簡裁訴訟代理関係業務が認められることとなった。

これにより、一定の範囲ではあるものの、司法書士に簡易裁判所の訴訟代理権のみならず民事紛争に関する訴訟外の代理権が認められることとなった。また、同時に、貸金業法上、司法書士の受任通知に取立禁止効が認められることとなった。このように弁護士と同様の受任通知の効果が認められることとなったことについて、それまで先進的にクレサラ問題に取り組んできた司法書士が必ずしも諸手を挙げて喜んだわけではない。むしろ、整理屋提携弁護士ならぬ整理屋提携司法書士が出てくるのではないかと危惧する声も聞かれた。しかし、当然ながら、ニーズがある限り代理業務の要請に応じるべきであるという考え方が一般的であった。

司法書士は、それまで代理人として債務整理に関わった経験はなく、訴訟外の任意整理はまったく未経験の分野でもあった。また、それまでは、受任通知制度がなかったために債権調査ができないということが司法書士のウィークポイントであったが、受任通知で取立行為を制限したうえで債権調査を行い、じっくりと債務整理の方針を固めていくことが可能となったため、それまでに積み重ねてきた司法書士の債務整理業務を根本から再構築する必要があった。さらに、簡裁訴訟代理関係業務の付与を契機として、利息制限法を用いて依頼者を救済するという考え方を徹底する必要があった。

そこで、簡裁訴訟代理関係業務の第1回考査試験合格発表前である平成15年6月に「クレサラ・ヤミ金事件処理の手引」(日司連編 民事法研究会)が刊行され、司法書士としての実務指針が示されることとなった。さらに、同年9月には「ヤミ金融被害救済の実務」(日司連編 民事法研究会)も刊行され、ヤミ金融に対する対処法も広められていった。

こうして、司法書士法改正を機に、司法書士が取組むことができる債務整理のメニューに任意整理が加わり、司法書士がすべての債務整理方法を収得するに至ったのである。こうした多彩な債務整理メニューと、それぞれの手続が詳細にマニュアル化されたことにより、以後、爆発的に債務整理に取組む司法書士が増えていくのと同時に、債務整理業務が事務所経営の柱としてビジネス化していく傾向に拍車をかけたと言ってもいいであろう。

 

 

「司法書士のための破産の実務と論点」(古橋清二著 2014年4月民事法研究会発行)より

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立