父の遺産を整理していたところ、仮登記済権利証というものが出てきたため、法務局で調べたところ、山間の他人の農地に、父が、25年前に農地法第5条の許可を条件とする条件付所有権移転仮登記をしていたことがわかりました。よくよく調べてみると、当時の売買契約書や20万円の領収書もでてきました。しかし、母に聞いてもその土地のことは全く知らないとのことでした。今後、どのようにしたらいいでしょうか
 農地を購入して購入者名義で登記するには農業委員会の許可が必要ですが、農家資格のない方が許可を得られるケースは限定されており、許可を得ることが困難なケースは少なくありません。
 このような場合に、ご質問にある「仮登記」を利用しておくことがしばしば見受けられるのですが、文字どおり「仮」の登記にすぎませんので、購入者が正式に登記名義人となったわけではありません。これが、今の状態です。
この状態から「本登記」、つまり正式な登記名義人とするためには、二つの方法が考えられます。
 ひとつは、農地法の許可が得られる条件を模索することですが、現実的にはハードルがとても高いです。
 そこで検討したいのが「時効取得」という方法です。
 購入者であるお父様が売買契約を締結して代金全額を支払った日から20年間、この農地を継続して使用・管理してきた事実が認められれば、農地法の許可を得ることなく「本登記」ができます。
 時効取得が認められるためには、購入から現在に至るまで、この土地をどのように使用・管理してきたのかを具体的にお伺いする必要があります。この状況如何では、20年間経過していたとしても時効取得が成立しないこともあります。
 また、本登記の手続きには、当時の売主(この方が亡くなっていればその相続人全員)の協力を得る必要があります。協力が得られなければ裁判手続きを利用する必要もあります。専門的な知識や手続きが必要となりますので、まずはお近くの司法書士、または県司法書士会の相談センター(電話・054-289-3704)へご相談ください。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立