相続人の一人が、相続開始後に勝手に預貯金を引き出して使ってしまいました。今後、遺産分割協議を進めるにあたり、使われてしまった預貯金についてはどのように対応すればよいですか?
 遺産分割の対象となる財産が、相続開始後遺産分割前に勝手に処分されてしまうようなケースでは、共同相続人全員が同意することにより、処分された財産が未だに遺産として存在するものとみなして遺産分割をおこなうことができるようになります(改正民法906条2項)。また、勝手に処分をした者が相続人の一人である場合には、当該相続人の同意は必要ではありません(同条2項)。

 この規定により、相続開始後遺産分割協議前に遺産を勝手に処分した相続人は、遺産分割における取り分が減少することとなるわけです。

 なお、預貯金債権の仮払い制度(改正民法909条の2)や、遺産分割事件を本案とする保全処分(改正家事事件手続法200条3項)は、改正民法906条の例外規定として位置付けられます。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立