昨年母が亡くなりました。母の生前、私は無償で母名義の土地を母から借り、私名義の自宅を建築して母と一緒に暮らしていました。相続人は私、弟、妹の3人です。遺産分割協議にあたり、3人平等に相続することを提案したところ、他の兄弟から、「私たちは母さんから生前何ももらっていない。兄さん(私)はこれまで地代を払わずお母さんの土地を使用していたから、その地代相当額は贈与を受けたことになる。3人平等は納得できない。」と言われてしまいました。話し合いがまとまらず裁判となった場合、他の兄弟が言うように、その土地の地代相当額は贈与を受けたことになってしまうのでしょうか。
貴方が貴方のお母様から土地を無償で借り受けたことにより、ご質問の土地について貴方は使用借権を有することになります。
実務上、使用借権負担付きの土地は、遺産評価の際、更地の土地に比べて、使用借権相当額(地上建物が木造などの場合には、土地の1割程度)を差し引いて評価します
この使用借権相当額については、貴方は特別に利益を受けたと考えられます。
しかしながら、他のご兄弟が主張されるように、この土地の評価とは無関係の地代相当額について貴方が贈与を受けたことにはなりません。
お母様が貴方に対して土地を無償使用させる際に、通常は、「私(母)が亡くなったら、使用貸借期間中の地代相当額は遺産に戻しなさい」とは考えないでしょうし、貴方としても、通常は、「母が亡くなったら、使用貸借期間中の地代相当額を遺産に戻さなければならない」とは考えないでしょう。
実務上も、このような使用貸借における通常の当事者の意思を重視して、同様の判断をしています。
したがって、ご質問にあるご兄弟の主張は主張自体失当として、裁判で取り上げてもらえません。ご安心ください。
(文責 柴田泰光)