私は認知症の親の介護をしています。子は他にもいますが、長男というだけでほとんど全て私と私の家族が介護を受け持っています。親の介護は寄与分にならないのでしょうか? 寄与分になるとしたら、その精神的・肉体的な負担に対する寄与分について、何か算定のしかたはあるのでしょうか。また経済的な負担はすべて寄与分ですか
① 親の介護は寄与分にならないのでしょうか?

A 民法は親子関係にある者について扶養義務を課しています。従って、通常の介護の負担程度では扶養義務に吸収されてしまうので、介護のみをもって寄与分を主張するのは難しいです。また、通説では、寄与分は「被相続人の財産維持若しくは増加について特別の寄与をした」者に認めるとされています。介護の場合、家族の労務を金銭に置き換えて評価することが難しく、そのことも介護を寄与分として認めることを困難にしています。

 以上のような法的解釈が前提としてあるため、介護は訴訟や調停では寄与分としてなかなか認められないかもしれません。

 

② 寄与分になるとしたら、その精神的・肉体的な負担に対する寄与分について、何か算定のしかたはあるのでしょうか。また経済的な負担はすべて寄与分ですか。

A 例えば、介護事業者に依頼した場合の利用料金を参考に、家族が介護したことによって利用料金を払わなくて済んだという評価をすることで、「財産の維持に寄与した」という要件をクリアできるかもしれません。もう1つの要件である「特別の寄与」については、過去の判例によると数十年無給で被相続人の事業に従事してきたといった例があります。労務を長期間無償で行ってきた点が「特別の寄与」と評価されているようです。この判例のような極端な例でなくても、まずは介護事業者の利用料金を参考に金銭的な評価として他の相続人に示してみたらいかがでしょうか。

 なお、経済的負担については必ずしも寄与分として他の相続人に認めさせる必要はありません。例えば、親の介護を相続人の妻が担当してきた場合などは、妻はあくまで相続人ではありませんから、寄与分の範疇で妻の労務を評価することは理論的に不可能です。このような場合は、妻の労務を金銭的な評価に置き換え、不当利得として他の相続人に請求することが多いようです。

(文責 井上尚人)

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立