父が危篤状態となりました。葬儀費用のため、まとまったお金を今のうちに銀行口座から出金しておくことは可能ですか?
 口座からの預貯金の引出しには、金融機関側の本人確認が必要です。すでに危篤状態ということですので、引出しはできません。ATMを利用すれば1日当たりの限度額までの引出しが事実上可能ではありますが、相続開始直前の資金移動は、後日の遺産分割協議において他の相続人に不信感を招く要因ともなりかねませんので、避けるべきです。

 かつては、相続開始に伴い被相続人名義の預金口座が凍結され、金融機関としては、遺言か相続人全員による遺産分割協議書が提出されない限り預金の引出しに応じない取扱いであったことから、相続発生直後の資金確保という要請がはたらいていたことは事実ですが、平成31年7月1日以降は、遺産分割協議が成立する前であっても一定の金額について預貯金債権の仮払いを請求できることになりましたので(改正民法909条の2)、生前にあわてて預貯金の引出しをする必要はなくなります。

 なお、仮払いを請求できる預貯金は、相続開始時の預貯金残高の3分の1に仮払いを請求する相続人の法定相続分を乗じた金額か、150万円のいずれか低い金額となります(民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令)。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立