父が以前から老人施設に入所しているため、私が父の預金を管理しており、カードで出金をして施設費や税金、お小遣いなどの支払いをしています。ところが、妹は「使い込みをしているのではないか」と疑っているようです。私としては非常に心外ですが、何かとるべき対策があるでしょうか。
 施設で暮らしているお父様の判断能力はどんな状況でしょう?

① 判断能力の低下がみられる
 すでに判断能力の低下がみられる場合、成年後見制度の利用が必要となります。症状が重度でお父様ご自身ではお金の管理ができないようであれば「成年後見」、お小遣いの管理がご自身でできる程度であれば「保佐」や「補助」という手続きの利用が考えられます。
 これらの制度を利用するには、候補者を立てて家庭裁判所に選任申立ての手続きをする必要があります。ご相談者ご自身を候補者とすることもできますが、必ずしもこの申し出が採用されるわけではなく、司法書士などの法律専門家が成年後見人などに選任されるケースも考えられます。
 家庭裁判所から選任された者は、直ちにお父様の財産の引渡しを受けて財産目録を家庭裁判所に提出し、その後も定期的に詳細な管理報告をしなければなりませんので、透明性のある財産管理が可能となるわけです。

② 判断能力に問題がない場合
 次に、お父様は体が不自由なだけで、判断能力には何の影響も生じていないケースです。
 この場合、お父様はご自身の判断により、ご自身の財産管理をご相談者も含めた第三者に委託する契約を締結することが可能です。
 どんな資金使途に限って出金可能か? 出金することができるのはどの口座からか? 上限の金額はいくらか? など、お金の使い方について具体的に明示した契約を交わしておくことにより、妹さんのご懸念にも明確に反論できることでしょう。
なお、このような場合には「任意後見契約」や「民事信託」が有効な契約であると考えられますが、いずれも専門的な内容を含む契約となりますので、司法書士と十分な協議をしたうえで契約書を取り交わすことをお勧めいたします。

(文責 中里 功)

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立