公益目的で財産を寄付したいのですが、遺言書はどのように作成したらいいのでしょうか
公益目的をもった活動をしている個人や団体への寄付(法律用語では遺贈)をすることは可能ですが、以下に注意点を挙げておきます。
①できるだけ公正証書遺言で作成しましょう
遺言には、主に全文を自筆する自筆証書遺言と公証人に作成してもらう公正証書遺言があります。自筆証書遺言は遺言者だけで作成することができ費用がかからないというメリットがありますが、民法に定める方式を逸脱すると無効になってしまう場合もあります。また、自分だけで作成したために遺言の保管場所が分からず、せっかく作成した遺言が実行されないという事態もあり得ます。さらに、遺言者が死亡した後、家庭裁判所で検認という手続を行う必要があります。
一方、公正証書遺言は、専門家である公証人が作成しますから遺言が無効になってしまうことはほとんど考えられませんし、検認手続をすることなく遺言を執行できます。公証人に対する報酬は必要となりますが、遺言は公正証書で作成することをお勧めします。
②相続人でない遺言執行者を指定しましょう
公正証書遺言であれば、通常は公証人から遺言執行者を指定するように勧められますが、自筆証書遺言の場合、遺言執行者が指定されていないことがよくあります。遺言執行者とは、遺言の内容を実現する責務を負った人のことです。自分の最後の意思を確実に実行するために、信頼できる人を遺言執行者に指定しておきましょう。
特に、遺言が公益目的の団体等に財産を寄付する内容となっている場合は、遺言の実行は相続人にとって相続財産の減少に繋がりますから、相続人任せにしておくとスムーズに遺言が実行されない場合があります。
以上のような理由から、相続人でない者、できれば法律に詳しい専門家を遺言執行者に指定しておくことをお勧めします。
③相手を特定しましょう
過去の判例によると、「遺産の全部を公共に寄付する」という内容の遺言が認められたケースがあるようです。その場合、遺言執行者が遺言者の意思を慮って寄付先を決めることになります。しかし、一般には、相手先を定めて指定しておくべきです。
団体であれば、法務局で登記事項証明書を取り寄せ、所在地、代表者、団体の目的などを確認しましょう。個人であれば、住所氏名生年月日を確認できる資料を取り寄せることができれば取り寄せ、遺言に正確に記載するようにしましょう。
④寄付する相手がどのような財産なら受け入れるのか事前に調査しましょう
公益目的の個人や団体の中には、換価処分が困難な不動産の寄付は受け付けないところもあります。事前に、その団体がどのような財産なら寄付を受け付けるか、確認しておきましょう。不動産の寄付を受け付けず換価処分をして現金として寄付する必要があるのなら、遺言の中で遺言執行者に換価処分の権限を与えておく必要があります。
(文責 井上尚人)