賃貸借契約終了後の原状回復について、民法改正で定められたことはありますか

改正民法621条は、「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と規定しました。

実は、これまでは、賃貸借契約終了後の原状回復について民法にこれほど具体的な規定は置かれていませんでした。もっとも、平成17年の最高裁判決では、賃借人が通常の使用をしていても生じる損傷や劣化(自然損耗)については、賃借人は原則として原状回復費用を負担する義務はないと判断されましたから、裁判実務ではこの考えが定着しています。なお、この判例では、例外的に、賃貸借契約等で、賃借人が負担すべき損傷の範囲が具体的かつ明確に定められている場合には賃借人が原状回復費用を負担する必要があると判断しています。

今回の民法改正で上記のような具体的な規定が設けられましたが、これは、それまでの最高裁判例等を踏まえて原状回復費用の負担のルールを明確にしたということができます。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立