父Aが死亡し、相続人は子供の私Xと弟Yの2名です。遺産分割協議の結果、Aの遺産のうち、AのGに対する1000万円の貸金債権は私が相続することになりました。そこで、私はGに対し1000万円の返還請求をしましたが、Gは全額私が相続したのかどうかわからないと言って500万円しか返還してくれません。

 Gに対し法定相続分を超える部分についても貸金債権を承継した旨の通知をすることが必要です。

 平成30年改正相続法は、「相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分(法定相続分)を越える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない」(899条の2第1項)としています。

 また、「前項の権利が債権である場合において、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。」(899条の2第2項)としています。

 そうすると、法定相続分を超えて当該債権を承継した相続人は、次のいずれかによらなければ債務者に対抗できないということになります。

(1)共同相続人の全員が債務者に通知する。

(2)法定相続分を超えて当該債権を承継した相続人が、遺言(遺産分割)の内容を明らかにして債務者にその承継の通知をする。

(3)債務者が承諾する。

 したがって、承継される貸金債権が遺産分割の対象となっていた場合には、XはGに対し遺産分割の内容を明らかにしてその承継の通知をする、相続人の全員であるXとYがGに対し承継の通知をする、債務者が承諾する、のいずれかの対応をすることが必要です。

 なお、どのような場合に遺産分割の内容を明らかにしたと言えるかですが、遺産分割協議書の交付までは必要なく、債務者が客観的に遺産分割の内容を判断できるような方法、例えば、受益相続人が遺産分割協議書の原本を提示し、債務者の求めに応じて、債権の承継の記載部分について写しを交付する方法でも足りるものと考えられます。

古橋 清二

昭和33年10月生  てんびん座  血液型 A 浜松西部中、浜松西高、中央大学出身 昭和56年~平成2年 浜松市内の電子機器メーカー(東証一部上場)で株主総会実務、契約実務に携わる 平成2年 古橋清二司法書士事務所開設 平成17年 司法書士法人中央合同事務所設立